アメリカの第五列がロシアを破壊する
2018年5月25日
Paul Craig Roberts
今週末、ロシアでのサンクトペテルブルク経済会議で演説する招待を、私が受け入れることができていれば、行っていたはずの講演だ。
Paul Craig Roberts
エグゼクティブ・サマリー:ロシアのジレンマという見地からは、これは重要なコラムだ。ワシントンに対して、プーチンが一部無能力に見えるのは、新自由主義経済学が、ロシア政府に対し、支配力を行使しているためだ。ロシアの経済発展は、欧米経済へのロシア統合にかかっていると彼が考えているため、プーチンは欧米と決別できない。新自由主義経済学は、ロシアの経済、金融支配者連中に、そう言っているのだ。
私は親ロシア、反米ではないことを皆様に、ご理解頂きたい。私は反戦、特に、核戦争に反対なのだ。ロシア政府が断固譲らない行動ができないのは、ユーラシア・パートナーシップやシルク・ロードに関して、色々言われてはいても、ロシアの発展は欧米への統合に依存しているのだという思い込みがあるせいだというのが私の懸念だ。この全く誤った考え方が、ロシア政府が欧米と決定的決別をする妨げになっているのだ。結果的に、ロシアを欧米から切り離すだろう決定的決別を避けるため、プーチンは挑発を甘受し続けている。ワシントンとイギリスは、これはプーチンの決断力欠如だと解釈し、ロシアの唯一の選択肢が降伏か戦争かになるまで激化する挑発のエスカレーションを促進してしまう。
もしロシア政府が、ロシアには欧米が必要なのだと思い込んでいなければ、ロシア政府は、挑発に対し、ロシアの我慢には限界があることを明らかにするような強い対応ができているはずだ。そうすれば、ヨーロッパにも自分たちの存在が危機にひんしていると悟らせていたはずだ。トランプによるヨーロッパ虐待と、好戦的なワシントンと協力していることは自らの生存に対する脅威だというヨーロッパの自覚の組み合わせが、欧米同盟とNATOを破壊していたはずなのだ。だが、彼がロシアには欧米が必要だと誤って信じ込んでいるため、プーチンはこれを実現できないのだ。
アメリカの第五列がロシアを破壊する
もしネオコンに自制心があるなら、連中自身は何もせず、アメリカの第五列-新自由主義経済学に、自分たちのために、ロシア破壊させるはずだ。エリツィン時代、ロシアの経済学者たちが、アメリカ・新自由主義経済学者によって洗脳されているため、ロシアは絶望的だ。アメリカにとって、そうするのはいともたやすいことだった。共産主義経済学が失敗に終わり、ロシア経済は破壊し、ロシア人は蔓延する困難を味わっていたが、そこに、救いの手を差し伸べる成功したアメリカがいたのだ。
救いの手は、実際は貪欲な手だった。貪欲な手は、民営化により、ロシアの資源をつかみ取り、アメリカ寄りのオリガルヒに支配を任せた。新自由主義をよそおった金融資本主義が、一体どのようにして、経済から資産を略奪し、債務漬けにするのか、ロシア人経済学者には全く見当がつかなかった。
だが、もっと悪いことが起きた。ロシアの経済学者たちは、欧米帝国主義に奉仕する経済的思考様式をするよう、すっかり洗脳されたのだ。
例えば、新自由主義経済学は、ロシア通貨を、投機や操作や不安定化にさらした。資本流入は、ルーブルの価値を押し上げるのに利用され、最も好都合な時期に、資本を引き上げ、ルーブルの価値を下落させ、高い輸入品価格で、国内インフレを押し上げ、ロシアの生活水準に打撃を与えるのだ。政府を不安定化させるのに、ワシントンは常にこの種の手練手管を駆使している。
新自由主義経済学は、ロシア中央銀行も洗脳し、ロシアの経済発展はロシアへの外国投資にかかっていると思い込むようにした。この誤った考え方は、ロシアの主権そのものを脅かすof。ロシア中央銀行は、お金を創造することで、あらゆる国内経済発展に対して、簡単に資金調達できるはずなのだが、洗脳された中央銀行には、これが理解できない。中央銀行は、もし中央銀行が国内の発展に資金を調達すると、インフレと、ルーブル価値の下落という結果を招くと思い込んでいる。そこて中央銀行は、アメリカ新自由主義経済学に指導されて、ロシアに、欧米への利払いとして、ロシアの資源の移転を必要とする対外債務を負わせるため、必要としていない外国資金を借り入れる。
二年前、ロシアが、欧米、例えば、アメリカから資金を借りた際、マイケル・ハドソンと私が、ロシア人に、ドルが流入するが、ドルは一体どうなるだろうかを説明した? ロシアは国内での開発計画に資金調達するのには使えない、するとドルは一体どこに行くのだろう? ドルはロシアの外貨保有高となり、貸し手に対して、利子を生む。そこで、中央銀行は、借りた無用なドルに等しいルーブルを印刷して、プロジェクトに資金調達する。それなら、なぜドルを借りるのだろうか? 唯一あり得る理由は、アメリカが、ロシアの意思決定に対して支配力を行使するため、ドル債務を利用できるようにすることだ。言い換えれば、ロシアは、自ら敵の手に引き渡しているのだ。
https://www.paulcraigroberts.org/2016/09/28/can-russia-learn-from-brazils-fate-paul-craig-roberts-and-michael-hudson/ 日本語訳 ロシアは、ブラジルの運命から学ぶことができるだろうか?
https://www.paulcraigroberts.org/2016/08/10/russias-weakness-is-its-economic-policy-paul-craig-roberts-and-michael-hudson/ 日本語訳 ロシアの弱点は経済政策
https://www.paulcraigroberts.org/2016/02/08/privatization-is-the-atlanticist-strategy-to-attack-russia-paul-craig-roberts-and-michael-hudson/ 日本語訳 民営化は汎大西洋主義者によるロシア攻撃戦略
実際、ロシアの経済発展はロシアが欧米の一部として取り込まれることにかかっているというロシア政府の誤った思い込みが、欧米がロシアに浴びせる挑発や屈辱を、プーチンに甘受させている。こうした挑発に対する反撃がないことが、最終的に、ロシア政府が、ロシア国内の民族主義的な部分の支持を失う結果をもたらすことになる。
ロシア人であるより、欧米人でありたがるロシア・エリートの一部により、ロシアの経済発展は欧米経済に統合されることにかかっていると、プーチンが説得されているため、ロシアの主権を維持しながらも(非現実的な目標)、ロシアを欧米の経済体制に統合させるべく、プーチンは奮闘している。新自由主義経済エリートがロシアの経済、財政政策を支配しているので、欧米の挑発を甘受しなければならない、さもないと、ロシアの経済発展という彼の希望は失われてしまうと、プーチンは思い込んでいる。
ロシア人経済学者たちは、新自由主義経済学を余りにたたき込まれていて、アメリカを見て、かつて偉大だった経済が、新自由主義経済学によって、いかに完全に破壊されたことを理解することさえできないのだ。
アメリカには、史上、どの国より最大の公的債務がある。アメリカには、史上、どの国よりも大きな貿易赤字と財政赤字がある。アメリカの失業は、22パーセントだが、職を見つけることができずに、職探しを止め、恣意的に失業計算から除外されている何百万人もの求職意欲喪失労働者を数に入れないことで隠蔽されている。新自由主義経済学が促進した規制緩和のおかげで潰すには大きくなりすぎた、ごく少数の“大きすぎて潰せない銀行”の不良債権を救済することの方が連邦準備金制度理事会にとって重要なので、アメリカの退職者たちは、十年にもわたり、貯蓄に対する利子支払いを剥奪されている。“自由貿易”と“グローバリズム”を歪曲して伝えることで、新自由主義経済学が、アメリカの製造業と、移転可能な専門職を賃金がより安い外国に移転し、アメリカ人賃金労働者の収入を犠牲にして、企業所有者の所得を押し上げ、アメリカ人には第三世界並みの低賃金の国内サービス業雇用しか残っていない。アメリカの本当の世帯平均所得は何十年も停滞している。最近、連邦準備金制度理事会は、アメリカ人は余りに貧しく、国民の41パーセントが、個人財産を売らないと、400ドルを工面することができないと報じた。
若いアメリカ人は、大学教育を受けている場合、借金奴隷として人生を始める。現在、44,200,000人のアメリカ人が、総計1,048,000,000,000にのぼる学資ローン負債を抱えている。1.48兆ドルだ! https://studentloanhero.com/student-loan-debt-statistics/
アメリカでは、教育を奨励するため、50州全てに、学費がほんのわずかなはずの公的支援される大学がある。私が一流工科大学であるジョージア工科大学に行っていた当時、年間学費は500ドル以下だった。ローンは不要で、そもそも存在していなかった。
一体何が起きたのだろう? 金融資本主義が、どうすれば大学生を、年季奉公奴隷に変えられるかを発見し、大学経営陣が、それに協力したのだ。学費はぐんぐん上がり、益々多くが経営陣に振り向けられ、経費は爆発した。現在、多くの大学経営陣が年間予算の75%を消費し、教授の給与や学費援助には、ほとんど何も残らない。従順な議会は、大学教育を受けるため、若いアメリカ人男女は確実に膨大な借金を抱えさせる融資プログラムを作り出した。新自由主義経済学によって、給料の良い雇用の非常に多くが外国に移転されたので、就ける仕事では、学資ローンの借金が返済できない。職からは学資ローンの借金を返済し、アパート代を支払うだけ十分な賃金が得られないので、24-34歳のアメリカ人の多くが両親と実家で暮らしている。借金のおかげで、自立した生活ができないのだ。
アメリカの国民債務は、新自由主義経済学の産物だ。私営化、私営化、規制緩和、規制緩和、借金、借金が、債務を返済した後、アメリカ国民には、経済を駆動するための可処分所得が皆無なので、経済成長を阻止している。アメリカでは、自動車やトラックやSUVは、頭金なしの七年ローンで販売される。自動車が購入された瞬間から、ローンの債務が自動車の値段を超えるのだ。
年収225,000ドルの歯科医、マイク・メルには、学資ローンの借金が、1,060,945.42ドルあるとウオール・ストリート・ジャーナルが報じている。彼は毎月1,589.97ドル支払っているが、利子支払いには不十分で、まして元金など減らせない。結果的に、南カリフォルニア大学での七年間にわたる彼の借金は、一日130ドル増える。20年で、彼のローン残高は、200万ドルになる。https://www.wsj.com/articles/mike-meru-has-1-million-in-student-loans-how-did-that-happen-1527252975
新自由主義経済学がアメリカで機能しないのなら、それが一体どうしてロシアで機能するだろう? 新自由主義経済学は、オリガルヒと、経済を破綻させずにおくため、中央銀行から資金援助されているゴールドマン・サックスのような連中の機関に対してしか機能しない。欧米金融機関が、ロシアから資産を剥奪し、債務を負わせるのを認めるエリツィン時代の慣行を復活させることにプーチンが同意すれば、ワシントンは、ロシアが欧米体制に組み込まれるのに同意するだろう。
マイケル・ハドソンの表現を使えば、ジャンク経済学、つまり新自由主義経済学について、私は延々お話しすることができる。アメリカ合州国は、そのおかげで衰えており、ロシアもそうなるだろう。
ジョン・ボルトンやネオコンは、くつろぐべきだ。新自由主義経済学が、ロシア金融権益や、ロシア政府や、どうやらプーチン本人までも支配しているので、戦争無しでロシアを破壊してくれるだろう。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/05/25/americas-fifth-column-will-destroy-russia/
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新自由主義経済学に洗脳されているのは、この国のトップとて同じこと。働かせ方改悪「高プロ」もその典型。
「こんな国会 先進国ではない」というのを聞いて、たまに良い事をいうと驚いたが、全文を見ると、やはりトンデモ発言。こういうものを垂れ流すのが大本営広報部のお仕事。
モスクワから呆導する番記者を見て、音声を消した。
今日の孫崎享氏のメルマガ題名、まったくお説の通り。マサルを寄贈したマケル国で、この傀儡を平然と支持しつづける恐ろしいほど愚かな30パーセントの皆様。
安倍政権は、骨の髄まで、米国隷属だ。菅長官「米朝会談中止「たった1カ国、支持した」と自慢。自慢できることでないでしょう。恥ずべき事じゃないか。そしてトランプが「開催再検討」というと会談支持という。世界でたった一カ国だけ無定見で米国隷属。
昨日は、4月24日に行われたIWJ記者による蓮池透氏インタビューを拝聴した。
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