ロシアにとって唯一の実存的脅威は新自由主義経済学
2018年8月3日
Paul Craig Roberts
世界中のあらゆる人々にロシア国債保有を禁じるという、ワシントンが検討している、あり得る新たな対ロシア経済制裁について、今週ロシアTVのインタビューを受けた。これについてお考え願いたい。ワシントンには主権国家と、その国民が、ロシア国債に投資するのを阻止する権利と権限があるとワシントンは考えているのだ。我々が目にしているのは、狂気にまで至った傲慢さだ。
ロシア国債は素晴らしい投資だ。アメリカやEUやイギリスや日本の国債とは違い、ロシア国債は金利が良く、アメリカやヨーロッパやイギリスや日本の巨額の債務を抱えた政府と違って、ロシアは事実上債務がない。
しかもロシア・ルーブルは、ヨーロッパと中国がそれに依存している膨大なエネルギー資源で守られている。ルーブルを押し下げる唯一の方法は、欧米と日本の中央銀行による組織的な空売りしかない。これらの中央銀行は、すきなだけお金を刷って、それをすっかり浪費できるのだ。欧米の中央銀行は欧米政府より、もっと無責任だ。
ソ連政府には、ルーブルが市場で取り引きされ、欧米が操作できるようにさせないだけの分別があったが、アメリカ新自由主義経済学者に洗脳されているロシア政府は、ソ連政府の分別に欠けているのだ。
ロシアに対するワシントンのあらゆる経済的威嚇は、ロシア政府に、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアや日本の全てのように属国の地位を受け入れるよう強制するよう仕組まれている。マイケル・ハドソンと私が彼らに教えた教訓を、ロシア政府とロシア科学アカデミー経済研究所が無視しているがゆえに、この威嚇が機能し得るのだ。下記を参照。
ロシアは、ブラジルの運命から学ぶことができるだろうか? 英語原文
ロシアの信用を破壊するためのワシントンによる現在の取り組みの展開はこうだ。まずワシントンが、世界中のあらゆる人にロシア国債購入を禁止することを検討していると発表する。多くの人に犯罪組織と見なされていて、連邦準備金制度理事会からの助成に全面的に依存しているシティーバンクが、でっち上げの“分析”を公開する。ブルームバーグを引用すれば、“シティーグループが開発した新モデルによれば、もしアメリカが、ロシア国債に経済制裁を課する提案を強行すれば、ルーブルは15パーセントも下落し、借り入れ費用は、3年間の最高値に急上昇する”。シティーのアナリスト、イワン・チャカーロフと、アルチョーム・ザイグリンはこう言っている。“この出来事で引き起こされる更なる資本流出は究極的にルーブルを弱体化させかねない。” https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-08-01/russia-debt-sanctions-would-send-ruble-plunging-15-citi-says
これは全くのたわごとだ。もしワシントンが属国諸国に有利な投資を放棄するよう強制できたとしても、その企みを機能させ得るのは新自由主義経済で洗脳されたロシアだけだ。
もし逆に、ロシア人が新自由主義経済洗脳から解放されたいと望むのであれば、ロシア中央銀行は、ワシントンが属国諸国に売ることを強制しているロシア国債を買うだけで良いのだ。これはまさに、アメリカやイギリスやEUや日本の中央銀行が、自国国債(と株)を買い入れて、価格を押し上げるよう十年間やってきたことだ。欧米同盟諸国における、ゼロ/マイナス金利は、こうして実現されたのだ。
以前、マイケル・ハドソンと私は、ロシアの発展は、外債と、貴重なロシアの資産を外国に外貨で売ることに依存しているという、ロシアを支配している誤った思い込みは完全に間違っていると、ロシア政府と中央銀行に指摘した。ロシア政府は、ワシントンが仕組んだ物の考え方にはめられているのだ。
ハドソンと私は、ロシアが開発計画のために外国から借り入れると、ドルはロシア経済の中では使われないことが実に明らかだということを指摘したのだ。借り入れたドル(あるいはイギリス・ポンドや、EU・ユーロや日本円)は中央銀行の外貨準備保有になる。中央銀行は、開発プロジェクトに融資するための、外貨の額に等しいルーブルを印刷するのだ。
ロシアの対外借款には全く意味がないことは、アメリカ新自由主義経済学者に洗脳されておらず、ワシントンに反対している誰にとっても明々白々だ。ロシア中央銀行は、外国からの借り入れと無関係に、ロシアの開発プロジェクトに融資するためのルーブルを生み出すことが可能なのだ。外国からのあらゆる借り入れは、ロシア対外債務を増大し、それによって、ロシアは、ワシントンの経済制裁の影響をより受けやすくなるのだ。
ロシアが新自由主義という物の考え方をし続ける限り、ロシア破壊が狙いのアメリカ・ネオコンはくつろいでいられる。新自由主義経済学が、彼らのために仕事をやってくれるのだから。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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9月に横浜で『華氏451度』が芝居で見られるという。レイ・ブラッドベリによる名作SF。映画もある。
徹底した思想管理体制のもと、書物を読むことが禁じられ、情報は全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりで溢れている近未来の話だ。本の所持は禁止されており、発見された場合、ただちに「ファイアマン」と呼ばれる連中が出動し、焼却し、所有者は逮捕される社会だ。
大本営広報部の虚報・洗脳は悪質犯罪と思うが、巨大ハイテク企業の締めつけも劣らず悪質だ。それが今、劇的に強化されつつある。ジョージ・オーウェルの『1984年』と、『華氏451度』の世界、間もなく、ほとんど実現するある。下記はRT記事。
Chilling precedent? InfoWars block exposes Big Tech as no friend of free speech
大本営広報部でないと、記者会見で手をあげても無視される。れっきとした検閲。
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