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2018年8月

2018年8月31日 (金)

EUを反中国貿易戦線に引き入れたワシントン

2018年8月10日
F. William Engdahl

 最近の、ユンケル欧州委員会委員長とトランプ政権のワシントン貿易関税会談の明らかな成功に、EUの多くの人々が安堵のため息をついているが、現実は、ワシントンが、EU、特にドイツに、貿易と経済の発展における中国との協力へのあらゆる可能性の扉を閉ざすよう、巧みにあやつったように思える。中国経済政策には問題があるものの、最近の進展は、アメリカと、中国に敵対的な日本との、中国発展に反対する同盟を支持して、中国を本拠とするユーラシア経済空間の膨大な可能性に背を向けることにEUが合意したことを示している。これはEU経済の先行きを大きく損ないかねない。

 最近のワシントン-EU会談前の数週間に、当初、EUと中国製品の輸入関税に対する最近の一方的なアメリカ宣言に対する、合法的なWTOや、他の異議申し立てを提示して、北京は共同戦線を模索していた。7月16日の北京での中国-EUサミット前、中国当局は様々なEUの相手方と交渉していた。彼らは、ワシントンに対する共同戦線と引き換えに、EU企業に対して、中国国内市場を開放する大幅な譲歩を進んでしたと言われている。政府公式の新華社通信は、中国とヨーロッパは“協力して保護貿易主義に抵抗すべきだ。中国とヨーロッパ諸国は、最適のパートナーだ”と報じた。“彼らは自由貿易は、世界の経済成長のための強力なエンジンだと固く信じている。”

 中国の新経済シルク・ロードと呼ばれることが多い一帯一路構想の戦略目標の一つは、最終的に、中国貿易を、巨大なEU市場と直接結ぶ輸送インフラの陸-海ネットワークを作ることだ。これまで、ブリュッセルは反対してきたが、個々のEU諸国、特にハンガリー、ギリシャやチェコ共和国などのEUの東部地域は、中国インフラ投資を受け入れようとしていた。ここ数週間、トランプが、EU諸国からのアルミニウムと鉄鋼製品に対する一方的な貿易関税を打ち出し、同時に、ワシントンは中国に対する一連の厳しい関税経済制裁と、予定している更なる威嚇を開始し、ドイツや集団としてのEUとのより大規模な協定の余地が中国には、ほとんどなくなった。ワシントンが中国とEUの両方を同時に標的にしていた事実が、中国が、ワシントンに対抗して、EUと緊密な協力を始められるという素朴な北京の希望をかきたてた。

 中国のハイテクが本当の標的

 アメリカ大統領が、アメリカ-中国貿易赤字の規模に関する果てしない数のメッセージをツイートし、更に2000億ドルの中国からの輸入に新たな関税を課すという威嚇を投稿しているが、実際のアメリカ戦略は、アメリカ通商代表ロバート・ライトハイザーの事務所で、精密に開発されている。レーガン政権時代にさかのぼる年季の入った貿易交渉専門家ライトハイザーは、3月 301条に関するUSTR報告書の起草を監督した。

 ライトハイザーのグループは、2015年、中国が出した「中国製造2025年」政策文書に挙げられている 10の産業分野を標的にしている。この戦争は、貿易ドルを巡るものではなく、主要技術での世界支配を巡るものだ。

 中国は、当然のことながら、その技術基盤を、世界最先端の水準的に強化しようとしているが、主要アメリカ・ハイテク企業に支援されて、ワシントンは、その挑戦を阻止したがっている。関税戦争は、それをするために使われている策略だ。

 興味深い目立つ事実は、いわゆる2016年選挙での、トランプのためと想定されているロシアによる干渉を言い立てるアメリカ諜報界が繰り出すおそまつな声明や非難や文書との対比だ。こうしたアメリカ政府による非難で、ロシアとロシア企業に対する、アメリカの厳しい経済制裁をもたらした主要な容疑は、動機が全く不明な退職したイギリス MI6職員が、ジョン・マケイン上院議員に手渡したうさんくさい、曖昧な文書に基づいていた。アメリカ諜報界のトランプに対する戦いは トランプ-中国戦争とは、全く性格が異なっている。後者はアメリカの党派政治ではなく、アメリカ各組織の戦略的合意なのだ。中国は、アメリカに対し、産業上、同等な立場に上昇することが許されないのだ。

「中国 2025年」は優先項目として、人工知能や量子計算、工作機械やロボット、航空宇宙や、航行装置、ハイテク海運、最新輸送機器、新エネルギーの乗り物、発電装置、農業機器、新素材、(GMOを含む)バイオ医薬品や、先進的医薬を含む十の主要技術分野を挙げている。

 ニューヨークの外交問題評議会は「中国: 2025年」に関する最近の報告で、こう警告した。“「中国製造2025年」による中国の狙いは、ドイツやアメリカ合州国や韓国や日本などのハイテク経済に仲間入りしようというより、その全てに置き換わることだ。”

 第二次世界大戦以来、初めての本格的な産業技術の挑戦の目ざましい高まりに直面して、ワシントン今しようとしていることは、ある意味、未曾有で、往々にして誤解されている理由の一つだ。ズビグニュー・ブレジンスキーが、著作で指摘したように、NATOや他の手段で、両国はワシントンに依存する属国の立場に置かれ続けているため、ドイツと日本は、アメリカ超大国覇権にたいする本当の挑戦者ではない。現在の中国は、明らかに、自らをワシントン属国とは考えていない。しかも、中国が、ロシア、イラン、ASEANや、可能性としては、インドさえも含め、ユーラシアの大半を、緊密な経済協力に引き込みつつある事実が、「中国: 2025年」の挑戦を、ワシントンとウオール街にとって、つぼみのうちに摘み取るべき実存的死活の優先事項にしているのだ。問題はそれが機能しないことだ。中国ほどの大国であっても、自国産業の技術的現代化は、あらゆる国の本分なのだ。

 アメリカとEU対「中国 2025年」

 勃興する中国に乗り越えられつつある恐怖が、ワシントンと、CFRのような主要民間戦略シンクタンクが、中国に対抗するため開発したグローバル共同戦線構築のメッセージなのだ。あるレベルにおいては、それは成果をもたらしつつある。ワシントンの交渉戦術は、明らかに、欧州連合の中でも、最も親密なNATO同盟諸国を制裁し、恫喝して、反中国経済戦線に参加するよう追いやることだった。典型的な、あめとむち手法の変種だ。アメリカ大統領による、EUの鉄鋼と、アルミニウムに経済制裁を課するという恫喝の後、ワシントンはドイツ産業の中核であるヨーロッパの自動車も追加する可能性を言い始めた。トランプは、EUは貿易では敵になったとまでツイートした。会談後、トランプは、アメリカとEUの間には“愛”があるとまでツイートし、ワシントンは明らかに望んでいたものを手にしたのだ。EUは、ワシントンの貿易戦争に反対して中国の側に付くのではなく、中国に反対し、ワシントンにつくことに合意した。古典的なイギリス式勢力均衡地政学だ。

 トランプの経済顧問ラリー・クドローは、フォックス・ビジネスとのインタビューでこの策略を認めこう述べた。“欧州連合とともに協定をまとめるところで、我々は中国に対する共同戦線になる”。更にクドローは、NAFTAがまとまれば、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、メキシコと日本はアメリカ合州国と一体化し、中国を孤立化させることになると述べ、意地の悪い辛辣な言葉を付け足した。“弱体な経済のまま中国は一層孤立化する”

ドイツ政府は素早く行動した。8月1日、ドイツ政府は中国投資家によるドイツ・ハイテク企業、ライフェルト・メタル・スピニングAG買収計画を阻止すると発表した。ドイツの経済技術省は、中国による航空機部品メーカー、コテサ買収提案も見直している。これは政策の大きな転換だ。今年早々、中国自動車メーカー吉利が、ドイツ・ダイムラーの株、9%を保有していると発表し、別の中国企業美的集団が、ドイツの先進的工作機械メーカー、クーカを買収した際、ドイツ政府は干渉するのを拒否していた。

ドイツ-日本のつながり強化

 攻撃的なアメリカ関税戦争に反対するための協力戦線という中国提案を進める代わりに、ドイツとEUを反中国連合に更につなげるべく、EUは、中国に対抗するアジア同盟構築を暗黙のうちに狙った日本と包括的自由貿易条約を締結した。

 間もなく、ドイツのハイコ・マース外務大臣が、ベルリンは日本と詳細不明の“新国際秩序”にむけ“緊密な協力関係”を生み出すための“戦略対話”始めたと発表した。

 5月、中国の李克強首相が東京を訪問し、アメリカ貿易制裁に対し、中国と協力するよう、日本を促し、中国の一帯一路構想、新経済シルク・ロードへの参加を日本に呼びかけた。日本の対応は冷淡で明確で、続いてEUとの自由貿易協定を締結した。2017年以来トランプ政権は、中国の増大しつつある経済的影響力への暗黙の対抗として、日本、インド、オーストラリアとアメリカのアジア“四カ国戦略対話”復活を静かに奨励していた。「四カ国戦略対話」はアジア-太平洋地域において、中国の増大しつつある影響力に対抗しようとして、十年前に安倍首相が始めたものだった。

 グローバル地政学の巨大な構造プレートが移動しており、その結果が大陸漂流なのか、激しい衝突なのか、現時点では明らかではない。ワシントンとしては、そういうものの実現を認める興味は皆無で、中国もロシアも、EUとの関係修復を明白な理由で心から願っているはずだ。2013年の新経済シルク・ロード・グローバル・インフラ大計画と、二年後の「中国製造2025年」を公表したことで、中国は敵、特にワシントンに、日本であれEUであれ、潜在的同盟国の恐怖につけ込む余地を与えたのだ。EUとユーラシアの間での拡大する差異が、分裂に変わるのを防ぐには、中国による高度で開かれた経済外交が必要だ。それはEUにとっても、中国やロシアにとっても損失のはずだ。

 F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書。本記事は“New Eastern Outlook”独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/10/washington-has-lured-eu-into-anti-china-trade-front/

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 きちんと仕事をするジャーナリストもおられるのだ。

 東京新聞 本紙が入手 打ち合わせ「発言録不要」  経産省が文書で指示
「四月以降、政治家の発言や省庁間でのやりとりは一切記録に残すなと指示された」
オーウェルの小説『1984年』顔負けの過激な情報管理。

 “左遷”の森友スクープ記者「記者続けたい」とNHKを退職へ

インタビューを拝聴している梅田正己氏の『日本ナショナリズムの歴史 全4巻』「JCJ賞」を受賞。

日刊IWJガイド「自民党総裁選、緊急事態条項に前のめりな石破茂氏が本日記者会見。IWJは本日中に録画配信する予定です。 #ヤバすぎる緊急事態条項/公明党・山口那津男代表が辺野古新基地建設は『争点になりにくい』と苦し紛れの発言!? IWJは沖縄県知事選関連のコンテンツも充実しています! #玉木より玉城/6月の日米首脳会談でトランプ大統領が安倍総理に『真珠湾を忘れない』と恫喝外交!? 安倍総理の助言は完全無視! #ケチって火炎瓶/書籍編集者で前高文研代表・梅田正己氏の『日本ナショナリズムの歴史 全4巻』が、JCJ賞を受賞!おめでとうございます!/
メルマガ『岩上安身のIWJ特報!』を発行しました!8月の第2弾はトランプ米大統領の中東政策をテーマにした『岩上安身による放送大学 高橋和夫名誉教授インタビュー』です!#シオニズムの正体/IWJの第9期が始まったばかりですが、さっそく財政がピンチに! 8月29日までのご寄付・カンパが目標額の5分の1どまりと非常に厳しいスタートとなっています! どうか緊急のご支援をよろしくお願いいたします!」2018.8.31日号~No.2178号~



2018年8月30日 (木)

アングロシオニストによる対イラン攻撃の選択肢

2018年8月3日
The Saker

[本分析はUnz Review向けに書いたもの]

 ここ数日、インターネットは、対イラン攻撃準備で、アメリカがオーストラリアの支援をせがんでいるというなんともばかげた噂で溢れている。言うまでもなく、記事はオーストラリアが、一体どのようなアメリカに欠けている能力を持っているのかを説明していないが、それはどうでも良い。とは言え記事は余りに多くの場所で取り上げられており(ここと、ここと、ここ)無視できない。そうした記事の一つで、エリック・マーゴリス は、そのようなアメリカ攻撃はどのようなものになりうるかを説明している。彼の文章は丸々引用に値する。

 アングロシオニストによるあり得る対イラン攻撃の概要

    広大で、山が多く、1980年に始まったイラクとの8年間の戦争で、百万人もの戦争死傷者に耐えた国イランに対する、大規模で高くつく地上戦を、アメリカとイスラエルは確実に避けるだろう。あの陰惨な戦争は、イランの新たな人気あるイスラム政権を打倒するため、アメリカとイギリスとクウェートとサウジアラビアがけしかけたものだ。

    ペンタゴンは、イスラエルとサウジアラビアが参加する可能性が極めて高い強力な対イラン空爆戦争を計画している。計画では、イランの戦略的標的。軍用飛行場や海軍基地、兵器と石油、石油や潤滑油貯蔵庫、通信ノード、レーダー、工場、軍司令部、港湾、給水設備、空港、ミサイル基地や革命防衛隊部隊に対する2,300回以上の空爆が必要だ。

    イランの防空は、貧弱から、全く存在しない、まで多岐にわたっている。アメリカ率いる対イラン軍事、商業禁輸措置で、アメリカが2003年に侵略した際のイラク同様、イランは老朽化し衰弱している。兵器としては、イランの70年年代物戦車は、ゆがんでいて、まっすぐ撃てず、古ぼけたイギリスとソ連のAAミサイルは大半使えず、古びたMiGと中国戦闘機は、博物館行きの状態だ。特に、骨董品のアメリカ製F-14トムキャット、中国がコピーした陳腐化したMiG-21や、ごく少数のかろうじて動いているベトナム戦争時代のF-4ファントム。

    航空戦指揮司令部もお粗末だ。イランが保有するあらゆる電子装置は、アメリカによる攻撃の最初の数時間で、焼かれるか、吹き飛ばされる。イランのちっぽけな海軍最初の攻撃で沈没する。アメリカの対イラン戦後計画次第で、イランの石油産業は破壊されるか、一部残される。

    テヘランがしっぺ返しする唯一の方法は、中東にある何ら決定的価値のないアメリカ軍施設への特殊部隊による孤立した攻撃をしかけること、そして、もちろん、中東石油輸出の三分の二が通る狭いホルムズ海峡の封鎖だ。近くのバーレーンに基地があるアメリカ海軍は、この脅威と戦うべく、何十年も演習してきた。

 この説明には多数の興味深い内容があり、各部毎に検討する価値があると思う。

 第一に、アメリカもイスラエルも、対イラン地上戦は望んでいないことで、マーゴリスに同意せざるを得ない。国が大きすぎ、イランは、しっかり準備しており、そのような作戦に必要な軍隊の規模は、帝国が現在召集できるものを遙かに超えている。

 第二に、イランには、アングロシオニストが固く決めた(ミサイルと航空機)攻撃を阻止する手段がないと、マーゴリスが言うのも全く正しい。イランには多少の近代的防空能力があり、攻撃側も多数の損失をこうむるだろうが、この時点で、規模の相違はあまりに大きく、アングロシオニストは、かなり早く制空権を制圧し、何であれ連中が爆撃したがるものを爆撃する機会を得るだろう(詳細は後ほど)。

    [補足: とは言え、イランの防空を評価するのは、単にミサイルと発射装置の数を数えるだけの話ではなく、他にも色々あるのだ。あるロシアの情報源によれば、イランには4基の長距離対空ミサイル S-300PMU-2システム(48Н6Е2 マッハ6,6の迎撃ミサイル)、29基の対空自己推進ミサイル・コンプレックスTor-M1や、Bavar-373バッシブ電子走査アレイ・レーダー(照射、誘導システムが最新の中国エレクトロニクスを使っているのはほぼ確実だ)のようなかなり先進的な対空ミサイル施設や、ロシアや中国やイラン製のかなりの数の早期警戒レーダー・システムがある。こうしたものの中には、高性能の長距離レーダー探知、標的指定Najm-802レーダー(5120の受信・送信モジュールがあり、デシメートル Sレンジで動き、弾道標的や高精度兵器の小さな物体を探知するよう設計されている)のようなシステムや、固定アレイ・レーダーの先進的な早期警戒制御システムのロシアのメートル波レーダー “Nebo-SVU”や、メートル・レンジの早期警戒レーダー“Ghadir”がある。 最も重要なことは、これらのレーダーは全て、イランのネットワーク化されたミサイル防衛システムに統合されている。例えば“ガディール”レーダーは、アメリカ空軍やサウジ王国空軍やイスラエルの戦術戦闘機のみならず、(約1100 km先の)発射直後の弾道ミサイルも探知できる。その結果、西方向に(ペルシャ湾)マルチバンド・レーダー探知施設でのイランの無線部隊駐留によって、イランは高強度ミサイル攻撃に対して防衛する柔軟な梯形防空を準備することができる。とは言え、イランが防空をどれほど強化しようとも、非常に多くのミサイル(新しい高度なAGM-158 JASSM (統合空対地スタンドオフ・ミサイル)や、B-1B爆撃機から発射されるステルス性のスタンドオフ型空中発射ミサイルを含む)が、イランの防空は必然的に、あらゆる大規模攻撃によって圧倒されることを意味している。]

 だから、私は、イラン石油産業は、アメリカ/イスラエルが固く決心した攻撃から守れないというマーゴリスに同意する。実際、イランのインフラ全て攻撃に弱いのだ。

 とは言え、マーゴリスの最後の段落は、イランには信頼に足りる報復措置がないように聞こえるが、私はこれに大いに反対だ。

 例一: ホルムズ海峡におけるイランの能力

 一例を挙げれば、ホルムズ海峡問題は“アメリカ海軍が長年この脅威と戦うべく訓練したもの”より遥かに複雑だ。この狭い海峡経由で輸送するのを事実上不可能にするための非常に多様な選択肢がイランにあるのが現実だ。その選択肢は、機雷から、高速艇攻撃、対艦船ミサイル、沿岸防衛砲台砲撃他と多岐にわたる。

    [補足: ここには大きな危険がある。イスラエルと、あるいは、アメリカは、ホルムズ海峡内のあらゆる船に対する偽旗攻撃を極めて容易に仕掛け、イランのせいにでき、そこで、あらゆるアングロシオニスト諜報機関が、いつもの“大いにあり得る”というあやしい専門用語を言い立て、御覧じろ、帝国はイラン攻撃の口実を得ることになる。]

 実際、この狭い海峡経由での船舶輸送を脅迫する事実だけで、保険会社に、どの船舶にも、保険適用するのを思い止まらせ、それだけで輸送を停止できる可能性がある。それが不十分な場合には、イランは限られた数の機雷をいつでも敷設でき、それだけで十分なのだ(米海軍は機雷除去作業を行おうとすることは可能だが、イラン沖でそうすれば米海軍掃海挺を極端な攻撃の危険に曝すことになる点に留意願いたい)

 マーゴリスは、これに触れていない。

    イランはアラブ諸国からの石油輸出の一部を阻止し、海上保険料を急騰させられるかも知れないが、サウジアラビアと湾岸諸国の主要石油ターミナルを地上軍で攻撃しない限り、大量の石油輸出を阻止できる可能性は少ない。イラン-イラク戦争中、どちら側も相手の石油輸出を完全に阻止することはできなかった。

 しかしながら、この文脈で、イランの能力をひどく過小評価していると私は思う。一例として、イラン潜水艦戦力を見てみよう。

イラン潜水艦戦力は極めて特化したものだ。2018年版のIISSミリタリー・バランスによれば、イランは現在21隻の潜水艦を配備している。

  • 3隻のタレク級ディーゼル・エレクトリック方式潜水艦(ロシアのキロ級Project-877EKM)
  • 1隻のファタ級沿岸潜水艦
  • 16隻のガディール級小型潜水艦
  • 1隻のナハンド級小型潜水艦

 “ディーゼル・エレクトリック方式”と聞くと、大半の人々は古いディーゼル・トラックを思い浮かべて、感銘しない。特に、こうした潜水艦を、うわさの“先進的”攻撃型原子力潜水艦と対照した場合。ところが、潜水艦は、それが活動するよう設計されている環境の中でのみ評価できるので、これは非常に誤った意見だ。海の地形は、普通、三つに分類される。ブルーウォーター(外洋)、グリーンウォーター (大陸棚)と、ブラウンウォーター(沿岸地域)だ。攻撃型原子力潜水艦は、自立性、速度、潜行深度、兵器搭載能力、高度なソナーなどが極めて重要なブルーウォーター環境においてのみ優位なのだ。比較すると、ディーゼル・エレクトリック方式潜水艦は、より遅く、バッテリーを再充電するために浮上する必要があり、典型的により小型で、搭載兵器もより少ないが、グリーンウォーター作戦には、より適している。浅いブラウンウォーターでは、攻撃型原子力潜水艦は決してそのような環境で活動するように設計されていないので、小型潜水艦が君臨する。ホルムズ海峡の環境をざっと見てみよう。

 オマーン湾とアラビア海奥深く入った際のブラウンウォーターとグリーンウォーター型の環境で、極めて浅かったり、浅い海の興味深い組み合わせが典型的だ。これを念頭に置いて、どのような種類の潜水艦部隊をイランが入手/開発したか見よう。

 ブラウンウォーター作戦(ペルシャ湾とホルムズ海峡)用に、イランは比較的大規模で、有力な小型潜水艦艦隊がある。グリーンウォーター作戦(オマーン湾とアラビア海)用に、イランは三隻の手ごわいタレク/キロ級潜水艦がある(自立性、速度、兵器やソナーが、攻撃型原子力潜水艦よりずっと劣るとは言え、限定されたブルーウォーター作戦さえ可能だ)。“ディーゼル・エレクトリック方式”と同様、“小型”潜水艦という言葉で、我々は、おもちやか、良くて、せいぜい麻薬を密輸するのに使える第三世界の原始的ボロ船を思い浮かべる。ところが実際は、イラン“小型潜水艦”は、キロ級と同じ、重量級の魚雷(533 mm)を、より少数ながらも搭載可能だ。これは、つまり同じミサイルや機雷も搭載できることを意味している。実際、イランのガディール級“小型”潜水艦は、ペルシャ湾においては、最新型の攻撃型原子力潜水艦より、遥かに手ごわい脅威なのだと私は言いたい。

    [補足:典型的な(航空母艦を中心とする)外洋海軍を擁する覇権大国として、グリーンウォーター(沿岸)能力は必要ないと考えたため、アメリカは何年も前に、ディーゼル・エレクトリック方式潜水艦の建造を停止した。他の国々(ロシア、ドイツ、スウェーデン他)は、これらの潜水艦が、ずっと安価で、沿岸防衛作戦に、より適しているのを正しく理解しているので、ディーゼル・エレクトリック方式潜水艦計画(いわゆる“非大気依存推進” - AIP - のものを含め)を積極的に推進している。ディーゼル・エレクトリック方式潜水艦を放棄したのは、アメリカ軍計画者連中による大失敗の一つだ。この話題のこの記事をお読み願いたい。新しい沿海域戦闘艦(LCS)と、ズムウォルト級誘導ミサイル駆逐艦が、このグリーンと、ブラウン作戦能力の欠如を部分的に緩和するはずだったが、どちらも大失敗となった]

 
ガディール級潜水艦

 ロシアのキロ級潜水艦は、最も静かながら、重武装の潜水艦で、イランに対するアメリカ海軍作戦に対する主要な脅威となり得る。ところが、米海軍は彼らを24時間年中無休で追跡しており、キロ級潜水艦は、あらゆるアングロシオニスト攻撃の最初に第一の標的(港内であれ、洋上であれ)になるはずなのは確実だ。だが米海軍は、ずっと小型(で無数の)イラン小型潜水艦を追跡し続けることが可能だろうか? 私もわからないが、これらの比較的小型の潜水艦は隠れるのが実に容易なので、そうはゆくまいと個人的に思っている。このガディ級潜水艦を写真をご覧になって、それを隠したり、代案として、実物そっくりのデコイを作ったりするのが、いかに容易か想像願いたい。ところが、この小型潜水艦の魚雷は、ペルシャ湾内のあらゆる船を、一発で沈没させられるのだ。

 アメリカは確実に、これらの脅威を見つけ出し、破壊しようとする多数の極めて有力な偵察・諜報能力を保有しているが、イランは何十年もこのシナリオに準備をしており、彼らはロシアの軍事用語でいうマスキロフカの真の達人であることも分かっている。偽装、隠匿、欺瞞と、誤った方向への誘導の組み合わせだ。実際、レバノンのヒズボラにこの術を訓練したのはイランで、イスラエルが、自信満々、軽い足どりで、南レバノンを侵攻した際、イスラエルのあらゆる偵察/諜報能力をもってしても、比較的素朴な(技術的に言って)ヒズボラ・ミサイル能力にさえ対処することができないことを思い知らされたのを我々は良く知っている。散々愛国心を煽りたてようとも、もしイランがホルムズ海峡を封鎖しようと決めれば、アメリカに残された唯一の選択肢は、イランの岸に部隊を上陸させ、限定的ではあっても、依然極めて危険な地上攻撃作戦を行うしかないのが真実だ。この時点で、この狭い隘路で非常に多くの戦闘が行われ、誰もそこを船で通そうと考える人はいるまいから、この反撃が成功かどうかは重要ではない。

 イランが出来ることと言えば“中東のたいした重要性のないアメリカ軍施設に対する、特殊部隊による個別攻撃“をしかけることだろうというマーゴリスも間違っていると思う。一つの現実的なイランの選択肢は、アメリカの標的(中東にはたっぷりある)を様々なミサイルで攻撃することだろう。しかも、イランは、アメリカ同盟諸国(イスラエルやサウジ空軍)や権益 (サウジアラビア油田)に向けて、ミサイルを発射することが可能だ。

 二つ目の例: イランのミサイル能力

 CSISの筆者が言うこと全てを信じるつもりはないが(控え目に言っても、彼らは非常に偏向している)、このページに、現在のイラン・ミサイル能力のかなり良い要約を掲載している。

同じページに、CSISは現在と開発済イラン・ミサイルのより詳細リストを載せている。

(このWikipediaページで、CSISのイラン・ミサイル情報と比較することができる。)

 重要な疑問は、イランに有力なミサイルがあるか否かではなく、一体何発開発されたのかだ。明らかかつ、当然の理由で、イランは意図的に、非常にあいまいにしているので、誰もこれを本当に知ってはいない。だが、ヒズボラの例から判断して、イランは、これらのミサイルも十分大量な数保有しており、極めて信頼できる抑止能力になっているのは確実だ。そのようなミサイル兵器は、強力な戦争抑止力であるのみならず、極めて有用な戦闘用でもあると言いたい。地域のアメリカ基地(特に空軍基地や海軍施設)が断続的なイラン・ミサイル攻撃にさらされたら一体何が起きるか想像できるだろうか? 第一次湾岸戦争中のイスラエルの経験から、更には最近のサウジアラビアのフーシ派ミサイルでの経験から判断して、アメリカのパトリオットは、イラン・ミサイルに対する防衛として、役に立たないのはほぼ確実だ。

 確かに、アメリカが第一次湾岸戦争中に行い、イスラエルが2006年に行ったように、アングロシオニストはイラン・ミサイル基地の大掛かりな捜索を開始するだろうが、最近のあらゆる戦争から判断して、こうした捜索は十分成功することはなく、イランはミサイル攻撃をかなり長期間継続することができるだろう。たとえば、地域のアメリカ基地に対する2-3日に一発のミサイル攻撃が、作戦や士気にどのように影響するかご想像願いたい!

 現実性チェック:アメリカは中東中で攻撃されやすい

 以上、私は二つの具体的な能力(潜水艦とミサイル)だけ挙げたが、イランの小型高速モーターボートの群れや、電子戦争能力や、サイバー戦争についても、同様な分析が可能だろう。しかし、イランの最も手ごわい資産は、“大魔王”の攻撃に何十年にもわたって備えていて、自らと、自国を(おそらく不可避の) アングロシオニスト攻撃に対して守るため様々な非対称的選択肢を開発している極めて教養があり、高度の教育を受けた国民だ。

 中東のアメリカ軍施設を示す少なくとも一枚の地図をおそらくご覧になっているだろう(もしご覧でなければ、ここか、ここか、ここをご覧願いたい)。率直に言って、イランがアメリカ軍と基地に包囲されている事実はイランにとって重大な脅威だ。だがその逆も事実だ。これらアメリカ軍施設全てが標的で、極めて脆弱なことが多いのだ。しかも、こうしたどの標的の攻撃にも、イランは地域の代理部隊/同盟者を利用可能だ。このファクト・シートをダウンロードし、リストにあるそれぞれの施設が、イランによる攻撃の標的になる可能性を考えながら読まれるよう強くお勧めする。

 こうした議論に対して、私が良く聞くいつもの答えは、もしイランが実際に、あえてミサイルを使用したり、地域のアメリカ基地を攻撃したりすれば、アメリカによる報復は実に恐ろしいもののはずだ。ところが、エリック・マーゴリスによれば、アメリカ-イスラエルのイラン攻撃の当初の、そして主目的は“イランのインフラ、通信と輸送(石油を含め)を完全に破壊し、この重要な人口8000万人の国をマヒさせ、革命前の時代に戻すことだ”。ここで簡単な質問をさせて頂きたい。もしマーゴリスが正しければ - 私は個人的に彼は正しいと思っているが - すると、その結果は、イランが反撃した場合、アメリカが計画していると思われる“実に恐ろしい”報復と一体どう違うのだろう?  違う言い方をすれば - もしイランが、アングロシオニストが自分たちの国を荒廃させたがっていることを理解した場合、(たとえば、2006年に、イスラエルがレバノンに対してしたように)、一体どのような更なる可能なエスカレーションが、彼らが使える手段で反撃するのを防げるのだろう?

 この疑問に答えるには、アングロシオニストにとっての“イラン問題”の本質を良く見る必要がある。

 アングロシオニストによるイラン攻撃の本当の目的

 何よりまず、イランに何らかの軍用核計画がある証拠は皆無だ。イスラエルが長年これを世界に向かって叫んできた事実があるとて、真実になるわけではない。イランには、いかなる種類の核兵器を開発する論理的な理由など全くないはずであることを強く示唆する常識も加えたい。この点を議論する時間と余地がない(過去、何度も議論してきた)ので、イランは“核兵器計画を中止し”そのままになっているという国家情報評価の結論に触れるだけにしたい。

    [補足: イランにかつて核兵器計画があったとは思わないが、それは重要ではない。たとえもしあったとしても、そのような能力を開発するため何らかの初期的措置を講じたが、あきらめた他の多くの国と同じ水準になるだけだ。重要なのは、イランには現在、軍事核開発計画がないというのが、アメリカの公式の立場だ。]

 イランの本当の問題は実に単純だ。イランは下記に当てはまる世界で唯一の国なのだ。

  1. イスラム教で、サウジアラビア/ダーイシュ/ISIS/アルカイダ/他のタクフィール主義イデオロギーと、連中が推進するテロに対する戦いを率いている
  2. あからさまな反シオニストで、反帝国主義で、保守的な宗教的価値観と進歩的社会政策を組み合わせている
  3. 政治的、経済的、軍事的に成功していて、地域におけるイスラエルによる権力独占を脅かしている

こうした特徴のいずれも、それ自体、帝国の観点からすれば、その政府と、あえてそういうものを支持する国民を抹殺するという冷酷な決断によって対処されるに十分値する犯罪的思想で、全くの憎悪、恐怖対象のゆゆしき問題なのだ。この三つを組み合わせれば、イランが、アングロシオニストによって、それほど憎悪されているのも不思議ではない。

 イラン核計画に関する作り話丸ごと、嫌がらせと、あり得る対イラン攻撃の口実にすぎない。現実には、アングロシオニストの狙いはイランの武装解除でなく、まさにマーゴリスが言う通りだ。この“反抗的な”国と国民を爆撃して“革命前の時代に戻す”のだ。

 重要なことがある。イランはそれを完全に理解しているのだ。明らかな結論はこうだ。もしアングロシオニスト攻撃の目的が、イランを爆撃し、革命前の時代に戻すことであれば、イランが自制して、できる限り最大限の抵抗をせずにいる理由などあるだろうか?

 アメリカによる報復核攻撃脅威のためだろうか?

 アメリカにる核攻撃の選択肢 - 現実には、たいした選択肢はない

 ここでもまた、核兵器使用は敵に即座に戦闘をあきらめさせ、無条件降伏させるある種魔法の万能薬だと考えるだけでなく、文脈を考える必要がある。これは真実からほど遠いの。

 そもそも核兵器は、引き合う標的に対して使用された際にのみ効果的だ。アメリカが日本でしたように一般国民を殺戮するのは、目的が敵国軍を打ち破ることである場合、全く役にたたない。敵の“貴重な”標的を核攻撃することは、とことん戦うという敵の決意を強めることにしかならない。第一次湾岸戦争の際と同様、アメリカは既に、イラン国内で攻撃したいものの典型的な標的リストを作成していると私は確信している。主要政府庁舎や施設や、多数の軍隊や施設の組み合わせだ。ところが、大半の場合、そうしたものは通常(非核)兵器で破壊可能なのだ。しかもイランは何十年もこのシナリオにそなえて来たのだから(1979年革命以来、アメリカは常にイランに狙いを定めてきた)、あらゆる平時の施設は、戦時に備えて複製されているのはまず確実だ。だから多くの目立つ標的が破壊されても、その戦時用の複製施設が瞬時に受け継ぐだろう。地中深くにある標的を破壊するのに核兵器が使えると人は考えるだろうし、これは部分的には正しいが、一部の標的は(核爆発によってさえ)破壊するには深すぎる場所に建設されており、他の施設は何カ所にも複製されている(たとえば、平時の軍司令部、1箇所に対し、4、5、あるいは6箇所もの隠され、深く埋められたものがあるはずだ)。そのそれぞれを狙うには、更なる核兵器使用が必要となり、それはそのような核攻撃作戦の政治的代償という疑問を提起する。

 政治的意味で、アメリカが、誰であれ敵に核兵器を使用した日、アメリカは、そこから決して覇権が回復できない政治的自殺をすることになるのだ。大多数のアメリカ人は“勝てば官軍”で、“国連などどうでもいい”と考えるかも知れないが、世界の他の国々にとっては、核兵器先制使用(報復の反撃とは対照的に)思いも寄らない、実に不快なもので、犯罪で、特に違法な侵略行為だ(国連安全保障理事会は、決してアメリカのイラン攻撃を認めるまい)。たとえホワイト・ハウスが“核武装したアヤトラ”に対し“世界を守るために”核を使用“せざるを得なかった”と宣言しても、世界の圧倒的多数は、大憤激で対応するだろう(特にイラク大量破壊兵器という作り話の後では!)。しかも、どのようなアメリカ核攻撃も、イランを、悪役から被害者へと、瞬時に変えるだろう。アメリカにとって何の大きな利点ももたらさない標的に核兵器を使用するためだけに、そのような途方もない政治的代償を支払うと、アメリカが一体なぜ決断するだろう? 正常な状況の下であれば、この種の挑発されたわけではない核兵器使用は、全く想像もできず、不合理だと私は思う。ところが、アメリカの現在の政治的文脈では、実際、私を震え上がらせる可能性があるのだ。

 トランプはネオコンにとって“使い捨て大統領”なのか?

 ネオコンはトランプを憎悪しているが、彼を抑え込んでもいる。この種の“抑え込み”の最高の例は、信じがたいほど愚かな行動ながら、イスラエル・ロビーが要求していた大使館をエルサレムに移転するというアメリカの決定だ。アメリカによる包括的共同作業計画の破棄や、さらに言えば、現在のイランに対する一連の威嚇もそうだ。ネオコンには、こんな感じの基本戦略があるように思える。“我々はトランプと、彼が代表するあらゆるものを憎悪しているが、我々は彼を支配してもいる。正気のアメリカ大統領なら決してしないだろう、あらゆる狂ったことをするのに彼を利用し、そうした狂った決定に対するまずい余波を活用して、それをすべてトランプのせいにしてやろう。そうすれば我々は望むこと全てを得ることができ、その過程で、適切な時期にトランプを潰し、“我々のタマ”の一人に置き換える作業に取りかかるのだ”。繰り返すが、イラン攻撃の本当の狙いは、イランを爆撃して、革命以前の時代に戻し、アングロシオニスト帝国に大胆にも反抗する“間違った”政権を支持したかどで、イラン国民を懲罰することのはずだ。ネオコンは、イスラエルの最も重要な政治目標の一つである、イランを廃墟にすることを達成しながら、混乱と政治的大惨事を起こしたかどで非難できる“使い捨て大統領”としてトランプを利用できるだろう。ネオコンにとって、これはどうころんでも有利な状況だ。もしことがうまく行けば(いくらその可能性が低かろうとも)、連中は全てを自分の手柄にして、トランプを操り人形のように支配し続けられるし、もしことがうまくゆかなかったら、イランは廃墟になり、トランプは愚かで狂った戦争のかどで非難され、クリントン集団は、権力の座にもどる容易ができているだろう。

 そういうシナリオで、最大の敗者は、もちろんイラン国民だろう。だがアメリカ軍とて順調というわけに行かない。一例をあげれば、イランを“荒廃させる”だけという計画には、アメリカ軍は長期間紛争を好んでいない(アフガニスタンとイラクは十分酷い)のだが、実行可能な出口戦略、特に短期的なものがない。しかも、アメリカが破壊できる大半のものを破壊してしまえば、主導権はイランの手にわたり、時間もイランに味方する。2006年、イスラエルは、わずか33日後に打ち切らざるを得なかったが、勝利を宣言して、撤退するのに、アメリカにはどれだけ必要だろう? もし戦争が、たとえばサウジアラビアやイラクやシリアに広がったら、アメリカに撤退する選択肢があるのだろうか? イスラエルはどうだろう - ミサイルがイスラエルに命中し始めたら(イラン・ミサイルのみならず、おそらくはレバノンからのヒズボラ・ミサイルも!)彼らに一体どんな選択肢があるのだろう?

 対イラン軍事攻撃は“私が耳にしたものの中で最も愚かしい”と述べた元モサド長官メイール・ダガンは全く正しかった。悲しいかな、ネオコンは決して聡明だったことはなく、連中は愚劣なことをしでかす可能性が極めて高い。アメリカで誰かが連中を止める方法を見つけ出し、人の道に外れた、残虐で無用で、可能性として極めて危険な戦争を回避するよう祈るばかりだ。

The Saker

記事原文のurl:https://thesaker.is/anglozionist-attack-options-against-iran/

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 大本営広報部の昼番組、最近全く見なくなった。(聞かなくなった。)何を扱っているのか全く興味がなくなった。夜も、トップダウンで方針転換と話題の番組も全く見なくなった。洗脳におつきあいする時間はない。

日刊IWJガイド「本日午前10時より、『福島第一原発・汚染水タンク撤去後の放射性物質トリチウムを含む処理水の取扱いに関する説明・公聴会(富岡会場)』をライブ配信!/本日午後5時より『7.28草の実アカデミー「安倍首相・重大スキャンダル~安倍晋三氏は、本当に選挙妨害を暴力団関係者に発注したのか」!? ―講師:山岡俊介氏、寺澤有氏』を再配信! #ケチって火炎瓶/本日午後8時より2016年11月17日収録、岩上さんによる『関東大震災朝鮮人虐殺の記録: 東京地区別1100の証言』著者で『ほうせんか』理事・西崎雅夫氏インタビュー前編を再配信!/今日、メルマガ『岩上安身のIWJ特報!』を発行します!8月号は『「市民レベルの追及はやり尽くした」財務省強制捜査と昭恵総理夫人の証人喚問を!岩上安身による木村真豊中市議インタビュー(後編)』および『イラン核合意から離脱し、エルサレムに大使館を移したトランプ政権の「異常」な中東政策は、キリスト教福音派の預言成就願望とユダヤロビーに答えたもの!? 岩上安身による放送大学 高橋和夫名誉教授インタビュー』です!/米国でリベラル派からも英雄視された共和党のジョン・マケイン上院議員が死去!『アメリカでは人類に対する犯罪に関与すると英雄になれる』!?/佐賀県が地元漁協の頭越しに20年100億円でオスプレイ配備の受け入れ表明! この裏には山口祥義知事再選への思惑か!? IWJは防衛省に直撃取材!/IWJの第9期が始まったばかりですが、さっそくピンチに! 8月29日までのご寄付・カンパが目標額の5分の1どまりと非常に厳しいスタートとなっています! どうか緊急のご支援をよろしくお願いいたします!」2018.8.30日号~No.2177号~

2018年8月29日 (水)

欧米はなぜ『中国製造2025』を恐れるのか

2018年8月3日
F. William Engdahl

 トランプ政権は、“メイド・イン・チャイナ2025”あるいはより簡単に『中国製造2025』という中国産業転換戦略を、中華人民共和国に対する現在の貿易戦争攻勢の明確な標的にした。ドイツを含め欧米の主要工業諸国は、もっともながら驚いた。彼らは十年遅れなだけで、いまだに愚かにも、新経済シルク・ロード、つまり一帯一路構想を含む主要な開発で、中国への協力を拒否している。中国が一体何をしているかをここで手短にお示ししたい。今後の記事で、中国産業戦略のいくつかの基本的欠点を論じる予定だ。ここでは、『中国製造2025』が欧米産業支配に一体何を伝えたかを理解することが重要だ。

 政権を握ると、習近平中国主席は、中国から始まり、アジアやユーラシアを横切り、中東や欧州連合に至る、新しいインフラ・プロジェクトの包括的ネットワーク、現在の一帯一路構想提案へと動いた。2013年、カザフスタンでの会合で、習主席は一帯一路構想を提案した。更に、2015年、その職について二年後、習近平は、包括的国家産業政策『中国製造2025』を承認した。「中国 2025年」は、ロバート・ゼーリックの下で、世界銀行とアメリカと共に作成された以前の文書を置き換えるものだ。

 2008年以来、無数の訪中と中国での議論を経る中で直接見聞きしたことから私が高く評価するようになった一つの特徴は、並外れた決意、国家戦略合意がまとまった時に、中国各機関と国民がそれを実現するための、実に断固とした決意だ。世界で最も貧しい農民経済の一つから世界最大の工業生産国に、急いでなろうとする際、には間違いもあった。品質管理は往々にして、二の次だった。とは言え、1979年の鄧による“中国独自の社会主義”政策変換以来、一歩ずつ中国は文字通り世界の工場として登場した。今に至るまで、VWやGMのビュイック、iPhonesやMacBooksなどの欧米多国籍企業や、他の無数の製品を、製造認可を得て、欧米多国籍企業のために製造している。

 “中国製造業の活性化”

 今、中国は、それを変えつつある。1952年以降、日本がしたように、更に後に韓国が日本の例に習ったように、またより関連性がある1871年後のドイツのように、中国は彼らが“中国製造業の活性化”と呼ぶものを推進している。これは言い換えれば、Appleなどの巨大外国企業のための部品組み立て工場であり続けるのではなく、中国は自国製AppleやBMWやG5を開発するつもりなのだ。彼らは、彼ら自身の世界トップレベル産業開発の新たな段階を開始したのだ。今や、「中国 2025年」に書いてある通り、中国の産業も、それを支援する政府機関も、“中国製から、中国創造へ、中国の速度から、中国の品質へ、中国製品から、中国ブランドへの転換中”なのだ。「中国 2025年」の広範な概念は、一部の人々が第4次産業革命と呼んでいるドイツの“Industry 4.0”戦略を手本にしている。それは人工知能、インターネット・オブ・シングスIOT、機械学習、クラウド・システム、サイバー・セキュリティー、適応ロボットなどの先進的な主要技術を活用して、組織のビジネスプロセスに根本的な変革を引き起こすことを狙っている。中国は、現在、そのような概念を、中国の将来の経済的発展における国家の戦略的優先事項にしているのだ。これは些細なことではない。トランプの顧問連中が、貿易戦争行為で、依然、アメリカ製チップや、他の機微な技術に依存している、中国の巨大通信企業、ファーウェイ華為や、ZTEテレコミュニケーションズなどの、主要な脆弱性や、欧米技術へのリンクをまさに標的にしている理由はそこにある。

 ‘脱工業化’ アメリカ

 1970年代の初めから アメリカの主要多国籍企業には、低賃金労働、低コストを求めて、製造を海外に移転するという意図的戦略があった。アメリカ・シンクタンクや雑誌は、欧米が“脱工業化時代”に入ったという馬鹿げた考えを称賛し、鉄鋼や自動車などの“汚れる”製造業雇用の代わりに、将来、サービス経済という涅槃を約束した。現実には、アメリカ製造基盤の海外移転だった。

 特に1990年代、WTO加盟交渉で、欧米産業“クラブ”に参加するための中国の交渉から始まって、アメリカ大企業や銀行家たちが、世界で最も人口が多く低賃金の国の一つ中国に殺到した。30年以上、GEからナイキからAppleに至るまでのアメリカ企業が、この中国生産に基づいて膨大な利益を積み上げた事実を、今ワシントンは都合よく無視している。

 中国はこの外国による投資を、世界最大の巨大産業国を構築するのに利用した。とはいえ彼が言う通り、もし中国が、欧米や日本の多国籍企業のための単なるネジ回し組み立てではなく、“世界的競合国”になるつもりであれば、急務は本格的転換だ。『中国製造2025』の公式前書きにある通り“中国製造業は新たな課題に直面している。資源や環境の制限が増し、労賃と製造材料経費は上昇し、投資と輸出の成長は鈍化しつつあり、拡大が駆動力である資源と集中的発展というモデルは継続不可能だ。

 我々は即座に開発構造を調整し、開発品質を向上させなければならない。製造業は新たな中国経済を駆動するエンジンなのだ。”

 政策文書が正しく指摘している通り“18世紀中期の産業文明開始以来、世界列強の盛衰で、再三証明されているように、強力な製造業無しに、国家繁栄はあり得ない。”彼らが導き出した結論は“国際的に競争力のある製造業の構築が、中国が、その力を強化し、国家の安全を守り、世界大国となるための唯一の方法だ。”

 中国国務院の政策計画は、3D印刷、クラウド・コンピューティング、ビッグデータ、バイオエンジニアリングや、新素材、サイバーと実際のシステムに基づく工場のような知的製造を含む発展で、欧米巨大企業が製造を革命的に変化させた2008年金融危機後のグローバル製造の大規模転換を正しく指摘している。これこそが「中国 2025年」の狙いであり、公式政策文書が述べている通り“新たな競争環境の中で、製造で優位な立場を確保する”ことなのだ。

 中国の現在の製造能力について彼らは率直だ。“中国製造業は巨大だが、まだ強くはない。独自のイノベーション能力は薄弱で、主要技術や先進的機器についての外部依存度は高い。企業率いる製造イノベーション・システムは、まだ完成していない。製品品質は高くなく、世界で有名な中国ブランドはわずかだ。資源とエネルギー効率は低いままで、環境汚染は深刻だ。産業構造も、産業サービスも未熟のままだ。”

 北京は現在の課題をこう記述している。彼らは準植民地的な外国企業のための組み立て工業基地のままでいるつもりはない。彼らは今世界に通用する工業的競争相手として競合するための自国版、中国製を作ろうとしている。これが欧米中で警報を鳴らしているのだ。

 三つのステップ

 三つの明確な段階を詳細に書いている。2025年まで、2035年まで、そして2049年の中華人民共和国中国建国百周年。「中国2025年」着手から十年後の2025年までに、中国は“主要製造大国”となる計画をしている。この計画のために、中国は、製造能力を強化し、製造のデジタル化を高め、中核技術を修得し、中国が既に世界的リーダーである高速鉄道や他の分野で、製造品質も高めながら競争力の高いものになるのだ。エネルギー利用や、汚染物質レベルも先進工業国の水準に達する。

 2035年までの、ステップ2では、中国製造業は“世界の工業大国諸国の中で中級レベル”に達し、イノベーション能力も大いに強化し、“全体的な競争力を大いに強化して”重要なブレークスルーをなし遂げる。

 更に、ステップ3で、建国百周年の2049年までに、中国は“世界の製造大国中のリーダーになる。中国は、イノベーションを主導する能力を有し、主要製造分野で競争上の優位性を持ち、先進的技術や産業システムを開発する。”

 しかも彼らは本気だ。38ページの青写真は、この国家的優先事項を実現するために専念する支援機関や資金調達組織の複合体を説明している。四十年以上、中国のエリートたちは、アメリカやヨーロッパ最高のエンジニアリングや科学の大学に息子や娘を留学させてきた。今科学やITやエンジニアリングで博士号を取得した卒業生が、現在アメリカやEUで見られる何よりも遥かに大きな大規模産業転換が約束されている中国に帰国しつつある。

 国は、中国 2025年を実現させるための支援体制を構築中だ。それには、研究支援中国科学技術計画による、優先度の高い研究の支援も含まれている。政府、製造、教育、研究と経営の間での“イノベーション連合”構築。更に“次世代IT、知的製造、3D製造、新素材や生物学的医薬品”などの主要分野で、基本的研究と訓練のための産業技術研究基地を作り出しつつある。

 2020年までに、15のそのような産業技術研究基地ができ、2025年までには、国中に40のそうしたセンターができる。これらのセンターは、産業転換の主要部品“高性能の、デジタル制御の工作機械、奥行き認知や、自動意志決定やオートメーション機能のある産業ロボットや3D製造装置”などを開発する予定だ

 国家計画にある通り“2025年までに、主要な製造分野は、完全にデジタル化されよう。実証試験プロジェクトの運用コストは50%減少する。生産サイクルは50%減少し 欠陥製品の率は50%減少する。”しかも転換丸ごと、中国の野心的な新シルク・ロード、一帯一路構想の発展とつながっている。

 要するに、中国は、北アメリカやヨーロッパに再輸出する欧米企業のための組み立てから、“中国製”自国製品を輸出するよう転換しようと本気なのだ。

 ワシントンの基本的地政学は、20年前、アメリカが唯一の超大国として揺るぎなかった頃、故ズビグニュー・ブレジンスキーがはっきり認めていた通り、ユーラシアの経済的挑戦の勃興を阻止することだ。彼はこう書いていた。“ユーラシアを支配し、アメリカにも挑戦するようなユーラシアの挑戦者を決して出現させないことが肝要だ。”

 1997年に、ブレジンスキーは著書『ブレジンスキーの世界はこう動く(原題Grand Chess Board)』でこう書いた。“ユーラシアを支配する大国は、世界の三つの最も進んだ、経済的に生産的な地域の二つを支配することになる… ユーラシアの支配は、ほぼ自動的に、アフリカの服従を意味し、西半球とオセアニア(オーストラリア)を地政学的に、世界の中心大陸に対する周辺にするだろう。世界の人々の約75パーセントがユーラシアで暮らしており、事業であれ、その地下であれ、世界の物理的な富の大半もそこにある。ユーラシアは世界で既知のエネルギー資源の約四分の三を占めている。”

 現在のワシントン戦略は、皮肉にも、過去十年間の不手際なアメリカ地政学の結果である中国とロシアとイラン間の協力強化と、特に中国製造業の偉大な産業“活性化”の両方を標的にすることだ。問題は『中国製造2025』が、将来の生存のための中国戦略のまさに基盤であることだ。北京は、これを選択肢ではなく、計画として考えているのだ。

 F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の政治学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書。本記事はオンライン誌“New Eastern Outlook”独占。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/03/why-west-fears-made-in-china-2025/

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 「#ケチって火炎瓶」という言葉をネット掲示版で最近良く見るが、意味がわからずにいた。何のことはない、暴力団に対立候補への中傷ビラまきを頼んでおいて、謝礼をケチって、火炎瓶を投げ込まれた事件のこと。ヨイショ本が出ているというが、読む人の気がしれない。幼稚園学芸会の水準にもおとる茶番以外に知るべきことは山ほどあるだろう。

 たとえば、下記のインタビュー。

日刊IWJガイド「今日午後7時より、『「サタンの国」日本の役割は「メシヤが再臨した国」韓国に貢ぐこと!? 日本の「保守」とはズブズブの関係!? 「多国籍企業」のような宗教組織 統一教会 岩上安身による北海道大学大学院文学研究科・文学部 櫻井義秀教授インタビュー』を録画配信します! #ヤバすぎる緊急事態条項/<昨日の岩上さんのインタビュー>日清・日露戦争で蒔き尽くされた近代日本〈失敗〉の種は今なお増殖を続けている!? ~岩上さんが明治大学・山田朗教授にインタビュー #ヤバすぎる緊急事態条項 #関東大震災 #朝鮮人虐殺 #明治150年/
最高検が袴田事件の再審請求棄却を求める意見書を提出! 袴田巖氏の再収監にまで言及する非情! 弁護団は10月メドに、再審開始決定のやり直しを求める補充書の準備急ぐ!/築地問題は『無謀の上に無謀を重ねる都の移転計画と、卸売市場政策の国による「改悪」』と中澤氏が喝破! 本間氏は「我々のために役割を果たしてくれる科学者を、どんどんつくっていく必要がある」と強調!!? 8.28築地市場の豊洲市場移転に伴う食の安全・安心について考える学習会/
火薬・核兵器に次ぐ第三の軍事革命と呼ばれるAI兵器『キラーロボット』の規制のための国際会議が開催! 通常兵器では米国の圧倒的優位が揺るがない中、AI技術ではまだ差が小さいので、各国は今が勝負時と見ている!? 片や川崎市の公営施設「とどろきアリーナ」で、イスラエルの武器見本市が本日開催!/
IWJの第9期が始まったばかりですが、さっそくピンチに! 8月23日までのご寄付・カンパが目標額の5分の1どまりと非常に厳しいスタートとなっています! どうか緊急のご支援をよろしくお願いいたします!/【動画班からお知らせ】9月1日(土)より地方チャンネルの中継が『ユーストリーム』から『ツイキャス』に替わります!(一部地域では現在でもツイキャスで中継をおこなっています)」2018.8.29日号~No.2176号~

2018年8月28日 (火)

売女マスコミの際限のない偽善

2018年8月27日

Paul Craig Roberts

 リベラル派が戦争屋ジョン・マケインを英雄にしようとしていると、ケイトリン・ジョンストンが警告している。https://caitlinjohnstone.com/2018/08/24/do-not-let-them-make-a-saint-of-this-asshole/

 NPRは、午前中ずっと、ワシントンDCとアリゾナで国葬が行われる戦争屋マケインの追悼番組だ。リベラルのチャールズ・シューマー民主党議員は、リチャード・ラッセルにちなんで命名された上院会館を、軍安保複合体のポン引きで、ソ連やサンディニスタやリビアに対し、ワシントンがけしかけ、攻撃させることができる、あらゆるテロ集団を支持していたマケインにちなんで、名称を変更したがっている。https://consortiumnews.com/2018/08/27/the-other-side-of-john-mccain/

 マケインが北ベトナム捕虜から、英雄になったことには、彼は北ベトナムに協力したと主張する他の捕虜たちが異議を唱えている。

 208人のアメリカ海軍死傷者をもたらしたイスラエルによるアメリカ艦船リバティー号攻撃を隠蔽したのは、ジョン・マケインの父親ジョン・マケイン大将だった。本物のアメリカ海軍大将なら、アメリカ軍人の命を犠牲にして、恥ずべき隠蔽工作に加わる前に辞任しているはずだと、海軍作戦部長および統合参謀本部議長をつとめたトーマス・モーラー大将は私に言った。

 アメリカで、英雄になる方法は、戦争、さらなる戦争を支持して立ち上がることだ。これを足場に、ジョン・マケインは英雄なのだ。

 NPRが今日絶えず繰り返しているもう一つのニュースは、ラカイン州のイスラム教徒の扱い方が人類に対する犯罪で、ミャンマー軍幹部が有罪だという国連報告だ。700,000人のイスラム教徒が、ミャンマーから逃れたとされている。

 この話は真実で、中国との親密な関係でワシントンを怒らせたミャンマー政府に対し画策された、単なるワシントン・プロパガンダではないとしよう。ミャンマーでのイスラム教徒に対する残虐行為が、21世紀に入って、七カ国丸ごと、あるいは一部を破壊し、イスラム教徒を何百万人も強制退去させ、“ヨーロッパ多様化”避難させている、イスラム教徒に対するワシントンの残虐行為と、一体どうして比較されるのだろう?

 ミャンマーによる残虐行為が、一体なぜイスラエルによるパレスチナ人大量虐殺と比較されるのだろう?

 ミャンマーによる残虐行為が、一体なぜサウジアラビアによるイエメン人大量虐殺と比較されるのだろう?

 NPRとBBCは、一体なぜミャンマーに執着し、遥かに酷い残虐行為を無視することができるのだろう?

 アメリカの新英雄、ジョン・マケインは、リビア、イラク、シリア、スーダン、イエメン、パキスタン、アフガニスタンに対するワシントンの残虐行為をせきたて、イスラエルによるパレスチナ人大量虐殺を支持していた。

 アメリカでは人類に対する犯罪に関与すると英雄になれる。ミャンマーで同じことをすると、非難され、国際刑事裁判所での裁判を要求される。

 Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/27/there-is-no-limit-to-presstitute-hypocrisy/

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 2時からの下記インタビューを拝見した。

【IWJ_Youtube Live】14:00~「日露戦争で蒔き尽くされた近代日本〈失敗〉の種は今なお増殖を続けている!? 岩上安身による明治大学・山田朗教授インタビュー」
YouTube視聴URL(冒頭以降は会員限定): https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867

 8時からのインタビューも拝見。基地建設推進派与党候補、同じ質問で、同様の明快な回答、できるはずはない。そもそも、インタビューに応じる可能性皆無だろう。

【録画配信・IWJ_Youtube Live】20:00~「IWJ中継市民による玉城デニー衆院議員インタビュー」
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501

駐アフガニスタン・アメリカ軍の墓を掘り下げるトランプの対イラン経済制裁

Finian Cunningham
公開日時: 2018年8月16日 16:17
編集日時: 2018年8月16日 18:35

 アフガニスタン全土での劇的で止められそうにないタリバン攻勢急増は、アメリカが急速に“帝国の墓場”として知られる国で敗北する最新の外国大国になりつつある証明だ。

 アフガニスタンで敗北した過去の帝国とは違い、その度を超えた失敗と、犯罪的二枚舌の伝統によって、自らの不幸に著しく貢献している点で、アメリカは際立っている。

 特にワシントンが、隣国イランと対決し、テヘランでの政権転覆画策に固執していることが、アフガニスタンにおける転換点になりかねない。アメリカが、アフガニスタンで過去20年にわたり掘り続けてきた戦略的な軍の墓に、自ら転げ落ちる転換点だ。

 17年のアメリカ軍占領で、アメリカ納税者が何兆ドルも負担したのに、タリバン武装反抗勢力は、ワシントンが支援するカーブル政府に対して、自在に目を見張るような攻撃をしかけることが出来るように見える。これはどう見ても、ワシントンの帝国主義的野望が歴史的に敗北する前兆だ。しかもアフガニスタンだけのことではない。

 先週、首都の南わずか150kmの戦略的都市ガザニは、戦士たちが周辺地域に戦術的撤退らしきものをするまで、数日間タリバンに占領された。

 更に木曜日、首都カーブルで、タリバンは、まるで、アメリカが支援する治安部隊の無力さを強調するかのように、軍-諜報機関の訓練基地に銃撃戦をしかけた。軍諜報機関基地が奇襲攻撃されるとは?

 さらに北、ファーリヤーブ州では、アフガニスタン国軍基地が過激派に制圧され、30人の兵士が死亡し、残り70人が捕虜になったと報じられている。基地は増援部隊も弾薬も食糧も欠如していたので、タリバンに容易に占拠されたと土地の長老たちは言った。アメリカの支援も、もはやこれまで。

 アフガニスタンは“ソ連のベトナム”になるはずだったのを想起願いたい。アフガニスタンと、わずか数年前、アメリカがベトナムで味わった屈辱を、ソ連にも負わせようという極悪非道な陰謀とについて、ズビグニュー・ブレジンスキーらアメリカ政策立案者連中は愉快そうに、そう呼んでいたのだ。1979年、アメリカが支援する部族戦士ムジャヒディンによる攻撃を受けていたカーブルの同盟政府にてこいれするため、ソ連軍は中央アジアの国に誘い込まれた。

 一世紀前のイギリス帝国軍隊と同様、アフガニスタンの険しい山あい地域で、大胆不敵な戦士たちに、ソ連は敗北した。

 もちろん、ソ連はアフガニスタンとだけ戦っていたわけではない。CIAがムジャヒディンに、スティンガー対空ミサイルや他の高性能の武器弾薬を供給していた。イギリスのMI6、サウジアラビアやパキスタン軍諜報機関によって、アフガニスタン武装反抗勢力後にアルカイダ・テロ・ネットワークへと進化した聖戦戦士軍に変えられた。

 ところが皮肉なのは“ソ連のベトナム”が、今やもう一つのアメリカの泥沼 - アメリカの現代版ベトナムに変わったのだ。

 2001年9月11日のニューヨークと、ワシントンDCでのテロ攻撃の後、ジョージ・W・ブッシュ政権は - アメリカが以前作り出すのを支援したまさに同じ組織、アルカイダに対する報復行為として、アフガニスタンに突入した

 ほぼ17年後、アメリカ軍は依然アフガニスタンで動きが取れず、実行可能な出口戦略は見えない。この戦争はベトナム戦争の期間(1964年-75年)を超え、公式にアメリカ最長の戦争だ。

 アメリカ人犠牲者は東南アジアの時より遥かに少ないとは言え、アメリカ経済に対するアフガニスタンの財政的経費は法外で、5兆ドルにものぼると推計されている。イラク戦争とともに。これは、21兆ドルというアメリカ国家債務総計の四分の一だ。

 アメリカ軍作戦は、公式には、オバマ政権時代の、2014年に終わるはずだった。2016年、ドナルド・トランプが、大統領選挙に出馬した際、有権者に対する選挙公約の一つは、アメリカ戦争の規模縮小だった。ところが昨年、トランプはペンタゴンの助言を受け入れて現地軍の“訓練と支援”を装ってはいるものの、アフガニスタンでの軍事的関与を見直したのだ。

 先週のタリバンによる不敵な攻撃は、アメリカが支援する政府軍が負け戦を戦っていることを実証している。アフガニスタンの広大な地域は彼らの支配が及ばないのだ。首都さえ、重装備の襲撃には脆弱に見える。

 しかも状況は、アメリカとアフガニスタンの代理人たちにとって悪化するばかりだ。

 隣国イランに対するトランプ政権の犯罪的攻撃政策は決定的要因になりかねない。イランを“壊滅的”経済制裁で締めつけるというワシントンの近視眼的願望はアメリカが支援する部隊にとり、アフガニスタン治安状況を酷く悪化し、逆効果になる可能性がある。

 トランプが今年5月に国際的核合意協定を放棄した後、アメリカが、より厳しい経済制裁をイランに課し、悪化するイラン経済が、アフガニスタンに直接、悪影響を与えるためだ。何千人ものアフガニスタン人出稼ぎ労働者はイランの雇用に依存している。彼らの給料送金は、アフガニスタンに残した家族にとって重要な頼みの綱だと報じられている

 アメリカ経済制裁のもと、イラン経済は既によろめいており、失業したアフガニスタン労働者の大群が荷物を畳んで帰国し、アフガニスタン経済の多くを支えている送金を止めることになる。

 ワシントンによる対イラン経済制裁の更なる影響は、内陸国アフガニスタンが、輸出入のため、イラン港湾を使えなくなることだ。トランプは、イランと取り引きを続けている、あらゆる国への二次的経済制裁をすると威嚇している。アメリカがアフガニスタンを免責しない限り、アフガニスタンは、イランとの経済的つながりと、インド洋への貿易経路を断ち切られる。

 だから、経済制裁強化によりアメリカが課するイランに対する経済的圧力が高まれば - ワシントンは11月までの石油の完全禁輸を目指しているが  - 必然的結果は、アフガニスタン一般国民の社会的条件の悪化だろう。この嘆かわしい結果から、大衆のタリバン支持を強化し、アメリカが支援するアフガニスタン軍が、作戦において、益々安全性が損なわれ、無力になるだけだと想定するのは妥当だろう。

 三つ目の要素は、イランがタリバンに対する密かな軍事支援を強化し、より悪意ある選択肢を行使できるということだ。イランは、恐るべき高度なミサイル技術を開発していると考えられている。例えば、今週、テヘランは新たなレーダー回避形弾道ミサイルをお披露目した。

 アメリカが意地悪い経済措置により、イラン政府を破壊しようとしていることを考えれば、もしテヘランが、タリバン戦士に、アメリカ軍を攻撃するための致命的な火力を提供して、反撃しても全く驚くべきことではないはずだ。

 だから、経済的苦痛が社会不安や政権転覆を引き起こすと計算して、イランに対する報復の経済制裁をすることで、ワシントンは、自身のアフガニスタンでの軍事作戦に対する深刻な想定外の逆噴射を引き起こす結果になる可能性が高い。

 アメリカ最長の外国での戦争は、最も屈辱的で、不経済なものになりかねない。アメリカが、前世紀、かかわってきた何十もの汚らしい戦争を考えれば、これは何かを意味しよう。アメリカの世界的な地位に対する影響は過小評価できない。

 アメリカは、まず間違いなく、そもそも最初から違法で、何万人もの死傷者をもたらし、財政的にもアメリカ経済に破滅をきたした、ほぼ二十年間の戦争を、アフガニスタンで行っただけでなく、主としてアメリカ自身の犯罪と愚かさと傲慢さゆえに、全能なはずのアメリカ権力が、帝国の墓場で破れることになるだろう。

 Finian Cunningham(1963年生まれ)は、国際問題について多く書いており、彼の記事は複数言語で刊行されている。アイルランドのベルファスト生まれの農芸化学修士で、ジャーナリズムに進むまで、イギリス、ケンブリッジの英国王立化学協会の科学編集者として勤務した。20年以上、ミラーや、アイリッシュ・タイムズや、インデペンデント等の大手マスコミ企業で、彼は編集者、著者として働いた。現在は、東アフリカを本拠とするフリーランス・ジャーナリストで、RT、Sputnik、Strategic Culture Foundationや、Press TVにコラム記事を書いている。

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 本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。

記事原文のurl:https://www.rt.com/op-ed/436140-afghanistan-iran-sanctions-taliban/

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 薩長同盟で実現したという明治維新による軍国主義の結果、70年以上、完全属国化。
新薩長同盟なるものも、必ず悲惨な結果を招く。宗主国のための代理戦争で。

 西郷を主人公にした大河ドラマ、明治150年洗脳番組だろうと思っていたが、再選宣伝用でもあったようだ。大河ドラマなるもの、一度も見ていない。これからも。

 『沖縄スパイ戦史』という映画を見た後、同じ監督による映画を拝見した。『標的の村』『戦場ぬ止み』『標的の島 風かたか』。孫崎享氏のメルマガで知った映画館で。

 戦時、基地は住民を守るのではなく、基地は住民を攻撃にさらすというのが事実。
陸上イージスもしかり。

 桜島を背景にした発言の真意はこうだろう。(全く見ておらず、呆導からの想像。)

子供たちの世代、孫たちの世代に、汚れて伝統が破壊され、大企業に売り渡された、何の誇りもない属国を引き渡す

三上監督の映画に、エアシーバトルを説明される伊波議員が出ておられる。IWJにも、彼のインタビューはいくつかある。たとえば下記。

[IWJ日米地位協定スペシャルNo.4]日本全土が戦場に 在日米軍はまず逃げる!? 米軍「統合エアシーバトル」全容判明 伊波洋一元宜野湾市長インタビュー 2013.4.2

三上監督や、映画に登場される伊佐真次氏、IWJにもアーカイブがある。

[IWJ日米地位協定スペシャルNo.5]「高江は『安保のみえる森』だ」沖縄 高江区住民・ヘリパッドいらない住民の会 伊佐真次氏インタビュー 2013.4.2

映画『標的の島 風かたか』上映後のクロストーク(石垣市) ―ゲスト 山城博治氏、小西誠氏、三上智恵監督 2017.4.29

というわけで、今日の午後2時と午後8時にも、インタビュー拝見予定。

日刊IWJガイド「〈本日の岩上さんのインタビュー〉本日午後2時より『日露戦争で蒔き尽くされた近代日本〈失敗〉の種は今なお増殖を続けている!? 岩上安身による明治大学・山田朗教授インタビュー』を冒頭のみフルオープンで配信!#関東大震災 #朝鮮人虐殺 #明治150年 #日露戦争/本日玉城デニー氏が小沢一郎氏とともに各党に挨拶まわり!いよいよ出馬表明か!? /本日午後8時より、岩上さんから質問を託されたIWJ中継市民が玉城デニー衆院議員を直撃した独占インタビューを全編フルオープンで録画配信します!#玉城デニー #沖縄県知事選/
明日午後7時より『「サタンの国」日本の役割は「メシヤが再臨した国」韓国に貢ぐこと!? 日本の「保守」とはズブズブの関係!?「多国籍企業」のような宗教組織 統一教会 岩上安身による北海道大学大学院文学研究科・文学部 櫻井義秀教授インタビュー』を録画配信!/IWJの第9期が始まったばかりですが、さっそくピンチに!8月23日までのご寄付・カンパが目標額の5分の1どまりと非常に厳しいスタートとなっています! どうか緊急のご支援をよろしくお願いいたします!」2018.8.28日号~No.2175号~

2018年8月27日 (月)

ブレナン-ローゼンスタイン-マラー-コミー-売女マスコミによる魔女狩り

2018年8月23日
Paul Craig Roberts

 更新 8月23日: マーク・ペンは、The Hillの記事で、コーエンが選挙違反ではなかったことで、選挙違反での有罪を認めたことを指摘している。しかも、コーエン自身はカレン・マクドゥーガルに口止め料を払っていなかった。彼は、アメリカ・マスコミによる支払いをまとめたのだ。口止め料は選挙運動資金から支払われてはおらず、いかなる法律の違反にもあたらない。コーエンによる、この偽りの罪状認定は、どうやら極めて現実的な所得税脱税を軽く扱ってもらうのと引き替えになされたものだ。言い換えれば、アラン・ダーショウィッツの表現を使えば、コーエンは“作文したのだ”。http://thehill.com/opinion/white-house/402959-cohens-plea-deal-is-prosecutors-attempt-to-set-up-trump

 ロシアゲートは画策されたものだ。ドナルド・トランプの大統領選挙運動でのロシアとの関係を正常化するつもりだという発言への、軍安保複合体による対応だ。

 2007年、ミュンヘン安全保障会議で、ロシアは主権国家であり、そういうものとして行動するつもりだと、ウラジーミル・プーチンが発言して以来、覇権主義のネオコンがあおりたてている過激なロシア嫌悪は、地球上の生命にとっての脅威であることを、トランプは認識している。クリントン政権以来、アメリ外交政策を支配しているネオコンは、一方的に行動するワシントンの能力に対するいかなる国による制限も受け入れたがらないのだ。

 オバマ政権によるシリア侵略とイラン爆撃をプーチンが阻止した後、ワシントンが資金提供するNGOとウクライナ人政治家を利用して、民主的に選ばれたウクライナ政府を打倒し、ロシアに敵対的な政権を据えて、ネオコンはプーチンにしっぺ返しした。その狙いは、三世紀以上ロシアの一部だったウクライナを利用して、ロシアにとって、ロシアの注意を奪う問題を作りだし、中東におけるワシントンとイスラエルの自由裁量を取り戻し、ロシアをクリミアの黒海海軍基地から追い出すことだった。クリミア住民がロシアとの再統一賛成投票をすると、民族自決の民主的結果を、ワシントンは“ロシア侵略とクリミア併合”だと故意に歪曲して伝えた。そのような途方もない故意の歪曲は、ロシア政府が抱いていたかも知れない僅かに残されたワシントンの誠実さについての信頼を破壊した。

 ここから二つの核大国の関係は急速に悪化した。私やスティーヴン・コーエンが強調している通り、二つの政府の間には今や何の信頼感もないので、現在の核戦争の危険は
長年の冷戦時代より遙かに高い。

 核戦争は終末的な出来事になるはずで、アメリカとロシアの間で、協力的で、お互いが尊敬しあう関係を回復すること以上に重要なことはないというドナルド・トランプは全く正しい。

 問題は、軍安保複合体が違う見方をしていることだ。70年間も、その足場を固めた軍安保複合体は独立した政治勢力なのだ。1961年、アイゼンハワー大統領が、アメリカ国民に、このありそうな結果について警告したが、無駄だった。軍安保複合体の見地からすれば、ロシアとの関係正常化の問題は、それが軍安保複合体の1兆ドルの年間予算と、そのような膨大な予算がもたらす権限にとって実に必要不可欠な“ロシアの脅威”を格下げしてしまうことだ。GDPが1兆ドル以上の国は世界195カ国中、わずか16カ国しかない。軍安保複合体は、G-20加盟国になって、自国通貨と軍隊を保有するに十分なほど大きいのだ。

 オバマのCIA長官ジョン・ブレナンは、トランプに対するロシアゲート陰謀を素早くでっちあげた。コミー、ローゼンスタイン、クラッパー、マラー、マッケイブ、ピーター・ストラクや他の連中は、アメリカ大統領選挙を盗み取るためのドナルド・トランプとウラジーミル・プーチン両者の共謀とされるものを画策する上で、積極的な参加者として明かに関与していたし、しているのだ。FISA裁判所をだますことにより、令状が違法に入手され、何であれ使える手段で、トランプ大統領に対する訴訟を作り上げるため、マラーを特別検察官として任命する根拠になったのだ。

 二年後、ロシアゲートについて、我々にある唯一の証拠は、それがトランプ大統領とアメリカ国民に対する陰謀というだけだ。実際、トランプ-プーチン共謀など無かったことを重々承知のマラーは、起きてもいないことの証拠などあり得ないので、いかなる証拠もわざわざ探そうとしていない。彼は、あたかも陰謀があったかのように見せ、それを証明しないで済ませるためため、何人かのロシア人のまやかしで意味のない起訴を見つけ出したが、彼の本当の狙いは、ポール・マナフォートをはめることだった。

 マラーによるマナフォート捜査は、ロシアゲート話とは全く無関係だ。マナフォートの犯罪とされるものは、マラーの遥か権限外で、もし起きていたにせよ、ロシアゲートとされるものの何年も前のことだ。マナフォートは、18の罪状のうち8つについて陪審員により有罪の評決がでたが、トランプを憎悪する売女マスコミによって、これがロシアゲート捜査が正しいことの証明として、意図的に歪曲して伝えられ、また売女マスコミは“トランプにとって暗い日”として、トランプを大統領の座から追い出す、ウォーターゲートとの類似を示唆した。

 マナフォートは、ロシアゲートではなく、所得税脱税と、融資申し込みで、自分の財政状況について偽って伝えこたとで有罪になったのだ。

 マナフォートが有罪なのか、それとも単にマラーと無能な陪審員によるでっちあげの犠牲者なのか我々にはわからない。アメリカ陪審員は周知の通り、無能で、それが重罪起訴の97%が、司法取引で決着する理由だ。無辜の人でさえ、無頓着なアメリカ陪審員連中に裁かれるより、むしろ答弁に関して合意し、何か実際には犯していない罪を認めるのだ。テキサス州ワコでの、FBIによるブランチ・ダヴィディアン信者集団虐殺の生き残りの人々に、宗教集団にFBIがしかけた大量虐殺のことを語れなくするため、長年監禁の有罪判決をした陪審員を覚えておられるだろうか。

 抵当担保のデリバティブ危機を引き起こした原因の一つが、抵当を発行する企業による融資関連文書上の抵当申告者の不実表示だったので、融資申し込み用の自分の財政状況についての不実表示申告が、どれほどの犯罪になるのか、はっきりしない。 ワシントンは、起訴する代わりに、不実表示されたローンを抱えていた銀行を緊急救済するのに、連邦準備金制度理事会に頼ったのだ。

 所得税脱税は、IRSの権限範囲で、トランプ-プーチン共謀の証拠を探すはずの特別検察官の権限範囲ではない。

 すると、マラーは一体なぜマナフォートに焦点を絞っているのだろう? ハーバード法学部教授のアラン・ダーショウィッツに説明してもらおう。

 “捜査の容疑者を、検事にウソをついたかどで起訴するために、特別検察官に必要なのは、容疑者に進んで反論する証人一人だ。

 “証人は“口を割る”だけでなく、“作文”までしている可能性がある - つまり、話がうまければうまいほど良い結果になるのを知っているので、話をつくりあげたり、尾ひれをつけたりするのだ。

 “連邦法の下では、そのような“垂れ込み証人”の証言は有罪判決を確保するために裏付けられる必要がない。

 “偽証罪の仕掛けを機能させるには、一人の証人によって、反論する答えが得られる一つの質問だけで十分なのだ。” https://www.gatestoneinstitute.org/12896/is-the-truth-the-truth-when-it-comes-to

 トランプ大統領は画策されたロシアゲート非難に対抗して様々な発言をしているが、もしマナフォートが、特別検察官の証人として彼に反論すれば、アメリカ大統領を偽証罪のかどで、監獄に送り込めるのだ。

 これが分かっているから、私に言わせれば腐敗した人物として証明済のマラーは、マナフォートが自らを救うため、トランプに反論する偽りの証言を彼にさせるよう、マナフォートを締め上げることに決めたのだ。

 毎日、この戦術が州や地方や連邦検事に利用されている。起訴と有罪判決を信じているアメリカ人は、97%の有罪判決は、より重い懲罰を避けるための自己負罪によるものであることを知らない。

 マナフォートの場合、これは効かなかった、というか効いていない。まだ。マナフォートは、今度はウクライナの利益のため働く未登録の外国人代理人として活動したとされることと、アメリカ政府真実を語ると宣誓していない状況で、虚偽の陳述をしたかどでの二件目の裁判を受けることになっている。マナフォートは独房に監禁されていると報じられているが、これは抵抗する意志をくじくよう仕組まれた拷問の一種だ。

 マナフォートの最初の裁判同様、彼の二度目の裁判もロシアゲートとは全く無関係だが、売女マスコミや民主党からは、そういう話は決して聞けない。依然マナフォートはトランプを大統領の座から追い落とすために利用できる何かを言うよう強要されかねない。

 トランプの元弁護士、マイケル・コーエンの場合はどうだろう? マラーはコーエンの事件には何の価値も見出しておらず、訴訟を普通のアメリカ連邦判事に任せた。だから、それはロシアゲート捜査の一環として現れることはないはずだ。

 コーエンは陪審員を避け、個人所得脱税について五件、融資を得るため金融機関に、不正確な申告をしたかどで一件と、違法な選挙献金に関係して二件で有罪を認めた。選挙献金に関しては、彼は以前の発言に矛盾している。トランプの指示で、トランプと性交渉したと主張する二人の女性に金を握らせたと彼は言っていた。

 政治に関わるアメリカ法の複雑な細部は、はっきりしないことが多い。政治運動のために集めた資金を、トランプから金をゆすり取る機会を見て活用した二人の女性に金を握らせるのにコーエンが使い、これは資金の違法な使用だという容疑のようだ。依頼人が超億万長者なのに、その話が本当かそうでないかわからない女性に、弁護士が違法な形で金を握らせるというのは、筋が通らない。

 しかし、こうしたことは、売女マスコミが関心を持つ類の疑問ではない。

 それでも、コーエンの罪状申し立ては、特別検察官マラーではなく、別の検事が起こした訴訟にまつわるものだ。私はアメリカ訴訟手続きには十分詳しくないので、これが一体どうやってマラーの捜査に戻るのかを語ることはできない。

 事実関係はこうだ。

 アメリカ軍安保複合体は、ロシアとのいかなる関係正常化も認めるつもりはない。以上終わり。どこかの時点で、プーチンや、ラブロフや、愚かなロシアの大西洋中心統合主義者は、この事実を認めなければならず、さもなくば、ロシアは破壊される。

 関係の正常化が、大統領としての彼の二大目標の一つだと宣言することで、トランプは強力な軍安保複合体の恨みを買った。ヒラリーの大統領当選を阻止して、トランプは、売女マスコミとして、アイデンティティ政治と、トランプに投票した“白人男性抑圧者”憎悪に献身しているアメリカ・マスコミの憎悪をかきたてた。アメリカ最初の女性大統領の当選を阻止したことは、“女性の局部をつかむ”女性蔑視の白人男性による許されない犯罪であり、トランプは決して許されることはない。

 軍安保複合体と民主党とアメリカの印刷とTVメディアを構成する男娼連中による陰謀によって、アメリカ民主党大統領選挙が打倒されつつある見せ物を、軍安保複合体と白人男性を憎悪する民主党のアイデンティティ政治によるトランプ憎悪が世界に曝している。

 トランプ大統領は、ツイッターで、勇敢に立ち向かっている - ツイッターが彼のアカウントを停止しないのに私は驚いているが - それ以外は、無力に見える。トランプの破壊に専念している人物であるローゼンスタインを、自らをロシアゲート捜査から救出した、弱くて愚かなAG セッションズを考えれば、支配的な地位である司法副長官に任命するよう、トランプに助言した人物は誰であれ、トランプの破壊を意図していたのだ。トランプの破壊に献身する、いかがわしい人物が、トランプを破壊するために、トランプによって任命されたのだ。それほど無知な人物が、一体どうして生き残れよう?

 選挙運動中に書いたが、トランプは、ワシントンのことを全く分かっておらず、彼に反対して動く連中ではなく、彼のために動く連中として誰を任命すべきか分かっていなかった。結果的に、彼は、自分に反対して活動する閣僚を選んでしまったのだ。

 ジョン・マケイン上院議員とリンジー・グラハム上院議員は、共和党が自党の大統領を支持するのを阻止するために活動している。連中は容易に成功できよう。下院も上院も丸ごと、両党が軍安保複合体からの選挙献金の支配下にある。

 トランプ大統領は一体何ができるだろう? 彼はツイッター上で言葉によってではなく、大統領の権限で戦えるのだ。選挙をヒラリーから横取りするためのトランプ-プーチン共謀だという証拠以上に、ロシアゲートがアメリカ大統領に対する陰謀だという遥かに多くの証拠がある。もしマラーが、全く証拠無しに起訴することができるなら、ロシアゲートがアメリカ大統領に対する陰謀だという膨大な証拠を根拠に、トランプは司法長官に起訴を命じることができる。

 ブレナン、コミー、クラッパー、マラー、ローゼンスタイン、マッケイブ、ストラク、CNN、MSNBC、フォックス・ニューズ、NPR、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどなどは、全てアメリカで、民主主義を打倒し、誰もが認める軍安保複合体支配を確立するための陰謀の一員だ。

 愚かな売女マスコミによるトランプ憎悪で、連中は自分が加わっている陰謀に気がつかないのかも知れないが、アメリカ民主主義がどれほど僅かしか残っていないにせよ、アメリカ売女マスコミが、アメリカ民主主義打倒に関与していることに疑いようはない。

 本コラムはトランプ支持をするものではない。真実を支持するものであり、苦悩の中、最良の情報で、ドナルド・トランプを大統領としての当選を実現したアメリカ国民への支援だ。

 環境では、トランプは間違っている。長年の戦いの後、実施された環境保護が、環境規制機関に対する支配権を得た産業汚染者によって骨抜きにされつつある。これはトランプ大統領のもとで起きている独特の出来事ではない。8年間のジョージ・W・ブッシュ政権時代の本当の大統領、ディック・チェイニー副大統領のもとで、これが始まったのだ。チェイニーが、環境保護規制機関を、産業汚染者に引き渡したのだ。

 イランに関して、トランプは間違っている。イスラエル・ロビーの力が彼を売女マスコミと軍安保複合体から守ってくれると願って、彼はイスラエルの手中にある。イスラエルが、イランに対し、アメリカ軍部隊を利用しようとして企んでいることが、ワシントン/イスラエル同盟にとって強力過ぎる新同盟をまとめつつある。ロシア、中国、シリア、トルコ、イラン、インドとパキスタンは、ワシントン帝国を遥かに超える人口がいる国々だ。これらの国々のそれぞれが、各国に対するワシントンの愚かで不可解な行動によって、団結しつつある。

 軍事的に、イスラエルは大して重要ではない。非武装の女性や子供を殺害する以外能の無い自慢のイスラエル軍は、二度も、数千人のヒズボラ民兵によって、打ち破られ、南レバノンから追い出された。三度目を試みるには、イスラエルは余りに臆病で、愚かなアメリカ人が、自分たちのため、その仕事をしてくれるのに頼っている。

 アメリカとイスラエルを見て、世界中は一体どう思っているのだろう? いずれも先住民絶滅の結果である二つの国は信用されず、至る所で嫌われており、いずれも他国政府の買収と、連中自身と、その属国を除く全員を破壊されるべき悪の犯罪人として描く、果てしないウソとで、なんとか生きている。

 例えば、これまでで世界最大の強制収容所、ガザは、ガザ内部の人々全員が、イスラエル破壊に身を捧げることを誓った爆発物ベルトを着けたテロリストだという明らかで、見え透いたウソを隠れ蓑に、その中で暮らすあらゆる命と共に、イスラエルによって組織的に破壊されている。戦力になる年代の男だけでなく、老人、妊婦、子供、全てのパレスチナ人が、イスラエル軍によって殺戮されつつある。アメリカ合州国国務長官は、パレスチナ人全員破壊されるべきで、早ければ早いほど良いことで、イスラエルに同意している。

 中国は愚かなアメリカ人が手放している金融上の機会を活用するのに忙しいが、それ以外、連中の目の前で展開しつつあるドラマの中で、どう進めるかについて、いかなる戦略的センスがあるようには見えない。中国にとって、当面、金が全てなのだ。

 ロシア人は、ロシアがアメリカの傀儡国家だったエリツィン時代に、血管に注入されたアメリカ・プロパガンダに感染している。ロシア人は確実とは言えずとも、ゆっくり正気に返りつつあり、彼らには、アメリカ“パートナー”などいないことに気がついている。

 もしトランプが敗北し、排除され、最終的にロシアと中国が、ワシントンとの和解はあり得ないことに気がついたら一体何が起きるだろう? ロシアと中国の政府の、お互いの経済利益を基に和解するという全てのむなしい期待と賭けが無に帰したら、一体手にが起きるだろうか?

 それは地球の終わりだろう。

 ロシアゲート“捜査”は選挙直前に、根拠の無い非難の濡れ衣で、トランプ大統領を弾劾する民主党が多数派の議会を作り出す企みとして、中間選挙に影響を与える時期に合わせられているように見える。売女マスコミは、この陰謀を隠蔽するはずだ。言い換えれば、本当の選挙干渉はロシアゲート“捜査”によって行われつつあるのだ。https://www.americanlibertyreport.com/articles/americans-should-brace-for-mueller-election-meddling/ See also: https://beforeitsnews.com/v3/survival/2018/2704912.html

 そのような弾劾はクーデターだ。その結果は、アメリカの政治生活における深刻で永久的な分裂と、戦争という結果をもたらす一層激しいロシア嫌悪だ。

 危険は本物で、売女マスコミが支援し、扇動する民主党ロシアゲート“捜査”は核のハルマゲドンに終わるだろう。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/23/the-brennan-rosenstein-mueller-comey-presstitute-witch-hunt/

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 文中にあるジョン・マケイン上院議員が亡くなった。太鼓持ち追悼記事が多々あるなか、Caitlin Johnstoneという女性が、強烈な文章を書いておられる。
Do NOT Let Them Make A Saint Of This Asshole
「このろくでなしを、連中が聖人に祭り上げるのを許すな」という

 売国ファシスト支持率が50%という驚異の劣化社会。これも「マスコミ」が太鼓持ち集団なればこそ。

 集英社新書『スノーデン監視大国日本を語る』を読み始めた。国谷裕子氏の問いかけとスノーデン氏の回答が表紙に載っている。2017年10月1日に一橋講堂でおこなわれたシンポジウムの翻訳。

 刊行にあたって スノーデンのメッセージ 12-13ページに書かれている言葉に同意する。引用させていただこう。

ジャーナリズムの役割は、権威を疑い、疑問を突き付けることです。(政府という)社会における最も強大な組織による情報の独占に挑戦することです。政府の発表を単に繰り返すだけではメディアではありません。メディアの役割とは、その真偽を調査することです。民主的な政府の正統性は、たった一つの原理から導かれます。投票という被治者の同意です。しかし、事前に事実が知らされていなければ同意は無意味です。メディアが政府の発表の真偽を調査しなければ、人々は無知に基づく投票を余儀なくされ、選挙はその意味を失います。つまり、政府の公式見解をそのまま垂れ流すメディアは、いかなる組織であれ、単にメディアの名に値しないというだけでなく、民主主義を危機に陥れているのです。

 直接関連する記事では、オリバー・ストーンの『スノーデン』: NSAは“対世界捜査網を運営している”を訳してある。

 とはいえ、政府発表の真偽を調査するまともな活動には、大本営広報活動と違って、大企業スポンサーはつかない。

日刊IWJガイド「IWJの第9期が始まったばかりですが、8月23日までのご寄付・カンパが目標額の5分の1と非常に厳しいスタートとなっています! どうかご支援をよろしくお願いいたします!/<新記事紹介>【IWJ検証レポート】イスラエル新基本法――イスラエルは『ユダヤ人の』国家、植民活動は『国家の価値』と憲法規定! イスラエル、フランスのメディアで報じられた海外記事からその危険性と極右政権の本質を読み解く!/明日午後2時より『日露戦争で蒔き尽くされた近代日本 〈失敗〉の種は今なお増殖を続けている!? 岩上安身による明治大学・山田朗教授 インタビュー』を冒頭のみフルオープンで配信!/
自民党総裁選は『安倍』対『石破』!? しかし『緊急事態条項』の新設では完全一致か!?/本日午後7時より再配信『参院3分の2議席で日本でも現実に!安倍政権が「学ぶ」「ナチスの手口」とは何か?~岩上安身による石田勇治・東京大学教授インタビュー(後編)』 #ヤバすぎる緊急事態条項/IWJは本日午後1時半からおこなわれるの石破氏政策発表記者会見を録画取材し配信の予定!/
岩上さんは『安倍首相自宅放火未遂事件の闇』のスクープを放ったジャーナリストの山岡俊介氏と寺澤有氏に9月2日インタビュー予定!#ケチって火炎瓶/『トリチウム汚染水の海洋放出は福島県内で完結するものではない!』IWJは8月31日の東京会場でおこなわれる公聴会を中継します!福島会場での中継も現在手配中です!」2018.8.27日号~No.2174号~

2018年8月26日 (日)

自己嫌悪する白人

2018年8月21日
Paul Craig Roberts

 昨夜ノースカロライナ州立大学のメインキャンパスで、憎悪と独善にあふれた無知な阿呆連中の暴徒が、“白人至上主義”に対する抗議行動として、南部連邦兵士の像を倒した。得られる写真から判断する限り“白人至上主義”に抗議している人々の大半は白人だ。こうした白人の誰か、彼らが抗議している白人至上主義を経験したことがあるのだろうか、私は疑問に思う。

 白人について何を言って良いかという点では、あらゆることが許されるが、それを非白人について言えば“感受性訓練”を受けるよう懲戒処分されたり、終身地位保障を取り消されたり、あるいは、Googleであったように、上級の男性エンジニアが、男性と女性には異なる能力があり、異なった分野で優れているという明らかな事実を述べたかどで解雇されたりする結果になる大学や職場の発言規則に白人至上主義はない。

 大学の入学優遇措置政策に白人至上主義はない。白人は“優先される少数派”の立場を与えられない。大企業や州や地方や連邦政府には“最後に雇用され、最初に首になる”白人割り当ては無い。

 白人は、差別待遇に抗議することさえできない。もし白人が、非難に対して自らを擁護しようとすると、白人至上主義の表現として受け取られる。

 白人は、自身の歴史も、歴史記念碑さえ持つことができない。100年前、侵略され、破壊された国の兵士銅像が白人至上主義の象徴だというのはばかげている。南部は侵略され、打ち負かされた。白人至上主義を伝えているのは北部諸州の兵士像だ。

 イスラエル政府の政策や行動を批判するユダヤ人は“自己嫌悪するユダヤ人”と烙印を押される。この前例に倣えば、アイデンティティ政治に固執する白人は“自己嫌悪する白人”と理解することが可能だ。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/21/self-hating-whites/

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 「高齢者就労のためには最低賃金以下でも働けるような労働法制の特例も必要」という酷民眠主党政治家。自民別動隊そのもの。連合は同じ意見なのだろうか。先日の驚くべき「排除」発言に続く暴言。純粋培養日本版ナチス?

日刊IWJガイド「今日午後8時より、『安倍政権が「学ぶ」「ナチスの手口」とは何か?岩上さんによる石田勇治・東京大学教授インタビュー(前編)』を、公共性・公益性・緊急性に鑑み、全編フルオープンで再配信!/今日午後6時より、『世界史の中の日露戦争』の著者である山田朗・明治大学教授による講演を再配信します!山田教授には8月28日に、岩上さんがインタビューをおこないます。/
IWJの第9期が始まったばかりですが、新しい期のスタート時としては、ご寄付・カンパがかつてないピンチです! どうかご支援をよろしくお願いいたします!/IWJでは現在、テキスト班の新メンバーを緊急大募集中! 事務・ハドル班、ウェブ動画班の新メンバーも引き続き募集しています!」2018.8.26日号~No.2173号~

2018年8月25日 (土)

端島 - 残虐な歴史と、世界で最も霊にとりつかれた島

2018年8月7日
Andre Vltchek

 歴史的な日本の港湾都市長崎から高速船で、わずか30分の場所にある、おそらく世界で最も薄気味悪い島 - 端島(軍艦島としても知られている)をご覧になりたいだろうか? 今、それが可能だ。オンラインで、40ドルにあたる金額で予約し、軍艦島コンシェルジュか、他の会社所有のしゃれたピカピカの船に乗船するだけだ。

 それだけで、見捨てられた奇怪な難破船、沈没した幽霊船のように見える島をご覧になれる。

 島の周囲を回れる。上陸し、数百メートル仕切られた道を歩くことさえ可能だ。ガイド/番人が、何枚か、スナップ写真をとらせてくれる。

 だが、それが全てだ。道から決して左右に外れてはいけない。集団の先に行ってはいけない。遅れてもいけない。そして‘挑発的な’質問はしないよう!

 島がどれほど‘幽霊が出そうな’状態で、 過去に、どれほど‘活気があった’かだけを語って‘楽しませるよう’ガイドは良く訓練されている。

 彼らは常に愛想よく微笑んでいる。

 ところが文書化されている、または文書化されていない規則に逆らおうものなら、彼らはたちまち飛んでくる。大声で叱ることさえある。突然彼らは極めて粗野になる。

 彼らは一体何を恐れているのだろう? 彼らは一体何を隠しているのだろう? この島では、実際一体何が起きていたのだろう?

 過去の本当の恐怖は、決して伝えられることはない。それは全て第二次世界大戦にまつわるもので、日本は未だに現実から目を背けている。

 日本人ツアー・ガイド(日本語話者観光客向け)も、入念に準備された英語話者向けの電子録音も、島の地理と、歴史上の議論の対象にならないような詳細を無数説明してくれるが、第二次世界大戦中、朝鮮人と中国人が強いられた奴隷労働については、ほとんど皆無に等しい。

*

 2015年7月6日、ガーディアンはこう報じた。

    “第二次世界大戦前と、大戦中、その一部が、朝鮮人強制労働者を使っていたことを認めるのに日本の当局者が同意した後、UNESCOは、日本の20以上の古い産業史跡を世界遺産として認めると決定した。

    明治時代(1868年-1912年)の23の史跡には、封建制から成功した最新経済へと変身するのに貢献したと日本が主張する炭鉱や造船所がふくまれている。

    ところが韓国は、史跡のうち、炭鉱の島、軍艦島を含む7つで、1910年-1945年、日本による朝鮮半島の植民地支配時代、推計60,000人の強制労働者を利用していたことにはっきり言及しない限り、世界遺産認定申請をすることに反対していた。”

 中国 (中華人民共和国)も反対を表明していた。

 強制労働の問題と、それを東京が頑固に認めるのを拒否していたことが、UNESCOによる遺産認定を遅らせていた。ところが、2015年、日本は折れ、UNESCOへの日本代表団がこう宣言した。

    “日本は、1940年代、遺産の一部では、多数の韓国人や他の人々が意思に反して連れてこられ、過酷な条件の下で労働を強いられたことを理解するのを可能にする措置を講じる用意がある”。

 これら遺産は、悪名高い端島/軍艦島を含め、最終的に世界遺産に認定された。それと引き替えに、韓国も中国も、占領中と第二次世界大戦中両国民の苦難を、日本が明記するよう期待した。強制労働者が留め置かれていた遺産は、はっきり標識で示し、詳細説明をするはずになっていた。ところが暗い歴史にまつわる他の非常に多くの場合と同様、日本は協定上の約束を守ることはほとんど何もしなかった。世界遺産指定を受け、望んでいることを得たものの、それと引き替えに、ほぼ何もしていない。

*

 5月、友人で優れた左翼オーストラリア人歴史家のジェフリー・ガンを訪ね、長崎で三日過ごした。

 長年、日本とアジアの複雑な過去にまつわる無数の疑問の答えを探して、私はこの都市を訪れてきた。

 長崎の過去にはあらゆるものがある。偉大な古い日本文化、キリスト教徒とその迫害、オランダ貿易商とその居住地、活気に満ちた少数派の中国人。長崎は、選択によるなり、強制によるなり、常に日本で最も‘開かれた’都市の一つだった。だが、ここは軍の艦船が建造された場所であり、占領した地域から多数の奴隷労働者がつれてこられた場所であり、第二次世界大戦の終わりにアメリカが二発目の原子爆弾を爆発させた場所でもある。

 壮大な長崎県立美術館の屋上から見ると、長崎湾には今も第二次世界大戦の‘名残’が点在している。海の近くには巨大なクレーンがあるが、これもUNESCO世界産業遺産の一部だ。クレーンは、何十年にもわたり、長年、日本の軍艦を作り、修理してきた三菱造船所のものだ。

 “公式には日本に軍隊はない”と私は皮肉をこめて言った。“しかしご覧なさい。日本は、湾の反対側に繋留しているこれら巨大戦艦を保有しています。”

 “君は運が良い。戦艦は来たばかりだ”とジェフリーが言った。“この造船所は過去、極めて重要な役割を演じた。軍艦島炭鉱も三菱のものだった。彼らは、あそこで石炭を堀り、ここ長崎で、最も巨大な戦艦の何隻かをここで造船した。”

 その晩、我々は、日本政府と国民が、過去のことを認めるのを奇妙にも拒否していることについて話あった。戦争が終わってから70年以上たった今でさえ、こうした問題はタブーだ。中国人の大量虐殺や、朝鮮人に対する恐るべき犯罪。

 過去の話を持ち出されると、丁寧さで有名な日本人が、突然、防御的、攻撃的にさえなることが多い。

*

 2015年、国際連合教育科学文化機関UNESCOが1937年に、南京虐殺文書を“世界記憶遺産”に登録した後、日本は一時的に負担金の支払いを差し止めて、UNESCOを文字通り、恐喝しはじめた。負担金は最終的に支払われたが、意図するところは、実にはっきり伝えられた。

 過去のおぞましい事に向き合うのを、こうしてかたくなに拒んでいることで、日本は益々、欧米、特にアメリカ合州国による死の抱擁にとりこまれ、他の北アジアの国々、特に中国との間で可能なはずの友好的な関係から益々遠ざかっている。

 第二次世界大戦後、アメリカが監督したいわゆる東京裁判(極東国際軍事裁判(IMTFE)としても知られている)は、明らかに、欧米の権益に役立つよう、日本の産業、事業、政治体制を、元々の形で保存しながら、わずかな人数の個人だけを罰するよう仕組まれていた。裁判の後、日本は、再建と、アジア太平洋に対する攻撃的政策により、欧米に参加することを許された。欧米が何百万人のも朝鮮の一般市民を虐殺した残虐な朝鮮戦争で、日本は重要な役割を演じた。

 “現代日本に外交政策はない”東京を本拠とするアイルランド人の学者で、政治評論家のデイヴィッド・マクニールから聞いたことがある。“日本は、アメリカの命令に厳密に従っている。国際的な出来事に関するマスコミ報道もそうだ。”

 マクニールは、日本自身による歴史の見方について、全く幻想を持っていない。

    “連中は教科書を書き換えつつある。8ページしかさかず、第二次世界大戦の部分をかなり省略している… 民族主義が勃興しつつある… 現在、日本のマスコミは、大いに自主検閲している。政府は、何であれ‘広がりやすい’こと… 歴史に関係するあらゆることを、どう扱うかについて、たとえば、いわゆる‘オレンジ・ブック’のような‘指針’を発行している。そこには、筆者や翻訳者に対する指示がある。たとえば‘外国人専門家を引用する時以外は、南京虐殺のような言葉は決して使ってはならない’。あるいは‘靖国神社に関連して - “議論の的になっている”という言葉は決して使わないこと。’第二次世界大戦時の‘慰安婦’については書いてはいけない。”

 自国の過去について、無知になればなるほど、日本は、かつての被害者 - 中国と朝鮮を益々嫌いになるようだ。ピュー・リサーチ・センターの世論調査によれば(2017年)、83%の日本人が、中国には好意的でない見方をしている。韓国とて、より良いわけではない。両国(中華人民共和国と大韓民国)は今や明らかに日本を追い越しつつあり、経済では、韓国の場合、生活水準もだ。東京の反応は、中国と北朝鮮の二つの共産主義国家に対し、益々攻撃的政策をとりながら、欧米に益々近寄りつつある。

*

 軍艦島に戻ろう… 料金を支払って、乗船する。そもそも最初から、船が長崎から出航する前から、言語道断のプロパガンダで攻め立てられる。日本と長崎中の“サムライ精神”について。

 最初から、絶えず管理される。席で立ち上がると、すぐさま誰かがやって来る。どこに行くのですか? 席を変えたいのですか? だめです。ここには座れません…”ガイド(というより番人と呼ぼう)の調子は極端に粗野だ。彼らの英語は稚拙で、あらゆる規則や規制への彼らの執着は原理主義的だ。

 宣伝屋役を演じるために、そこにいるのが明らかなおやじが、絶えず、マイクで物事を説明する。声は拡声され、演技はじきに、煩わしく絶え間ない言葉の垂れ流しへと変化する。熟慮する間もない - 感じたり、休んだりする間もなく、まして何か真面目な質問をする時間はない。

 彼が話を止めると、安手のビデオが画面に映し出される。更に、キリン・ビールの広告が流れる。

 何千人もの人々を奴隷労働者として収容し、多くの人々が亡くなり、女性が慰安婦にされた場所に向かって船は航行している。だがサーカスは続く。なんの反省も悔悛の念も無い。

 島で私は集団について行くのを拒んだ。大きな騒音と人の群れを避けようとして、私は遅れた。もちろん、すぐに、私を群れに押し戻そうとする二人の“ガイド”と対決させられた。

 私は連中を無視して、撮影を続けた。

 連中は攻撃的になった。一人が叫んだ。“ここは日本だ。我々の規則に従え!”

 私は撮影を続けた。

 私は愛されたくて、やって来たわけではない。私の旅の理由は単純だった。日本政府が、UNESCOと朝鮮と中国合意を守っているかどうか - 強制労働者たちが、非人間的存在と労働に押し込まれ、彼らの一部が亡くなった場所に、日本が表示をし、追悼しているのかどうかを見極めるためだ。

 そうしたものは全く見つからなかった。情報皆無、追悼皆無!

 長崎に戻ってから、過去の歴史を説明するパンフレットを要求した。そういうパンフレットは皆無だった。島観光を企画している連中は、私が要求しているものが何か全く考えてもいなかった。

 翌日、ガン教授が、日本が朝鮮人や中国人に対して行った恐ろしい物事を展示している地元の韓国人が運営している小さな民営博物館に連れて行ってくれた。

 少なくとも、ここは、世界で‘最も霊にとりつかれた島’に関する真実を見いだせる場だ。この小さな博物館を見つけられればの話だが…

 軍艦島は - 少なくとも遠くからは、強力な駆逐艦に見える幽霊島だ。今では窓もドアも失われた高い建物が点在する島だ。一部は自発的な、一部は強制された何千人もの炭坑夫たちが、深いシャフトを降りていた島だ。島 - 軍艦島 - は、多くの人々が暮らし、多くの人が亡くなった場所だ。実に神秘的で、実に独特で、それなりに美しいが、象徴的で、ぞっとするような場所だ。

 アンドレ・ヴルチェクは哲学者、作家、映画制作者、調査ジャーナリスト。彼は、Vltchek’s World in Word and Imagesを制作しており、『大10月社会主義革命』を含む多数の本の著者でもある。オンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/07/hashima-brutal-history-and-the-most-haunted-island-on-earth/

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 文中の民営博物館というのは、岡まさはる長崎記念平和資料館のことに思える。

 足尾銅山には、中国人殉難烈士慰霊塔と、朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑がある。前者の写真は下記記事のあとがきに掲載した。

ロシアがウクライナを侵略したかどうか判断する方法(元記事)

2018/8/31追記:Kazanグローカル研究所に、2018年8月12日の翻訳記事があったのを知らず、屋上屋を架してしまったことを反省。

2018年8月24日 (金)

ギリシャ国民の集団大虐殺

2018年8月21日
Paul Craig Roberts

 欧州連合や他の政治声明が、ギリシャ危機は終わったと発表し、ギリシャ国民集団大虐殺の政治とマスコミによる隠蔽が、昨日(8月20日)始まった。 それが意味するのは、ギリシャはもう終わりで、死んで、おしまいだということだ。ギリシャは限界まで搾取され、死骸が犬に投げ与えられたのだ。

 350,000人のギリシャ人、主に若い専門職の人々がギリシャから去った。出生率は、残った人口を支えるのに必要な率より遥かに低い。EUやIMFやギリシャ政府によってギリシャ国民に課された緊縮政策が、ギリシャ経済の25%もの縮小をもたらした。減少はアメリカ大恐慌にも等しいが、ギリシャでの結果は最悪だ。フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、社会保障法や、預金保険や公共事業計画など社会福祉の他の手段で、大量失業の影響を緩和したが、ギリシャ政府は、IMFとEUの命令に従って社会福祉手段を剥奪し、大量失業の影響を悪化させた。

 伝統的に、腐敗、誤った運営、不運、予想できない出来事なりのいずれかで、主権国家が、債務を返済できなくなった場合、その国の債権者たちは、債務を負った国が返済できる水準まで債務の帳簿価格を切り下げる。

 ギリシャの場合、状況が一転した。ジャン-クロード・トリシェ率いる欧州中央銀行と国際通貨基金が、ドイツやオランダやフランスやイタリアの銀行が保有しているギリシャ政府国債の利子と元金の全額を、ギリシャは支払わなければならないと裁定したのだ。

 一体どうして、こういうことが実現したのだろう?

 いずれも危機を悪化させた二つの理由が、現在のギリシャを、ほぼ十年前の危機の始めにそうであったより遙かに酷い立場におくことになったのだ。

 “危機”の始めなら、ギリシャ債務はギリシャ国内総生産129%で、債務金額の一部を切り下げることで、容易に解決できていたはずなのだ。現在、ギリシャ債務はGDPの180%だ。

 一体なぜだろう?

 債務者が一セントたりとも失わずに済ませるため、ギリシャの債権者に利子を支払うべく、ギリシャは更に融資を受けたのだ。売女経済マスコミが“緊急救済措置”と呼んだ追加融資はギリシャにとっての緊急救済措置ではなかった。ギリシャの債権者にとっての緊急救済措置だったのだ。

 緊急救済措置を期待して、ギリシャ債務のクレジット・デフォルト・スワップをアメリカの銀行が売っていたため、オバマ政権は、この緊急救済措置を奨励した。緊急救済措置が無ければ、アメリカの銀行は賭けに負け、ギリシャ国債のデフォールト保険を支払っていたはずなのだ。

 更にギリシャは、外国人への公共資産売却や、例えば、最低限の生活以下への年金引き下げや、病人が治療を受ける前に亡くなるほどになった実に劇的な医療引き下げなど、ギリシャの社会福祉削減を要求された。

 記憶が正しければ、中国はギリシャの港を買収した。ドイツは空港を買収した。様々なドイツやヨーロッパの企業がギリシャ各都市の水道会社を買収した。不動産投機家連中が、ギリシャの保護された島々を不動産開発のために購入した。

 このギリシャ公共財産略奪は、ギリシャが負っている債務を減らす方向には向かわない。あらたな融資と同様、利子の支払いに使われたのだ。

 かつてない膨大な債務はそのままだ。債務を負っているギリシャ国民同様、経済は、かつてないほど小さい。

 ギリシャ危機が終わったという宣言は、外国銀行の儲けのために、ギリシャ国民から搾り取れるものはもはや何もないという声明にすぎない。ギリシャは急速に沈没しつつある。港や空港や都市公益事業や強制的に民営化された他の公共財産にまつわる収入は今や外国人のものとなり、彼らがお金をギリシャから奪い取り、更にギリシャ経済を悪化させる。

 ギリシャ人は彼らの経済的な未来を奪われてしまっただけではない。彼らは主権も失ってしまったのだ。ギリシャは主権国家ではない。EUとIMFに支配されている。2013年の私の著書、The Failure of Laissez Faire Capitalism第III部、“The End of Sovereignty”で、これがいかにして行われたかを私はご説明した。

 ギリシャ国民はツィプラス政権に裏切られたのだ。ギリシャ国民には自分たちを国際銀行家連中に売り渡した政府に反乱し、暴力的に打倒するという選択肢があった。そうはせずに、ギリシャ国民は自らの破滅を受け入れ、何もしなかった。ギリシャ国民は本質的に集団自殺したのだ。

 2008年の世界金融危機は終わっていない。アメリカやEUやイギリスや日本の中央銀行による膨大な貨幣の創造によって、隠されているだけだ。貨幣の創造は実際の生産の成長を遙かにしのいでおり、“実際の条件”が維持可能なものを超えて、金融資産の価値を押し上げている。

 この危機が一体どういう展開になるかは、見ていなければわからない。欧米文明の崩壊という結果をもたらしかねない。食うか食われるかなのだろうか? ギリシャの後はイタリアやスペインやポルトガルやフランスやベルギーやオーストラリアやカナダで、最後は誰もいなくなるのだろうか?

 欧米世界丸ごと、自分たちの権益に役立つよう強力な既得権益経済集団が醸成するウソの中で暮らしている。オンラインのものを除き、自立したメディアはなく、そうした独立メディアは悪者扱いされ、アクセスできないようにされつつある。情報が管理されている世界に暮らしている人々は、自分たちに一体何が起きているのか全くわからずにいる。それで、彼らは自分の利益のためにある行動ができずにいるのだ。

 Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/21/genocide-of-the-greek-nation/

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沖縄県知事選挙、玉城氏出馬で決定のようだ。それで、下記再配信を拝見予定。

日刊IWJガイド「<本日の岩上さんのインタビュー>本日12時半より、大阪から岩上さんによる『近代日本の植民地主義とジェンタイル・シオニズム』著者・役重善洋氏インタビュー第2弾をライブ配信します!/『時の人』自由党・玉城デニー衆議院議員特集!今日午後8時より、2016年2月5日に収録した、IWJ記者による玉城デニー議員インタビューを再配信します!/米国が中国に対し制裁措置として追加関税を発動!中国も対抗措置として関税を課し、さらにWTOに提訴へ!? 気分はもう世界経済戦争!?/
IWJの第9期が始まったばかりですが、新しい期のスタート時としては、ご寄付・カンパがかつてないピンチです! どうかご支援をよろしくお願いいたします!/IWJでは現在、テキスト班の新メンバーを緊急大募集中! 事務・ハドル班、ウェブ動画班の新メンバーも引き続き募集しています!」2018.8.24日号~No.2171号~

2018年8月23日 (木)

イタリアのNATOたかりや...遠すぎた橋

Finian CUNNINGHAM
2018年8月16日
New Eastern Outlook

 今週、イタリアでの橋の壊滅的崩壊は、崩壊しつつあるイタリアのインフラと、それがいかに生活に危険をもたらしているかを巡る国民の抗議を引き起こした。だが、イタリアやヨーロッパ中の人々が問うべき疑問はこれだ。彼らの政府が、極めて重要な民生インフラを無視しながら、何百億ドルもNATO軍国主義に使っているのはなぜか?

 今週ジェノバで、象徴的なモランディ高速道路高架橋が崩落した際 - これまでの死亡者39人 - イタリア報道機関や公的な人々の合意は、橋の事故が起こるべきして起きた惨事だということだった。

 川や住宅や工業地帯崩壊をまたぐ高速道路の高架部分、約200メートルが何十台もの乗用車やトラック通過中。自動車がコンクリートと鉄のガードとともに下の地面に40メートル墜落し、現場は“この世の終わりのよう”だったと衝撃を受けた目撃者たちは言う。

 正当な保守作業の欠如が、橋崩壊の原因だとされている。当時の気象条件は土砂降りの嵐と雷だったと報じられている。だが、こうした条件は、高速道路の高架橋全体が揺れ、崩落した理由の説明には到底ならない。

 モランディ橋は、51年前、1967年に建設された。二年前、ジェノバ大学の工学教授が、構造が酷く劣化しているので、高架橋は完全に掛け替える必要があると警告した。もし当局が長年にわたるpiecemeal修理作業ではなく、適切な行動をしていれば惨事が避けられていたはずであることに疑いの余地はない。

 イタリア・マスコミ報道は、今回の事故は、イタリアで、過去五年間で五度目の橋崩壊だと報じているとBBCが伝えている。

 現在、他のインフラ施設も致命的事故になりかねないという恐怖の中、イタリア政府は道路やトンネルや橋や高架橋の全国的な安全性調査を呼びかけている。

 イタリアが、一体なぜ、民生の向上ではなく、軍備更新や購入用の国家予算を増やしているかという、大衆のせっぱつまった要求の問題のはずだ。NATO同盟の全てのヨーロッパ加盟国同様、イタリアも、アメリカ合州国から、軍事支出を増加するよう圧力をかけられている。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、NATO予算を優先事項として、ヨーロッパ諸国が軍事支出を国内総生産 (GDP)の2パーセントの水準にまで増やすよう長広舌を振るった。トランプは、その数値を4パーセントへと倍増さえしている。

 ヨーロッパの同盟諸国に対するワシントンの要求はトランプ以前からのものだ。バラク・オバマが大統領だった2015年のNATOサミットで、2パーセントの目標を満たすべく、予算割り当てを増やすというアメリカの圧力に、軍事同盟の全加盟国が同意していた。NATO強化の主な理由として、ロシアによる武力侵略の脅威とされるものが再三繰り返された。

 イタリアも他のヨーロッパ諸国同様、2015年サミット以来、年間軍事支出を毎年大幅に増加していることが数値でわかる。増加傾向は、十年来の減少の逆転だった。現在、イタリアは軍に年間約280億ドル支出している。これはGDPのわずか約1.15パーセントにあたり、アメリカが要求するGDPの2パーセントという目標よりだいぶ少ない。

 ところが気がかりなのは、イタリアのエリザベッタ・トレンタ防衛大臣が、トランプの国家安全保障問題担当補佐官ジョン・ボルトンに、イタリア政府は、今後、NATOの目標額に必ず達するつもりだと請け合ったと報じられていることだ。現在の数値に対し、イタリアの年間軍事予算を、およそ倍増するのだ。

 一方、イタリア国民は、社会的支出や民生インフラ削減という長年の緊縮経済に辛抱させられてきた。

 同盟と五つ星運動で構成されるローマの新連立政権は、緊縮政策の撤回を呼びかけ、公共投資の増加を約束していた。マッテオ・サルヴィ副首相などの指導者たちも、時にNATOに対する不熱心な見解を述べていた。

 今週の橋の大惨事後、ポピュリスト連立政権は、公共サービスへのより多くの投資という主張を繰り返した。

 それにもかかわらず、イタリアはNATO予算増加というワシントンの要求を固守するとイタリア国防大臣が一体なぜ請け合うのだろう? 五つ星運動に所属するトレンタ防衛大臣は90機のアメリカの新世代F35戦闘機を購入するという政府の約束は変わらないと言っている。

 合計数値では、イタリアは過去十年間、軍事に約3000億ドル使った。過去十年間の支出は、2008年の金融崩壊前の安定していたドル価格にすれば、より多い。それなのに、イタリア政府は、ポピュリスト的主張にもかかわらず、ワシントンのNATOへの最後通牒であるGDPの2パーセントという目標を満たすため、今後更に多くの資源を軍に割り当てることを計画している。余りに多くの緊急な社会的需要や、無視されてきた公共インフラを考えれば、目標値は、全く恣意的で、嫌悪さえ催すように思える。

 今、イタリア高速道路橋が崩壊しているのに、アメリカが率いるNATOの要求を満たすのに、イタリア経済が更に向けられて、大衆の安全の将来は一層暗く見える。

 しかも、このジレンマはイタリアに限らない。NATO加盟ヨーロッパ諸国全てが、ワシントンによって、無理矢理、軍事予算を大幅に増加させられている。ヨーロッパ諸国を“アメリカによる保護”をせびる“ただ乗り”だとトランプ大統領は攻撃した。軍事予算を増加させるための攻撃で、トランプはドイツに的を絞った。あらゆる脅しの後、ヨーロッパも応えているようだ。先月ブリュッセルで開催された年次NATOサミットで、アメリカ以外の加盟国が、国家軍事予算を合計で、一年間だけでも400億ドル増やしたとノルウェー人のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は吹聴した。

 昨年、ロシアとの戦争時、軍隊の大量輸送を容易にするため、ヨーロッパの道路やトンネルや橋インフラは大規模改良が必要だとNATOの計画者連中が苦情を言っていたのはきつい皮肉だ。ヨーロッパ各国政府は、特にNATO軍の要求を満たすため、民生交通ネットワークへの国家支出を増やさねばならないというのが含意だ。

 寄生虫が、宿主の血を更に渇望しているのに匹敵するひどさだ。NATO軍国主義に過剰な支出をするために強要されている緊縮経済政策が主な理由で、ヨーロッパ・インフラは既に荒廃している。社会投資への公的需要が喫緊な時に、アメリカ軍産複合体助成のため、より多くの財源を投資しろというワシントンの命令にヨーロッパ政府は従っている。この無鉄砲でばかげた支出は、全てロシアの脅威からヨーロッパ諸国民を守るという建前のためだ。

 ところが、ヨーロッパ諸国民にとって最大の脅威は、ワシントンと手下のNATOたかりやが、安全な道路や橋や他のインフラ構築に使われるべきヨーロッパの資源を垂れ流していることなのは余りに明らかだ。

Finian CUNNINGHAM
主要マスコミの元編集者、記者。国際問題に関し、extensively書いており、記事は数カ国語に翻訳されている。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/08/16/italy-nato-racket-bridge-too-far.html

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 『遠すぎた橋』という題名の映画があるらしい。辺野古、陸上イージス。人ごとではない。

 とんでもないスラップ訴訟のことに一切触れない大本営広報部、共犯としか思えない。

日刊IWJガイド「橋下徹氏による岩上さんへの『スラップ訴訟』は本日11時より大阪地裁で第3回口頭弁論!終了後は大阪弁護士会館で報告集会もあります!ぜひお集まりください!損害賠償を求め橋下氏への反訴も提起!/今日午後8時より、岩上さんによる『パレスチナの平和を考える会』事務局長・役重善洋氏インタビュー(後編)を冒頭のみフルオープンで再配信!明日24日午後0時30分より、役重氏インタビュー第2弾を生中継!/自由党・玉城デニー衆議院議員! 今日午後6時より、2015年5月9日に開催され玉城デニー議員が登壇した『第41回ロックの会 IWJ NIGHT』を再配信します!/IWJの第9期が始まったばかりですが、新しい期のスタート時としては、ご寄付・カンパがかつてないピンチです! どうかご支援をよろしくお願いいたします!/IWJでは現在、テキスト班の新メンバーを緊急大募集中! 事務・ハドル班、ウェブ動画班の新メンバーも引き続き募集しています!」2018.8.23日号~No.2170号~

2018年8月22日 (水)

資本主義は我々を殺しつつあるのだろうか?

2018年8月17日
Paul Craig Roberts

 ハーマン・E・デイリーなどの生態経済学者は、公害と資源の枯渇という外部経済が、国内総生産に含まれていないので、GDPの増加が利得なのか損失なのかわからないことを強調している。

 外部費用は膨大で増大しつつある。歴史的に、製造会社や工業会社や企業農業や都市下水施設や他の犯人連中が、その活動の費用のつけを環境や第三者に回してきた。最近、主要成分がグリフォセートであるモンサントのラウンドアップが発がん性物質と思われることをめぐり、多くの報道が次々とされている。

 最近、公衆衛生擁護団体Environmental Working Groupが、彼らの実験で、45人中、2人を除く子供のエーカーとケロッグとゼネラル・ミルズ製のグラノーラやオートミールやスナック・バークを含む朝食でグリフォセートを発見したと報じた。https://www.theguardian.com/environment/2018/aug/16/weedkiller-cereal-monsanto-roundup-childrens-food

 ブラジルでの試験では、母乳の83%がグリフォセートを含んでいることが明らかになった。https://www.telesurtv.net/english/news/Brazil-Poisonous-Agrotoxin-Found-Over-80-of-Breast-Milk-Samples-in-Urucui-20180809-0008.html

 最も広く販売されているドイツ・ビールのうち14種がグリフォセートを含んでいるとミュンヘン環境研究所が報じた。https://sustainablepulse.com/2016/02/25/german-beer-industry-in-shock-over-probable-carcinogen-glyphosate-contamination/#.W3XKtC-ZOGQ

 グリフォセートは、メキシコ農民の尿やメキシコの地下水で発見されている。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5486281/

 サイエンティフィック・アメリカが、ラウンドアップの“不活性成分がヒト細胞、特に胚や胎盤や臍帯の細胞を殺傷しかねない”と報じている。
https://www.scientificamerican.com/article/weed-whacking-herbicide-p/

 あるドイツ人毒物学者は、モンサントが率いるグリフォセート・タスク・フォースのグリフォセートは発がん性物質ではないという結論を受け入れたドイツ連邦リスクアセスメント研究所と欧州食品安全局を科学的な詐欺のかどで、非難した。https://gmwatch.org/en/news/latest-news/17307-german-toxicologist-accuses-eu-authorities-of-scientific-fraud-over-glyphosate-link-with-cancer

 こうした所見に関する議論は、業界から資金提供された科学者は、グリフォセートとガンとの間のつながりを報告せず、一方、独立した科学者は報告しているという事実に由来する。企業に資金提供された科学者連中は独立しておらず、結論を出すために自分が雇われていることの反対結論を出す可能性は少ないのだから、驚くにはあたらない。

 グリフォセートが混ぜられた製品を危険と分類するために、どの程度の汚染が必要なのかに関しても議論がある。使用と、時間とともに、濃度は上がると思われる。遅かれ早かれ濃度は、被害を与えるのに十分なものとなろう。

 この記事での要点は、もしグリフォセートが発がん性物質であれば、失われた命や医療費の経費をモンサント/バイエルは負担していないということだ。もしこうした費用がモンサントにとって外部費用でなく、つまり同社がこの費用を負担せねばならなかったなら、製品の費用はその使用が経済的にはならなかったはずだ。費用の方が、利点を上回るはずなのだ。

 政治家や規制機関は賄賂に弱く、仕事仲間に便宜を図るので、真実を見出すのは極めて困難だ。ブラジルでは、議員たちが実際農薬使用の規制を撤廃し、スーパーマーケットでの自然食品販売を禁止しようとしている。https://gmwatch.org/en/news/latest-news/18409-brazilian-lawmakers-seek-to-deregulate-pesticide-use-ban-sale-of-organic-food-in-supermarkets

 グリフォセートの場合、モンサント/バイエルの形勢が不利になりつつあるのかも知れない。カリフォルニア州上位裁判所は、州当局に、除草剤グリフォセートを、発がん性物質として、プロポジション65に追加するよう命じた。https://gmwatch.org/en/news/latest-news/18411-monsanto-loses-another-court-case-over-glyphosate-weedkiller

 先週サンフランシスコ陪審が、ラウンドアップによって引き起こされたガンによる損害で、元校庭整備員への2億8900万ドル支払いを命じた。モンサントが上訴し、訴訟が校庭整備員が亡くなるまで延々続くだろうことに疑問の余地はない。だが、これは前例で、陪審員がお雇い科学を疑い始めたことを示している。約1,000件の同様訴訟が係争中だ。https://www.cnn.com/2018/08/10/health/monsanto-johnson-trial-verdict/index.html

 もしラウンドアップが発がん性物質なのであれば、それは一社の一製品に過ぎないということに留意すべきだ。これで外部経済がどれほど大規模なものかわかるだろう。実際、グリフォセートの有害な影響は、この記事が扱っているものを遥かに超えている。https://www.thcfarmer.com/community/threads/expert-gmos-to-blame-for-problems-in-plants-animals.39442/
 GMO餌は家畜にも大きな被害を与えている。http://educate-yourself.org/cn/Mike-McNeil-Whats-Killing-the-Cows-Day8-24July2018-55mins.mp3

 大気や水や土地資源に対する化学農業の悪影響を検討しよう。フロリダ州は農地からの化学肥料流出による藻類ブルームに悩まされており、製糖業はオキーチョビー湖の破壊に大いに貢献した。https://www.miamiherald.com/news/politics-government/state-politics/article216329745.html

 肥料流出は、海洋生物を殺し、人間に有害な青緑色の藻類ブルームを引き起こす。現在、フロリダ州のセント ルーシー川の水は10倍も毒性があり、手を触れられない。https://weather.com/science/environment/news/2018-08-10-florida-algae-bloom-st-lucie-microcystin

 赤潮は自然発生し得るが、肥料流出がその成長や持続を促進しているのだ。更に、公害が温度上昇を引き起こすことも赤潮を増やし、湿地の不動産開発用干拓も、自然の浄化無しで、水が素早く移動することになる。https://www.theguardian.com/us-news/2018/aug/13/florida-gulf-coast-red-tide-toxic-algae-bloom-killing-florida-wildlife?utm_source=esp&utm_medium=Email&utm_campaign=GU+Today+USA+-+Collections+2017&utm_term=283418&subid=1480231&CMP=GT_US_collection

http://www.wafb.com/story/38850029/graphic-red-tide-off-fl-gulf-coast-kills-marine-life

 水質が悪化し、藻類ブルームが増殖する中、フロリダ州の対応は水質監視計画縮小だった。https://www.miamiherald.com/news/local/environment/article215993665.html

 企業農業によるこうした大規模な外部経済を考えると、国内総生産で砂糖や農産品に帰せられている価値は、明らかに過剰だ。化学肥料流出による藻類ブルームで引き起こされる海洋生物の大量死や観光業の損失や人の病気の費用を上乗せしていないため、消費者が支払っている価格は余りに少なく、企業農業が享受している利益は余りに多い。

 私はこの記事で外部経済問題の表面を引っかいた程度に過ぎない。ミシガン州では、州の水道水が安全ではないことがわかった。何十年も軍事基地や何千もの消費財の製造に使われている化学薬品が飲料水に入っている。https://www.cnn.com/2018/08/16/health/tap-water-crisis-toxic-michigan-pfoa-pfas/index.html

 一例として、どれか事業を取り上げ、その事業の外部経済を考えてみよう。例えばアメリカ人の雇用をアジアに海外移転したアメリカ大企業を考えてみよう。大企業の利益は増大するが連邦や州や地方の税基盤は減少する。社会保障やメディケイドのための給与の税基盤は減少し、こうしたアメリカの社会的、政治的安定性の重要な基盤を危機に押しやっている。教師や他の政府職員の年金用の税基盤は減少している。もし雇用を海外移転した大企業が、こうした費用を負担しなければならなければ、彼らは利益が出るまい。言い換えれば、膨大な費用を全員に負担させることで、ごく少数の人々が儲けているのだ。

 ペットショップという単純な例を考えてみよう。美しい45から60センチのニシキヘビやボア・コンストリクターやアナコンダを売り買いするペットショップ経営者も客も、こうした蛇が一体どれほど巨大になるか全く考えないし、輸入を許可する規制当局もそうだ。他のペットや子供を貪り食いそうで、大柄で頑健な成人の生活を息苦しくさせる生き物に直面すると、蛇はエバーグレイズ国立公園の湿地に捨てられ、そこで自然の動物相を破壊し、今や余りに増えすぎて管理できなくなっている。外部費用は、全てのそうした蛇がペットショップによって売られる価格総計を何倍も容易に超える。

 生態経済学者は、資本主義は、天然資源に対する人間による圧力がごく僅かな“空の経済”では機能すると強調している。ところが、資本主義は天然資源が枯渇寸前の“一杯の経済”では機能しないのだ。GDPで測られる経済成長に関連する外部費用は、産出価値より高額な可能性があるのだ。

 これこそ、我々が今直面しているものだという説得力ある主張が可能だろう。種の消滅、食べ物や飲料や水や母乳や空気や大地への毒の出現や、地下水を破壊し地震を引き起こす水圧破砕によって、エネルギーを確保しようとする必死の取り組みなどは、地球が追い詰められている兆しなのだ。突き詰めて考えれば、何世紀にもわたって、資本主義が生み出してきた全ての利益は、おそらく資本家連中が生産の全部原価を負担してこなかったおかげなのだ。彼らは環境や第三者に費用のつけを回し、残った金を利益として懐に入れているのだ。

 更新: 昨年イギリスの医学専門誌ランセットが、公害の年間費用はグローバル経済の約6%で、一方、年間グローバル経済成長率は、約2パーセントで、福祉は2パーセント増ではなく、この差異の年間約4%減少したと推計しているとハーマン・デイリーが書いている。言い換えれば、既に経済成長は、不経済な状況になっている可能性がある。下記を参照。https://www.usnews.com/news/world/articles/2017-10-19/study-world-pollution-deadlier-than-wars-disasters-hunger

 Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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 角川新書『使ってはいけない集団自衛権』を読み始めた。途中でとめたくなくなる。大本営広報部洗脳電気箱が招くわけがない鋭い論者、著者の菊池博英氏のご本を読むようになったのはIWJインタビューのおかげ。IWJアーカイブに菊池博英の講演やインタビューは数多い。たとえば下記。

 「英EU離脱と米トランプ氏当選は『新自由主義は間違いだ』と国民投票で証明した! 『ポピュリズム』など非常に失礼だ!」――「山田正彦の炉端政治塾」経済アナリスト・菊池英博氏講演 2016.12.17


GDPマイナス成長で日本はますます「貧乏」に! もはやアベノミクスはKO寸前! 富岡幸雄氏、菊池英博氏、植草一秀氏の三専門家に直撃取材! 2016.3.8

 沖縄知事選、翁長氏側の候補者が決まりそうだ。「第41回ロックの会」のビデオで、お話を拝聴した記憶がある。

 日刊IWJ ガイド「<今日の再配信>今日午後8時より、『安倍総理は「ジェンタイル・シオニスト」!? 米国の「イスラエルびいき」の背後にある「ジェンタイル・シオニズム」とは!? 岩上安身が「パレスチナの平和を考える会」事務局長・役重善洋氏にインタビュー(前編)』を、冒頭のみフルオープンで再配信します!/<今日の再配信>自由党・玉城デニー衆議院議員特集! 今日午後6時より、『「第41回ロックの会 IWJ NIGHT」AIIBの衝撃、TPP医療崩壊、辺野古移設と安保法制を徹底解説 ―出演者:宋文洲氏(経済評論家)、西尾正道氏(北海道がんセンター名誉院長)、山田正彦氏(元農林水産大臣)、玉城デニー氏(衆議院議員)』を再配信します! 自由党の玉城デニー衆議院議員が立候補へ!? 自公陣営が選挙体制を着々と整える中、オール沖縄は沖縄の未来をかけて迅速にまとまることができるか!?/次々と発覚する原発ムラのデタラメ! フクイチ敷地内で保管する低レベル放射性廃棄物のドラム缶8千本に腐食が見つかる! さらに、トリチウムを含んだ低濃度汚染水の中に、除去されたはずのストロンチウム90とヨウ素129が基準値を超えて存在! そもそも、原発などなくても、猛暑を乗り切っている!電気は十分足りている!/『赤坂自民亭』で有名になった西村康稔官房副長官は過去に買春していた!? バスケットボール選手が買春すれば処分されるが、西村官房副長官の疑惑はスルー!?/元ツイートは、周知の事実にもとづくものだった! それなのに1回のリツイートだけで名誉棄損!? 損害賠償を求め橋下氏への反訴も提起!橋下徹氏によるIWJ岩上安身への『スラップ訴訟』8月23日 第三回口頭弁論・報告集会のお知らせ/IWJの第9期が始まったばかりですが、新しい期のスタート時としては、ご寄付・カンパがかつてないピンチです! どうかご支援をよろしくお願いいたします!/IWJでは現在、テキスト班の新メンバーを緊急大募集中! 事務・ハドル班、ウェブ動画班の新メンバーも引き続き募集しています!」2018.8.22 日号~No.2169 号~

2018年8月21日 (火)

愛国者に敵対するようになった愛国心

2018年8月14日
Paul Craig Roberts

 アメリカが、どれほどおかしくなっているかを理解するため、愛国心が、今や体制に反対意見の人々の弾圧と関連付けられていることを考えてみよう。

 多くのアメリカ人の困難な暮らしのことを何も知らない裕福なフットボール・チームのオーナーや、責任を負わず、適正手続きも無しで、街頭や自宅で黒人を年中銃殺する警官連中が、黒人アメリカ国民殺害で、警官が責任を負わないことに抗議して、先週、国歌演奏中にひざまずいた三人のマイアミ・ドルフィン選手に酷く激怒した。

 ブロワード郡警官互助会は、早速ドルフィンの切符割引制度から抜けると発表し、腹立ち紛れに自分の損になることをした。これから、警官は、ゲームに行きたければ、正規価格を支払わなければならない。

 我々を支配している連中は、あらゆる抗議行動は、警官が人々に気づかれずに、抗議行動参加者にティザー銃を使ったり、殴打したりできる孤立した街角で起きて欲しいと思っている。連中は、何万人もの観客がスタンドから、更に何百万人もがテレビで見ているフットボール・ゲームで、抗議行動をさせたくないのだ。そうした目立つ会場では、警官はティザー銃を使えず、抗議行動参加者を殴打できない。

 しかも、抗議行動は一目につき、黒人プロ・スポーツ選手たちが、抗議行動のために、良い収入の暮らしを危うくするほど不安になるような一体何事が起きているのだろうかとアメリカ人に考えさせてしまうのだ。抗議行動を始めたコリン・キャパニックは、憲法上の権利を行使したかどでサンフランシスコ・フォーティーナイナーズのクォーターバックを首にされ、裕福なNFLチーム・オーナー連中に要注意人物リストに載せられてしまった。

 抗議行動をした人々に抗議する連中は反アメリカだ。軍安保複合体や、グローバルな搾取的大企業の強欲のために、アメリカを、自国民にとって必要なことを無視する警察/好戦国家に変えてしまった連中の愚かな手先だ。

 彼ら自身が体制の被害者である普通のアメリカ人が“ああ、連中は抗議してもよいが、国歌演奏中や、公的行事ではだめだ。”と言うのを聞くたびに私はがっかりする。こういうことを言う人々は、アメリカ人とは一体何か、全く分かっていないのだ。

 アメリカ人本人が、もはやアメリカ人であることが、一体何を意味するかわからなくなっているのだから、彼らが国を失ってしまったことに、何の不思議もない。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/14/patriotism-has-been-turned-against-patriots/

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 アジア大会スポーツ選手の不祥事は報じるが、対抗馬とされる御仁も、緊急事態条項推進派という悪辣な茶番を報道する電気洗脳大本営広報部はないようだ。日本人の一体何割が、緊急事態条項について、たとえ一時間でも、考えたことがあるだろうか? あるいは関連書籍をお読みだろうか。多少とも、内容を知っていれば、のんびり呆導をながめていられないのではと想像するのだが。

 日刊IWJガイド「<本日の再配信>本日午後8時より『「『沖縄差別』の仕組みの上に成り立つ日米安保体制」、「抑止は『ユクシ』(=嘘:沖縄語)」、本土の人たちに知って欲しい沖縄から見た基地問題の歴史~岩上安身による沖縄大学名誉教授 新崎盛暉氏インタビュー』を再配信します!/<昨日の岩上さんのインタビュー>『日本ナショナリズムの成り立ちを考えると、古代の天皇制まで遡らざるを得ない!』岩上安身が書籍編集者・前高文研代表 梅田正己氏にインタビュー(第三弾)!/9条改憲に固執する安倍総理と災害に便乗して緊急事態条項を挿入しようとする石破茂元幹事長!憲法を破壊する政党と化した自民党は日本列島全土をミサイル戦の戦場にしたいのか!?/カタールが150億ドルの直接投資に続き『通貨スワップ協定』でトルコを支援! 米国の中東政策との関係は!?/元ツイートは、周知の事実にもとづくものだった! それなのに1回のリツイートだけで名誉棄損!? 損害賠償を求め橋下氏への反訴も提起!橋下徹氏によるIWJ岩上安身への『スラップ訴訟』8月23日 第三回口頭弁論・報告集会のお知らせ/IWJの第9期が始まったばかりですが、新しい期のスタート時としては、ご寄付・カンパがかつてないピンチです!どうかご支援をよろしくお願いいたします!」2018.8.21日号~No.2168号~
投稿日 2018年8月21日

2018年8月20日 (月)

ベネズエラ経済を破壊するアメリカ合州国

Margaret Kimberley
2018年8月15日
Black Agenda Report

 “経済制裁は、他の手段による、大半の目には見えない戦争だ。”

 アメリカの商業マスコミは、反ベネズエラ・プロパガンダの揺るぎない猛攻を続けている。ワシントン・ポストは、ベネズエラ“海賊”について、いきまき、ニューヨーク・タイムズは、エクアドルは必死のベネズエラ移民に圧倒されていると報じている。不幸なことに、プロパガンダはかなりの程度成功している。“社会主義は機能しない、ベネズエラを見れば良い”というのは良くあるセリフだ。公の場で話す機会がある人物が、真実を暴露するのは極めてまれだ。ベネズエラの問題は、まずはオバマ政権時代、そして今トランプ政権下で続いている、アメリカ合州国政府によって作り出されたものだ。

 ベネズエラ政府と国民に対する経済制裁が、ハイパーインフレと飢餓と、かつて、あの地域の羨望の的だった壊滅的な医療制度を生み出した。経済制裁は、他の手段による、大半の目には見えない戦争だ。軍隊も銃弾も爆弾も無人機も兵器もない。だが経済制裁は、トランプならそれまでやりかねないあらゆる軍事侵略と同様に破壊的だ。

 “ベネズエラの問題はアメリカ合州国政府によって作り出された。”

 2015年、バラク・オバマが、ベネズエラは“アメリカ合州国の国家安全保障と外交政策にとって並はずれた途方もない脅威”だと宣言する大統領命令を出した。この命令が経済制裁を課するには必要だ。だが経済制裁は、アメリカ大企業や個人が標的にされた国と事業ができないだけではない。ベネズエラと経済取り引きをするあらゆる国も経済制裁の対象になる。アメリカ合州国は衰退しつつある状態でさえ、無視できない360キロの金融ゴリラだ。

 ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNN、MSNBCや他のマスコミは、ベネズエラの荒廃を報じるが、危機的状況をもたらしたのがアメリカ合州国だということは決して暴露しない。経済制裁ゆえに ベネズエラは売れない石油を持っている。個人でさえ、ベネズエラへの送金のような単純なことをするのを禁じられている。

 最近、連邦裁判所判事が、債権者がアメリカを本拠とするベネズエラの石油子会社CITGOを没収できると裁定した。債権者はカナダの採掘会社クリスタレックスとコノコ・フィリップスだ。経済制裁のおかげで、ベネズエラは債務の再交渉が不可能なので、両社がゴミあさりをする好機を得る可能性がある。これは国際資本がもたらす犯罪の典型だ。ベネズエラは意図的に貧窮化させられ、そこで僅かに残ったものも略奪される。

 “アメリカ合州国は衰退しつつある状態でさえ、無視できない360キロの金融ゴリラだ。”

 ベネズエラは、金融的に孤立し、現在ブラジル、コロンビアとエクアドルの右翼政府に包囲されている。アメリカ合州国は兵士を一人たりとも派兵せずにマドゥロを打倒できるのだ。代理勢力に資金提供するという確かな犯罪は、リビアでと同様、ベネズエラでも有効なはずだ。

 これほどの厳罰を受けるような、一体どういういことをベネズエラはしたのだろう? 最初は故ウゴ・チャベス大統領の下で、そして再びニコラス・マドゥロが受け継いで社会主義政権にあえて投票したのだ。商業マスコミは、マドゥロのことを“(チャベスに)選ばれた後継者”と嘲笑的に呼んでいる。彼は副大統領だったので、アメリカ同様、在職中に死亡した大統領を継いだことを意味している。彼の正統性を損なう取り組みは出版・報道の自由があると主張する国において、国家とマスコミがいかに協力して活動しているかというもう一つの例だ。

 今、巨大ソーシャル・メディア企業は政府と共謀し、誰であれベネズエラの見解に関心がある人をしっかり孤立化させるようにしている。Facebookはサービスの条件に違反していると主張してVenezuelaAnalysisのページを一時的に削除した。FacebookがVenezuelaAnalysisを削除したのは、これが初めてではなく、最後でもないだろう。

 “巨大ソーシャル・メディア企業は政府と共謀し、誰であれベネズエラの見解に関心がある人をしっかり孤立化させるようにしている。”

 Black Agenda Reportは、ロシアゲートは左翼を検閲する口実に違いないと予言していた。ソーシャル・メディアはネットワークや主要新聞としての商業マスコミの一環だ。ベネズエラの存在がソーシャル・メディアからすっかり消える日が来るかも知れない。

 2015年と2016年にバラク・オバマは経済制裁を課する大統領命令を出した。2017年1月初め、ドナルド・トランプへの“円滑な移行”を可能にすべく、命令は更新された。

 “これで、新政権が、国家安全保障チームを整える作業をし、それぞれの被任命者への上院による指名承認を得る間、わが国の国家安全保障を守るため新政権が即座に必要な更改を行う必要が無くなる”。安全な国家とて、首尾一貫していなければ無意味だ。

 だが反戦運動は首尾一貫しているだろうか? 左翼だと自称する人々は首尾一貫しているだろうか? もしトランプが威嚇を実行し、軍事行動することになったら、一体どれだけの人々がアメリカによる侵略に反対して街頭で抗議行動をするだろう? アメリカの指図で困窮化させられているベネズエラ国民には、彼らのために物を言ってくれるロビーはいない。議員の誰一人、彼らのため発言に立ち上がり、憤激を表明しない。社会主義者とされるバーニー・サンダースさえ、チャベスを“死んだ共産主義独裁者”とかたづけた。不幸なことに、こういう評価をするのは彼だけではない。

 反戦だと主張する人も皆ベネズエラ国民を見舞っている進行中の惨事に反対すべきなのだ。超党派戦争政党による決定のおかげで、彼らは苦しみ死につつある。もし左翼が、分析と行動の上で首尾一貫していれば、大統領はベネズエラや他の国を、こういうやり方で攻撃しようとしていなかったはず。実に多くの人々に打撃を与える攻撃を続けているかどで、アメリカ合州国を全世界で経済制裁しようではないか。

 マーガレット・キンバリーのフリーダム・ライダー・コラムは、BARに毎週掲載され、広く転載されている。彼女は http://freedomrider.blogspot.com で、まめに更新しているブログも維持している。キンバリー女史はニューヨーク在住で、Margaret.Kimberley(at)https://blackagendareport.com/ で電子メールで連絡できる。

記事原文のurl:https://blackagendareport.com/freedom-rider-united-states-destroys-venezuelas-economy

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 東京新聞記事、石破元幹事長が「緊急事態条項」九条改憲より「緊急性があり優先度が高い」と訴えるとある。
<自民党総裁選 改憲の行方>緊急事態条項の創設 国に権限 人権侵害に懸念

 どちらになっても国民を地獄が待っている。石破元幹事長を支持するらしきタレントにはあきれるが、他の「新聞」「テレビ」、「緊急事態条項」問題を扱っているのだろうか。警察の手抜かりで逃げた男の行方を追う暇があるなら、「緊急事態条項」特集をと思うが、注意を逸らせるのが大本営広報部の本務。期待はしない。

沖縄知事選が気になる。植草一秀の『知られざる真実』の最新記事は、
玉城衆院議員のオール沖縄候補者擁立が最善

2018年8月19日 (日)

モンサント社有罪判決は始まりに過ぎない

2018年8月15日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook

 カリフォルニア州の陪審員裁判は、農薬とGMOの巨大企業モンサント、現在のバイエル/モンサントの有罪判決という結果になった。陪審は、非ホジキン・リンパ腫を患っている元学校校庭整備員のドウェイン・ジョンソンに、2億8900万ドルの損害賠償を支払うようモンサントに命じた。彼の弁護士は、癌はモンサントのグリフォセートを主材料にした除草剤ラウンドアップによって引き起こされたと主張していた。モンサントが評決を不服として上告する予定なのも驚くべきことではない。裁定の影響は、上告の結果にかかわらず、世GMO・農薬ビジネス・モデル丸ごとにとり、極めて大きな問題となる、世界中に及ぶ影響を解き放つことになる。

 サンフランシスコのカリフォルニア州上位裁判所でのジョンソン裁判、ドウェイン・ジョンソン 対 モンサント社、CGC-16-550128は、アメリカ合州国中で裁判を待っている、ラウンドアップの成分が癌を引き起こしたと主張する5,000件以上の訴訟で最初のものだ。

 カリフォルニア州郡学校区元害虫駆除担当者だった46歳のジョンソン氏は、モンサントのラウンドアップとレンジャー・プロを、二年半以上、一年に30回、郡内全ての学校校庭で使っていた。

 雑誌インシュランス・ジャーナルによれば、この有罪判決は、モンサント グリフォセートを主材料にしたラウンドアップに対する何千もの同様な訴訟の結果に影響しかねない。同じ弁護士事務所で、カリフォルニア州を本拠とするBaum, Hedlund, Aristei & Goldman, PCが、裁判を待つ他の訴訟でも弁護団の一員として関わっているのは注目に値する。

 裁判で暴露されたモンサント

 モンサント訴訟の弁護士の一人、ロバート・ケネディ Jrが、裁判での原告弁護士と、モンサント弁護士による反対尋問の要約を書いた。モンサントによる否定的な発ガン性実験結果の隠蔽や、モンサントのラウンドアップ除草剤には発ガン性がないとされる立証されていない、安全だというモンサントの主張への“専門家”科学証言のウソや巨額謝礼の衝撃的なパターンを明らかにした。

 のっぴきならない告白の一つとして、モンサントの毒物学者ドナ・ファーマーは、モンサント社内eメールを突きつけられて、彼女の一番の関心事は、公衆の健康より、各種規制の順守だったことを認めざるを得なかった。ファーマーは、グリフォセートを擁護するのに同意した自立した科学者とされる人物のために記事を代作する画策もしたのを認めることも強いられた。“あれに何もまずいことはありません”が彼女の答えだった。

 2015年に、グリフォセートが“おそらく発ガン性”だと判断したWHOの機関、国際がん研究機関(IARC)によって使われた動物実験に反対する証言をするようモンサントから金を貰うまで、謝礼を得ていた別のモンサント証人、ウォーレン・フォスター博士は、グリフォセートや、その発ガン性についての研究したことが無かったのを認めるよう強いられた。IARCの決定は、約31%のグリフォセートを含む同社のラウンドアップは、動物にも人間にも無害だというモンサントの主張にとって大打撃だった。

 別のモンサントの毒物学者、マーク・マートンズ博士は、優れた専門家だと称賛しておいて、1999年、独立した毒物学者、ジェームズ・パリー博士による研究をモンサントがやめたのは一体なぜかと質問された。パリーの研究が、複雑な非公開のラウンドアップ処方が、遺伝子突然変異、ガンの潜在的前駆体を引き起こし得ると結論を出すと、モンサントは彼を中断させ、独立した科学者がパリーの研究を論評するのも拒否し、モンサントはパリーの研究をアメリカ環境保護庁(EPA)に渡すこともしなかった。もう一人のモンサント“専門家証人、ガン疫学者で、ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)准教授、ロレライ・ムッチ博士”は、モンサントが、彼女の証言に100,000ドル支払ったことを認めた。

 

 IARCのものに反するEPAが出した、グリフォセートが人間にとって発ガン性手ある“可能性は低い”という結論に対決した毒物学専門家クリストファー・ポルティエ博士の信頼性を、モンサントの弁護士たちが損なおうとした際、ポルティエは宣誓した上、グリフォセートに関する様々な齧歯動物研究で、誤った手法を機関が用いていたため、アメリカのEPAも、EUの欧州食品安全機関(EFSA)も15の腫瘍を見落としたと発言し、こう述べた。“

 

    主に化合物の発ガン性に関して決定をするのに、私は科学的な証拠を使用するのに生涯を費やし、それを適切に行うべく我々は長年活動してきました。彼らのこのやり方は驚くほど間違っていました。”

 チャールズ・ベンブルック博士の証言では、ラウンドアップを製造するためにグリフォセートに加えられる活性剤アジュバントとは別個に、グリフォセートだけを論じるEPAの主張は、“単一の成分だけでなく、ラウンドアップ処方そのものに、毒性があり、発ガン性”なのかどうかというより差し迫った疑問を隠蔽するために仕組まれた不正行為であると指摘された。

 要するに、サンフランシスコの裁判で明らかになったのは、モンサントのラウンドアップは安全だという主張と矛盾する研究をしている自立した毒物学者たちの信頼を傷つけるためのウソや隠蔽や秘密戦争のパターンの実証だ。

 ラットを使ったセラリーニらによる研究

 2016年2月26日、International Journal of Environmental Research and Public Healthで公表された論文審査を受けた科学論文で、フランス、カーン大学の生物学研究所のジル=エリック・セラリーニと、ハンガリー国立農業研究イノベーション・センター農業・環境研究所所長アンドラシ・サカーチが率いる毒物学者チームが、モンサントのラウンドアップを含む最も良く使われているグリフォセートを基本にする除草剤を実験した。彼らは、グリフォセートと組み合わせて使用される補助剤や処方を含め、全ての組み合わせを実験した。

 とりわけ彼らの実験は、グリフォセートを主材料として使用して調合された除草剤で、非公開の“処方”、つまり活性剤を含むものは、グリフォセート単独で実験するより非常に毒性が強く、細胞に対し、2000倍も毒性があると結論を出した。モンサントは、法律によって強制されているアメリカ政府に対しても、一般大衆に対しても、企業秘密の補助剤を決して明らかにしていない。

 今回のモンサントに不利なサンフランシスコ判決の結果は、大半がモンサント、そして現在はバイエル/モンサントによって販売されている有毒な発ガン性農薬に対する反対の高まりの始まりであることは明らかだ。世界中の憂慮する人々は、証拠をまとめて全容を明らかにして、我々がばかにされているだけでなく、命に関わる結果になりうることで、おもちゃにされているのに気づき初めている。

 アルゼンチンでは、公表されたばかりの研究で、“妊娠中に、環境で、グリフォセート主材料とする除草剤に曝露すると、ラットのメスの受胎能力を損なうのみならず、次世代の子に、四肢の異常発達を含め、胎児の成長遅延や奇形を引き起こすことがわかった”と科学者たちが判定した。グリフォセートを基本にする除草剤が大量に散布されているGMO大豆とトウモロコシ栽培の中心地にあたるアルゼンチンの町で暮らす人々について研究が行われ、全国平均のの二倍の出生異常が実証されている。

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F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”独占寄稿。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/15/monsanto-guilty-verdict-is-only-beginning/

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 筆者、GMOを主題に分厚い本を書いておられ、日本語訳もある(マネーハンドラー ロックフェラーの完全支配 【アグリスーティカル(食糧・医薬)】編)が、なぜかどうやら絶版。

 本ブログの「GMO」カテゴリーにも、彼の記事は多々ある。

 植草一秀の『知られざる真実』でも、同じ話題を書いておられる。
 発がん性で320億円賠償責任のラウンドアップ

 同ブログ最新記事「安倍政治が売国政治である決定的な証拠」も話はつながる。

 F. William Engdahl氏の別の専門、地政学でのIWJインタビューがある。

 【第183-184号】岩上安身のIWJ特報!日本を含めたユーラシアの分断をもくろむ「アメリカ帝国」 F.ウィリアム・イングドール氏インタビュー 2014.12.30

 日刊IWJガイド・日曜版「本日午後5時から【核兵器と戦争を考えるシリーズ特集 14・IWJ_Youtube Live】『8・6ヒロシマ平和の夕べ 2018 ―ヒロシマの継承と連帯を考える―』を再配信します!/本日午後6時からは【タイムリー再配信 225・IWJ_Youtube Live】『幕末に水戸学が生み出したマジカルワード「国体」! 日本史の中の天皇制 時の権力は天皇をどのように利用してきたのか!? 岩上安身による書籍編集者・前高文研代表 梅田正己氏インタビュー(第二弾)2/2』を冒頭のみフルオープンで再配信します!/
元ツイートは、周知の事実にもとづくものだった! それなのに1回のリツィートだけで名誉棄損!? 橋下徹氏によるIWJ岩上安身への『スラップ訴訟』8月23日 第三回口頭弁論・報告集会のお知らせ/IWJの第9期が始まったばかりですが、新しい期のスタート時としては、ご寄付・カンパがかつてないピンチです!岩上さんは8月23日に大阪地裁で橋下徹・元大阪府知事からの『スラップ訴訟』の第3回口頭弁論も控えています。どうかご支援をよろしくお願いいたします!/他」2018.8.19日号~No.2166号~

 2018年8月31日追記:全く同じ記事を訳している方がみられのに気がついた。
芳ちゃんのブログ
モンサントの有罪判決は始まったばかり

2018年8月18日 (土)

武器としての法律

2018年8月13日
Paul Craig Roberts

 ロバート・マラーは、元CIA長官ジョン・ブレナンと元FBI長官ジェームズ・コミーと現司法副長官ロッド・ローゼンスタインがでっち上げたいんちきであることが明らかになっているロシアゲートを捜査していることになっている。ロシアゲートは捏造なので、マラーは、ヒラリーの電子メールをハッキングして、前回の大統領選挙に影響を与えるというトランプ/プーチン策謀とされるものの一片の証拠も提示できずにいる。

 彼の捜査ではロシアゲートとされるものの証拠を何も提示できないので、無能で腐敗したアメリカ・マスコミと無頓着な国民が、そうした告訴がロシアゲートと何か関係があるだろうと思い込むだろうことが分かっているので、誰かを何かで告訴して、失敗したでっち上げから注意を逸らさなければならないと、マラーは結論したのだ。

 冤罪との戦いに直面すれば、マナフォートは取り引きに応じて、彼に対する告訴を取り下げるのと引き換えに、トランプとプーチンに関するウソを何かでっち上げてくれるだろうと期待して、マラーはポール・マナフォートを標的として選んだのだ。ところがマナフォートは断固として後に引かず、マラーに、でっち上げ告訴を続けるのを強いている。

 マナフォートは経歴として、共和党の政治運動にかかわってきた。彼は、ニューヨーク・ヤンキースの切符代金を、税務当局に申告していない在外投資信託で支払ったことや、彼の経済状況を詐称して、銀行融資を得ようとした罪のかどで告訴されている。検事の主張では、マナフォートは、経済状況の詐称で、融資を得ることに成功している必要は無く、融資を得ようとしただけで有罪なのだ。彼に不利な証言をした二人の人物は、告訴取り下げで報われた。

 マラーの捜査は、ロシアゲートに限定されている。言い換えれば、マラーには、ロシアゲートに無関係なことを捜査したり、起訴したりする権限はないのだ。司法副長官がトランプに対するロシアゲート策謀に加担しているがゆえに、マラーが権限外のことをしても、おとがめなしなのだろうと私は考えている。マラーとローゼンスタインは、売女マスコミが、マナフォート裁判をロシアゲートの一環として描いて、国民をだまし続けるのをあてにできるのがわかっているのだ。

 裁判の判事は検事を二度批判し、一度は、実行された詐欺の何らかの証拠を持っているのかと質問した。言い換えれば、検事として、陪審員には検討してもらいたくはない、現実詐欺と、詐欺未遂の違いを判事は理解できるのだ。

 ところが、連中がアメリカ合州国とロシアの大統領の罪をでっち上げようとしているのと同様、検事は判事の罪をでっち上げることができるのだ。それに気がついて、判事は引き下がった。

 マナフォート裁判で、アメリカ合州国が、いかに徹頭徹尾堕落しているか、おわかりになるはずだ。アメリカ司法省ほど堕落した組織はどこにもないと私は思っている。

 ロシアゲートが、堕落した進路を進み続けていることで、トランプ大統領が、いかに無力か皆様はお分かりになるはずだ。トランプは、自分を破滅させるべく最善を尽くしている司法省に影響力をあたえることすら出来ないのだ。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/13/the-law-as-weapon/

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 数日前、漫画「はだしのゲン」アラビア語に翻訳 エジプトで出版、というニュースを見た。エジプトで、三巻まで刊行されたという。広く読まれて欲しいもの。検索すると、ペルシャ語版も出されているようだ。ヘブライ語版は検索したが見つからない。なぜか納得。

日刊IWJガイド「<本日の再配信・核兵器と戦争を考えるシリーズ特集>本日午後8時より『自らの体験をもとに欧米三十数カ国で被爆の実相を語り、核兵器廃絶を訴える被爆医師・肥田舜太郎氏に岩上安身が訊く(後編)』を公共性に鑑みフルオープンで再配信します!
/米国の経済制裁が中・露・イラン・トルコの同盟形成を促す!? カタールの玉虫色外交も反米に転換!? 米国は強硬になればなるほど同盟国を失い中東で孤立! /東京経済大学の早尾貴紀准教授らが『イスラエル軍事エキスポ(ISDEF)』に会場を貸し出す川崎市に貸出許可の撤回を求める!背景には東京オリンピック警備を商機とみる政財界の思惑が見え見え!?/他」2018.8.18日号~No.21635号~

2018年8月17日 (金)

最新の対ロシア経済制裁は、トランプが政権を掌握していないことを示している

Michael Maloof
公開日時: 2018年8月10日 15:03
RT

 3月、イギリスでのスクリパリ親子に対する毒ガス攻撃への関与のかどで、ロシアに対して課される最新の経済制裁から明らかなように、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、自身の政権を掌握できていない。

 モスクワ訪問中のランド・ポール上院議員(共和党-ケンタッキー選出)が、両国間のより良い関係を呼びかけるトランプ大統領のウラジーミル・プーチン大統領あて書簡を手渡したと発表したのとまさに同じ日、経済制裁が実施された。

 その理由から、時期は疑わしく見え、トランプ自身に外交政策があるが、陰の政府と呼ばれる、主に官僚で構成されるトランプ政権にも、連中の政策があることを強く示唆している。現在、彼自身の政権を、トランプ大統領ではなく、連中が掌握していように見え、ワシントンとモスクワを更に疎遠にさせる悪影響を及ぼしつつある。

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 国家安全保障問題担当補佐官ジョン・ボルトン率いるネオコンが、マイク・ポンペオ国務長官とニッキー・ヘイリー国連大使とともに、シリアや北朝鮮やイランや、更にロシアに対しても、より強硬な路線に向けること表向き狙ったトランプ“戦時内閣”を構成している。

 とりわけボルトンは、こうした国々の一部での政権転覆を主張し、遠慮ない物言いをしている。トランプはそれほどでもない。実際、彼は、まさにその逆を言っている。ところが、ワシントンで、連中の反ロシア才能がネオコンを活性化し、民主党や陰の政府や主要マスコミの大半とともに、ロシアとトランプの共謀というエセ言説を押し出している。

 しつこい反ロシア怒号と、繰り返して課されてきた経済制裁が、疑わしい理由による更なる経済制裁の威嚇を招く効果を及ぼし、外交関係停止見込みの可能性を高めている。

 冷戦絶頂期でさえ、アメリカとロシアの間の関係は、今の状態ほどのどん底状態になったことは決してなかった。最新の経済制裁は、主に軍事利用も可能な民生品、デュアルユース・テクノロジーに影響する。これには、今回拒否されるだろうガス・タービン・エンジン、電子機器や集積回路を含んでいる。とは言え、オバマ政権にさかのぼるこれまでの経済制裁で、既にこれらデュアルユース・テクノロジーの多くに禁止が課されている。

 おまけに、もしロシアが、90日以内に、これ以上、化学兵器を使用しないと保障し、国際査察官がロシア製造施設を視察するのを認めなければ、更なる経済制裁を実施すると述べて、アメリカは最後通告をした。しかしロシアは化学兵器の使用を否定している。アメリカと異なり、ロシアは国際条約に従い、化学兵器備蓄を破壊した。

 経済制裁実施は、1991年のChemical and Biological Weapons Control and Warfare Elimination Actの条項に由来する。

 現在はイギリス国民であるセルゲイ・スクリパリとその娘ユリアがノビチョク神経ガスで中毒にされたとトランプ政権が確定してから、経済制裁の実施開始までに、法律は60日間の猶予を定めている。イギリス政府による最初の確定に続き、アメリカがこの結論に至った。

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 ところが、アメリカ政権は、期限に一カ月以上遅れている。そこで下院外交委員会委員長エド・ロイス下院議員(共和党-カリフォルニア選出)が、約二週間前、トランプ宛に、大統領の期限無視を非難する書簡を書くことになった。

 奇妙にも、アメリカが実施しているにもかかわらず、イギリス政府は同様な経済制裁を実施していない。ノビチョクの出所を巡り、一部のイギリス政治家と専門家たちの間で、続いている疑念と、イギリスが、貿易でロシアに依存しているのを懸念していることの反映かも知れない。しかし、アメリカが既存の法律をもとに経済制裁を実施することにして以来、当初、ロシア外交官を追放して、経済制裁を実施とは言え、ロンドンからの反対はどうやらなかったようだ。

 ところが、モスクワは、スクリパリと娘の毒ガス攻撃に関与したことを断固否定した。ノビチョクは、ロシア人科学者が冷戦中に開発したが、戦場では決して使用されなかった。ロシア当局はイギリスにロシア関与の証拠を要求し、クレムリンとイギリス政府で共同捜査を行うことを呼びかけた。

 モスクワがそうした共同捜査要求しているのに、国連安全保障理事会の他の欧米諸国、アメリカとフランスもしたように、イギリス政府は、繰り返し、申し出を拒否した。

 アメリカは毒ガス攻撃をロシアと結びつける情報は“機密扱い”だと主張している。

 奇妙にも、3月に毒ガス攻撃とされるものが起きたソールズベリーからほど遠からぬエイムズベリーのポートンダウンにある政府研究施設がノビチョク残滓を調べた。ポートンダウン研究所は、イギリス国防省と保健省が運用し、国防科学技術研究所のために働いている。

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 検査の結果、毒がノビチョクの一種だったことが確認されたが - 重要なことに - 毒がどこで作られたのか、誰がそれを使ったのかは判断できなかった。この進展で、更なる混乱が生じ、政治家同士の論争を引き起こした。

 ドイツの外国諜報機関、連邦情報局BNDが、ロシア人亡命者から見本を入手したとされている1990年代以降、ノビチョクの標本が、長年、多くのNATO諸国の手中にあることが知られている。

 イギリスやアメリカやフランスやカナダやオランダが化学式を共有し、d解毒剤を開発するための取り組みとして、少量のノビチョクが製造されたと報じられている。ポートンダウン研究所も同様に、研究のため標本を得ていた。最近、チェコのミロシュ・ゼマン大統領が、チェコがある種のノビチョクを合成し、実験したことを認めた。ロシア当局によれば、スウェーデンとスロバキアも、神経ガスを製造する技術能力がある。

更に読む: ‘皆知っている’:欧米諸国は何十年もノビチョク化学式を知っていたとドイツ・マスコミが報道

 こうしたこと全てから、イギリスと、アメリカが、スクリパリ親子の毒ガス攻撃で採取された標本を、一体なぜ決してモスクワと共有したがらなかったかという問題が、一層気にかかる。ところが、毒ガス攻撃では、連中全員、いかなる証拠も無しに足並みを揃えて、モスクワを非難している、ロシアを更に孤立化させる狙いでの、更なる対ロシア経済制裁のためにロビー活動するより邪悪な理由を示唆している。

 これは、そもそも新たな封じ込め政策の一つの形として冷戦を始め、NATOをロシア連邦国境まで強化すべく国防費を正当化するための取り組みで、特にアメリカが悪魔を必要としていることを反映している。

 国防省国防予算案が発効しようとする中、最近更なる対ロシア経済制裁が成立し、ロシアに対するこの主張は、政治的な動機の、濡れ衣の主張は、トランプ政権で、アメリカ率いる一方的な世界秩序が、これまでになく益々挑戦を受けつつある中、ロシアを封じ込める、より大きな地政学的理由として利用する口実であることが明らかになりつつある。

 ところが、その理由は、モスクワが始めた何かではなく、自身の政権を掌握していない、あるいは、一度も掌握したことのないトランプ本人なのだ。彼の選挙公約の多くはsuch as 包括的共同作業計画、イラン核合意からの離脱、イランと商売をするあらゆる企業に経済制裁するという威嚇、アメリカ同盟諸国との彼の関税戦争は、お互いに矛盾しており、世界の不安定化を増すことになっている。トランプはロシアとの良好な関係を語るが、同時に、モスクワを悪者扱いする彼の政権の行動は、違うことを示している。

 自己破壊的になって、長い歴史を持つアメリカの政治的、経済的世界支配に対する挑戦を引き起こしているトランプの矛盾する政策を考えれば、モスクワ-ワシントン関係の行く先が暗いのは明らかだ。

 F.マイケル・マルーフは、元ペンタゴンの安全保障専門家。

 友人もご興味を持たれるだろうか? 記事を共有願いたい!

 本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない.

記事原文のurl:https://www.rt.com/op-ed/435646-sanctions-trump-russia-skripal/

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 当ブログをほとんど全て読んでいるという読者から、小生が見るドキュメンタリー番組について、見損ねたものは再放送を見ることがあるとも、言われた。数日前のドキュメンタリー『祖父が見た戦場 ~ルソン島の戦い 20万人の最期~』も見応えがあった。早速、悪名高い自民党広報副本部長和田政宗議員が文句をつけたというから、大本営広報部にはまれな「良い番組というお墨付き」を貰ったも同然。

 ノモンハンのドキュメンタリーは、都合で途中までしか見られなかった。録画もできずにいたのが残念。

日刊IWJガイド「韓国の文在寅大統領が『光復節』式典で『東アジア鉄道共同体』構想を提唱!問われる日本の外交政策と歴史認識!/『統一教会』の著者・櫻井義秀北海道大学教授への岩上安身によるインタビューは、明日収録しますが中継ではありません。後日、配信日をお知らせいたします/
元ツイートは、周知の事実にもとづくものだった! それなのに1回のリツィートだけで名誉棄損!? 橋下徹氏によるIWJ岩上安身への『スラップ訴訟』8月23日 第三回口頭弁論・報告集会のお知らせ/他」2018.8.17日号~No.21634号~

2018年8月16日 (木)

トルコ通貨危機はいかにして起きたのか

2018年8月10日
Moon of Alabama

 トルコのエルドアン大統領は‘外国勢力' (つまりアメリカ)が彼を失脚させたがっていると、しばしば主張する。‘金利ロビー' (つまり(ユダヤ人)銀行家)がトルコに損害を与えたがっていると彼は言う。二つの点で、彼はそれなり正しい。

 先週以来、トルコ・リラは、ひどく下落している。今日だけで価値が約20%減少した。それはトルコ経済も道連れにする可能性が高く、エルドアンは誰かのせいにする必要があるのだ。

 とは言え、外国勢力と銀行は、確かに危機を連中の狙いに利用してはいるが、エルドアンの経済政策こそ、まっさきに責められるべきだ。借りた外貨で彼が作り出した長い好況期が、とうとう破綻しつつあるのだ。

 以下は、いかにして、こういうことになったかの要約だ。

 大局的な政治構図

 アメリカがひきおこした'アラブの春'の際には、アメリカのオバマ大統領は、カタールとトルコと協力して、 中東中にムスリム同胞団の政権を据えようとしていた。ヒラリー・クリントンが国務長官の座を去り、ジョン・ケリーが引き継ぐと、オバマ政権は姿勢を変えた。選挙で選ばれたエジプトのムルシー大統領に対するクーデターを支持したのだが、シリア政府打倒に、アメリカ軍を使う活動は控えた。

 特にシリアに関し、トルコは貧乏くじを引かされた。エルドアンは、アメリカのシリア政府打倒という計画に賭けていた。彼がシリア難民を受け入れ、シリア国内で戦う過激イスラム主義者を支援したことで、膨大な費用がかかり、多数の問題ももたらされた。シリア経由の湾岸諸国へのトルコ貿易経路は閉鎖された。イランとの経済関係もまずくなった。エルドアンとしては、そこから何かを得る必要があったのだ。

 ところが、アメリカ政策が、彼に敵対したのだ。2013年のゲジ抗議行動は、アメリカによるカラー革命の企てのあらゆる様相を帯びていた。彼らはしくじった。2014年、オバマ政権は、東シリアのコバニのクルド労働者党/クルド人民防衛隊を支援しはじめた。クルド労働者党は、トルコ東部と北シリアと北イラクに自分たちの国を作ろうとしているテロ組織だ。アメリカがクルド人と同盟し、武器を与えたことで、クルド労働者党/クルド人民防衛隊という短剣がトルコの急所に突きつけられたのだ。

 2015年中期の、トルコが率いるラタキアとイドリブに対する攻撃に対応して、ロシアは、軍隊をシリアに配備した。後から考えると、その時点で、エルドアンのシリアでのゲームは終わっていたのだ。アメリカは核武装したロシアに対する戦争をしようするはずはなかった。シリアが倒れるはずもない。しかし、エルドアンは、やり続けた。

 2015年11月、トルコ防空部隊が待ち伏せし、ロシア戦闘機を撃墜した。ロシアはトルコとのあらゆる経済関係の全面停止で対応した。これはアメリカがよくやる針でチクリと刺すような経済制裁ではなく、トルコへの何百万人ものロシア人観光客も含む、全ての貿易関係の全面的な突然の停止だった。トルコにとっての経済的損失は膨大だった。エルドアンはロシアに屈せざるを得なかった。プーチンは寛大で、エルドアンが面子を保つのを認めてくれた。ロシア政府は、もうかるパイプラインの取り引きや、他のうまい話をもちかけた。2016年中頃、CIAが、エルドアンに対する武力クーデターを画策したが、ロシア諜報機関がエルドアンに警告して、クーデターは失敗した。トルコは、クーデターをしかけたとトルコが非難しているフェトフッラー・ギュレンを引き渡すようアメリカに要求している。ギュレンは多数の信者を持ったトルコ人説教師で、長年のCIAの手先で、ペンシルヴェニア州で暮らしている。

 トルコを"西"から "東"陣営にひっくり返すことは、ロシアの黒海戦略の一環と見なすことができる。ニコライ1世皇帝の下で行われていた19世紀中期の計画の繰り返しだ。現在の計画は、これまでのところ成功している。だが、これは、次の儲かる冷戦のためにNATOを復活させるというアメリカの計画と衝突する。そこで、現在のアメリカ計画は、トルコ経済問題を、最終的に、エルドアンを失脚させるのに利用することだ。

 大局的な経済構図

 トルコ国外では、エルドアンは、かなり嫌われている。彼の傲慢さと独裁的スタイルは良い印象を残さない。だが、トルコ国内では、彼は大成功をしており、国民の大多数から支持され続けている。この理由は、彼が作り出した長い好景気だ。

 2002年、エルドアンが首相になった際、トルコは不況から回復しつつあった。エルドアンの前任者ケマル・デルビシュが、いくつか本格的な改革を実施していた。エルドアンは、その成果を、自分の手柄にした。彼は更に多数の煩わしい規制を廃棄し、官僚を浄化した。彼は外国からの投資を歓迎した。計画はうまく機能した。経済は急速に成長し、多くのトルコ人が貧困から救い出された。少数の人々は金持ちになった。彼の支配下における初期の経済的成功は良い思い出だ。資金が自由に得られ、経済成長しながらも、インフレは比較的低い率で、おちついていた。しかしながら、エルドアンの拡大主義の経済計画は、トルコを、より脆弱にもした。

 トルコは慢性的に経常収支赤字だ。トルコは、輸出以上に商品とサービスを輸入しており、差額を埋めるために、外貨を借りるしかなかった。エルドアン統治の初期、多くの金がトルコに流れこんだ。だが、それは非生産的な事に投資された。新たな住宅が好景気のイスタンブールを拡張した。新しい素晴らしい橋梁や空港や多数のショッピング・モールや10,000以上の新しいモスクや、エルドアンが使うための1,000部屋の宮殿が建設された。建設業のエルドアンの取り巻き連中は大金持ちになった。

 だが、他国市場に輸出する製品をつくる製造業は、モスク建設よりも難しい。エルドアンは、決してそれを優先事項にはしなかった。 そこでトルコの経常収支赤字は、GDPの1%から、GDPの約6%に拡大した。これは明らかに持続不可能だ。

 好景気の間、トルコ中央銀行の金利は、かつての高さより下がったものの、依然、どこの国の金利よりも高かった。トルコの産業や銀行は、金利がより低いユーロやドルを借りたが、これは彼らが高い為替変動リスクを負うことを意味していた。もしトルコ リラが下落すれば、融資は減価するリラで得た収入から、交換可能な通貨で返済しなければならなくなるのだ。

 通常の条件下であれば、トルコ中央銀行は、16年もの長い好景気の間に、何回かの穏やかな景気後退を仕組んでいるべきだった。累積した不良債権の一部は破棄されていたはずだ。外国製品の消費と経常収支赤字は減少していたはずだ。ところが、エルドアンは経済理論の奇妙な理解をしている。彼は高金利はインフレを引き起こすと思い込んでいる。

 トルコ中央銀行が、インフレを抑制し、リラの下落を止めるために金利を上げる度に、エルドアンは中央銀行に対して厳しい発言をし、その独立を恫喝した。比較的低利の金が流れ続け、エルドアンの好景気が続いたが、構造的問題は悪化した。

 2017年初め以来、トルコのインフレが高まり始めた。以来、8%から、今や15%に上がった。通貨は下落した。1リラの価値は2016年のアメリカ・ドル0.30から、一週間前のアメリカ・ドル0.20に減った。過去数日間でさらに25%下落し、 アメリカ・ドル0.15になった。2016年に、アメリカ・ドルで借りた1,000リラの融資元金の返済に、今や2,000リラ以上必要なのだ。トルコの産業と銀行は外貨で約1500億ドル借りている。製品の大半を交換可能通貨で輸出する企業だけが、借金を返済することが可能だ。他は事実上、破産だ。

 長年の好景気のつけが現れつつあるのだ。トルコ・リラは崩壊しつつある。トルコに更に金を融資しようという外国人は皆無だ。そのように高いリストをとるため、彼らは極端に高い金利を要求する。トルコは、間もなく、輸入の、特にトルコに必要な炭化水素エネルギー代金が支払えなくなるだろう。アメリカ合州国との非友好的な関係のおかげで、国際通貨基金 (IMF) に緊急融資を依頼するのは困難だ。'改革'要求、つまり、エルドアンが支持者たちに与えていた恩恵を止めるといったような極めて厳しい条件がつけられるはずだ。

 現在のエスカレーション

 先週の通貨危機エスカレーションは、アメリカ合州国との小さな紛争のエスカレーションと同時に起きた。

 2016年のクーデター未遂後、トルコは、長年トルコで働いていたアメリカ人牧師アンドリュー・ブランソンを投獄し、彼をテロで告訴した。先週、ブランソンを、イスラエルで、テロ容疑で拘束されているトルコ人と交換する取り引きがまとまった。トルコは、取り引きでより多くを期待していた。トルコは、アメリカの対イラン経済制裁に違反したかどでアメリカが投獄しているトルコ人銀行家、メフメト・ハカン・アッティラを解放させたがっていたのだ。(彼は実際イランとの石油貿易用に金を手配して、違反していた。トルコ、特にエルドアンの近親者が、その取り引きで儲けていた。)

 先週、アメリカ側が、エルドアンが交換取り引きを撤回したと述べた。

   イスラエルで、テロ容疑で投獄されているトルコ国民を、ブランソンの解放と交換するようトランプ本人がまとめたうまい取り引きのはずだった。ところが、水曜日、トルコ裁判所が、牧師を帰国させるのではなく、彼を自宅監禁に変え、彼の裁判を継続すると命じ、合意はどうやら崩壊した。

 トランプと福音派のペンス副大統領は逆上した。

    木曜日朝、エルドアンとの憎悪に満ちた電話会話の後、トランプは反撃した。アメリカ合州国はトルコに“大規模経済制裁を課す”と彼はツイートした。“この無辜の宗教者は即座に解放されるべきだ。”

    ペンス副大統領も、ある宗教会議での演説で、トルコは、今ブランソンを解放すべきで“さもなくば、その行為の結果を覚悟すべきだ”と言って割って入り、マイク・ポンペオ国務長官はアンカラの外務大臣に電話した。

 アメリカは長年のNATO同盟国の閣僚二人を制裁した。ところがエルドアンは屈しなかった。市場は公的な経済制裁に反応し、経済制裁の脅威に答えた。リラは、1ドル、4.80リラから、1ドル、5.20リラに下落し始めた。水曜、トルコ代表団は、ワシントンを訪問し、問題で更に交渉を進めようとしたが交渉は失敗した。リラは更に、1ドル5.50ドルに落ちた。金融市場は不安になった。いさかいの好ましからぬ結果がヨーロッパの銀行に影響を与える懸念がある。

 今朝、エルドアンが演説し、リラ崩壊の恐怖を切って捨てた

“様々な組織的活動が行われている。気にすることはない”とエルドアンは述べた。

“忘れてはいけない。彼らにドルがあるなら、我々には我が国民、我が神がいる。我々は一生懸命働いている。16年前、我々がどうだったか振り返り、今の我々を見よう”と彼は言った。

 エルドアンは"エコノミック・ヒットマン経済には屈し"ないと言った。トルコに莫大な金を融資した銀行は、それをトルコ債務不履行の恫喝と理解した。

 昼、リラは分刻みに、一日20%の率で下落した。最近財務大臣となったエルドアンの娘婿ベラト・アルバイラクが、経済について予定されていた演説を行った。彼は損失に関する何らかの数値を挙げ、リラ問題を終わらせるために、政府がおこなうはずの具体的措置を示すはずだった。しかし、彼はそうするのを差し控えた。彼はトルコ中央銀行は独立していて、必要に応じて行動すると主張して、市場を静めようとした。トルコ中央銀行がエルドアンの承認無しで動けるなどとは誰も信じていない。エルドアンは高金利の敵を自ら公言しており、中央銀行は、緊急に必要なのに、今日は介入しなかった。

 アルバイラク演説の最中、ドナルド・トランプ本人がTwitterで口をはさんだ。

ドナルド・J・トランプ @realDonaldTrump -  - 2018年8月10日 12:47 utc
彼らの通貨トルコ・リラが我々の極めて強いドルに対し急速に下落する中、トルコ鉄鋼とアルミニウムの関税を倍にするのを承認したばかりだ! アルミニウムは今後20%で、鉄鋼は50%だ。現時点で我々のトルコとの関係はよろしくない!

 鉄鋼はトルコ最大の輸出商品の一つだ。アメリカは年間10億ドル以上のトルコ鉄鋼を輸入している。ホワイト・ハウスは後に、この関税は、貿易ではなく、安全保障に関連していると述べた。

一方、エルドアンはロシアのプーチン大統領と電話会話をし"経済的なつながりについて話しあった"。彼は緊急融資を依頼した可能性がある。

一方、リラは対米ドル6.80に下落した。

エルドアンは、そこで、トランプや彼のツイートには触れずに、アメリカの圧力を強く非難する演説をした。

その日の終わりに、リラは、昨日の対米ドル、5.50の後、6.50になった。トルコの株は約2%下落した。一部のトルコ銀行と製鉄メーカーの株は15%下落した。トルコの銀行に何百億ユーロも貸していたスペインとイタリアとフランスの銀行も損をした。ブルームバーグは今日の重要な出来事を、ライブ・ブログで報じ続けた。

今後の行方

 エルドアンには、この問題を顧問たちと話会うための週末がある。月曜日朝までに何の措置もとられなければ、今日の下落は勢いを増すだろう。リラは更に下落するだろう。下落をくい止め、緊急に必要な外貨を引きつけるために中央銀行は利子を30%以上あげねばならない。トルコ経済は深刻な不況になるだろう。多数のトルコ銀行や企業は破産する。失業は増える。

 エルドアンは、下落をアメリカと"金利ロビー" のせいにするだろう。彼の支持者は彼を信じるだろう。エルドアンが、これをうまく切り抜けるだろうという希望は無駄だ。

 だが、トルコの問題は構造的だ。トルコのバブル崩壊は、以前から予想されていた。トルコの外貨収支赤字は持続不可能だ。トルコは輸入を削減し、輸出を増大しなければならない。トルコは莫大な緊急融資が必要だ。

 確かに、アメリカはこの問題をトルコに圧力をかけるのに利用している。しかし、アメリカは、この問題の根本的原因ではない。アメリカは、それをさらけ出したにすぎない。

 アメリカの圧力はトルコ経済が狙いではなく、ブランソン牧師が狙いでもない。今も、2013年以来からも、エルドアンをアメリカの狙いに従って行動させるため、圧力がずっとかけられて来たのだ。彼はロシアとの良好な関係を止めなければならなくなる。彼はロシアのS-400防空システム購入を中止しなければならなくなる。彼はロシア・パイプラインを止めるよう命じられるかも知れない。シリアに関して、アメリカの指示に従わなければならない。彼がそうしない限り、アメリカは、彼を打倒するためにあらゆることをするだろう。

 トルコがアメリカの要求から逃れられる唯一の可能性はロシアと同盟強化だ。プーチンはエルドアンが自分を必要としていることを知っている。彼は圧力を高めるために引き延ばし、そこで自分の要求をするだろう。エルドアンは、シリアに対する彼の計画を完全にあきらめざるを得るまい。トルコや、その代理勢力が保持している全てのシリア領土はシリア政府支配下に返還されなければならない。そうなって初めてトルコの湾岸諸国への貿易経路が再開する。そうなって、初めてロシア(とイラン)は、トルコが危機から脱出するのを助けるだろう。

 月曜日 ロシアのラブロフ外務大臣がトルコを訪問する。

 エルドアンはロシアの要求を受け入れるだろうか、それとも、アメリカ側に戻って、トランプとIMFに降伏するのだろうか?  それとも、彼はこの惨状を脱出する別の方法を見いだすのだろうか?

更新(8月11日 8:45 utc):

 エルドアンは今日のニューヨーク・タイムズに署名記事を寄せた。彼は何十年もの良い関係を思い起こし、最近のアメリカの行動に対する非難を列記し、悪化しつつある関係のせいだとしている。結局、こうなっている。

悪が世界中に潜み続けている時に、何十年もの同盟国トルコに対するアメリカ合州国の一方的行動は、アメリカの利益と安全保障を損ねるだけだ。ワシントンは、手遅れになる前に、我々の関係が非対称的であって良いという誤った考え方を止めトルコには代替案があるという事実を甘受すべきだこの単独行動主義と、敬意欠如の傾向を転換し損ねれば、我々は新たな友人、同盟を探し始めることが必要になるだろう。

記事原文のurl:http://www.moonofalabama.org/2018/08/how-turkeys-currency-crisis-came-to-pass.html

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 長い記事は翻訳に時間がかかるため、いささか鮮度が失われてしまう。原文には多々、興味深いコメントが書かれている。属国大本営広報部は、リラ下落をどう報じているのだろう?

日刊IWJガイド「<今日の録画配信>午後7時『トランプ政権下の米国は、パックスアメリカーナから撤退するのに軍事力強化!? 自らの血筋を誇るドイツ系米国人大統領の真意とは!? 異例の大統領を徹底研究!! 岩上安身による在米国際コンサルタント トーマス・カトウ氏インタビュー(第三部・後編)』を冒頭のみフルオープンで録画配信! 冒頭、岩上さんによる見どころ生解説付き!/
<今日の再配信・核兵器と戦争を考える>午後3時『いつでも・いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!? より危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項!~5.21岩上安身による永井幸寿弁護士インタビュー(後編)』を再配信!/他」2018.8.16日号~No.2163号~

2018年8月15日 (水)

自ら進んで無能力なロシアと中国の政府

2018年8月12日
Paul Craig Roberts

 ロシアと中国の政府は当惑している。両国は制裁戦争の切り札を全部持っているのに、それをどう活用するか全く何の知恵もないまま座視している。

 国民から欧米製消費財をロシア政府が奪いたくないことを強調して、問題を覆い隠す欧米マスコミからロシアは何の助力も得られないが、まさにそれがワシントン経済制裁がしようとしていることなのだ。

 ロシアと中国は、資本主義が勝利したと考え、アメリカ権益のためにのみ役立つプロパガンダ装置であるアメリカ新自由主義経済学を早速採用したため、ロシアと中国の政府は、ワシントンの掌中にある。

 NASAは、長年、ロシア製ロケット・エンジン無しでは機能することができない状態だ。あらゆる経済制裁や侮辱や軍事的挑発にもかかわらず、ロシア政府は、いまだに、NASAにロケット・エンジンを供給している。一体なぜだろう? ロシア人経済学者が、政府に、ロシアの発展には外貨が必要不可欠だと言うためだ。

 ヨーロッパは工場を稼働し、冬季には暖房するためにロシア・エネルギーに依存している。ところが、ロシア人経済学者が、政府に、ロシアの発展には外貨が必要不可欠だと言うために、ロシアは、ワシントンによる経済制裁に、ヨーロッパが参加したことに対して、エネルギー供給を止めない。

 マイケル・ハドソンと私が何度もご説明している通り、これはたわごとだ。ロシアの発展は、外貨取得には、全く依存していない。

 ロシア経済から利益を流出されるのにしか役立たない外国投資が必要だとロシアは思い込んでもいる。

 ロシアは、自国通貨を自由に取り引きすべきだとも思い込んでいて、ルーブルを外国為替市場での操作対象にしている。もし、ワシントンが、ロシアで通貨危機を引き起こしたいと思った場合、連邦準備金制度理事会、その傀儡の日本とEUとイギリス中央銀行が実行するのことは、ルーブルを空売りするだけで良いのだ。ヘッジ・ファンドと投機家連中も、利益を求めて参加する。

 新自由主義経済など、でっちあげなのに、ロシア人は、それにだまされている。

 中国もそうだ。

 ロシアに対する、こうしたあらゆる非難、例えば、スクリパリ親子攻撃とされるものが始まった際、プーチンが立ち上がり、こう言ったと仮定しよう。“イギリス政府は白々しいうそをついており、このウソをおうむ返しにしているワシントン政府を含むあらゆる政府もそうだ。ロシアは、このウソは極めて挑発的で、欧米諸国民を対ロシア軍事攻撃に備えさせるための宣伝攻勢の一環だと見なす。いわれのないウソの絶えざる流れや、我々の国境での軍事演習で、ロシアは、欧米が戦争を意図していると確信した。アメリカ合州国と、その傀儡の全面破壊が、その帰結だ。”

 それで、いわれのない挑発と軍事演習と経済制裁は終わるはずなのだ。

 ところが、我々が耳にするのは我々の“アメリカ・パートナー”の“誤解”というばかりで、それが更なるウソと、更なる挑発を勢いづかせるのだ。

 あるいは、より穏健な対応として、プーチンは、こう発表できたはずなのだ。“ワシントンと、その卑屈なヨーロッパ傀儡が、我々を制裁したので、我々は、ロケット・エンジンや、ヨーロッパ向けのあらゆるエネルギーや、アメリカの飛行機製造会社用チタン輸出を停止し、アメリカの貨物機と旅客機の上空通過を禁止し、ロシアで活動しているあらゆるアメリカ企業に制裁措置を行う。”

 ロシアがこれをしない理由の一つは、おそらくロシアには欧米の資金と善意が必要だというロシアの誤った考え方に加え、ロシアのヨーロッパ・エネルギー市場と、天然ガスのヨーロッパ向け輸出を、ワシントンが横取りすると、ロシアが誤って考えていることだ。そのようなインフラは存在しない。インフラ開発には数年かかるはずだ。それまでに、ヨーロッパは大量失業になり、何回かの冬に、凍えるはずなのだ。

 中国はどうだろう? 中国は、世界最大の資本を持つ企業Appleを含め多数のアメリカ主要企業を受け入れている。南アフリカが欧米のいかなる抗議も無しに、白人の南アフリカ農民に対して、しているように、中国で活動しているあらゆるグローバル企業を補償なしに、中国は国有化できるのだ。ワシントンは、中国に対するあらゆる制裁解除と、ワシントンの中国政府への完全服従を要求するグローバル企業に圧倒されるはずなのだ。

 あるいは、更に、中国は保有する1.2兆ドルのアメリカ国債全てを投げ売りできるはずだ。連邦準備金制度理事会は、国債価格が崩壊しないよう、国債を購入するためを早速印刷するはずだ。そこで、中国は国債を償還するための連邦準備金制度理事会が印刷したドルを投げ売りできるはずだ。連邦準備金制度理事会は、FED、ドルを購入するための外国通貨は印刷できない。ワシントンが、傀儡の日本とイギリスとEUの外国中央銀行に、ドルを購入するため、彼らのお札を印刷するよう命令しない限り、ドルは急落し、ベネズエラ・ボリバールほどの価値も無くなるはずなのだ。これは、たとえ各国が応じても、“欧米同盟”と呼ばれる、実はワシントン帝国であるものの内部で、大変なストレスが生じるはずだ。

 ロシアと中国は、一体なぜ、楽勝できる手を使わないのだろう? どちらの政府にも新自由主義に洗脳されていない顧問が誰もいないのが、その理由だ。エリツィン時代に、アメリカがロシアに施した洗脳が、ロシア諸機関内部で慣習化しているのだ。この箱の中に閉じ込められている限り、ロシアはワシントンにとって、いいカモだ。

 トルコは、ロシアと中国にとって、援助を申し出て、NATOから引き離す絶好の機会だ。両国は、トルコにBRICS加盟や貿易協定や相互安全保障条約を申し出ることが可能なはずだ。中国はトルコ通貨を、外国為替市場で容易に買い占められるはずだ。同じことを、イランにもできるだろう。ところが、ロシアも中国も、決然とした行動が出来ないように見える。二国いずれもトルコ同様、ワシントンから攻撃されながら、座視して指しゃぶりしている。https://www.zerohedge.com/news/2018-08-11/us-risks-completely-losing-turkey-erdogan-vows-defy-us-threats-over-pastor-brunson

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/12/the-self-imposed-impotence-of-the-russian-and-chinese-governments/

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 当ブログ記事をほとんど全部読んでいる方から、IWJガイドを掲載するのは、いかがなものかというご意見を頂いた。IWJの購読者ではなく、記事も読んでいないという。読んでいないで、いかがなものかというのが、そもそも不思議だ。孫崎享氏番組の購読者だと言われる。とりあえず、こうお答えした。「大本営広報部の虚報を読んでいても、頭が混乱すると言うだけでは、不足だと思う。たとえば、TPPや、緊急事態条項など重要な問題について、貴重な情報、インタビューを見られる代替案として提示している。他に良い情報源があるならご教示頂きたい。」その読者の方からのご提案を、お待ちしている。

日刊IWJガイド「<再配信・核兵器と戦争を考える>本日午後7時、岩上さんによる緊急談話を生配信!その後『いつでも独裁が可能!? いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!?危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項~岩上安身による永井幸寿弁護士インタビュー(前編)』を、公共性に鑑み、全編フルオープンで再配信!/
<録画配信>本日午後4時『トランプ政権下の米国は、パックスアメリカーナから撤退するのに軍事力強化!? 自らの血筋を誇るドイツ系米国人大統領の真意とは!? 異例の大統領を徹底研究!! 岩上安身による在米国際コンサルタント トーマス・カトウ氏インタビュー(第三部・前編)』を冒頭のみフルオープンで録画配信!/他」2018.8.15日号~No.2162号~

2018年8月14日 (火)

ロシアを戦争に追いやるアメリカ経済制裁

Finian CUNNINGHAM
2018年8月11日

 今週、アメリカ合州国がロシアにしかけた新たな経済制裁の意味は一つしかない。アメリカ支配者が、ロシア経済を粉砕したがっているのだ。あらゆる定義からして、事実上、ワシントンはロシアに宣戦布告しているのだ。

 実施された経済措置は、みかけは抽象的だったり、さほど実効性がなかったりするように見える。エレクトロニクス製品の対ロシア輸出禁止、金融市場の混乱、株価下落。だが重要な結果は、アメリカ当局が、ロシア社会とロシア国民に物的損害を与えることが狙いだ。

 プロシアの将軍カール・フォン・クラウゼヴィッツなら確実に称賛する、軍事戦争へと変動する経済戦争だ。

 これは、今週アメリカ・インターネット・サービスが反戦ウェブサイトに対する大規模弾圧を開始したことで一層重要と思え、権力者が自分たちの無謀な戦争商売に対する、あらゆる批判や国民の認識を停止させたがっていることを示唆している。

 おまけに、最新のアメリカ経済制裁は - 2014年の、でっち上げのウクライナ紛争以来、これまで何度もあったのだが  - 手に負えない滑稽な憶測しか根拠がないのだ。全くの踏んだり蹴ったりだ。

 新たに提案した経済制裁は、イギリスに暮らす元二重スパイに対する今年初めの化学兵器攻撃とされるものでロシアに責任があると“決定”したためだとワシントンは言う。

 ロシア人工作員が致死的神経ガスを使い、セルゲイ・スクリパリと娘のユリアが毒ガス攻撃されたとされるいわゆるスクリパリ事件は、まだ証明されていないなぞだ。“茶番”だとまで言うむきもある。

 モスクワに対するイギリス政府の人騒がせな主張を立証するいかなる証拠も提示されていない。スクリパリ親子に対する毒ガス攻撃はロシアに責任があるというイギリスの主張はもっぱら、うさんくさい主張とほのめかしが根拠だ。

 今、ワシントンは、全く証明されていないイギリスの“決定”を根拠とする経済制裁を提案している -  ロシア経済を破壊することを意図した経済制裁。提案されている制裁措置は、いつもの個人が保有する資産凍結を遥かに超えている。ワシントンがしようとしているのは、ロシア経済中核の金融業務に対する攻撃だ。

 ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相が、最新のアメリカ経済制裁に対して重要な対応をしたのを不思議ではない。彼は、この制裁は“経済戦争”に匹敵すると述べた。メドモスクワは、“政治的か、経済的にか、他の方法で”報復せざるを得ないとメドベージェフは警告した。メドベージェフの調子は、情け容赦のない、いわれのない、理不尽なアメリカの行動の本性に対する紛れもない警告だった。

 ワシントンの行為を巡って、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官も、信じられない思いと不安を表明した。先月ヘルシンキでのアメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領との一見して建設的なサミット後の、ワシントンによるこの最新の挑発で、アメリカは全く、あてにできなくなったと彼は述べた。

 これから発効する最初の経済制裁は、アメリカ製エレクトロニクスの対ロシア輸出に限定されている。だが、その後に来るものが厄介だ。もしロシアが化学兵器の将来の使用を止める“保障”をしなければ、そして、もしモスクワが国内で化学兵器とされるものを監視するための国際査察を受け入れなければ - 90日以内に、経済制裁の第二波が適用されると、ワシントンは言っている。

 次段階の経済制裁には、ロシア国営航空会社アエロフロートの対アメリカ飛行禁止が含まれている。ワシントンのばかげた要求をロシアが満たすことが不可能なことで、更なる経済制裁適用が不可避になる。

 国際取り引きを阻止することを狙って、ロシア金融システムを攻撃する計画の別の法案が、議会で成立しつつある。

 法案を提出した上院議員連中は、それに“地獄の経済制裁法案”と名付けた。提案されている法案の名前が全てを物語っている。“アメリカ社会をロシアの攻撃から守る法律”。この法案を推進しているロシア嫌い連中の中でも、ジョン・マケイン、リンジー・グラハム、ロバート・メネンデスやベン・カーディンらの上院議員は、その狙いに関して率直だ。彼らは施策が導入されれば“クレムリンを粉砕する”だろうと言っている。

 不幸なことに、アメリカ国民は、無知か、正気でないか、戦争での儲けのため身を売った政治家連中によって、破滅の淵に引きずりこまれつつある。三つが全部あてはまるかも知れない。邪悪にも、こうした政治家連中や、その子分のマスコミは“選挙干渉”に関する途方もない主張を巡り、ロシアを“戦争行為”で非難しているが、現実は、ロシアに対する戦争行為をしているのは連中なのだ。

 間近に迫る経済制裁を阻止するため、トランプ大統領が彼の行政権力を行使する可能性はごくわずかだ。アメリカにおける、諜報機関、議員や主流マスコミの政治状況は、反ロシア・ヒステリーで飽和している。アメリカは、国民に対する民主的責任を超えて、狂気の真っただ中にある、巨大な力を持ったひと握りの集団が支配する国なのだ。

 今週のロシアに対する、より激しい経済攻撃の発表で、既にロシア経済は急落している。ルーブルも債権も株も全て急落した。これはロシアの極めて重要な国益に対する攻撃だ。経済的バルバロッサ作戦だ。

 アメリカの計算に、社会不満やプーチン政権に対する不和の醸成があるのは確実だ。これは、アメリカが、その経済が今週、過酷な経済制裁に見舞われているイランに対し使っているのと全く同じ違法な戦略だ。

 ロシア経済が、最近発表された経済制裁を巡り、既に混乱に陥っていることからして、ロシア金融制度の基盤や世界の他の国々と貿易する自由に対して、更なるアメリカ攻撃が仕掛けられた際に与えられる損害は容易に想像がつく。

 ワシントンにとって、今や経済制裁解禁期のようだ。制裁の矢面に立っているのは、ロシアやイランだけではない。中国やカナダや欧州連合やトルコやベネズエラや北朝鮮も、“経済制裁”という名目や、間接的に“関税”という言説によって、アメリカ経済戦争でめった打ちにされている。

 ロシア側は、これまでワシントンの挑発や、実際は、無数の口実による攻撃を耐える上で、計り知れない忍耐を示している。ウクライナ内での紛争から、クリミア併合とされるものや、“独裁者を支持している”と中傷されているモスクワの道義に基づくシリア支援や“アメリカ選挙への干渉”とされるものや、他にも多々あるが、アメリカによるいわれのない攻撃としか言いようがないものに耐える上で、ロシアは途方もない量の冷静さと自制を示してきた。

 アメリカによる嘲りや不条理さに直面して、ロシアは常に、威厳ある冷静な姿勢を保ってきた。モスクワは、おそらくトランプ大統領が二国間関係に何らかの正常さをもたらせるだろうと考えたのだ。それはまぼろしだったことが明らかになった。

 ところが、今一体何が起きているだろう? ワシントンは実際行き過ぎている。ロシアの極めて重要な国益に対し、徹底的な経済戦争をしかける準備をすることで、アメリカは、その野卑な行為を全く新しい危険なレベルに進めてしまったのだ。

 狂ったアメリカ支配者は、けんか腰の態度で、世界を瀬戸際に追いやりつつある。

 これまでワシントンは、外交や対話や交渉に興味が無いことを通告してきている。ワシントンの行動様式は一つしかない - 戦争、戦争、戦争。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/08/11/us-sanctions-pushing-russia-war.html

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 必要な買い物に出かけて、夕立にあった。繁華街の人通りが消えた。

 今日も、うだまような暑さ。頭がおかしくなりそう。種子法にも、水道法にも、緊急事態条項にも決して触れない大本営広報部呆導を眺めていれば、妄想ではなく、確実に、人間としてボケるだろう。

日刊IWJガイド「<今日の配信>来日中の国際コンサルタント・トーマス・カトウ氏に、岩上さんが緊急インタビュー!午後8時「第二部」を冒頭のみフルオープンで録画配信!! 『パックス・アメリカーナから撤退を宣言したトランプ米大統領は、北朝鮮に対して力の行使をする』!? そのとき緊急事態条項があれば安倍総理のやりたい放題!?/
<今日の再配信・核兵器と戦争を考えるシリーズ特集>午後4時『「1人の男のとんでもない歴史観のために、日本人全員が巻き込まれようとしている」 ~ロックの会4周年、岩上安身が指摘する日本が直面する「本当の危機」とは』を全編フルオープン再配信!/
8月13日、翁長知事の告別式で多くの参列者が最後のお別れ! 7万人が参加した8月11日の県民大会では、次男の翁長雄治那覇市議が『翁長雄志に辺野古が止められたと報告できるよう、頑張りましょう』と呼びかける!! 本日からいよいよ『オール沖縄』候補者選びが本格化!/他」2018.8.14日号~No.2161号~

2018年8月13日 (月)

中東戦略同盟(MESA):同盟か、アメリカにとっての宝の山か?

2018年8月10日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook

 アメリカが意図的にイランとの戦いを持ち出している時期に、中東戦略同盟(MESA)が、‘アラブ版NATO’として公表されるのは単なる偶然ではない。もちろん、MESAのような同盟は、まとまった力とされるものにより対抗すべき敵がいない限り、必要とされるはずがない。それこそが、同盟創設という行為の背後にある論理だ。ソ連が‘自由世界の敵’として描かれた時代のNATOから始まって、MESA設立に至る軍事同盟は、こうした同盟が、安全保障というエセ感覚をもたらすがゆえのみではなく、これら同盟が、軍産複合体にとって、大いに儲かる事業活動であるがゆえに繁栄してきたのだ。ドナルド・トランプ大統領は、先月開催された最近のNATOサミットで、この点を十分明快にし、彼らが、要求通り、そのGDPの4パーセントを同盟のために使うつもりであれば、NATO加盟諸国がアメリカ製兵器を購入するのをアメリカは喜んで支援したいと述べた。だから、軍事同盟は単なる戦略ではない。それは、国防の政治経済を大いに強化する商売でもある。

 MESA創設も、このパターンに則っている。まずは、厳しい駆け引きで、しっかり交渉したイラン核合意から、アメリカが撤退し、“信頼”できない敵で、実際ライバル諸国を破壊しようとしている並外れたものとして、イランを役替えさせる。そこで、アメリカは、イランにより、増大する安全保障上の脅威に対抗すべく、イランのライバル諸国で構成される同盟という考え方を繰り出すわけだ。以上終わりだ。(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーン、クウェート、カタール、エジプトとヨルダン) 自前の国防産業皆無で、中には、適切な常備軍すらない国々で構成されるこの同盟が、イランから自国をどのように防衛するのだろう?というのが、基本的な疑問だ。アメリカ製兵器を購入することで、そうするのはまず確実だ。MESAは、だから、アメリカ軍産複合体にとっての宝の山となり、アメリカ大統領トランプの“バイ・アメリカ”計画にとっての本物の後押しになる。

 MESA創設は、中東に新たな軍事化の波を送ることになり、新たな軍拡競争を引き起こすことは確実だが、アメリカは、それによって一層恩恵を受ける立場にある。

 たとえばシリアの次に、依然、地域における主な未解決の紛争は、イランがフーシ派を支援していると、サウジアラビアが考えているイエメンだ。サウジ率いるアラブのイエメン攻撃は既に最悪の人道的危機を引き起こしているが、MESAが早急に対応する必要があるのはイエメンで、“イランの陰謀”を打ち破ることが必須だ。そこで兵器が差し迫って必要になるわけだ。

 既にホワイト・ハウスは、アメリカが、サウジアラビア軍‘近代化’の任務を負っていることを確認している。近代化には独自の政治がある。例えば、アメリカは、連中に無用な兵器で、サウジから既に何千億ドルも搾り取っているが、サウジアラビアには、そうした兵器使用に必要な専門能力も無く、訓練が必要だ。そこで近代化計画なのだ。

 1100億ドルを超える武器商談に調印して、トランプ大統領は、アメリカ軍産複合体にとっての兵器市場としてのサウジアラビアの可能性を拡大させた。たとえ、それが十分でないにせよ、十年にわたり、アメリカに3800億ドルももたらす可能性がある史上最大の武器輸出は称賛に値する。

 それでも、武器商談だけが、サウジアラビアと他の湾岸諸国の資金でアメリカが膨大な恩恵を受ける唯一の分野というわけではない。湾岸諸国、特にサウジアラビアは、何十億ドルもの価値の投資も、アメリカにするつもりだ。

 報道によれば、サウド家はアメリカに2500億ドルの商業投資をして、トランプ政権に、何千もの大いに必要としている新規雇用を与え、旅客機を購入し、アメリカのインフラ・プロジェクトに投資する予定だ。

 他のMESA加盟希望諸国も同じことだ。湾岸諸国と最近まとまったの商談の中には、アラブ首長国連邦に対する、パトリオット・ミサイル防衛システム、20億ドルの輸出や、サウジアラビアに対する、終末段階高高度地域防衛システムTHAADと支援機器150億ドルの輸出がある。3月、アメリカ国防省は、ボーイング社が、クウェート政府向けの28 F/A-18スーパーホーネットで、12億ドル契約に成功したと発表した。昨年秋、バーレーンは、ロッキード・マーチンから、改良型F-16ファイティング・ファルコン16機を推計23億ドルで購入することに調印した。

 また、純粋な商業活動という点で、UAEはアメリカ製品と投資の最大の相手国でもある。2016年、アメリカは、UAEで、190億ドルの輸出黒字を得ており、アメリカにとって、世界で三番目に大きな貿易黒字だ。しかもUAEは、ボーイング航空機の世界的に最大の購入者でもあることは疑いようがない。この他にも、このちっぽけなアラブ国家はアメリカに何十億ドルも投資してきた。一例をあげれば、AMDと、アブダビのアドヴァンスト・テクノロジー・インヴェストメント・カンパニー(ATIC)との間のジョイント・ベンチャー、グローバルファウンドリーズは、アメリカに、約170億ドル投資し、約7000件雇用して活動している。

 この関与の深さを考えれば、アメリカが中東から抜け出すというアメリカ大統領選挙運動時の言説は、軍事協力やMESAのような軍事同盟の創設によって、絆を一層強化するものへと転換したように見え、アメリカは出口戦略ではなく、定着戦略を推進していることを裏付けている。

 この文脈で、兵器輸出を正当化し、軍産複合体経済を破綻させずにおくため、イランを挑発し、一層敵対的な関係にしようとし続けるだろうが、MESAは、この狙いを更に追求するばかりで、イランに反撃することなど到底できまい。

 サルマン・ラフィ・シェイフは、国際関係とパキスタンの内政、外交問題評論家、本記事は、オンライン誌“New Eastern Outlook”独占。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/10/mesa-an-alliance-or-a-gold-mine-for-america-to-dig/

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 「中東同盟」、そのままこの属国に置き換えられそう。憲法を破壊して、侵略戦争に参戦するのも間近。そのためには「緊急事態条項」が必須。当然、大本営広報部は全く触れない。

 ドキュメンタリー『“駅の子”の闘い ~語り始めた戦争孤児~』を見た。壮絶。「今も孤独な子供たちがいるのです。思いやってください。」という趣旨のことを、一人の方が、子供たちへの講演でおっしゃっていた。「戦争は絶対にいけません。」と何人もがいわれた。アフガニスタン、イエメン、シリア。彼らの国々、日本と違い、自分から戦争を仕掛けて、敗戦したわけではなく、いわれなく、一方的に侵略されている。

日刊IWJガイド「本日午後7時録画配信~来日中の国際コンサルタント・トーマス・カトウ氏に岩上さんが緊急インタビュー!緊急事態条項は日米両国できちんと報じられていないことは大問題!/<今日の再配信・核兵器と戦争を考えるシリーズ特集>午後4時『「1943年5月の段階で、原爆は白人国家のドイツではなく、日本に投下すると決まっていた」 ~オリバー・ストーン監督、ピーター・カズニック教授記者会見』、そして午後5時『緊急集会「被爆者は核兵器禁止条約を求める」』を再配信!/他」2018.8.13日号~No.2160号~

2018年8月12日 (日)

イランを孤立化させるというトランプ発言は、むしろアメリカの世界的孤立化

Finian CUNNINGHAM
2018年8月8日
Strategic Culture Foundation

 今週、トランプ政権がイランに対し厳しい経済制裁を再度課したが、この動きは、世界の目から見れば、テヘランではなく、ワシントンが、更に孤立化する危険がある。

 ドナルド・トランプ大統領は、ワシントンが再度課した徹底的な経済制裁に伴う声明を発した。“イラン政権は選択しなければならない”彼は言った。“威嚇的な不安定化の振る舞いを改め、グローバル経済に復帰するか、経済的孤立化の道を継続するか。”

 皮肉にも、トランプが発した言葉そのものは、アメリカ合州国に、よりぴったり当てはまる。

 益々錯乱したこのアメリカ政権は“威嚇的な不安定化の振る舞い”を撤回し、他の国々のように、多国間規則の尊重を始める必要がある。さもないと、アメリカとその一方的ないじめは、“経済的孤立化の道を継続する”ことになる。

 トランプは今週“誰であれイランと事業を行っているものは、アメリカとは事業ができなくなる”とも警告した。ドナルド、願い事には気をつけろ! イランを巡るその警告そのものが、自国にとってずっと悪い結果になりかねない。

 アメリカ大統領は、無謀に、強く出すぎている恐れがある。イランを経済的に孤立化させるアメリカの取り組みに、世界の他の国々にも加われという彼の攻撃的な要求は、ひどく裏目に出る可能性が高い。

 特にトランプは、準備通貨としてのアメリカ・ドル依存から、国際貿易関係を離れさせようとして、ロシアや中国や他の国々が進行中の歴史的方向を強化しつつあるのだ。準備通貨としてのこの特権的立場が無ければ、アメリカ・ドルは暴落するはずで、終わりのない責任を負わないドル札印刷に依拠しているアメリカ経済も丸ごとそうなるはずなのだ。

 ロシアと中国とインドは、イランとの事業上のつながりを切れというワシントンの高圧的要求に従うつもりはないことが知られている。

 イラン石油産業にとって、最大の輸出市場である中国もインドも、トランプ経済制裁に従うつもりはないと言っている。

 アメリカの絶対的命令への抵抗は、必然的に、他の国々に、貿易をする際の新たな資金調達の仕組み考え出させることになる。これが更に、アメリカ・ドルの国際的地位の崩壊を促進する。

 今週、国際核合意を破棄し、不当にイランに敵対するトランプ政策に、欧州連合ですら反撃した。

 欧州連合外務・安全保障政策上級代表フェデリカ・モゲリーニは、イギリス、フランスとドイツの外務大臣も署名した声明で“イランと正当な事業を行っているヨーロッパ企業を我々は断固保護する”と述べた。

 28カ国が加盟するEUは、テヘランとの事業を継続している国々に対する攻撃で、トランプ政権が計画しているいわゆる“二次的経済制裁”から、イランとの商業的つながりを法的に保護することを可能にする障壁規則を導入しつつある。

 今週、ワシントンにより再度課された経済制裁は、アメリカ・ドル支払いを使用した国際貿易をするイランの能力を断ち切るのが狙いだ。だが、もし他の国々がイランの経済的なつながりに断固とした態度をとれば、彼らは必然的に、ユーロ、人民元、ルピーやルーブルによる二国間通貨取引を使って、アメリカの制限を回避するだろう。

 これは、ロシア-中国の二国間関係の戦略的重要性の増大、中国の世界的経済構想である一帯一路構想、ユーラシア経済統合、多極世界を形成する上での、BRICS (ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の重要性の増大を含むいくつか重なる要因のおかげで、既に進行中の移行なのだ。

 BRICSは世界経済の約40パーセントを占めており、グループには、トルコやイランなどの新たな参加国が入りつつある。

 これは必然的に、かつて国際貿易を支配していたアメリカ・ドルの強力な優位が、衰えつつあることを意味している。ドルの余命はいくばくもないのだ。一方的に経済制裁を行使することによるイランや他の国々に対するトランプのいじめは、世界準備通貨としてのアメリカ・ドルを放棄する世界的な方向を促進するに過ぎない。

 一国の通貨は、他の国々からの尊敬、あるいは信頼を受ける能力が全てだ。トランプの下で、ワシントンは急速に、こうした価値を浪費しつつある。

 トランプ大統領の対イラン政策には正当な基盤がない。これは国際法や国連憲章に違反し、政権転覆のため、イランを不安定化させようとする露骨な企てだ。世界の他の国々は、ワシントンの下劣な仮面と、その尊大な物言いの本質を見抜けるのだ。彼らが見ているのは、ことを進める際、身勝手かつに恣意的に自分のルールをでっち上げる凶悪政権だ。

 アメリカ権力は実に無節操で、偽善で分裂している。イランを中東での“悪質な振る舞い”で非難するのは、違法な戦争で、国々を丸ごと、何百万人もの無辜の人々の命も破壊してきた近年の実績を考えれば、ワシントンがばからしく見える。汚れ仕事をやらせるための、テロリスト聖戦士支援もそうだ。

 5月、国連が支持しているイランとの国際的核合意からトランプが脱退して、アメリカが経済制裁を再び課すお膳立てとなったのは、ワシントンが自らの一方的事故満足を優先して、多国間の規範を拒絶する典型例だ。EUやロシアや中国を含む2015年核合意の調印者全員、合意の支持を表明している。

 国連監視員たちは、ほぼ何十もの報告で、イランが核兵器開発を制限する合意の条件を完全に遵守しているのを確認している。合意の自分の義務を遵守していることから、イランは、核合意が定めている経済制裁緩和を受ける資格が十分ある。

 アメリカによる合意拒絶は、もっぱら、イランの“悪意ある行動”だとする根拠の無い侮辱的主張に基づいている。これは、ロシアを“選挙干渉”で、中国を“軍事拡張主義”で非難するのと同じアメリカのゆがんだ宣伝的精神構造だ。

 しかし、特に軽蔑に値するのは、イランに関するトランプ政権自身の不備な主張の中にさえ、原理原則が全く欠如していることだ。イランを世界ののけ者と非難しながら、トランプは、首尾一貫せずに、イラン指導部との交渉まで申し出た。

 新たな経済制裁が発効する中での発言で、トランプの国家安全保障問題担当補佐官ジョン・ボルトンは、フォックス・ニューズにこう語った。“彼ら[イラン指導者]は、イランの弾道ミサイルと核兵器計画を、完全かつ、本当に検証可能な形で放棄すべく彼らと交渉するという大統領提案を受けられるはずだ。”

 トランプの論理の一体どこに原理原則があるだろう? トランプ政権が、うろんに主張しているように、もし“イラン政権”が“世界最大のテロ支援国家”で、それゆえ核合意破棄が正当化できるなら、そうしたのこものとされる国に、交渉を持ちかけることが、一体どうして倫理的に容認可能なのだろう?

 明らかに、トランプ政権には、イランと交渉することに理にかなった反対がないのだ。核合意自体への理にかなった反対が無かったのと全く同様だ。イランは“弾道サイル計画を放棄”しなければならないというボルトンの主張は、元々の核交渉に決して無かった追加要求だ。イラン“は核兵器計画を完全かつ検証可能な形で放棄しなければならない”というボルトン二つ目の主張は単に事実無根の主張、つまりアメリカ・プロパガンダだ。

 核合意の他の調印国全員と、優秀な国連の専門監視員たちが、イランが過去三年間完全に遵守していることを確認している。

 トランプのイランに対する明らかな不誠実さとウソと、国際社会に対し、主権国の事業を、どのように行えという法外な命令で、ワシントンが、ならずもの国家として、国際的規範や外交の常識をはずれたものと見なされ、更に孤立するのは確実だ。アメリカの世界的な地位は歯止めなく落下しつつあるが、ドルの地位も、まもなくそれに続くだろう。

 トランプ政権がイランに対して強気な態度をとっているのは、ボールを手にした駄々っ子が、足を踏み鳴らし、他の連中に、帰るからなと脅しているようなものだ。アメリカの場合、他の連中はこう言っている。“行きな、せいせいするよ。”

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/08/08/trump-talk-isolating-iran-speaks-more-us-global-isolation.html

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 この記事を翻訳したところで目にしたのは、スクリパリ事件を理由にした、対ロシア経済制裁発表。既にルーブル下落が起きている。属国売国政権はひどいが、さすがに、宗主国による悪行のひどさは桁違い。属国売国政権は、自国民を売り飛ばし、危害を加えるが、宗主国は、自国民のみならず、他国民にも途方もない危害を加える。人が、妄想から殺傷事件をおこすことがあるが、常時妄想で、凶行をはたらくならずもの国家というところか。

 宗主国の論理に、一体どこに原理原則があるだろう?

 Nagasaki: Life After Nuclear Warの著者と、その中で書かれた被爆者の方々を取りあげたドキュメンタリーをみた。夜11時。
ETV特集 シリーズ アメリカと被爆者 第2回「“赤い背中”が残したもの」
良い番組を作ろうとすれば作れるのだ。16日深夜に、再放送。きちんと、多くの人が見ない時間での放送するよう配慮しているところが忖度。

日刊IWJガイド「<今日の再配信・核兵器と戦争を考えるシリーズ特集>今日午後7時より、『「核」のプロフェッショナルが「沖縄発の核戦争が勃発する直前だった!」というスクープの裏側を語る!~岩上安身による共同通信編集委員・太田昌克氏インタビュー(前編)』を再配信します!/<配信準備中の岩上さんのインタビュー>『トランプとプーチンが共謀』!? 『プーチンは乗り気』!? 来日中のトーマス・カトウ氏に岩上さんが緊急インタビュー!/【IWJグッズ】限定商品(IWJひょうたんランプ)再販のお知らせ!/他」2018.8.12日号~No.2159号~

2018年8月11日 (土)

アレックス・ジョーンズ粛清:2018年中間選挙に干渉するアメリカ巨大ハイテク企業

Peter KORZUN
2018年8月9日
Strategic Culture Foundation

 90%のマスコミがわずか6社に支配されている事実にもかかわらず、言論の自由の擁護者を自称する国で、主流と異なる見解に対する総力戦が猛威を振るっている。比較すると、1983年には、90%のアメリカ・マスコミが、50社に支配されていた。当然、この傾向は報道の自由に対して悪影響を与えた。国境なき記者団RSFが編集した「2018年 世界の報道の自由指標」によれば、アメリカは、2017年に比べて二位落ち、全体で45位に下がった。競争の役割は減少し、変更が標準となっている。によれば 2017年 ギャラップ/ナイト財団の信頼性、マスコミと民主主義調査報告書、わずか44パーセントのアメリカ人しか、ニュースを客観的に報道していると思えるニュース情報源をあげることができなかった。

 アメリカ合州国では、言論の自由が踏みにじられている多数の例がある。実際、憲法修正第1項「言論の自由」条項は、議会が"言論の自由、出版の自由を制限する"ことを禁じているが、巨大ハイテク企業やソーシャル・ネットワークが“支配体制”の気にいらない政治評論家を排除することについては何も言っていない。そして、彼らはそれをしているのだ。

 主要巨大ハイテク企業 - Facebook、Apple、Google、YouTube、Pinterest、iTunes、LinkedIn、Podcast add、MailChimp、YouPornとSpotifyが - プラットフォームの所有者として“悪意に満ちている”と見なす“間違った記事”を広めているかどで、著名ジャーナリストのアレックス・ジョーンズと、彼のウェブサイトInfoWarsを、彼らのサービスから排除した。これは未曾有の動きで、実に衝撃的ニュースだ。ジョーンズを"素晴らしい"評判と称賛したのはドナルド・トランプ大統領だったのは注目に値する。

 それぞれの規則や規制を持った私企業が、対ジョーンズ統一戦線を組み、排除が、まさに共謀であるのを明確にするため、同時に実行したのだ。巨大企業は連中による市場独占を利用して、少数意見の人々を標的に政治検閲をしているのだ。アレックス・ジョーンズは長年そうある調査ジャーナリストそのままだ。連中はなぜ今彼を弾圧しているのだろう? 彼が連中を不相応にいらだたせたので、おそらく、彼らはうんざりしたのだ。

 ジョーンズは、ロシア大統領選挙の健全さを擁護し、彼は76パーセントの得票を勝ち取ったのだから、プーチン大統領が独裁者などではあり得ないと言った。アメリカ選挙への介入や、他の“非道な”ことを、そのせいにするロシアに対する非難のばからしさを、彼は鮮やかに暴露した。彼によれば、ロシアは1776年の方向に向かっており、アメリカは逆方向に向かっているのだ。アレックス・ジョーンズが巧みに、からかっているとまで、彼らは主張している。彼はスクリパリ事件の犯人だとするイギリスによるロシア非難に疑問を投じた一人だ。それが限界だった。もはや連中は彼を許せなくなったのだ。アメリカ合州国における言論の自由を、当たり前と受け取るほど信じやすい人々は、大きな代償を払わされる。8月6日、アレックス・ジョーンズは、インターネット中での出版・報道の自由に対する脅威について警告を発していた。

 どうやら粛清は進行しているようで、antiwar.comのラジオ司会者で論説員のスコット・ホートン、元国務省職員で著者のピーター・ヴァン・ビューレンや、ロン・ポール平和・繁栄研究所所長のダニエル・マクアダムスの、ツイッター・アカウントが、8月6日に停止された。議員を含め、保守的見解を支持し、トランプ大統領に同調している著名な人々の一部は、Twitterに“闇検閲”されている。多くの“トランプ支持派”ジャーナリストは、単に投稿しただけで首になった。“トランプ支持派”評論家や、自立したマスコミに対する広範な抑圧は、やり放題だ。

 ヴァイス・ニュースの報道は、この結論を裏付けている。ある情報によれば、リベラル派と民主党は、同じ形で、いわゆる“闇検閲”に会っているわけではない。たとえば、自分の支持者に、トランプ政権の閣僚を攻撃するよう公に奨励して“集団暴力”を煽動したマキシン・ウォーターズ下院議員(民主党-カリフォルニア州)には何も起きていない。Appleはアレックス・ジョーンズを削除したが、アドルフ・ヒトラーを ''極めて偉大な人物”と呼んだネーション・オブ・イスラムの指導者ルイス・ファラカーンは、同社プラットフォームを思う存分使えるのだ。

 4月にメディア・リサーチ・センター(MRC)が発行した報告書は、主要ソーシャル・メディア・サイト - Facebook、Twitter、YouTubeとGoogle検索エンジンが - "公共的議論から保守的な世界観を検閲するための明らかな取り組みで"保守的言説を抑圧していると結論付けている。検閲済み! オンライン・メディア企業が、保守的言辞をいかに抑圧しているかと題する報告書には、そうした抑圧の無数の説得力ある例がある。アメリカ合州国内でのロシア・メディア、RTとスプートニクの締めつけは、この傾向の一環だ。

 InfoWarsは、選挙運動中、トランプ大統領を強く支持していた。ご覧の通り、11月の中間選挙に干渉しているのは、ロシアではなく、巨大ハイテク企業なのだ。おそらく、BreitbartNews、DailyCallerなどの他の保守的メディアが巨大ハイテク企業プラットフォームから排除されるのに、さほど時間はかかるまい。もし、これがアメリカ民主主義を脅かす介入でなければ、一体何が介入だろう?

 主要マスコミに反対する意見を表明する声は、2018年中間選挙前に、有権者に聞いてもらう機会を奪われている。アメリカ合州国では、人々の基本的権利を剥奪するため、保守派とリバタリアンに対する大規模検閲キャンペーンが仕掛けられている。更に酷くなることが予想される。民主党上院議員のクリス・マーフィーは既に、ソーシャル・メディア・ウェブサイトに、InfoWarsがインターネットから追放されたのに続いて、もっと多くの保守派ニュース・メディアを規制するよう呼びかけた。“ロシアゲート”にまつわる大騒ぎで、民主主義に対する体制内の本当の脅威は、ほとんど問題にされないままだ。巨大ハイテク企業は、連中のゲームのルールを押しつけ、連中のプラットフォームを、主流と異なる見解にとって居場所皆無の、プロパガンダの道具に変えるため反政府派を締め出している。DrudgeReport.comや、ブライトバート・ニュースや、フォックス・ニューズや、他の歩調を乱す小さなメディアが次の対象だろう。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/08/09/alex-jones-purge-us-tech-giants-meddle-into-2018-midterm-elections.html

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 猛暑、高校野球、ヘリコプター墜落、ボクシング、総理選挙、大本営広報以上終わり。

 この巨大ハイテク企業による言論弾圧が重要話題でなくて、何が重要話題だろう。

 「基本的人権に配慮した緊急事態条項」などという、わけのわからないものを言う時点で、「○○○味カレー、カレー味の○○○のどちらか」という、選択にならない二者択一。

日刊IWJガイド「<今日の再配信「核兵器と戦争を考えるシリーズ特集」>今日午後6時より、『「米軍機が上空から撒いたビラに日本地図が描かれ、広島のところに『?』マークが…」 ~竹本成徳氏講演「『被爆の実相』~ヒロシマを今、私自身のことばで~」』を再配信します。/今日午後8時より、『「母が、弟が死んでも涙がでなかった」 長崎原爆で家族全員を失った被爆者の告白、自らも覚悟した被爆死』を再配信します。/安倍総理が『核兵器国と非核兵器国双方』の『橋渡しに努める』というのは口だけ!被爆者の要望に対しても上の空!
米空軍のCV-22オスプレイ5機が正式配備前に、この1ヶ月半で125回の離発着!東京の横田基地はすでに『空飛ぶ欠陥機』オスプレイの拠点に!? 米海兵隊のMV-22オスプレイの10倍の事故率というCV-22が首都圏上空を飛ぶことに、『都民はまったく無関心』!?/新たな日米貿易の新協議が日本時間10日に開始!大手メディアが正確に報じないトランプ政権の通商政策の意図とは!? 来日されたトーマス・カトウ氏に岩上さんがインタビュー(配信準備中)!
<記事アップ>審判不正問題『奈良判定』の新たな証拠を公表!! 山根会長と内海理事の2つの音声データを会場で放送!『接戦した場合、やっぱり奈良やな』~8.8『日本ボクシングを再興する会』による緊急記者会見」2018.8.11日号~No.2158号~

2018年8月10日 (金)

トランプの一方的イラン経済制裁はイランの責任だというワシントン・ポスト

Moon of Alabama
2018年8月4日

 トランプ政権によるイランとの核合意撤回は誰の責任だろう? その一部が今日発効するトランプ政権が一方的にイランに課す経済制裁は誰の責任だろう?

 ジェイソン・レザイアンによれば、それはイラン政府なのだ。

 ジェイソン・レザイアンはワシントン・ポストのテヘラン支局長だった。2014年7月、彼はテヘランで、スパイのかどで逮捕され、懲役判決を受けた。2016年、核合意の裏取引でアメリカ合州国にとらわれていたイラン人と引き換えに、彼は解放された。

 今レザイアンは、ワシントン・ポストのグローバル・オピニオン・コラムを書いている。最新記事は「私は経済制裁下のイランで暮らした。こんな感じだ。」と題するものだ。

    私は当時テヘランに住み、経済制裁の影響を広範囲に報じていた。

    もし、あの経験が、イランの人々を一体何が見舞おうとしているかの予兆となるものとすれば、以下が、これから普通のイラン人がどのような目に会うかの予告だ。

 彼は経済制裁が引き起こす様々な問題を列記している。リアルは更に下落するだろう、一部の薬品は入手困難になるだろう、他のものも不足するだろう、闇市場が再び現れ、少数の連中がそれで儲けるだろう。

    この小さいとはいえ、取るに足りないわけではない一部国民は、2012年と2013年にそうだったように、その富が膨れ上がることになろう。テヘランの絶え間ない交通の中、世界で最も高価な高級車が不相応な数走ることになろう。

 ロンドンかニューヨークの話のようだ。実際ある評論家はこの論説にこう言っている

    この記事の多くは、多数のアメリカ人の日常生活のようで、アメリカ国民の大半が経済制裁されているかのようだ。イラン人には、いつかこうした経済制裁が解除される日がくるだろうが、このアメリカ人たちは、そうならない可能性が高い。余りに多くの人々が、自分たちを迫害する連中に投票し続けているのが、その理由の一つだ。

 レザイアンはこう続ける。

    間もなく、有力なコネがある役人連中や闇市場にアクセスできる家族は、政府内の連中のお仲間が作り出すのを促進した逆境に冷淡につけ込んで商品を輸入し、法外な価格で売り始めるだろう。

 イラン政府内の"お仲間"が一体どのように新たな経済制裁"作り出すのを促進した"のだろう? イランはJCPOA合意の下での義務を全て果たしていた。他の調印国全てが抗議したにもかかわらず国連が支持した合意を破棄したのは、もっぱらドナルド・トランプだ。

 レザイアンはイラン国民を気づかうふりをしているが、見当違いの相手を非難し続けている。

    テヘラン政権は明日静かに崩壊するかも知れない - 素晴らしいことではないだろうか? - だが、ワシントンに楯突くだけのために、実に当然な国民の懸念への対処をほとんど何もしないまま進む可能性の方が高い。
    ...
    フィデル・カストロのキューバやニコラス・マドゥロのベネズエラや他の多くの反米政権同様、イランの支配階級も頑固だ
    ...
    のけ者国家と烙印を押されていることで引き起こされる永久の闇の下で暮らす社会の全身倦怠感は悪化するばかりだ。

 ジェイソン・レザイアンが一体どこの惑星に住んでいるのか判別するのは困難だ。そこは、ワシントンDCで偉そうに大口をたたく連中の理不尽な気まぐれに、あらゆる国々と人々が屈服する所に違いない。そこは地球ではない。イランは"頑固"なのではない。JCPOAの下での権利を要求しているだけだ。イランは"のけ者国家"ではなく、アメリカ合州国がそうなのだ。一方的に核合意を破棄したのはアメリカだ。

 ロシアやトルコやインドや中国や他の多くの国々は、アメリカによる一方的なイラン経済制裁を遵守するまい。もしアメリカが二次経済制裁を課そうとしても、両国はそれに屈伏することをあるまい。

 トランプ "取り巻き連中"はアジアを訪問し、イラン石油の最大輸入国二国、中国とインドにイラン石油購入を止めるよう要求した。両国とも拒否した。トランプ取り巻き連中は、そこで、11月に経済制裁が発効した時に、イラン顧客の一部が購入を停止し、より多くのイラン石油が市場に出た際、中国とインドに輸入を増やさないよう懇願した。

 こうした交渉は数カ月前に行われ、両国とも問題を検討するための時間を要求した。中国は原則的にトランプの要求に同意しているが - 必要な準備をしたあとのことだ。

    交渉に詳しい二人の当局者によれば、アメリカは、中国にイラン石油輸入を削減するよう説得できなかった

    当局者によれば、しかしながら北京はイラン原油購入を増やさないことに同意した
    ...
    世界最大の原油輸入国で、イランの一番の顧客である中国は、以前、一方的な経済制裁には反対すると言っていた。イランからの毎月の石油輸入を、7月、26パーセント増やした。ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによれば、これは先月のイラン輸出の35パーセントを占める。

 インドも同じ考えかたをしているようだ。

    インドの毎月のイランからの石油輸入は、11月のアメリカ経済制裁に先立ち、国営精油所の取入れ量が増加して、7月、約30パーセント急増し、記録的な 一日768,000バレル(バレル/日)となったのを、ロイターが入手した仮のタンカー到着データが示している。
    ...
    7月の量は、約415,000バレル/日という一年前の出荷より、約85パーセント多かったことをデータは示している。

 11月、イラン石油購入者に対する厳格な石油制裁が発効すれば インドと中国は現在の量を維持することを主張するだろう。両国とも既にイランからの購入量を増やしている。既に輸入量を非常に大量に増やしたので、両国は、今ならトランプに、イランからの輸入を増やさないと約束できる。イランは毎日220万から280万バレル輸出している。少なくともその半分は二大顧客に流れ続ける。それによって、経済制裁措置は既に破綻している。

 トランプは、こうした貿易を止めるのに、アメリカ・ドルに対する管轄権を利用することさえできない。インドと中国との取引は二国間契約で、元建てで、上海で売り買いできる現地通貨と先物契約だ。

 経済制裁に加えて、トランプ政権は、イランに対し、多数のいかがわしいものや、あからさまに残虐な構想やらをしかけている。ヨーロッパに人を派遣し、イランは、ヨーロッパにおけるいくつかのテロ策謀の黒幕で、それが合意を終わらせる十分な理由だと主張させている。だが "イランは策謀の黒幕だというのに懐疑的なヨーロッパ幹部は、核合意は地域に恩恵をもたらすと言っている。" それでも、ヨーロッパ指導者の中には意気地が無く、アメリカの圧力に屈するものもいる。

 イラン国内での圧力を高める、アメリカ-イスラエル共同作戦の準備が整っている。イラン国内で、抗議行動参加者に影響を与え、テロを引き起こそうとするだろう。これは、この構想の初期兆候である可能性が高い。

    高射砲、7000発の大砲砲弾、73mm対戦車砲や、他の兵器を含む大量の兵器貨物が #イラン東部で発見された。ケルマーン検事総長は、反政府集団のものだと言っている。

 イランは決して圧力には屈するまい。イランは決して屈したことがない。核合意を望み、必要としていたのはオバマ政権だった。オバマ政権は、テヘランとの交渉にオマーンの良い事務所を利用した。トランプを同じことをしようとするかも(あるいは既に実際、イランと話しているかも)知れない。だがこの政権は、イランが履行できず、するはずのない理不尽な要求をしている。

 トランプの無条件会談提案は歓迎されていない

 私が話したあらゆるイラン人幹部はこう言った。“このアメリカ支配体制は全く信頼しておらず”“イランは、いかなる対話を始める前に、実質的な証拠が必要だ。”“JCPOA署名時、アメリカ側につくのをテヘランが受け入れることを期待して、アメリカは、イランをロシアと中国から孤立化させようとした。ロシアと中国は、安定した信頼できるパートナーなので、これは間違ったやり方だが、我々は確かに、アメリカには同じことが言えない。トランプは無条件で話し合いたがっている。彼が譲歩しない限り、彼と話し合うつもりはない。彼の圧力のかけ方は、イランを惹きつけるものではない。逆に、我々を遥かに遠ざける最善の方法だ。一つ明らかなことがある。我々のミサイル製造と能力と、中東内の我々の同盟者に対する我々の支援を、交渉で放棄するつもりはない。もし、彼がそれを望むなら、彼は現状のままいれば良い。”

 妥協し、JCPOA合意を元に戻さなければならないのはトランプだ。彼がそうしない限り、イランは彼と交渉しようとするまい。現在の問題は、トランプの背後のシオニストが、彼がそうするのを許さないことだ。連中は、ことを軍事衝突に向けて押し進めるよう主張するだろう。それは、アメリカが負け続けているものの一つになるだろう。

記事原文のurl:http://www.moonofalabama.org/2018/08/washington-post-blames-iran-for-trumps-unilateral-sanctions-against-it.html

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 2013年8月11日に掲載した翻訳記事「ワシントン・ポスト新オーナー、いかにCIAを支援し、WikiLeaksを妨害し、書籍業界を壊滅させたか」を思い出した。

 猛暑復活、辞任、三選と、興味のないことは延々伝えてくれる広報部。よその国のグテーレス事務局長の方が、売国政治家よりまとも。

 日刊IWJガイド「<8.9長崎平和記念式典>この1年で核廃絶・平和運動のリーダー2人を失った長崎! 田上市長はこの2人の言葉を引き、『「平和の文化」を、市民社会の力で広げていこう』と全世界に宣言! 国連のグテーレス事務局長は「長崎を核兵器で苦しんだ地球最後の場所に」との強い決意を述べる!!/<今日のタイムリー再配信>午後8時『「核と人類は共存できない。核には、きれいな核も、汚い核もない」~岩上安身による谷口稜曄(すみてる)長崎原爆被災者協議会会長インタビュー 2013.8.9』を公共性に鑑みフルオープンで再配信します!/他」2018.8.10日号~No.2157号~

2018年8月 9日 (木)

アメリカ憲法と言論の自由とアメリカの自由を覆すApple、Google、Youtube、Facebook、Twitter

2018年8月7日
Paul Craig Roberts

 視聴者の多いInfo Warsの司会者アレックス・ジョーンズに対する、AppleやFacebookやGoogle/YoutubeやSpotifyによる組織的攻撃は、アメリカの反トラスト法を執行し損ねた大失敗が、アメリカ国内のみならず、外国のワシントン属国諸国に対しても、ナチス・ゲシュタポやスターリンのNKVDが実現できたものを遥かに超える検閲を実施することができる、わけがわからないくらい強力な企業を生み出してしまったということの、我々が必要としている証拠だ。

 最近、進歩派のロブ・コールと私は、今のAppleがそうであるような一兆ドル企業の意味合いについて、彼の番組で話し合った。それから一日か二日後、ロブ・コールは彼のウェブサイトOpEdNewsで記事を書いて、一兆ドル企業は、我々が自由な人間であり続けるには余りに巨大な権力をもっていると主張した。私は彼に同意する。世界の195カ国中、わずか16カ国、たった0.08パーセントが、一兆ドルと同等あるいはそれ以上のGDPなのだ。

 お考え願いたい。世界のほとんどあらゆる国々のGNPより大きいのだ。言い換えれば、Appleには主要政府並みの権力があるのだ。AppleはG-20メンバーになってよいくらいだ。Appleは自社通貨を発行し、SDR引き出し権の一員になってよいくらいだ。AppleはIMFと世界銀行融資の支持者として参加してよいくらいだ。Appleは自社の軍隊やシークレット・サービスを持てるはずだ。

 ロブ・コールが主張するやいなや、他の巨大ハイテク企業、Google/Youtube、SpotifyとFacebookと共に、Appleは彼の説を証明した。https://www.rt.com/usa/435259-infowars-ban-twitter-reacts/

 アメリカでは、ほとんど全てが独占デジタル世界だ。印刷とTVメディアの90%が5社か6社に所有されている。銀行預金の90%は“大きすぎて潰せない巨大5銀行にある。ウォルマートやホーム・デポやロウズが、地元の独立した家族経営店舗を滅ぼした。自動車部品フランチャイズが、家族経営企業を滅ぼした。レストラン・フランチャイズが、家族経営レストランを滅ぼした。医薬品や化学薬品の独占。これにはきりがない。アメリカ経済の独占化は“グローバリズム”という旗印の下で行われた。独占企業や、独占企業に近い立場になれるほど大きくない限り、グローバルには競争できないというのが、その教義だ。

 アイデンティティ政治と結びついたデジタル革命が、言論の自由を抑えるのを容易にした。支配層エリートが触れられたくない問題へのいかなる関心も、真実を語って隠された計画を暴露することも“陰謀論”や“ヘイト・スピーチ”と烙印を押され、封印される。この独占権力こそ、Apple、Facebook、Gogle/YoutubeとSpotifyが、今アレックス・ジョーンズに対して行使しているものなのだ。

 アレックスは始まりに過ぎない。彼は歯に衣を着せず物を言い、時にやり過ぎる。だが彼は、権力を支配している連中が隠しておきたい問題に焦点を当てる。これが、これだけが、支配層エリートが彼を封じ込めようとしている理由なのだ。ヘイト・スピーチ容疑など、でっち上げの冗談だ。

 AppleやFacebookや他のアメリカ・ゲシュタポは、真実はヘイト・スピーチだと考えているのだ。これは、ジョージ・オーウェルの『1984年』そっくりそのままだ。

 真実を語る人々を非難して、アメリカ人を欺くことが、今やApple、Google/Youtube、Facebook、TwitterとSpotifyの公式方針なのだ。

 印刷メディアも、TVメディアも、ロバート・ペリーやクリス・ヘッジズやシーモア・ハーシュのような本物のジャーナリスト全員を既に首にしている。今や、アレックス・ジョーンズが、インターネットから追い出されつつあり、真実を語る人々全員が締め出されるまで、あらゆる言説を支配するという支配層エリートの固い決意はインターネット中に広がるだろう。それは時間の問題に過ぎない。

 実際、検閲は急速に広まっている。今やTwitterは、antiwar.comの論説員スコット・ホートンと、リバタリアンのロン・ポール研究所所長のダニエル・マクアダムスを排除している。https://www.zerohedge.com/news/2018-08-07/crackdown-continues-twitter-suspends-libertarian-accounts-including-ron-paul トミー・ロビンソンは、彼のInstagramページが削除された。https://www.rt.com/uk/435312-tommy-robinson-instagram-ban/ どうやら政府幹部が我々にウソをつくと言ったがゆえに、元国務省職員ピータ・ヴァン・ビューレンはTwitterから締め出されている。

 言論規制を課し、“被害者集団”のどの一員でも、白人男性に矛先を向けることが可能な“ヘイト・スピーチ”という範疇を作り出すのを幇助したアイデンティティ政治は欧米世界中で言論の自由を破壊しつつある検閲の源の一つだ。ところがアメリカ合州国において、検閲をすすめる最も強力な力は、支配層エリートの狙いが、アメリカ人にとっては、受け入れがたいものだという事実だ。支配層エリートは、連中のつじつまを合わせの作り話が余りに薄っぺらなので、もしなんらかの真実が輝き続ければ、洗脳されている人々でさえ、事の真理を理解するのを恐れているのだ。

 現在の欧米世界において、真実以上に絶滅の危機にひんしているものはない。CIA、FBIや司法省であれ、あるいはFacebook、Apple、Google、Youtube、あるいはTwitter、CNN、NPR、MSNBC、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストであれ、公的組織にも、民間組織にも真実の尊重など全くない。

 真実は隠された計画の邪魔になる。売女マスコミは、真実ではなく、隠された計画のために働いている。

 欧米の政治制度においては、真実ほど歓迎されないものはない。それなのに、ロシアや中国や北朝鮮やイランやインドの政府は、ワシントンとの無意味な協定、イラン合意と同様、ワシントンが守る可能性が全くない協定をいまだに追い求めている。

 ワシントンは世界に対して覇権を行使することを狙っている。ネオコンは、ネオコンがしっかり同盟しているイスラエルと共にアメリカ外交政策を支配しており、世界に対するアメリカ覇権をしっかり守ろうとしている。もしロシアや中国やイランやインドや北朝鮮の政府がこれを理解していなければ、苦境におちいることになろう。

 我々に何ができるだろう? 次のApple製品は決して買わないことだ。Youtube、Facebook、Twitter、Spotifyと縁を絶つことだ。全てのGoogle電子メール・アカウントを止め、決してGoogle検索エンジンを使わないことだ。これらの企業はナチス・ゲシュタポ企業だ。連中は厳しい非難に値する。これらの卑劣な企業は、国営化するか、廃業させるか、アメリカ大統領を打倒する策謀への加担のかどで逮捕されるべきなのだ。

 連中は悪の手先だ。

 代替するポータルが存在している。そうしたものを利用し、言論の自由を検閲するのを拒否するものを支持しよう。Facebook、Twitterや他の連中による反民主的行為で、彼らのビジネスモデルが駄目になり、憲法による言論の自由の保護を尊重する新たな企業に取って代わられて欲しいものだ。

 アメリカ人は余りにおろかで、自分たちの目の前で展開していることを理解できないのだろうか? アメリカの支配層エリートには、 弁護のしようがない計画があるのだ。アレックス・ジョーンズのような人々は、こうした計画を暴いている。支配層エリートは、この暴露を潰さなければならず、そこで連中は、アレックス・ジョーンズを歪曲して表現し、悪者扱いするのだ。アイデンティティ政治で洗脳された人々や売女マスコミは、あやつられて、トランプ大統領やジュリアン・アサンジやスノーデンや他の多くの人々に対して利用されたのと全く同様、アレックス・ジョーンズ反対運動を駆り立てるのに利用されている。実際、PropOrNotが、200の自立志向のウェブサイトに対して利用された。

 標的にしているアレックスを潰した後、彼らは我々全員を標的にし、全ての欧米世界からあらゆる真実が消滅する。実際、今の欧米世界では、真実は影が薄い。支配層エリートは真実には興味皆無だ。どこかの時点で、ロシアや中国やイランやインドや北朝鮮は、この事実に気づくべきなのだ。

 実に多数の無頓着なアメリカ人がするように、愚かにも反アレックス・ジョーンズの動きに加わる前に、ナチス支配下時代、ドイツのルター派牧師マルティン・ニーメラーの見解を想起し、お考え願いたい。

 “最初に彼らが社会主義者を捕まえた際、私は反対の声をあげなかった。
     私は社会主義者ではなかったから。
次に彼らが労働組合員を捕まえた際、私は反対の声をあげなかった。
     私は労働組合員ではなかったから。
次に彼らがユダヤ人を捕まえた際、私は反対の声をあげなかった。
     私はユダヤ人ではなかったから。
次に彼らは私を捕まえたが、私のために反対の声をあげる人は誰も残っていなかった。”

 今回、連中はアレックス・ジョーンズから始めた。

 間もなく我々全員そうなる。アメリカでは真実の発見に必要不可欠な言論の自由が組織的に根絶されつつある。アメリカ合州国が自由な国だという考えは史上最大のウソだ。

 Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/07/apple-google-youtube-facebook-twitter-subvert-the-us-constitution-free-speech-and-american-liberty/

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 この話題、属国大本営広報部は報じているのだろうか? 案の定、外国大本営広報部は、陰謀論者に対する当然の処置であるかのような報道をしている。想像通り、ひどいもの。

 RTには、Danielle Ryan氏の正論がある。
It’s not a ‘defense’ of Alex Jones to argue that we’re on a slippery slope of internet censorship 我々がインターネット検閲への危険な坂道にあると言うのは、単にアレックス・ジョーンズ「擁護」ではない。

 Mediumには
Caitlin Johnstone氏の正論がある。
In A Corporatist System Of Government, Corporate Censorship Is State Censorship
大企業本位主義制度にあっては、大企業による検閲は、国家検閲だ。

 長崎原爆投下の日。関連記事をいくつか翻訳している。一例は下記。

長崎原爆投下70周年 : 教会と国家にとって歓迎されざる真実 2015年8月 9日

 下記記事は広島が主題だが、記事のあと、興味深い本に触れた。

広島の神話 責任を負わない戦争犯罪とアメリカ軍の歴史の嘘 2013年8月 6日

 文庫『ナガサキ消えたもう一つの「原爆ドーム」』だ。本来なら天主堂廃墟が残っていたはずなのだが。本を読んで、謎がとけた。

 翁長知事逝去。岩波書店『世界』9月号、前泊博盛教授の「沖縄が問う民主主義」で、「知事選めぐる攻防」を読んだところだった。

IWJ 翁長雄志沖縄県知事・追悼再配信。8/9 20:00 ※2014年10月収録 『翁長雄志氏、米軍基地負担と「リンク」した沖縄振興策に強く反対 辺野古移設は「ご破算」にする意欲を岩上安身に語る』

2018年8月 8日 (水)

陰の政府はアレックス・ジョーンズを破滅させようとしている-そうさせてはならない

2018年8月4日
Paul Craig Roberts

 我々を支配している連中にとっては提起されたくない、余りに多くの問題を提起するアレックス・ジョーンズを黙らせる企みで、でっち上げの正当な根拠無しの訴訟が利用されている。時にアレックスはやりすぎることもあるが、彼は概して、他では教えてもらえない様々な出来事についての認識を広めてくれている。

 ウィリアム・ビニーの専門能力と品位には何の疑念もない。この一時間もの彼のインタビューは、CNN、BBC、MSNBC、NPRや、フォックス・ニューズ。ウオール・ストリート・ジャーナルや、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストではなく、Info Warsに掲載されている。

 ウィリアム・ビニーは、NSAのスパイ能力を開発し、その乱用を巡りNSAを退職した。このインタビューで、https://www.infowars.com/bill-binney-in-his-own-words-a-collaborative-conspiracy-to-subvert-the-us-government/ ヒラリーの電子メールがロシア人や他の誰かにハッキングされたことなど全くあり得ない理由他の様々なことを知ることができる。あれは小型メモリーにダウンロードされたものだ。全く無辜の人々をはめるのは、アメリカ司法省やFBIや、いわゆる“治安機関”の常套手段であることがわかるはずだ。連邦の諜報機関も司法機関も丸ごと信じられないほど腐敗しており、全く信用できないことがわかるはずだ。

 アレックス・ジョーンズが我々に伝えてくれるこの種の情報こそ、ウィリアム・ビニーを破滅させようとし、今もスノーデンとアサンジを破滅させようと望んでいるのと全く同様、アレックス・ジョーンズを破滅させてやると、陰の政府が固く決意している理由だ。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/04/the-deep-state-intends-to-destroy-alex-jones-dont-let-them/

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 Chilling precedent? InfoWars block exposes Big Tech as no friend of free speechが、この話題。

 小さな膿は排出されるが、大きすぎて潰せない膿本体は大手を振って歩いている。

 岩波書店の『世界』9月号
特集1は、人々の沖縄
特集2は、非核アジアへの構想

 座談会「沖縄を戦場にはさせない」がある。三上智恵、大家英代、森口豁の三氏。
この女性お二人による『沖縄スパイ戦史』を見たばかり。

 メディア批評 第129回は、
(1)「赤坂自民亭・記者クラブ」あるいは平成の「沈黙の塔」
(2)メディアは永田町のウソに負けたのか
 冒頭に出てくる『ザ・空気 Ver.2 誰も書いてはならぬ』という芝居、全く知らず見損ねた。残念。筆者はこうおっしゃる。

 自民亭の控えの間で待機していた政治部記者のなかに「ぼんやり酒のんでんじゃねえよ!」と一喝したジャーナリストが一人でもいたら、当欄に名乗り出てほしい。

そして

 主人公のフリー・ジャーナリストが言う。「メディアを恨むな、メディアを作れ。」

 おさななじみの飲み会にゆかなくなって数年になるが、考えてみれば、あれは町の庶民の自民亭。自腹を切って時間を無駄にする暇はない。連中と過ごす時間があれば、記事翻訳に使いたい。

ロシアにとって唯一の実存的脅威は新自由主義経済学

2018年8月3日
Paul Craig Roberts

 世界中のあらゆる人々にロシア国債保有を禁じるという、ワシントンが検討している、あり得る新たな対ロシア経済制裁について、今週ロシアTVのインタビューを受けた。これについてお考え願いたい。ワシントンには主権国家と、その国民が、ロシア国債に投資するのを阻止する権利と権限があるとワシントンは考えているのだ。我々が目にしているのは、狂気にまで至った傲慢さだ。

 ロシア国債は素晴らしい投資だ。アメリカやEUやイギリスや日本の国債とは違い、ロシア国債は金利が良く、アメリカやヨーロッパやイギリスや日本の巨額の債務を抱えた政府と違って、ロシアは事実上債務がない。

 しかもロシア・ルーブルは、ヨーロッパと中国がそれに依存している膨大なエネルギー資源で守られている。ルーブルを押し下げる唯一の方法は、欧米と日本の中央銀行による組織的な空売りしかない。これらの中央銀行は、すきなだけお金を刷って、それをすっかり浪費できるのだ。欧米の中央銀行は欧米政府より、もっと無責任だ。

 ソ連政府には、ルーブルが市場で取り引きされ、欧米が操作できるようにさせないだけの分別があったが、アメリカ新自由主義経済学者に洗脳されているロシア政府は、ソ連政府の分別に欠けているのだ。

 ロシアに対するワシントンのあらゆる経済的威嚇は、ロシア政府に、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアや日本の全てのように属国の地位を受け入れるよう強制するよう仕組まれている。マイケル・ハドソンと私が彼らに教えた教訓を、ロシア政府とロシア科学アカデミー経済研究所が無視しているがゆえに、この威嚇が機能し得るのだ。下記を参照。

 ロシアの弱点は経済政策  英語原文

 ロシアは、ブラジルの運命から学ぶことができるだろうか?  英語原文

 アメリカの第五列がロシアを破壊する  英語原文

 ロシアの信用を破壊するためのワシントンによる現在の取り組みの展開はこうだ。まずワシントンが、世界中のあらゆる人にロシア国債購入を禁止することを検討していると発表する。多くの人に犯罪組織と見なされていて、連邦準備金制度理事会からの助成に全面的に依存しているシティーバンクが、でっち上げの“分析”を公開する。ブルームバーグを引用すれば、“シティーグループが開発した新モデルによれば、もしアメリカが、ロシア国債に経済制裁を課する提案を強行すれば、ルーブルは15パーセントも下落し、借り入れ費用は、3年間の最高値に急上昇する”。シティーのアナリスト、イワン・チャカーロフと、アルチョーム・ザイグリンはこう言っている。“この出来事で引き起こされる更なる資本流出は究極的にルーブルを弱体化させかねない。” https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-08-01/russia-debt-sanctions-would-send-ruble-plunging-15-citi-says

 これは全くのたわごとだ。もしワシントンが属国諸国に有利な投資を放棄するよう強制できたとしても、その企みを機能させ得るのは新自由主義経済で洗脳されたロシアだけだ。

 もし逆に、ロシア人が新自由主義経済洗脳から解放されたいと望むのであれば、ロシア中央銀行は、ワシントンが属国諸国に売ることを強制しているロシア国債を買うだけで良いのだ。これはまさに、アメリカやイギリスやEUや日本の中央銀行が、自国国債(と株)を買い入れて、価格を押し上げるよう十年間やってきたことだ。欧米同盟諸国における、ゼロ/マイナス金利は、こうして実現されたのだ。

 以前、マイケル・ハドソンと私は、ロシアの発展は、外債と、貴重なロシアの資産を外国に外貨で売ることに依存しているという、ロシアを支配している誤った思い込みは完全に間違っていると、ロシア政府と中央銀行に指摘した。ロシア政府は、ワシントンが仕組んだ物の考え方にはめられているのだ。

 ハドソンと私は、ロシアが開発計画のために外国から借り入れると、ドルはロシア経済の中では使われないことが実に明らかだということを指摘したのだ。借り入れたドル(あるいはイギリス・ポンドや、EU・ユーロや日本円)は中央銀行の外貨準備保有になる。中央銀行は、開発プロジェクトに融資するための、外貨の額に等しいルーブルを印刷するのだ。

 ロシアの対外借款には全く意味がないことは、アメリカ新自由主義経済学者に洗脳されておらず、ワシントンに反対している誰にとっても明々白々だ。ロシア中央銀行は、外国からの借り入れと無関係に、ロシアの開発プロジェクトに融資するためのルーブルを生み出すことが可能なのだ。外国からのあらゆる借り入れは、ロシア対外債務を増大し、それによって、ロシアは、ワシントンの経済制裁の影響をより受けやすくなるのだ。

 ロシアが新自由主義という物の考え方をし続ける限り、ロシア破壊が狙いのアメリカ・ネオコンはくつろいでいられる。新自由主義経済学が、彼らのために仕事をやってくれるのだから。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/03/the-only-existential-threat-to-russia-is-neoliberal-economics/

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 9月に横浜で『華氏451度』が芝居で見られるという。レイ・ブラッドベリによる名作SF。映画もある。

 徹底した思想管理体制のもと、書物を読むことが禁じられ、情報は全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりで溢れている近未来の話だ。本の所持は禁止されており、発見された場合、ただちに「ファイアマン」と呼ばれる連中が出動し、焼却し、所有者は逮捕される社会だ。

 大本営広報部の虚報・洗脳は悪質犯罪と思うが、巨大ハイテク企業の締めつけも劣らず悪質だ。それが今、劇的に強化されつつある。ジョージ・オーウェルの『1984年』と、『華氏451度』の世界、間もなく、ほとんど実現するある。下記はRT記事。

Chilling precedent? InfoWars block exposes Big Tech as no friend of free speech

 大本営広報部でないと、記者会見で手をあげても無視される。れっきとした検閲。

日刊IWJガイド「今日午後8時より、『「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー』を、公共性に鑑みてフルオープンで再配信!/<取材報告・東京医大不正入試>昨日IWJは、東京医科大記者会見と林文科相定例記者会見を取材! IWJ記者だけが手を上げていたのに、司会は指名せずに『IWJ外し』! 記者クラブに加盟していないIWJに質問されるのはよほど都合が悪い!?/【動画班からお知らせ】メインチャンネル(2ch~9ch)中継が『ユーストリーム』から『ツイキャス』に替わりました!/他」2018.8.8日号~No.2155号~

2018年8月 7日 (火)

ウソの世界の中で暮らすアメリカ人

2018年8月3日
Paul Craig Roberts

 アメリカ政府と、それに仕える売女マスコミは、あらゆることについて、我々にウソを語り続けている。今日、労働統計局が失業率は3.9%だと発表した。経済回復とされるものの期間中ずっと就業率が減少し続けており、十年間  完全雇用のせいでの賃金上昇圧力もないとも労働統計局は報告しながら、どうしてそのようなことがあり得よう。仕事がたくさんある場合、就労の機会に乗じ、人々は労働力人口に参入する。これで就業率は上がる。3.9%失業率が意味する、完全雇用時には、雇用者たちが、希少な労働力を得ようと競って賃金は競り上がる。賃金上昇圧力が無く就業率が上がらない完全雇用などあり得ない。

 3.9%失業率は、雇用によるものではない。就ける職がないので、求職活動を止めた求職意欲喪失労働者を計算に入れない結果なのだ。失業者が積極的に職探しをしないと、その人は労働人口として数に入れられないのだ。この計算方法で、失業率はエセになる。

 政府は基本的にインフレではないと言っている事実にもかかわらず価格は、大幅に値上がりしている。食料品価格、住宅改修価格、医薬品価格、ほとんどあらゆるものの価格が。二年前、アメリカ米国退職者協会の公共政策研究所はこう報じた。平均医薬品価格は“年間10パーセントという気がかりなペースで上昇しており、約20の薬品は、仰天することに、12月から価格が四倍になった。同時期に60の薬品が倍の値段になった。マーティン・シュクレリ率いるチューリング医薬品は、この種の振る舞いの最も目立つ例の一つだ。同社は、価格を一錠13.50ドルから、750ドルに値上げするためだけの目的で、命を救う薬品の販売権を買った。” https://www.rt.com/usa/334004-drug-prices-doubled-years/

 もちろん収入は倍増していない。実質的には収入は減った。しかも薬品支出は老人やメディケア対象者の家計の大きな比率を占めている。カイザー・ファミリー財団によれば、高齢者の処方薬に対する平均年間経費は、平均社会保障年金の四分の三を占め、メディケア給付金を受けている人々の平均収入の約半分だ。https://www.rt.com/usa/334004-drug-prices-doubled-years/

 本当の雇用も減っている。売女経済マスコミが人手が足りないと報じている雇用は生活を支えられる職ではない。労働統計局は、複数の仕事で働いているアメリカ人の人数は、7月に 453,000人増え、複数のパート仕事をしているアメリカ人の人数は8,072,000人にのぼると報じている。

 7月の就業者数報告を見ると、またしてもアメリカ労働人口第三世界的様相がある。新規雇用とされるものは低賃金の国内サービス業に集中している。人材派遣サービス、医療支援や社会支援、ウエイトレスやバーテンダー。

 活力ある経済の兆しはほとんどないが、至る所に多額の負債がある。債務はそれを支えるための収入より早く増加しつつある。アメリカ政府は、更なる1兆ドルの年間財政赤字への道を進んでいる。グローバル企業が高生産性、高付加価値製造業と専門技能職を海外移転することで、連邦や州や地方自治体の税基盤は破壊された。“自由貿易”を名目に、社会保障やメディケアや公的年金のための税基盤は、人件費が安い中国や他のアジア諸国に引き渡されてしまった。アメリカのグローバル企業は、アメリカ税基盤を縮小させることで利益を増やしているのだ。新自由主義経済学者は、このばかげたことを、アメリカ人に恩恵を与える“自由貿易”だと擁護している。

 その雇用が外国人に与えられてしまった何百万人ものアメリカ人は自分たちが恩恵を受けていないことを良く理解している。彼らは新自由主義経済学者や売女経済マスコミが言っている話はウソだということを理解している。

 もちろん、ウソは経済だけに限るわけではない。前回の大統領選挙運動以来、印刷やTVメディアやNPRを支配しているロシアゲートは連日続く壮大なウソだ。例えば、8月3日、ポール・マナフォートが裁判にかけられ、ロシアゲート特別検察官ロバート・マラーに、トランプのホワイト・ハウスからの排除を招きかねない有罪判決をもたらす見込みを巡り、売女マスコミNPRはワクワクしている。有罪判決を受けたマナフォートが自分の罪を軽くするのと引き換えに、トランプのことを密告すると売女マスコミは憶測している。

 マナフォートが、ロシアゲートに何らかの形で関係することで裁判にかけられているわけではないのを売女マスコミNPRは明らかにしていない。マナフォートは十年前、ウクライナ人政治家のコンサルタントだった時代の所得税脱税容疑で裁判にかけられているのだ。それは明らかだが、これは自分を守るためにトランプにぬれぎぬを着せるようマナフォートに強要するのが狙いの冤罪だ。もしマナフォートis有罪判決を受けても、いかなる証拠に基づいたものではないはずだ。マナフォートは“税金を払わない金持ちの一人”だと売女マスコミが陪審員に確信させて、マナフォートは有罪判決を受けるだろう。

 この魔女狩りを、一片の証拠も発見されていない、マラーへのロシアゲート負託を遥かに超える魔女狩りの継続を、トランプ大統領が許していることが、軍安保複合体と民主党全国委員会に協力している売女マスコミが、アメリカ大統領をどれだけ無力にしたかを示している。アメリカ人が、じっと座って親指を吸っているうちに、大統領に対するクーデターが目の前で進展している。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/03/americans-live-in-a-world-of-lies/

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 いつになく涼しい。温度計は26度。孫崎享氏、メルマガ、オリンピック時期のサマータイム導入などではなく、時期そのものを秋にずらせと主張しておられる。

 ボクシング界の膿は、しっかり追求して、一番悪辣な膿から目をそらすのに懸命な大本営広報部。大本営広報部も、膿の一部。

日刊IWJガイド「<昨日の岩上さんのインタビュー>『憲政史上最悪の国会』にした、 安倍政権『7つの大罪』を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー・明日夜8時フルオープンで再配信!!/<8.6広島平和記念式典>被爆者の平均年齢は82歳超に! 安倍総理は昨年同様、核兵器禁止条約にふれず! GHQの厳しい情報統制下で、奇跡的に残った被爆者の手記を公開!! 西日本豪雨から1ヶ月、大量の土砂と酷暑が復興を遅らせる!?/
【動画班からお知らせ】メインチャンネル(2ch~9ch)中継が『ユーストリーム』から『ツイキャス』に替わりました!/他」2018.8.7日号~No.2154号~

2018年8月 6日 (月)

欧米は左翼に対する‘哲学的クーデター’を遂行している

2018年8月2日
Andre Vltchek
New Eastern Outlook

 かなり長い間起きているが、誰も対して注意を払っていないことがある。欧米学界や主流マスコミや最も名の知れた布教者連中が、 1) イデオロギーは死んだか、少なくとも無意味になった 2) 死んでいない場合、左翼は実際…固唾をのんで頂きたい… 右翼だ!と世界を説得しようしているのだ。

 アジアや中南米で、特に権力の座にある左翼は、ロンドンやパリやワシントンで‘再定義され’つつある。アメリカ合州国やイギリスや他から、たっぷり予算が使えるようになって、欧米プロパガンダ導師連中は、最近どうやら活力を取り戻したようだ。彼らは、特定の国々、とりわけロシアと中国とイランを追求するよう、あからさまに命じられている。

 これは実に複雑だが重要な展開だ。欧米は敗北しつつあるが、資本主義、特に新植民地主義と同義語の帝国主義もそうなのだ。

 世界中の人々はうんざりしている。帝国主義諸国内の一部の集団さえ、うんざりしている。

 一番の問題は、何十年も、骨を抜かれた大学の朽ちつつある大講堂の中に、哲学が閉じ込められ、監禁されていた後、大半の人々は、一体何に実際うんざりしているのかわからなくなってしまった。彼らが一体何に反対していて、彼らが一体何を望んでいるのか。

 哲学や‘世界は一体どの方向に発展すべきか’というような深遠で極めて重要な話題は、トーク番組や‘公的知識人’が少なくとも公然とは討論しないのと同様、もはや国際連合教育科学文化機関UNESCO会合では議論されない。

 軽いポップ音楽、ホラー映画や、利己的で、大抵幼稚な価値観や願望の奨励が、大衆を本当に十分満足させることは決してなく、大衆を傷つけ、人々が自由に考え、分析し、地に足が着いた十分情報を得た結論を出す能力を弱めてしまう。

 ‘-主義’、特に左翼‘-主義’は唾棄される。益々、左翼は中傷され、更に、極右やファシズムとさえ比較される。実際、共産主義とファシズムを一息で言うと、大いに報われるようになっている。欧米では、何千人もの‘思想家’やイデオローグ連中が、ただそれだけをして、良い生活をしている。

*

 このエッセイは、私宛の電子メールで、この刊行物 (NEO - New Eastern Outlook)のことを‘極右ロシア国粋主義刊行物’と呼んだアイルランド人学者とのやりとりに触発されたものだ。

 私は激怒し、NEOは左翼、国際主義の雑誌で、運営している人々は、いかなる右翼とも全く無関係だと明らかにして返信した。だが、間もなく、これは証拠の問題ではなく、全く別の問題であることに気がついたのだ。

 ヨーロッパや北アメリカのどこへ行こうと至る所から、テレビやラジオ局にチャンネルを合わせればいつでも、同様の混乱させるメッセージを聞かされる。何がしか歪曲されたものが四六時中放送されている。政治的現実は極端に曖昧になっている。偉大な左翼政治指導者たちは罵られる。デマゴーグやらポピュリスト、もっとひどく。更に狂った冷戦宣伝屋による、スターリンやヒトラーとのひっきりなしの比較(ヒトラー = チャーチル、ドイツ・ナチス = ヨーロッパ植民地主義などのような論理的な比較は決してされない。)

 最大の問題は、大多数の欧米諸国民がこのプロパガンダに屈していることだ。彼らはこうした問題に関し、もはや疑問に思うことができず、たとえ疑問を調べようと思っても、公式見解を効果的に批判するための情報源を一体どこで探すべきかわからないのだ。

 彼らは洗脳されているのに、自分たちは自由に考えていると思い込んでいる。彼らは、自分たちがしっかり、条件付けされて、洗脳されているのを自覚していないだけではない。彼らは実際、自分たちが教えられてきたことを世界に教えて、他者に説教し、啓蒙する立場にあると思い込んでいる。そこで、連中は話し、書いて、謝礼を得る。連中は国連や‘国際的な文化組織’やNGOや大学に参加し、世界を搾取し、支配するというたった一つの目的のために欧米イデオローグが作り出した、こうしたあらゆる教義を広め続けるのだ。連中は、こうしたでっちあげを、主張としてでなく、事実として提示する。もちろん、連中が説いていることの背後に事実は皆無で、確かな証拠も無いが、一体誰が証拠を探すだろう、しかもどうやって? インターネットでさえも、今やもうそう簡単には動き回ることができず、欧米のどこの書店も、中国やロシアのように多様ではない。

*

 本題に戻ろう。社会主義や共産主義や、今世界中で強化しつつある、あらゆる反帝国主義運動の信用を落とすことが、欧米にとって極めて重要なのだ。

 実際、ロンドンやパリやワシントンの多くの宣伝屋連中は、欧米と、彼らによる世界支配がほぼ終わっていることを、はっきり理解しつつある。この事実を彼らが自覚すればするほど、連中の敵を一層攻撃的に追求するのだ(連中の職業は、そうした支配に依存していることが多く、もちろん彼らの国々の特権もそうなのだ)。

 アジアや中南米で権力の座にいる社会主義者や共産主義者攻撃だけでは、もはや不十分だ。

 今、帝国は国内でも外国でも、悲観主義と敗北主義と暗い虚無主義を広めている、(是非、私の新刊をお読み願いたい。“Revolutionary Optimism, Western Nihilism”)。“すべての人々は同じだ”という。耳障りは良いが、それが意味しているものは実際極めて邪悪だ。“あらゆる人々は、我々のような気違いじみた自己中心主義者で、我々のような大量殺人者で、もちろん、盗人だ!”

 用語と定義が全くごた混ぜになって混乱している。何も正確に定義されていない。

 たとえば、ジャカルタの左翼知事‘アホック’が、世界中で最も汚染した都市の清浄化や、公共交通建設や、貧しい人々への公営住宅の提供を始めると、彼が、超資本主義ジャカルタにある、わずかな歩道を臆面もなく塞いでいたプチ資本家露天商やヤクザを立ち退かせたので、欧米から資金を得ているいくつかのインドネシアNGOや無数の人々が‘アホック”を‘右翼’と呼び始めた。ファシスト、反共独裁制時代に繁盛したヤクザと露天商、は、市や主に貧しい住民を、何十年も脅してきたのだ。ところが連中の主張はこうだ。“知事は普通の人々に反対している”。

 実際この大いに人気ある知事が、ずっと高い地位、国の最高の地位に対してさえ及ぼしうる‘大きな脅威’があったのだ。それは認めるわけには行かず、servile‘都市計画者’や、学者や‘市民社会’団体が、破廉恥にも、彼に反対して団結したのだ。最初に、(右翼と呼ばれて)中傷され、宗教(イスラム教)を侮辱していると非難され、最後に投獄された。本物の社会主義者(共産主義とつながるので、インドネシアでは依然発音することさえ違法な単語)であるかどで、いまだに彼は獄で朽ちている。

 ジャカルタ・シナリオは、もちろん例外ではない。同じことがフィリピンでも起きている。欧米と、その現地のお先棒をかつぎが、ベネズエラ、ブラジルなどの国々や、特に、中国とイランとロシアを、同じ歪曲した‘論理’と熱意で攻撃している。

 中国を実際そうであるものとして、‘共産主義(中国的な特徴の)で、現在、世界で最も成功した国”と呼ぶことは、欧米のいたるところや、その‘属’国諸国では、全く許されない。それは中国の人気を大いに高めるはずだ。一体なぜだろう? 資本主義、帝国主義のけだものの暗い腹部の奥深く、ヨーロッパと北アメリカでさえ、普通の人々は、実際、何か左翼’、何か社会主義、共産主義さえ求めている。彼らは、そういうものを憎悪し、公にけなすよう教えられ、そうしている。しかし、心の奥底で、多くの人々は、依然それに憧れているのだ。

 帝国は心理戦を重々理解している。中国を中傷するため、中国は、実際、資本主義者と呼ばなければならないのだ。あるいは、中国を帝国主義者と呼ぶのだ。中国は‘我々と同じ’だと言う。(“我々と同じ”というのは、もちろんよろしくない。あらゆる国の人々は‘我々’を憎悪しているのだ。) 中国は、インフラや病院や学校を建設して、アフリカの人々を助けているわけではない(アフリカ人に聞けば、それこそ、まさに中国がしていることなのに、 - 欧米ジャーナリスト連中が、わざわざしようとは思いもしないこと)。中国は‘自らの利益を追っており’、事業をしていると言うのだ(またしても、わずかな東南アジアの、どうしようもなく腐敗し卑屈な‘属’国を除いて、最近は禁句だ)。

 ロシアについても全く同じだ。ロシア外交政策は、明らかに反帝国主義だ。多くの点で、それは依然、古き良きソ連外交政策で - 人間尊重主義に基づく、国際主義、平等主義だ。現在のロシア外交官は、優秀で口調の柔らかな哲学者だ。欧米は彼らに到底かなわない。それゆえ、帝国は彼らを、彼らの国、そして、それが表すあらゆるものを中傷するのだ。プーチン大統領は、まるで右翼の絶対的指導者で、狂人で、ロシアは資本主義国家として描かれる。ロシアは多くの点で、緊密な同盟国、中国に益々似てきているので、それは全くの戯言だ。ロシアは社会福祉に大きな重点を置いた混合経済で、欧米新植民地主義によって残忍に扱われている人々を進んで擁護し、保護する国だ。ロシアは、どこも占領しておらず、いかなる政権も打倒していない。ロシアは益々、良い、確固とした、思いやりのある国になりつつあるが、そうなればなるほど一層悪魔扱いされる。良く振る舞えば振る舞うほど、‘資本主義者’や‘右翼’や‘オリガルヒ’と呼ばれて、ますます中傷される。そう、偉大なプロパガンダbarks for sure。欧米のデマゴーグと諜報機関職員は、仕事のこつを知っているのだ。

 シリアは欧米のデマゴーグに一体どのよう定義されていることか? いかに誹謗されていることか!何十年も、実際、そうである通りに、汎アラブ社会主義国と呼ばれることはない。‘政権’だ(私が実際喜んで、彼ら自身、イギリス・ファシストに、陳腐で受動攻撃性の君主国に対して使っている私の好みの軽蔑的な英単語だ)いつも‘専制的’とレッテルを貼られている。‘社会主義者’や‘国際主義者’という表現を皆様が聞くことは決してない。なぜかご存じだろうか? 繰り返させて頂きたいが、これらの言葉は心の奥底で、世界中の人々の耳に、一部の欧米人のに心さえ無意識のうちに共感を呼ぶためだ。

‘社会主義者’、‘人々のために尽くす’ - これを中傷することはできるだろうが、人々はそれを本当は求めており、何十年も何世紀も求めて来たのだ。彼らはそのためにこそ、バリケードで戦い、死んできたのだ。人々の心の中には、いまでも何か本能があるのだ、それとも、マクロンやメイのような連中に支配されるために彼らが自らの命を犠牲にすると思われるだろうか?

 それゆえ社会主義者は、一部のヨーロッパの似非-売国-社会主義者ではなく、本当の社会主義者と共産主義者は、欧米によって、いつも‘ポピュリスト’や、デマゴーグや、往々にして、右翼とさえ、レッテルを貼られる。

 この後ろ向きの、虚無主義の、気のめいるプロパガンダは、いたるところで人々の目をくもらせ、混乱させる。これは白を黒と呼び、黒を白と呼ぶ。共産主義者に、ファシストと烙印を押し、更には、ファシストも共産主義者も同じだと宣言する。

 今、人々、少なくとも欧米マスコミに最もさらされている人々は‘政治党派から革命思想に至るまで、更にはお互いに対してさえ、いかなるものにも本気で取り組むことができない。彼らは‘論点毎’に動き、(何億もの分断化された宇宙の中心で)個人的生活でも政治でも傲慢なほど利己的だ。ロンドンやパリや、言うまでもなくニューヨークでも‘最も教育がある’と思われている人々は、悲しいかな最も条件付けされ、洗脳され、弱々しい。

 ばかげた教育と、安手の‘文化的価値’を注入することで、欧米が東南アジアなどの世界の一部で、欧米風ながら、本当は似ていない実に奇怪な‘上流階級’を作り出すのに成功したのは何とも並外れたことだ (この問題については、近く発表予定のエッセイで扱うつもりだ)。結果は、何も新しい意味のあるものを生み出すことができない、従順で、魂のない国々だ。

*

 こうしたこと全てが、世界がその直感に従うのを防ぐため、社会主義や共産主義を選択するのを防ぐためなのだ。

 欧米政権の課題が途方もないものであることがお分かりだろう。人類の自然反射を破壊し、ゆがめるのだ。世界のどこかで人々が、ある種の社会主義や共産主義に投票し、あるいは、そのために戦う本当の機会を与えられた際にはいつでも。

 基本的に、民主的に左翼政府を選んだ中南米の全ての国々。そして彼らは、欧米と連中の従僕連中に打倒された。それは現在も起きている。何百万人もの人々が、その過程で亡くなっている。

 アフリカでも全く同じだ。それはパトリス・ルムンバと彼の殺害で始まり、決して終わってはいない。統治するため、ファシスト怪物や精神的に病んだ連中が外国から送り込まれ、雇われる。

 アジア? 全くの恐怖だ。1950年代の社会主義イランから、1965年以前の国際主義、共産主義インドネシアまで、人々は共産主義を望み、虐殺され、強姦され、最後は、あらゆるものを奪われた。一体誰によってだろう。欧米と、その官僚や、植民地時代以来の現地スパイ。中国やベトナムのように抵抗して勝利した国々は、他の国々より、ずっと暮らし向きは良い。

 世界中の全員が社会主義を望んでいたのだ。中東も、そうヨーロッパも! 第二次世界大戦後、アメリカとイギリス諜報機関が、フランス、イタリアや西ドイツのヨーロッパ人が、共産主義者に投票するのを妨害したのを忘れるためには、実際大変な規律と絶え間のない洗脳が必要だ。左翼候補者を威嚇し殺害するのに、ナチスが雇われた。次に、連中は南米に送り出されて、‘引退する’か、ファシスト親欧米政権との協力を始めるかした。私はそれを知っている。20年ほど前、強制収容所で略奪した金歯を持って、パラグアイやアルゼンチンやチリに逃れることを許された老いた悪漢連中と話したことがあるのだ。

 ‘立憲君主国’であれ‘誘導されたでっち上げ多党制’であれ、社会主義に対する人々の自然な憧れを破壊するのが欧米政権の主な任務だ。

 結果は完全なグローバル統合失調症だ。本能的に、人は何かを望むものだが、それは間違っていると言われ、更に一体何を望むべきか命じられる(雇用され得ない人物になりたいと思わない限り)。

 愛やセックスと同じだ。我々男性は、我々の体は特定なタイプの女性に憧れるべきだと言われる。女性は、どのような男性にあこがれるべきか教え込まれる。

 職業と同じ、というか、自由な時間を人々がどう過ごすのかと同じだ。携帯電話をたたいて、退廃したビデオ・ゲームをし、政権にとって、将来良い召し使いになることを証明する卒業証書を得るためだけに、大学でばかげたことを学んでいる。

 連中は、人々に実際一体何をしたのだろう? 成人、父親も母親も‘立派な’人々は電話画面上で指を動かし、子どもじみたゲームで遊び、 いたるところで子供のような顔で自取りをしている。ヨーロッパの知的映画も文学も崩壊している。そして全員がばかのようににっこりしている。しかも、ほぼ全員自暴自棄だ。

 これは明らかにクーデター後の状況だ。これは異常だ。

 病的だ。ほぼ誰も幸福ではない。全員が幸福なふりをしている。

 心の底で、人々は、より良い世界について夢を見たがっており、他の人々のために貢献し、あるいは理想や革命のため、自らを犠牲にしたいのだ。

 その大切な資本主義と新植民地主義が世界を支配し続けられるように、欧米が広めたこの狂気は、そう長くは続くまい。

 間もなく、人々は、自分の国を作り上げること、世界中の状態を良くすること、環境をきれいにすること、愛し、その愛に全身を捧げること以上に栄誉あるものがないのに気がつくだろう。

 だがその前に、ウソは暴露されなければならない。白は白で、黒は黒だ。戦争は戦争だ、平和は平和だ。侵略者は侵略者で、犠牲者は犠牲者だ。

 欧米は、世界中、卑劣で気のめいるウソで、人々を動けなくしている。欧米は、小さく貧相なねずみを凝視するコブラのように、人間を凝視しているのだ。

 間もなく、世界は立ち上がり、真実を要求すると私は確信している! 真実によって、心理的な均衡も復活するだろう。人々は、いかにして夢見るかを再び学ぶだろう。夢によって、欧米が広めてきた狂気に対決することになるだろう。帝国主義は叫び、泣きわめくだろう。あらゆる動くものにかみつこうとするだろうが、比較的すぐ、あらゆる力を失い、願わくは、くたばるだろう。私はそれを信じている。何百万人もが今、再び、そのために戦う用意ができている。

 アンドレ・ヴルチェクは哲学者、作家、映画制作者、調査ジャーナリスト。彼は、Vltchek’s World in Word and Imagesを制作しており、『大10月社会主義革命』を含む多数の本の著者でもある。オンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/02/the-west-has-performed-philosophical-coup-against-the-left/

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 昨夜の番組『外国人記者は見た』にはビックリ。話題はカジノ導入。小生が拝読する本の筆者、ほとんど大本営広報部洗脳箱ではお見かけすることはないが、その例外だったので。『カジノ幻想 日本が経済成長するという嘘』の筆者鳥畑与一静岡大学教授がコメンテーターだった。有名なカジノがあるシンガポールの記者は、あえてカジノ推進役を演じたのだろう。他の国の記者からはほとんど肯定的意見はなかった。特に韓国の記者は韓国での問題点、対策を詳しくあげた。あまりにまともな内容に驚いた。著書を読む気にならないゲストの場合は、見ないようにしている。

 『カジノ幻想 日本が経済成長するという嘘』については、「ファシズムと独裁 - 暴露されたアメリカ権力」 2015年4月11日 という翻訳記事のあとの文章でごく短く触れた。

 カジノに関する翻訳記事としては、「ニュージャージー州アトランティック・シティーのカジノ閉鎖、アメリカの悪化する雇用危機の兆候」 2014年7月29日がある。基本的事実は変わらない。

 今日にちなむ記事のなかから、二つあげておきたい。「広島から福島へ」は原文が更新されており、こまかい文章の差異が多々あり、多数の映像のリンクが切れている。それでも、イヤガラセの海外からのゴミ・コメントが非常に多い記事なので、宗主国・属国双方の原子力村には不都合なのだろう。近いうちに、翻訳を更新する予定。「はだしのゲンが見たヒロシマ」は翻訳記事ではない。映画を見て書いたもの。

広島から福島へ、1945-2011 2012年9月29日

はだしのゲンが見たヒロシマ・原発切抜帖・ひろしま・あしたが消える日2011年8月29日

 今日もインタビューを見なければ。

日刊IWJガイド「<本日のインタビュー>午後3時より『「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る! 岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー』を全編フルオープンで配信!/<インタビュー報告>【広告連動企画】『嫌だと言っていい、逃げてもいい』大切なのは保養という選択肢があること!原発事故後の保養支援・リフレッシュサポート代表 疋田香澄(ひきた・かすみ)さんに岩上安身がインタビュー!/【お知らせ】8月6日より日々の現場からの中継が『ユーストリーム』から『ツイキャス』に替わります!/他」2018.8.6日号~No.2153号~

2018年8月 5日 (日)

アメリカは一体誰のものか?

2018年7月31日
アメリカ国民のものではない

Paul Craig Roberts

 現在、住宅市場は明らかに下り坂にある。消費者所得は、雇用の海外移転と、賃金や給料を押し下げる雇用主の能力のおかげで、限定されている。私の考えでは、ワシントンの権力がそれを基にしているアメリカ・ドルの交換価値を守るため、連邦準備金制度理事会は、より高い金利にすると固く決めているようだ。私が四半世紀共に過ごしたワシントンの傲慢な阿呆連中は、けんかっ早さと経済制裁で、各国に、自立した外交と経済政策と、ドル使用を止めるよう奨励している。これを実現するには多少時間がかかるが、ロシアや中国やイランやインドは、アメリカ・ドル使用を止めるか、減らすかすると固く決めているようだ。

 ドルの価値を安定させておくため、ドルを彼らの通貨で購入するか、相殺するだけの量の自国通貨を印刷するかして、日本やイギリスやEUの中央銀行が、ドルの交換価値を支持し続けていることがなければ、ドルに対する世界的需要下落は、ドル価値を不安定化しかねない。これまでのところ、彼らは進んでその両方を行っている。ところが、トランプによるヨーロッパ批判で、トランプに対し、ヨーロッパは不愉快になり、これに付随して、進んでアメリカをかばう意志が弱まっている。ワシントンが日本周辺で引き起こしている敵対的状況で、第二次世界大戦以来のアメリカに対する日本の植民地状態は強化されつつある。北朝鮮と中国とワシントンの画策された緊張は、日本のためにはならず、アメリカからたっぷりお給料をもらっているわけではない日本の政治家たちは、日本が日本の利益のためではなく、アメリカのために危険にさらされていることを理解している。

 その可能性はあるが、もしこうしたことが、ワシントン属国諸国間での一層の自立強化を招けば、属国諸国が、ドルや世界通貨としてのドルに基づく決済機構から離れることにより、自立の代償から自らを守る可能性が高くなる。これは、つまり、ドルの価値を守るべく、十分なドル需要を維持するため、連邦準備金制度理事会が、ドル投資に対する金利をあげて、ドル価値の下落を防がねばならないことを意味する。

 金利が低ければ、抵当に入れて支払える家の価格が上がるので、金利が低い時には住宅価格は上がるのを、不動産仲介業者なら誰でも知っている。だが金利が上昇すれば、買い手が払える家の価格は下がる。

 もしアメリカが、より高い金利の時代に入れば、住宅価格と売り上げは下がるだろう。

 この分析に対する“もう一つ”として、もし連邦準備金制度理事会が状況を制御しきれなくなり、アメリカ・ドルの現行価値に関連する債務が、体制を破壊しかねない問題になれば、連邦準備金制度理事会は、金利をゼロか、マイナスに下げて、債務を守るため、十分な新札を送り出す可能性が高い。

 これで住宅市場が救えたり、復活したりするだろうか?  債務を負ったアメリカ人の実質所得が大幅に増加しないかぎりは無理だ。そうした上昇は、どこから得られそうだろう? ロボットが、まだ雇用海外移転で奪われていない雇用を奪い取ろうとしている。実際、トランプ大統領が“雇用を国内に戻す”と強調しても、フォード自動車は、フォード・フォーカスの製造を、ミシガン州から中国に移転すると発表したばかりだ。

 雇用を海外移転したアメリカ大企業を経営している幹部連中は、ウォルマートやホーム・デポやロウズなどで、棚に品揃えするパート仕事で働いているアメリカ国内の潜在顧客。フォードを購入するのに十分なお金がないだろうとは、決して思い当たらないもののようだ。社員がフォードを購入できるよう、労働者に良い賃金を支払う知性があったヘンリー・フォードとは違って、現在のアメリカ大企業幹部は、海外の安い人件費に基づく自分たちの短期的な“業績手当て”のために、国内市場とアメリカ経済を犠牲にしている。

 現在、アメリカで起ころうとしているのは、中流階級というか、その子供として、それに加わると期待されている、その一部である人々は、“2台連結の移動住宅”か、一台のトレーラーに追いやられようとしているのだ。粗製濫造された豪邸は区分けされて長屋になるだろう。実質所得が下落し続けているので、フロリダ州海岸沿いの高価な賃貸物件でさえ、需要は下落するだろう。フロリダ州パンハンドル30A沿いの5,000ドルから、20,000ドルという夏の週単位賃貸は維持不能だろう。この分野が理解できない投機家連中は、フューチャー・ショックに会うはずだ。

 私は長年月次就業者数統計について書いてきた。新規雇用の圧倒的多数は、ウエイトレスやバーテンダーや、小売店員や救急医療などの給与の低い国内サービス業だ。例えば、 6月の就業者数報告、新規雇用、実際に存在するとすれば、この分野に集中している。管理サービスやごみ処理、医療や社会扶助や、小売業や外食産業や地方自治体だ。

 アジアに海外移転され、アメリカ国内の高生産性で高付加価値の製造業雇用は縮小する。研究や設計やソフトウエア・エンジニアリングや会計や法律関係の調査などの高生産性で高付加価値の専門サービス業は、海外移転か、その仕事に適任のアメリカ人がいないというでっち上げのインチキな口実で、就労ビザでアメリカに入国する外国人によって埋められている。https://www.amazon.com/Failure-Laissez-Faire-Capitalism/dp/0986036250/ref=sr_1_2?s=books&ie=UTF8&qid=1532992327&sr=1-2&keywords=Paul+Craig+Roberts+books&dpID=51HWdHsbtFL&preST=_SY291_BO1,204,203,200_QL40_&dpSrc=srchの本を参照。

 アメリカは、支配階級の短期的強欲と、経済学関係者や議会のサクラ連中によって空洞化した国だ。資本主義は少数の人々のためにしか機能していない。資本主義は、もはや大多数のためには機能していない。

 国家安全保障を理由に フォード・フォーカスの生産を中国に移転するというフォードの発表に、トランプはフォード国有化で答えるべきなのだ。ミシガン州の従業員総数と税基盤は減少し、中国内の雇用が増大する。主要アメリカ大企業が、中国がアメリカ合州国を超えて大きくなるのを手助けしているのを我々は目にしているのだ。中国の力の勃興に対抗するためのトランプによるアメリカ軍事予算増加は、フォードが中国のGDPに貢献する外部費用の一部だ。

 トランプは、アメリカの労働人口やアメリカ経済の利益より、ごく僅かの人々の利益を優先している、アップルやナイキやリーヴァイや他の全ての海外移転したアメリカ・グローバル企業も国有化すべきなのだ。雇用を取り戻すのに他に方法はない。もちろん、もしトランプがこれを実行すれば、彼は暗殺されるはずだ。 

 アメリカは、反逆罪的階級を構成するごく一握りの人々によって支配されている。この連中には、政府や、連中のために宣伝してくれる、マスコミや経済学関係者を買収する資金があるのだ。この強欲な反逆罪的権益集団には対処しなければならず、さもないと、アメリカ合州国と、その国民丸ごとが失われてしまうだろう。

 大ヒットの最新刊『Collusion』で、ノミ・プリンスは、大金持ちを儲けさせるため、中央銀行や国際金融機関が、2008年の金融危機を利用して、市場と政府の財政政策をいかに操作したかを実証している。
https://www.amazon.com/Collusion-Central-Bankers-Rigged-World/dp/1568585624/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1533039219&sr=1-1&keywords=Nomi+Prins#customerReviews

 こうした操作が、ギリシャやポルトガルなどの国々をドイツやオランダの巨大銀行が収奪し、暴騰した金融資産価格で  一般大衆を犠牲に、株主を豊かにするのを可能にするのだ。

 繰り返される金融危機で金融権益の権力は傷つけられるだろうと思いがちだが、事実は逆だ。1933年11月21日という大昔、フランクリン・D・ルーズベルト大統領が、ハウス大佐宛にこう書いた。“実のところ、君も私も知っての通り、アンドリュー・ジャクソン以来、大都市の金融集団が、ずっと政府を支配している。”

 トーマス・ジェファーソンはこう言った。“金融機関は、我々の自由にとって、常備軍より危険で”“もしアメリカ人が、民間銀行がまずインフレで、次にデフレで、アメリカ通貨を支配するにまかせれば、銀行は、父祖たちが征服した大陸で、彼らの子供たちが目を覚ますとホームレスになるまで、人々から、あらゆる財産を奪い取るだろう。”アメリカ中流階級の縮小は、ジェファーソンの予言が本当になりつつある証拠だ。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/07/31/who-does-america-belong-to/

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 日本が庶民のものでないこと、毎日肌身でわかる。

 『NOでは足りない』を読んでいると、宗主国とこちらはシャム双生児。トランプも、クリントンも、有権者の25%程度しか票を得ていない。これは、与党の得票そっくり。

 昨日放送の『花へんろ 特別編「春子の人形」』、明日は春子たちの運命を変えた日。

日刊IWJガイド・日曜版「<本日の岩上さんのインタビュー>本日午後2時半より『【広告連動企画】「原発事故後の子ども保養支援」の現場から、現代日本の日常的な社会的な分裂や不公正を問い直す!岩上安身による保養支援団体・リフレッシュサポート代表 疋田香澄氏インタビュー』をフルオープンで配信します!
/<新記事紹介>数々の疑惑が指摘されているボクシング連盟山根明会長がTV生出演!ボクシング未経験者なのに村田諒太選手を「生意気」と恫喝!? 番組内で山口組系暴力団の準構成員だった過去を自ら告白!?/【動画班からお知らせ】8月6日より日々の現場からの中継が『ユーストリーム』から『ツイキャス』に替わります!/IWJでは現在、テキスト班の新メンバーを緊急大募集中! 事務・ハドル班、ウェブ動画班の新メンバーも引き続き募集しています!」2018.8.5日号~No.2152号~

2018年8月 4日 (土)

売女マスコミの沈黙

2018年7月25日
Craig Murray

 政府や諜報機関が売り込んでいる既にばかばかしい陰謀論に、チャリー・ローリーのガス被害説明を、うまくはめ込もうとする努力を、主流マスコミは、ほとんどしていない。

 ITVニュースは鋭い質問を全くしないチャーリー・ローリー独占インタビューに“ロシアの神経ガスで中毒になった”という言葉を果敢に挿入し、ひどく編集した部分しか放映しなかった。同社ウェブサイトには同社の記者ルパート・エヴリンのコメントが載っている。

それは未開封で、入っていた箱は封がされていて、それを切るのにナイフを使わざるを得なかったと彼は言っている。 “そこで、こういう疑問がわく。もし未使用だったのなら、これがこの都市に存在する唯一のノビチョクなのだろうか? セルゲイとユリア・スクリパリを攻撃するのに使われたのと同じノビチョクだったのだろうか?

 だが、箱をナイフで開けたことに関する情報は、リンク先のインタビューにはない。ローリーがインタビューで言っているのは、箱はセロファンで封がされていたということだ。彼はナイフで、セロファンを切って開けたのだろう。

 これは一体どのように政府公式説明にうまくはまるのだろう? たぶん、ロシア工作員が密かにスクリパリの家を訪れ、この香水瓶からノビチョクをドアの取っ手に吹きかけ、それから、不明の場所で、ビンから噴射口を取り外し(ローリーは、それを取り付けなければならなかったと言っている)、更に、ビンを箱に入れ、まだ新しく見えたので、たぶん、どこか室内で、四カ月後、ローリーに発見されるよう放置する前、セロファンをかけたという主張になるのだろう。だがその四ヶ月間、警察や軍や治安組織の捜索で、誰にも発見されなかったのだ。

 率直に言って、瓶がスクリパリのドアの取っ手に塗布するために使われたとされる主張はとうてい信じがたく見える。しかし、そうなると政府の話丸ごと既に非常にありそうもなく見え、私のかなり右寄りの家族や友人の中にさえ、これを信じる人が文字通り一人もいないほどだ。ローリーの極めてぶざまなニュースにあわせ、全く証拠のない“ロシア人がやった”という言説を臆面もなく押し出すマスコミの反応は、ニュースを極力強引に押しつけるだけで、ニュースの辻褄をあわせるための現実的努力は皆無だ。

 本人の説明でも、ローリーは信頼できる証人ではなく、彼の記憶は“ノビチョク”によって影響を受けている。この香水のパッケージを、一体どこで、どのようにして手に入れたのかに関して彼が曖昧なのには他の理由があり得ると推測しても不合理ではない。

 香水瓶は現在警察の手にある。四カ月間、どこかでそれを見たか、誰かそれを持っていたのを見た一般大衆の記憶を呼び起こせるかどうかためすのに、その写真を公表しないのは、むしろ奇妙ではあるまいた?“実行犯”は、それがどんな姿なのか知っており、警察がそれを入手していることを既に知っているのだから、そうしても何ら危険な情報を与えてしまうことにはならない。当局にとって、話題を封じ、言説を支配することが、今や殺人事件となった犯罪解決よりも重要なのだと考えたくなる。

記事原文のurl:https://www.craigmurray.org.uk/archives/2018/07/the-silence-of-the-whores/

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 大本営広報部、野菜価格高騰は報じてくれている。膿本体については報道皆無。

 ボクシングのトップ、巨大私大のトップ、まるで膿氏の戯画。膿は酷いな、多いな。

 演説の書籍刊行を待っている。

日刊IWJガイド「『【広告連動企画】「原発事故後の子ども保養支援」の現場から、現代日本の日常的な社会的な分裂や不公正を問い直す!岩上安身による保養支援団体・リフレッシュサポート代表 疋田香澄氏インタビュー』を8月5日午後2時半からフルオープンで配信します!/立憲民主党・枝野代表の2時間43分に及ぶ名演説が書籍化! 8月10日の書籍発売を前に、8月6日午後3時から岩上さんによる枝野代表インタビュー!! 公共性に鑑み、フルオープンで中継します!
/杉田水脈衆議院議員の『LGBTは生産性がない』発言問題に対して、二階俊博衆議院議員が『この程度の発言』とトンデモ擁護!/【動画班からお知らせ】8月6日より日々の現場からの中継が『ユーストリーム』から『ツイキャス』に替わります!/他」2018.8.4日号~No.2151号~

2018年8月 3日 (金)

“アメリカ・ゲート”?他国政権打倒:アメリカによる“政権転覆”リスト

William Blum
Global Research、2018年7月31日
William Blum 2013年2月1日

 Grobal Reserach編集者注記

 この国々の痛烈なリストは、最初、2013年、ウィリアム・ブルムにより公開され、2014年、Global Researchに掲載された。

 中南米や中東での最近の進展を考えると、アメリカが支援する軍事クーデターや“ソフト・クーデター”別名政権転覆の歴史は、思い出す価値がある。

 いわゆる“ロシア捜査”の下で、モスクワがアメリカ内政に干渉したと、アメリカが非難しているのは辛辣な皮肉だ。

 本記事は、軍事クーデターや戦争やテロ組織支援や政権転覆を支援する秘密作戦によって主権政権を打倒するプロセスを概観する。言うまでもなく“アメリカ・ゲート”など論外だが、それでもこのリストは示唆に富んでいる。

 最近の進展では、トランプ政権は、ベネズエラとキューバにおけるアメリカが支援する政権転覆を支持している。

Michel Chossudovsky、2018年7月31日

*      *      *

 第二次世界大戦以降、アメリカ合州国が外国政権を打倒したか、打倒しようとした事例。(* は、政権打倒に成功したことを示す)

    中国 1949年から、1960年代初期
    アルバニア 1949年-53
    東ドイツ 1950年
    イラン 1953年 *
    グアテマラ 1954年 *
    コスタリカ 1950年代中期
    シリア 1956年-7
    エジプト 1957年
    インドネシア 1957年-8
    イギリス Guiana 1953年-64 *
    イラク 1963年 *
    北ベトナム 1945年-73
    カンボジア 1955年-70 *
    ラオス 1958年 *、1959年 *、1960年 *
    エクアドル 1960年-63 *
    コンゴ 1960年 *
    フランス 1965年
    ブラジル 1962年-64年 *
    ドミニカ共和国 1963年 *
    キューバ 1959年から、現在まで
    ボリビア 1964年 *
    インドネシア 1965年 *
    ガーナ 1966年 *
    チリ 1964年-73 *
    ギリシャ 1967年 *
    コスタリカ 1970年-71
    ボリビア 1971年 *
    オーストラリア 1973年-75 *
    アンゴラ 1975年、1980年
    ザイール 1975年
    ポルトガル 1974年-76 *
    ジャマイカ 1976年-80 *
    セーシェル 1979年-81
    チャド 1981年-82 *
    グレナダ 1983年 *
    南イエメン 1982年-84
    スリナム 1982年-84
    フィジー 1987年 *
    リビア 1980年
    ニカラグア 1981年-90 *
    パナマ 1989年 *
    ブルガリア 1990年 *
    アルバニア 1991年 *
    イラク 1991年
    アフガニスタン 1980年 *
    ソマリア 1993年
    ユーゴスラビア 1999年-2000年 *
    エクアドル 2000年 *
    アフガニスタン 2001年 *
    ベネズエラ 2002年 *
    イラク 2003年 *
    ハイチ 2004年 *
    ソマリア 2007年から現在まで
    リビア 2011年*
    シリア 2012年

 質問: ワシントンでは、一体なぜクーデターが決して起きないのですか?

 回答: そこにはアメリカ大使館がないからです。

 Global Research編集者注記: 2013年2月に公表されたこのリストには、2014年2月、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチが、まんまと打倒されたウクライナを追加する必要がある。

 記事原文のurl:https://www.globalresearch.ca/overthrowing-other-peoples-governments-the-master-list-of-u-s-regime-changes/5400829

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 自分がしていることを、人のせいにするのが、いつもの手法。

 2015年2月に、下記記事を翻訳した。

 アメリカは、その歴史のうち93% - 1776年以来の、239年中、222年間が戦争

 映画『国家主義の誘惑』での歴史学者ピエール・フランソワ・スイリ氏の言葉が印象的。

今日の日本の地政学的立場は、ほとんどの隣国と好ましからぬ関係です。

 関係をますます悪化させる緑のたぬき、一度も何も期待したことはない。

日刊IWJガイド「小池百合子東京都知事が今年も『関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式』への追悼文を送付しないと明言! 朝鮮人虐殺事件をなかったことにしたいのか!?/自民党が『新潮45』への『「LGBT」支援の度が過ぎる』との寄稿に対し杉田水脈議員を『指導』! 安倍総理も批判コメント! 雑誌発売から半月も経っての遅すぎる態度表明!!/日本ボクシング連盟山根会長が生放送を条件にテレビで一連の問題について説明することを発表!!/【動画班からお知らせ】8月6日より日々の現場からの中継が『ユーストリーム』から『ツイキャス』に替わります!/他」2018.8.3日号~No.2150号~

2018年8月 2日 (木)

アメリカがロシアを侵略した頃

2018年7月18日
Jeff KLEIN
Consorciumnews.com

 ヘルシンキでのトランプ-プーチン・サミットを巡る超党派の熱狂の中、アメリカ合州国での興奮した反ロシア言説が、最近まで、あり得ないと思われていたことを、あり得ることに変えている。ロシアとアメリカの間の危険な緊張は軍事衝突になりかねない。それは以前起きたことがある。

 1959年9月、冷戦中の短い雪解け時、ニキータ・フルシチョフが有名になったアメリカ合州国訪問をした。ロサンゼルスで、ソ連指導者がハリウッドの20世紀フォックス・スタジオでの昼食会に招待され、長く、とりとめのないやりとりの中で彼はこう言った。

    “我々はアメリカに、それまで決して戦争をしかけたことが無かったのだから、あなた方のロシアへの武力介入は二国間の関係で起きたことの中でも最も不快なことだ。わが軍はアメリカ領土に脚を踏み入れたことがないのに、あなた方の軍隊はソ連領土に踏み込んだのだ。”

 フルシチョフによるこうした発言にアメリカ・マスコミは当時ほとんど触れなかった - 特に、広く報じられたディズニーランド訪問を許可されないことについての苦情と対照的に。しかし、たとえアメリカ人がフルシチョフ発言を読んでも、ソ連首相が一体何のことを言っているのか、ごく少数の人々にしか分からなかった可能性が高い。

 しかし、ソ連 - 現在のロシアで - 記憶はずっと強く残っている。ナポレオンからナチスに至るまで、外国による侵略の痛手は、1959年、ロシア国民の意識の中では、まだ記憶に新しかったのだ  - 現代のロシアにおいても - 大半のアメリカ人には想像もできない形で。それが何よりも、ドイツ統一の交渉中、そうしないとアメリカが約束したにもかかわらず、1990年代、NATOがロシア国境まで拡張したことに対して、ロシア人がなぜあれほどひどく憤激した理由なのだ。

 フルシチョフが言及したアメリカ侵略は、一世紀前、10月革命後、それに続いたボリシェビキと反ボリシェビキ勢力間、赤軍対白系ロシア人の内戦中に起きた。ドイツとオーストリアが西部と南部ロシアの一部を占領し、連合国は1918年、ロシア北部と極東で軍事介入を開始した。

 イギリス、フランス、イタリア、日本とアメリカを含む連合国は、軍隊をロシアに派兵する様々な正当化を言い立てた。中央同盟国に対して戦うよう採用されていたチェコ軍団を“救出”するため。連合国の軍事備蓄を守り、ドイツの手中に落ちないようにすること。シベリア横断鉄道経由の通信確保。戦争の東部戦線再開。しかし本当の狙いは、当初は、公的にはまれにしか認められていなかったが、10月の出来事を逆転させ、より“受け入れやすい”ロシア政権を据えることだった。ウィンストン・チャーチルが後に言った通り 、狙いは“ボリシェビキの幼児をゆりかごの中で絞め殺す”ことだった。

シベリアに加え、アメリカは、イギリスとフランスの軍隊がロシア北部のアルハンゲリスクを、1918年9月4日に侵略するのに参加した。

 1918年7月、アメリカのウッドロー・ウィルソン大統領本人がタイプしたロシアにおけるアメリカの軍事行動に関する“覚書”が、8月始め、陸軍長官から、シベリアへと向かっていたアメリカ軍司令官ウィリアム・グレイブス将軍に手渡された。ウィルソンの文書は奇妙に曖昧で矛盾している。ロシア内政に対する外国の干渉は“容認できない”という主張で始まり、最終的に、アメリカ軍のシベリア派兵は“軍事干渉”とは見なさないと結論付けていた。

 非干渉の干渉

 だがアメリカ介入は、1918年8月16日、アメリカ兵がウラジオストックに上陸して始まった。これは第27連隊と第31歩兵連隊で、アメリカが占領するフィリピン鎮定に関与していた正規軍部隊だ。最終的には、シベリアに約8,000人のアメリカ軍兵士が派兵された。

 彼の回想録から判断すると、グレイブス将軍は、彼に対する曖昧な指示が示唆していることと、シベリア現地の現状がいかに異なっているかに当惑した。一つには、チェコ軍は救出を必要としていなかった。1918年の夏までに、彼らは易々とウラジオストックと、千マイルのシベリア横断鉄道を支配した。

 その後一年半、どこから見ても誠実で非政治的な専門軍人のグレイブス将軍はシベリアにおける彼の義務を理解し、遂行すべく奮闘した。彼はウィルソン覚書が、ロシア内政への非干渉を厳格に命じているという文字通りの解釈に頑固に執着し、アメリカ国務省や同僚の連合国司令官たちをいらだたせたように見える。将軍はそれで他の誰もが、こうした指示を理解する“目配せ”を理解できなかったようだ。

 グレイブスはシベリアを支配しようと戦っている様々なロシア人派閥の中で“中立性”を維持し、鉄道の防衛と連合国の軍用品保護という自分の任務に集中するよう努力した。しかし彼は“赤軍”のものと同様、“白軍”の残虐行為も報告し、日本が支援する東シベリアの様々な軍閥に対する嫌悪をあらわし、後に、反ボリシェビキ勢力の現地住民による支持の低さや無能さや見通しの暗さを懐疑的(で正しく)評価をするほど分別があった。

 彼にとって面倒なのは、ばかげたことに、彼の回想録刊行も一因となった非難で、将軍はボリシェビキ同調者かも知れないとほのめかされたのだ。

 ロシア内の“適切な”人々をもっと積極的に支援するようという国務省幹部や他の連合国の司令官たちによるいじめにあい、グレイブスは、ワシントンの上司たちに、彼に対する元々の政治的非干渉という指示が変更されるのかどうか、再三問い合わせた。もちろん、いかなる異なる政策を書面にしようとする者は皆無で、将軍は“中立性”を維持するべく苦闘した。

 しかしながら、1919年春・夏、西シベリアの都市オムスクを拠点とする“最高執政官”アレクサンドル・コルチャーク中将の白軍政権に対する公然の軍事支援で、他の連合国とともにアメリカも加わった。当初これは、赤十字により個別に行われていたが、後にライフル銃の有蓋車を含めその安全な配送をグレイブスが監督するよう指示された軍用品の直接出荷という形になった。

 内政干渉

 しかし、コルチャークが勝利する見込みは間もなく薄れ、シベリア白軍には勝ち目がないことが明らかになった。1919年末、アメリカ軍撤退の決定がなされ、グレイブス将軍と最後の幕僚が、1920年4月1日にウラジオストックを去った。

 結局ロシア侵略中、174人のアメリカ兵が死亡した。(ソ連は1922年12月28日に成立した。)

 興味深いことに、シベリアからのアメリカ軍撤退するようにという圧力は、うんざりした兵士たちや、ヨーロッパでの戦争が終わった後も延々と軍隊の海外派兵継続をすることに反対の銃後の世論から来た。ロシアへの干渉にかかわる議会討論で、ある上院議員が、彼らを帰国させるという主張を裏付けるためアメリカ兵士の手紙の抜粋を読み上げたことは注目に値する。

 そして、後のアメリカの外国干渉と同様、自分たちが解放するはずの人々に対する兵士の評価は低かった。1919年7月28日、バイカル湖南岸のヴェルフネウジンスク、現在のウラン・ウデの基地から彼らの一人が国に手紙を書いていた。


ロシア侵略中のアメリカ兵士の手紙

 “シベリアでの暮らしは、ワクワクするように聞こえるかも知れないが、そうではない。数カ月なら良いが、今はもう家に帰りたい...  ここの人々を私がどう思うか知りたいだろう? 教えてあげよう。彼らは到底人とは呼べず、ある種の獣だ。連中は私が見た中で一番無知だ。そう、彼らが話す際、腹を立てていなければ、彼らの言葉はわかる。連中は腹を立てると、連中の言葉をペラペラしゃべる。この連中の野望は一つしかなく、となりのやつより余計ウォッカを飲むことだ。”

 国務省や一部のエリートの意見を除いて、アメリカの干渉は決して好評ではなかった。今ではある歴史学者が書いている通り“米軍歩兵ロシアに派兵されたのには多くの理由があったかも知れないが、なぜ駐留したかの理由はただ一つだ。一体誰がこの国を統治するか見ようとして内戦に干渉した。”ことが良く知られている。

 1920年以後、グレイブス将軍が“シベリアでのアメリカの危険な冒険”と呼んだものの記憶は、すぐに世間から忘れ去られた。アメリカ国民は歴史的健忘症で悪名が高く、似たような危険な軍事的冒険が、以来何年にもわたり、何度となく繰り返されている。

 我々は世代毎に、軍事介入の危険さと、グレイブス将軍が主張した単純な真実を気付かされることが必要かも知れないように思える。

    “あれやこれやの派閥を権力の座につける狙いで、外国人が自分の国に軍隊を派兵するのを不快に思わない国は地球上に存在しない。その結果、介入をした外国の威信が傷つくだけでなく、外国人が支援しようとした派閥にとっても大きな不利になる。”

 グレイブス将軍は、1918年のシベリアについて書いているが、1960年代のベトナムや、現在のアフガニスタンやシリアにも当てはまる。あるいは現在のロシア国境に配備された約30,000人のNATO軍兵士に対する警告にもなる。

 Jeff Kleinは、引退した元労働組合委員長で、国際問題、特に中東について良く書いている。葉書と兵士の手紙は彼の個人的コレクション。

 この記事を良いと思われたら、このような記事をさらにお伝えすることができるようConsortium Newsへのご寄付を検討願いたい。

記事原文のurl:https://consortiumnews.com/2018/07/18/when-the-u-s-invaded-russia/

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 ソ連建国の日は、数日違うのでは? ともあれ、

将来、宗主国の指示で世界中に派兵される無数の兵士に対する警告にもなる。

 『花へんろ』という番組、全く知らなかった。主人公だっか桃井さんが早坂堯の足跡を訪ねる番組を見た。その後、30分、総集編を見た。彼の最後の作品『花へんろ 特別編 「春子の人形」』は8月4日放送。お遍路さんが置いていった子供を妹として育てていたが、たまたま広島に出かけて原爆に会い行方不明になった実話が元。
 『蛍の墓』や『父と暮らす』を思い出す。『父と暮らす』、劇場で芝居を見る気力が出ない。というより無理。素晴らしい作品なのだが。

2018年8月 1日 (水)

アメリカ合州国は、唯一残っている宗主国

2018年7月30日
Paul Craig Roberts

 アメリカ合州国政府は中南米で自立した政府を許したことがない。国民がアメリ経済権益ではなく、自分たちの権益を代表する政権を選ぶたびに、ワシントンは選挙で選ばれた政府を打倒する。スメドリー・バトラー海兵隊退役少将が他の多くの人々同様、これを語ってくれている。これは疑う余地はない。

 現在ワシントンは、ベネズエラとニカラグアの政府を打倒しようとしており、石油購入と、いつもの個人的賄賂でエクアドル政府を買収した。ボリビアのエボ・モラレス政府もワシントンによって標的にされている。オバマ政権は、ホンジュラスとアルゼンチンとブラジルで、改革派政権を排除するのに成功した。

 カストロのキューバを除き、中南米の改革派政府は、常に自ら打倒されるよう仕組んだままにしている。彼らは愚かにも、あるいは無能なことに、ワシントンの支配を維持し、支配から逃れるあらゆる政府の打倒が狙いで、ワシントンに従順な政府を再度据えつけるため、ワシントンと手を携えて協力し、反政府集団やメディアを組織し、資金提供する全米民主主義基金やアメリカ国際開発庁や、様々ないわゆるNGOなど、ワシントンの工作員連中をそのままにしている。

 マルクスや、レーニンや、毛やポル・ポトが理解していた通り、連中を放置しておいては、圧政者階級を打倒することはできない。弱さからか、愚かさからか、中南米の改革派政府は、選挙で打倒した圧制者階級と、連中の経済力と、マスコミの力を常に放置している。ワシントンが、圧制者階級を再度権力に据えた際には、改革者たちを打倒するのに同じ寛容は決して示されず、通常彼らは命をもって償っている。

 ニカラグアのオルテガ大統領政権を含め、中南米のあらゆる改革の取り組みは、おろかな間違いをして、圧制者階級と、連中の新聞や、連中のワシントンとの反逆罪的なつながりをそのまま放置している。オルテガなら、もっと分別があるはずだろうと思いたくなる。レーガン政権以来、ワシントンは、オルテガとサンディニスタを追い出そうとしてきたのだ。彼の政権は、ワシントンが率いた最新のクーデターの企みを切り抜けたが、ワシントンは、その取り組みに更に金を注ぎ込んでいる。Kevin Zeeseの記事をここでお読み願いたい。http://www.informationclearinghouse.info/49933.htm

 ウゴ・チャベスは、ベネズエラで同じ間違いをし、彼の後継者も間違いを繰り返した。カストロ後のキューバ政府は、今、フルヘンシオ・バティスタの下でそうだったように、アメリカ属国となる罠にはまりかけている。

 モンロー・ドクトリンは、ヨーロッパ植民地主義者に警告を与えて、中南米から追い出したとして、アメリカの教科書の中で、常に称賛されている。アメリカは、それを自分のものにするつもりだったが、中南米を植民地として保持するのに成功した。米州機構は、常にワシントンの言いなりで、今もそのままだ。中南米は、その植民地化された存在を受け入れていて、ワシントンによる打倒の標的になっている民主的政府に支援の手を差し伸べることはない。指導者連中が、ワシントンに買収され、ゆすられ、あるいは脅迫されているがゆえに、中南米は無力なのだ。

 ワシントンは偉大な友人で民主主義の擁護者のふりをしているが、中南米に自立した政府が出来るたびに、ワシントンは打倒している。

 2015年、アメリカ最初の黒人大統領で“虐げられた人々の偉大な友人”バラク・オバマ大統領は、“ ベネズエラがもたらす、アメリカ合州国の国家安全保障と外交政策に対する異例の途方もない脅威”にかこつけて、大統領命令に署名し、経済制裁を課した。オバマの口実は、ワシントンが煽った暴力行為で、暴力行為を働いた連中の一部が逮捕されたことだった。ワシントンはワシントンが煽り立てた犯罪人連中を素早く“政治犯”と呼び、“批判する人々を逮捕して沈黙させる”かわりに“対話”するよう要求した。ワシントンは暴力行為を犯した連中の逮捕を“ベネズエラ政府による人権侵害”だと主張した。http://www.msnbc.com/msnbc/obama-declares-venezuela-national-security-threat-imposes-sanctions

 言い換えれば、ベネズエラ政府は、ベネズエラ政府を打倒しようとするワシントンの人権を侵害したのだ。

 売女マスコミは、これを真顔で報じた。

 民主的に選ばれた政府を積極的に打倒しようとしながら、実に見え透いたウソをつくことに全く何の羞恥心もない政府は、世界中からの非難に値する政府だ。ところが世界は、余りにたんまりもらったのか、おびえきっているかしていて、口を開こうとしない。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/07/30/the-united-states-is-the-only-remaining-colonial-power/

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 点灯しなくなった蛍光灯を、ようやくLEDに交換した。二本のうちの一本なので放置していた。電気を無駄にしていたのだろうと少々反省。

 「街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋」に、今回も重要記事が掲載されている。

 大本営広報部は知っていても決して報じない話題だ。大多数の国民の生活に悪影響があることに限って、大本営広報部はスルーする。どうでも良い話題なら一斉に報じるが。

 PFI法は周回遅れの売国法である   山本太郎、政府を論破

 強化される安倍独裁 PFI法改正

 「日本幇間協会」と、頭の中で置き換えれば良いと思えてきた。民放はそれ以下。民放は見ないという友人、電気洗脳箱を持たないという知人にいまさらながら敬服する。

 電気を無駄にしていたのだろうと大いに反省。

 大学理事長の去就に言及しない第三者委員会に膿自体に言及しないマスコミを連想。

日刊IWJガイド「<本日の再配信>本日午後8時より、『問題だらけの治水事業! 西日本豪雨被害は天災ではなく人災!? 大都市圏を豪雨が襲うリスクに迫る!岩上安身による拓殖大関良基教授+ジャーナリストまさのあつこ氏インタビュー(その3)』を、冒頭のみフルオープンで再配信します!/昨日、メルマガ『岩上安身のIWJ特報!』を発行しました! 7月号は『「市民レベルの追及はやり尽くした」 財務省強制捜査と昭恵総理夫人の証人喚問を! 岩上安身による木村真・豊中市議インタビュー』後編(その6からその9)です!/他」2018.8.1日号~No.2148号~

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