■ 残り1節J1、J2ともに残り1節となった。J1は京都サンガ、湘南ベルマーレの降格が決定していて、J2は柏レイソル、ヴァンフォーレ甲府、アビスパ福岡のJ1昇格が決定している。
その中で2007年以来の昇格を果たしたのが、ヴァンフォーレ甲府である。2009年はあと一歩のところで昇格を逃したが、オフの補強も実って、34節という早い段階昇格を決定させた。
■ 昇格の要因甲府の昇格の要因を考えてみると、
① ハーフナー・マイクの加入による得点力アップ
② ダニエルを中心とした安定した守備
③ 勝負強さ・粘り強さのアップ
が挙げられると思う。
2008年、2009年と2年連続で昇格を逃した甲府だったが、得点力が不足していたことが大きかった。2008年途中にFWマラニョンが加入し、200年シーズンは19ゴールをマークしたが、決定的なチャンスでシュートミスをするシーンも多く、絶対的なエースとは呼べなかった。
それ故に、チーム全体の勝負弱さも感じられた。その反省からか、オフにFWハーフナー・マイク、FWパウリーニョとJ2でも実績十分のストライカーを獲得。FW金信泳、FWマラニョンと合わせてストライカーが4人となって、過剰な感じもしたが、FWハーフナーが20ゴール、FWパウリーニョが14ゴール、FWマラニョンが9ゴールという結果を残した。
特に、FWハーフナー・マイクの存在は大きかった。2006年、2007年とJ1時代の甲府は大木監督の下、「ショートパス」にこだわったサッカーを見せていた。2006年のシーズン終了後にFWバレーがG大阪に移籍すると、その傾向はさらに高まって、魅力的ではあったが、非効率的なサッカーになりがちであった。
その傾向が薄まってきたのは、2009年シーズンの途中からである。自分たちのサッカーを前面に押し出すのではなく、現実的なサッカーにシフトチェンジしつつあった。ただ、MF藤田、MF石原、MF林といった大木サッカーでも中核を担っていた選手が多く在籍し、FWマラニョンが、あまり頼りにならなかったので、攻撃は中途半端になっていた。「上手くつなぐけれども怖さはない。」というサッカーになっていた。2009年にDFダニエル、GK荻に加入し、守備力が大幅にアップしたが、一方で、攻撃は物足りなかった。
■ ハーフナー・マイクの変化そこに加わったのが、FWハーフナー・マイクである。名古屋グランパスなどで活躍したディド・ハーフナー氏の息子であるが、194㎝という圧倒的な高さを武器に、チームを勝利に導くゴールを量産し続けた。
FWハーフナー・マイクはマリノスのユース出身で、2007年のU-20世界大会の日本代表でもあるが、その頃は、「ただデカいだけ」という存在であり、あまり魅力を感じなかった。が、2008年にアビスパ福岡でプレーし、さらに2009年はサガン鳥栖でプレー。その2009年に「ストライカー養成所」と言われる鳥栖でブレークスルーを果たした。
日本にも185㎝をオーバーするフォワードは何人もいるが、意外と空中戦は強くない。むしろ、足元の技術に優れた選手やスピードのある選手が多くて、高さを生かし切れない選手ばかりである。FWハーフナー・マイクもユース代表のときは、そういった印象で、インパクトはあまり感じなかったが、福岡、鳥栖、甲府でプレーし、試合経験を積んで、194㎝の高さが生きるようになった。身体能力も低いわけではないので、J2のディフェンダーではなかなか止められない存在となった。
課題は、試合中に熱くなりすぎることが多く、無駄なカードをもらうのが多いことであり、J1のディフェンダーはもっと汚いので、その対応に苦労する可能性も無きにしも非ずであるが、彼が、シーズン通して、どのくらいのゴールが挙げられるかは、本当に楽しみである。イタリアで出場機会に恵まれていないFW森本に代わって、ザックジャパンのエースに躍り出る可能性もないわけではない。
■ 藤田健の戦力外①J1残留に向けてチームは動き出しているが、その中で、松永監督時代からチームの軸としてプレーしてきたMF藤田健が戦力外になることが明らかになった。今シーズンは31試合に出場しており、完全なレギュラーであり、かなりギャンブルといえる。MF藤田は黄金時代のジュビロ磐田に入団したが、なかなか出場機会に恵まれずに甲府に移籍し、甲府がJ2でも下位グループだった頃からチームを支えてきた選手である。ビッグニュースである。
1つには素行に問題があったといわれている。確かに、遅刻のため試合に出場できなかったこともあった。その一方で、「大木色」を消したいという理由もあったかもしれない。大木監督時代のスタイルと、今の内田監督のスタイルは、全く違うものである。中盤の選手が主役だった大木サッカーから、ハーフナー・マイクが中心のサッカーにチームは変化してきた。
■ 藤田健の戦力外② この戦力外については、ありか?、なしか?で言うと、「あり」かなという気はする。MF藤田のこれまでの功績は十分に理解してつもりであるが、チームが次のステップに進むためには、ありえなくもない選択だと考える。これからの甲府のサッカーと、藤田のスタイルをよく考えて、フロントが結論を出したのであれば、その選択は支持できるものである。
甲府は、FWハーフナー・マイクを中央にした3トップで、FWマラニョン、FWパウリーニョが両サイドで、中盤の前にMF藤田とMF養父で、アンカーにMF秋本か、MF保坂という並びが多かったかと思うが、FWハーフナー・マイクを生かすのであれば、もう少し再考の余地があるのではないか?とも思う。大木スタイルと、内田スタイルを折衷できればよかったが、そこまで行くのは難しい。
リーグ終盤になって、FW柏がウイングで起用されるようになって、変化が生まれたが、J1残留を目指して、徹底してFWハーフナー・マイクの得点力を生かそうとするのであれば、MF藤田健を外すのはありない話ではない。もちろん、FWハーフナー・マイクがJ1でも活躍できることが前提になっていて、いくらかのギャンブルではあるが・・・。
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