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2018年8月14日 (火)

ロシアを戦争に追いやるアメリカ経済制裁

Finian CUNNINGHAM
2018年8月11日

 今週、アメリカ合州国がロシアにしかけた新たな経済制裁の意味は一つしかない。アメリカ支配者が、ロシア経済を粉砕したがっているのだ。あらゆる定義からして、事実上、ワシントンはロシアに宣戦布告しているのだ。

 実施された経済措置は、みかけは抽象的だったり、さほど実効性がなかったりするように見える。エレクトロニクス製品の対ロシア輸出禁止、金融市場の混乱、株価下落。だが重要な結果は、アメリカ当局が、ロシア社会とロシア国民に物的損害を与えることが狙いだ。

 プロシアの将軍カール・フォン・クラウゼヴィッツなら確実に称賛する、軍事戦争へと変動する経済戦争だ。

 これは、今週アメリカ・インターネット・サービスが反戦ウェブサイトに対する大規模弾圧を開始したことで一層重要と思え、権力者が自分たちの無謀な戦争商売に対する、あらゆる批判や国民の認識を停止させたがっていることを示唆している。

 おまけに、最新のアメリカ経済制裁は - 2014年の、でっち上げのウクライナ紛争以来、これまで何度もあったのだが  - 手に負えない滑稽な憶測しか根拠がないのだ。全くの踏んだり蹴ったりだ。

 新たに提案した経済制裁は、イギリスに暮らす元二重スパイに対する今年初めの化学兵器攻撃とされるものでロシアに責任があると“決定”したためだとワシントンは言う。

 ロシア人工作員が致死的神経ガスを使い、セルゲイ・スクリパリと娘のユリアが毒ガス攻撃されたとされるいわゆるスクリパリ事件は、まだ証明されていないなぞだ。“茶番”だとまで言うむきもある。

 モスクワに対するイギリス政府の人騒がせな主張を立証するいかなる証拠も提示されていない。スクリパリ親子に対する毒ガス攻撃はロシアに責任があるというイギリスの主張はもっぱら、うさんくさい主張とほのめかしが根拠だ。

 今、ワシントンは、全く証明されていないイギリスの“決定”を根拠とする経済制裁を提案している -  ロシア経済を破壊することを意図した経済制裁。提案されている制裁措置は、いつもの個人が保有する資産凍結を遥かに超えている。ワシントンがしようとしているのは、ロシア経済中核の金融業務に対する攻撃だ。

 ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相が、最新のアメリカ経済制裁に対して重要な対応をしたのを不思議ではない。彼は、この制裁は“経済戦争”に匹敵すると述べた。メドモスクワは、“政治的か、経済的にか、他の方法で”報復せざるを得ないとメドベージェフは警告した。メドベージェフの調子は、情け容赦のない、いわれのない、理不尽なアメリカの行動の本性に対する紛れもない警告だった。

 ワシントンの行為を巡って、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官も、信じられない思いと不安を表明した。先月ヘルシンキでのアメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領との一見して建設的なサミット後の、ワシントンによるこの最新の挑発で、アメリカは全く、あてにできなくなったと彼は述べた。

 これから発効する最初の経済制裁は、アメリカ製エレクトロニクスの対ロシア輸出に限定されている。だが、その後に来るものが厄介だ。もしロシアが化学兵器の将来の使用を止める“保障”をしなければ、そして、もしモスクワが国内で化学兵器とされるものを監視するための国際査察を受け入れなければ - 90日以内に、経済制裁の第二波が適用されると、ワシントンは言っている。

 次段階の経済制裁には、ロシア国営航空会社アエロフロートの対アメリカ飛行禁止が含まれている。ワシントンのばかげた要求をロシアが満たすことが不可能なことで、更なる経済制裁適用が不可避になる。

 国際取り引きを阻止することを狙って、ロシア金融システムを攻撃する計画の別の法案が、議会で成立しつつある。

 法案を提出した上院議員連中は、それに“地獄の経済制裁法案”と名付けた。提案されている法案の名前が全てを物語っている。“アメリカ社会をロシアの攻撃から守る法律”。この法案を推進しているロシア嫌い連中の中でも、ジョン・マケイン、リンジー・グラハム、ロバート・メネンデスやベン・カーディンらの上院議員は、その狙いに関して率直だ。彼らは施策が導入されれば“クレムリンを粉砕する”だろうと言っている。

 不幸なことに、アメリカ国民は、無知か、正気でないか、戦争での儲けのため身を売った政治家連中によって、破滅の淵に引きずりこまれつつある。三つが全部あてはまるかも知れない。邪悪にも、こうした政治家連中や、その子分のマスコミは“選挙干渉”に関する途方もない主張を巡り、ロシアを“戦争行為”で非難しているが、現実は、ロシアに対する戦争行為をしているのは連中なのだ。

 間近に迫る経済制裁を阻止するため、トランプ大統領が彼の行政権力を行使する可能性はごくわずかだ。アメリカにおける、諜報機関、議員や主流マスコミの政治状況は、反ロシア・ヒステリーで飽和している。アメリカは、国民に対する民主的責任を超えて、狂気の真っただ中にある、巨大な力を持ったひと握りの集団が支配する国なのだ。

 今週のロシアに対する、より激しい経済攻撃の発表で、既にロシア経済は急落している。ルーブルも債権も株も全て急落した。これはロシアの極めて重要な国益に対する攻撃だ。経済的バルバロッサ作戦だ。

 アメリカの計算に、社会不満やプーチン政権に対する不和の醸成があるのは確実だ。これは、アメリカが、その経済が今週、過酷な経済制裁に見舞われているイランに対し使っているのと全く同じ違法な戦略だ。

 ロシア経済が、最近発表された経済制裁を巡り、既に混乱に陥っていることからして、ロシア金融制度の基盤や世界の他の国々と貿易する自由に対して、更なるアメリカ攻撃が仕掛けられた際に与えられる損害は容易に想像がつく。

 ワシントンにとって、今や経済制裁解禁期のようだ。制裁の矢面に立っているのは、ロシアやイランだけではない。中国やカナダや欧州連合やトルコやベネズエラや北朝鮮も、“経済制裁”という名目や、間接的に“関税”という言説によって、アメリカ経済戦争でめった打ちにされている。

 ロシア側は、これまでワシントンの挑発や、実際は、無数の口実による攻撃を耐える上で、計り知れない忍耐を示している。ウクライナ内での紛争から、クリミア併合とされるものや、“独裁者を支持している”と中傷されているモスクワの道義に基づくシリア支援や“アメリカ選挙への干渉”とされるものや、他にも多々あるが、アメリカによるいわれのない攻撃としか言いようがないものに耐える上で、ロシアは途方もない量の冷静さと自制を示してきた。

 アメリカによる嘲りや不条理さに直面して、ロシアは常に、威厳ある冷静な姿勢を保ってきた。モスクワは、おそらくトランプ大統領が二国間関係に何らかの正常さをもたらせるだろうと考えたのだ。それはまぼろしだったことが明らかになった。

 ところが、今一体何が起きているだろう? ワシントンは実際行き過ぎている。ロシアの極めて重要な国益に対し、徹底的な経済戦争をしかける準備をすることで、アメリカは、その野卑な行為を全く新しい危険なレベルに進めてしまったのだ。

 狂ったアメリカ支配者は、けんか腰の態度で、世界を瀬戸際に追いやりつつある。

 これまでワシントンは、外交や対話や交渉に興味が無いことを通告してきている。ワシントンの行動様式は一つしかない - 戦争、戦争、戦争。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/08/11/us-sanctions-pushing-russia-war.html

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 必要な買い物に出かけて、夕立にあった。繁華街の人通りが消えた。

 今日も、うだまような暑さ。頭がおかしくなりそう。種子法にも、水道法にも、緊急事態条項にも決して触れない大本営広報部呆導を眺めていれば、妄想ではなく、確実に、人間としてボケるだろう。

日刊IWJガイド「<今日の配信>来日中の国際コンサルタント・トーマス・カトウ氏に、岩上さんが緊急インタビュー!午後8時「第二部」を冒頭のみフルオープンで録画配信!! 『パックス・アメリカーナから撤退を宣言したトランプ米大統領は、北朝鮮に対して力の行使をする』!? そのとき緊急事態条項があれば安倍総理のやりたい放題!?/
<今日の再配信・核兵器と戦争を考えるシリーズ特集>午後4時『「1人の男のとんでもない歴史観のために、日本人全員が巻き込まれようとしている」 ~ロックの会4周年、岩上安身が指摘する日本が直面する「本当の危機」とは』を全編フルオープン再配信!/
8月13日、翁長知事の告別式で多くの参列者が最後のお別れ! 7万人が参加した8月11日の県民大会では、次男の翁長雄治那覇市議が『翁長雄志に辺野古が止められたと報告できるよう、頑張りましょう』と呼びかける!! 本日からいよいよ『オール沖縄』候補者選びが本格化!/他」2018.8.14日号~No.2161号~

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コメント

                トルコ・リラ暴落と歴史から学ばない米国ネオコン

 ル-ブル下落というと小生が思い出すのは,セルゲイ・グラジェフ博士である。プ-チン大統領の経済顧問でもあるらしい。彼の指導のもと,プ-チンのロシアは過去に2つの経済危機を乗り切った。はじめの一つは2014年12月。政策金利(公定歩)を17%に引き上げる前,ロシア政府は持ち合わせていた外貨で下落仕切ったル-ブルをたくさん買った。その直後,政策金利を17%に引き上げたのでル-ブルは上昇した。そこで米ドル(外貨)を買い戻した。一か月もしないうちにロシアはドルを以前より多く保有することになった。しかしするとまた金利を11%に戻してル-ブルを弱くした。そしてグラジェフ博士の提案通り金利を低くし始めて,現在は8%ぐらいである。金利が低くなれば国内投資が増えるからこれはロシアを強くする,というがグラジェフ博士ばかりでなくて,P.C.ロバ-ツ博士の考えでもあろう。
  そして今日,アメリカ財務省証券を149億米ドルをもつ(ブル-ムバ-グ,8月14日)。RT.comで読んだ限りでは去年までは1400億ドルをもっていたが,今年初めは960億ドル。6月までに売って150億ドル前後(その差は約800億ドル)ということだろう。
  しかるになぜロシアは米財務省証券を8割以上も売ったのだろうか。おそらくイランの米国内資産が凍結されているように,経済制裁による資産凍結を心配したのだろう。アエロフロ-ト路線がドル箱なのかどうかは知らないが,かなり思い切った「ドル離れ」である。

  経済危機の2つ目は,サウジアラビアのサルマン王子主導の原油価格30ドル(1バレル当たり)へと引き下げたときである。原油の輸出国であるロシアが困るであろうという経済政策であるというのは,経済に疎い小生でも分かる。
  しかし結果は,サウジ自体の国家財政が困窮して失敗となった。とはいえロシアも打撃を食らったはず。しかしロシアはそれほど影響を受けなかったという。中国との原油取引において中国元・ル-ブルを使ったからであろうか。つまりドイツや欧州に対しても米ドルではなくてユ-ロなどを使ったからであろうか(ドル離れ)。専門家のご教示をいただきたいところである。
  いずれにしても米国ネオコンはロシア経済を破綻させようと経済戦争を仕掛けてきたが失敗に終わっている。それにもかかわらず,F.CUNNINGHAM氏の「ロシアを戦争に追いやるアメリカ経済制裁(2018.8.14)」によれば,米国はまたスクリパル毒薬事件で経済制裁をロシアに仕掛けてきた。そしていつものようにル-ブルや株や債券が下落しているという。

  ロシアにはまだ約150億ドルも残っているのでそれらを売って弱くなったル-ブルを買い戻すだろうけれど,上の800億ドルでロシアは何を買ったのであろうか。ユ-ロや中国元を買ったのではないだろうか。米ドルの反対資産,金の塊(現物)も買ったと推測される。
  CUNNINGHAM氏は「戦争、戦争、戦争」と締め括る。小生も戦争が近い気がする。しかし中国はなぜ財務省証券1兆2000億ドルを売らないのであろうか。トランプ大統領による関税制裁,貿易戦争にも関わらず1.2兆ドルを売らない。しかしもし売った場合には,売る額にもよるが,米(世界)経済はロシアが売った以上の混乱を引き起こすだろ。しかしまだ売らない。

  ク-デタを起こされたトルコのリラも大暴落のようである。しかし実は,トルコも経済制裁攻撃の前に米財務省証券を売っていた。小生のあやふやな記憶によれば,約550億ドルのうち残っているのは288億ドル。今年中に減らしたというからロシアと歩調を合わせたといえよう。またドイツもスイスもトルコも米国に預けていた金を一部取り戻したというニュ-ズもあった。いずれにしてもトルコも「ドル離れ」である(手持ちのドルでリラを支えるに違いない。ロシアも大暴落したリラを買い支えるか融資をするかもしれない。とするとますますトルコはロシアと緊密さを深めていくだろう)。

  話を戻すと,中国が米財務省証券1.2兆ドルを売った場合どうなるのか。某コメント欄に尋ねたら,反応が1件ほどあった。その反応は「中国は工場・施設群をメキシコに移すだろう」というものであった。この反応はピント外れのように思うのだが,小生の英文質問が悪かったのであろうか。それとも何か重要な暗示を含んでいるのであろうか。

  中国の米財務省証券1.2兆ドルについてはロバ-ツ博士に教えて頂いた。本ブログ8月15日付の翻訳,ロバ-ツ博士の論考「自ら進んで無能力なロシアと中国の政府」でも取り上げていらっしゃる。しかしあれほど高関税を吹っ掛けられても「売らない」のは落としどころが決まっているからだろう。
  FRBの政策金利が高くなればなるほど中国は利子をたくさん受け取ることができる(1兆ドルの1%は100億ドルだから年利3%なら持っているだけで,360億ドルの利子が入ることになる。これはトルコの米国債保有高より多い)。それはともかく,北朝鮮と核のボタンの大きさ比べをした後,イラン合意からの撤退を表明し,数カ国に喧嘩を売っているトランプ。トルコとはどこで手を打つのだろうか。
 
  さて昨夜,16日22時のブル-ムバ-グ報道では,リラが20%上昇したという。「隠密利上げ(スティルス)」だそうだ。エルドアン大統領は利上げをしないと言っていたが,S.グラジェフ博士の助言があったのかもしれない。
  別のニュ-ズではフランスのマクロン大統領がエルドアンのトルコ支援を約束したという。おそらく,トルコに金を貸し込んでいるフランスやイタリアやドイツの銀行が,リラ安のゆえに大損害を被るのを防ぐためであろう。他方それよりも早く,中東のカタルも150億ドルほどトルコに緊急投資だそうだ(スプ-トニク日本語版)。しかしこれは直ぐにはリラ暴落防止には役に立たない。しかし直ちにリラに交換したとすれば大いに防止策としては有効であろう(心情的にも大きな支えであろう)。
  以上のように見てくると,戦争,戦争,戦争というより平和的に丸く収まるのかもしれない。戦争をしたがるネオコン。歴史から学ばないネオコン一派による,トルコに対する経済制裁が功を奏するかどうか。明日より来週の月曜日20日が楽しみである。

追記: 日本にいざというとき助けてくれる友好国はあるのだろうか。「対話より制裁あるのみ」という国に『友達』や『友好国』を期待するのは,期待した方の間違いだろう。

追記2: リビアのカダフィ大佐,イラクのフセイン大統領あるいはフランスの石油会社会長など石油取引をドルでなくユ-ロでしようと主張してあの世に送られてしまった。時代が早すぎたのかもしれない。

追記3: 2018年8月17日 本日付のMichael Maloof氏の翻訳記事『最新の対ロシア経済制裁は、トランプが政権を掌握していないことを示している』で「3月のイギリスでのスクリパリ親子に対する毒ガス攻撃への関与のかど」でイギリス自体がロシアに制裁を加えていないにもかかわらず,部外者の米国が制裁を発表したということは,米国ネオコンが裏で糸を引いているという証拠である。その意味でMaloof氏の説は正しいだろう。
  

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