■ 第16節J1の第16節。3勝7敗5分けで勝ち点「14」のヴァンフォーレ甲府と、2勝9敗4分けで勝ち点「10」の湘南ベルマーレが山梨中銀スタジアムで対戦した。J1の残留争いは13位の名古屋が勝ち点「15」、14位の甲府と15位の鳥栖が勝ち点「14」、16位の磐田が勝ち点「11」、17位の湘南が勝ち点「10」、18位の大分が勝ち点「8」となっていて、ともに勝ち点「3」の欲しい試合となった。
ホームの甲府は「4-2-2-2」。GK荻。DF福田、土屋、盛田、松橋優。MF山本英、マルキーニョス・パラナ、水野、羽生。FWウーゴ、平本。中断明けは4連戦と過密日程になることもあって、ターンオーバーを採用しており、DF佐々木、MF柏はベンチスタートで、DF青山はベンチ外となった。キーパーは15節の鳥栖戦でGK河田が退場処分を受けたので、ベテランのGK荻が3節の名古屋戦以来のスタメンとなった。
対するアウェーの湘南は「3-4-2-1」。GK安藤。DF鎌田、遠藤航、大野。MFハン・グギョン、永木、古林、高山、菊池、岩上。FW大槻。大卒2年目のMF岩上がシャドーの位置で今シーズン初スタメンとなって、同じく大卒2年目のFW大槻が1トップで起用された。リオ五輪代表の守備の要として期待されているDF遠藤航は15節の柏戦で戦列に復帰して2試合連続スタメンとなった。
■ 1対0で湘南が逃げ切る試合の前半はホームの甲府のペースとなる。前半4分にはDFラインの裏に走り込んだFWウーゴがペナルティエリア内で倒されるが、ノーファールの判定でPKとはならず。さらに、前半24分にも湘南のGK安藤がファンブルしたボールがFW平本に当たってゴールに吸い込まれるが、オフサイドの判定でゴールは認められない。湘南は前半は公式記録ではシュートゼロに終わって、甲府が優勢でハーフタイムに突入する。
後半になるとアウェーの湘南も形を作り始める。一方の甲府は、FWウーゴやFW平本にボールが入らなくなって、チャンスを作れなくなる。すると、後半32分にペナルティエリア内でMF岩上が巧みなコントロールからシュートチャンスを作ると、右足のシュートがGK荻の守るゴールを打ち破ってアウェーの湘南が先制に成功する。大卒2年目のMF岩上はJ1では初ゴールとなった。
負けられない甲府は189センチのDF盛田を高い位置に上げて、終盤はパワープレーを仕掛けるが、決定機を作ることは出来ない。湘南は先制した後の戦い方に課題を抱えていたが、この日は、復帰2試合目となるDF遠藤航を中心に甲府のチャンスの芽を摘み取って1対0で勝利して、大きな勝ち点「3」を獲得した。一方の甲府はリーグ戦は6連敗で、7試合勝利なしと苦しんでいる。
■ クオリティーの高いとはいえない試合17位と降格圏に位置する湘南にとって、この勝利は大きい。15節を終えた時点で、磐田と湘南と大分の3チームが降格圏に沈んでおり、残留圏内に浮上するためには、どこかのチームを引きずり落とす必要があるが、連敗中で勢いが無くなっている甲府というのはメインターゲットの1つになる。最後まで残留を争うことになると思われるライバルをアウェーで下したことは、勝ち点「3」以上の価値があると言える。
ただ、90分間で湘南が放ったシュートは2本だけで、湘南らしさがフルに発揮された試合ではなかった。連敗中の甲府にも同じことが言えるが、2012年はJ2で優勝争いをしており、この2チームの直接対決は見ごたえのあるハイレベルな試合となったが、今回はこういう順位での対戦であり、J1の14位と17位の対戦らしくミスも多かった。したがって、お世辞にもクオリティーの高いとはいえない内容だった。
湘南も、甲府も、監督は同じで、メンバーも大きく変わっているわけではない。チームコンセプトも同じなので、2012年のようなクオリティーの高い試合になってもおかしくないが、上のカテゴリーに上がって、なかなか結果が出なくて、チームとしても、個人としても、自信を失いかけていて、ミスを恐れている選手も何人かいる。昨年の対戦と今回の試合を比べると、サッカーが「メンタルのスポーツ」と言われる理由が分かる。
■ 決勝ゴールを決めた岩上祐三ただ、湘南は若い選手が多いので、1つの勝利で、失いかけていた自信を取り戻す可能性はある。ヒーローになったのは、今シーズン初スタメンのMF岩上だったが、セットプレーやロングスローでボールに絡むシーンが多くて、雰囲気を感じさせるプレーを続けており、期待感はあったが、ゴール前の混戦状態から巧みにシュートチャンスを作って、得意の右足でねじ込んだ。値千金の決勝ゴールとなった。
MF岩上は1年目の2012年は上下動の大きなシーズンだった。開幕スタメンを勝ち取って、開幕から3試合連続ゴールと華々しいスタートを切ったが、その後、怪我で長期離脱することになった。戦列に復帰した後は、スタメンだったり、途中出場だったり、起用方法は定まらなかったが、21試合で5ゴールというのは、まずまずと言えるので、2年目の飛躍が期待されたが、なかなかチャンスを得ることは出来なかった。
したがって、悔しいシーズンになっているが、この選手は、日本人のアタッカーにいないタイプで、大きく飛躍する可能性を秘めた選手である。右足のスペシャリストで、右足から繰り出されるクロスはスピードがあって、球質も優れている。また、シュートもパワフルで、弾丸ミドルを得意としている。湘南の2列目は激戦区であるが、2列目の軸となって、ゴールやアシストを重ねても全くおかしくないポテンシャルを持っている。
■ 6連敗となったヴァンフォーレ一方、2011年以来のJ1復帰を果たした甲府は、4節からの7試合で3勝4分けと勝ち点を重ねたので、まずまずの位置で前半戦を終えることができたが、再開後は3連敗で、トータルでも6連敗となった。これで湘南との差も「1」となったので、7試合負けなしで稼いだ貯金は使い果たしたと言える。「過密日程のときに勝てない。」というあまり良くないパターンにハマっていて、踏ん張りどころである。
気になるのは、極端に出来が悪いわけではないのに、勝ち点を得ることが難しくなっている点である。例えば、前半戦の名古屋のように「中心選手が期待に応えるプレーができなくて、チームとしても戦い方が定まっておらず、その結果として連敗が続いている。」というのであれば、対処は可能と言えるが、今の甲府は、絶不調の選手がいるわけでもなくて、チームがバラバラというわけでもないが、勝ち点につながらない。
実は、こういう場合の方が深刻で、監督としては、できることが限られてくるので、立て直すのは大変である。当然、さらに連敗が続くようだと、「城福監督を解任したらどうか?」という話も出てくると思うが、監督を交代させたら結果が出るようになるかというとその可能性は低い。甲府にとって、監督交代という最後の手段であり、監督交代という選択肢を取らざる得ない状況になったとしたら、残留するのは無理だろう。
当然、新しい監督を連れてくるためには、プラスアルファでお金もかかるので、それならば、選手補強に費やした方が効果的である。したがって、城福監督の立て直しに期待したいところであるが、試合後のサポーターにエキサイトした姿などを見ると冷静さを失っているように感じられる。上位候補と言われたFC東京を率いながら低迷して途中で解任された2010年の様子に似て来たのは、気になるところである。
城福監督は結果が出ていて、チームが乗っているときは素晴らしい監督に見えるが、結果が出なくなって、全体の流れが悪くなると、パニックを起こす傾向にある。チーム状態が悪い時に、引き戻すことができるようになると、「日本でも有数の指導者」と言われるようになると思うが、FC東京のときはうまくいかなかった。今回が2度目の苦境と言えるが、ここからリカバーできるのか。これからの数試合は注目したいところである。
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