資本主義は我々を殺しつつあるのだろうか?
2018年8月17日
Paul Craig Roberts
ハーマン・E・デイリーなどの生態経済学者は、公害と資源の枯渇という外部経済が、国内総生産に含まれていないので、GDPの増加が利得なのか損失なのかわからないことを強調している。
外部費用は膨大で増大しつつある。歴史的に、製造会社や工業会社や企業農業や都市下水施設や他の犯人連中が、その活動の費用のつけを環境や第三者に回してきた。最近、主要成分がグリフォセートであるモンサントのラウンドアップが発がん性物質と思われることをめぐり、多くの報道が次々とされている。
最近、公衆衛生擁護団体Environmental Working Groupが、彼らの実験で、45人中、2人を除く子供のエーカーとケロッグとゼネラル・ミルズ製のグラノーラやオートミールやスナック・バークを含む朝食でグリフォセートを発見したと報じた。https://www.theguardian.com/environment/2018/aug/16/weedkiller-cereal-monsanto-roundup-childrens-food
ブラジルでの試験では、母乳の83%がグリフォセートを含んでいることが明らかになった。https://www.telesurtv.net/english/news/Brazil-Poisonous-Agrotoxin-Found-Over-80-of-Breast-Milk-Samples-in-Urucui-20180809-0008.html
最も広く販売されているドイツ・ビールのうち14種がグリフォセートを含んでいるとミュンヘン環境研究所が報じた。https://sustainablepulse.com/2016/02/25/german-beer-industry-in-shock-over-probable-carcinogen-glyphosate-contamination/#.W3XKtC-ZOGQ
グリフォセートは、メキシコ農民の尿やメキシコの地下水で発見されている。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5486281/
サイエンティフィック・アメリカが、ラウンドアップの“不活性成分がヒト細胞、特に胚や胎盤や臍帯の細胞を殺傷しかねない”と報じている。
https://www.scientificamerican.com/article/weed-whacking-herbicide-p/
あるドイツ人毒物学者は、モンサントが率いるグリフォセート・タスク・フォースのグリフォセートは発がん性物質ではないという結論を受け入れたドイツ連邦リスクアセスメント研究所と欧州食品安全局を科学的な詐欺のかどで、非難した。https://gmwatch.org/en/news/latest-news/17307-german-toxicologist-accuses-eu-authorities-of-scientific-fraud-over-glyphosate-link-with-cancer
こうした所見に関する議論は、業界から資金提供された科学者は、グリフォセートとガンとの間のつながりを報告せず、一方、独立した科学者は報告しているという事実に由来する。企業に資金提供された科学者連中は独立しておらず、結論を出すために自分が雇われていることの反対結論を出す可能性は少ないのだから、驚くにはあたらない。
グリフォセートが混ぜられた製品を危険と分類するために、どの程度の汚染が必要なのかに関しても議論がある。使用と、時間とともに、濃度は上がると思われる。遅かれ早かれ濃度は、被害を与えるのに十分なものとなろう。
この記事での要点は、もしグリフォセートが発がん性物質であれば、失われた命や医療費の経費をモンサント/バイエルは負担していないということだ。もしこうした費用がモンサントにとって外部費用でなく、つまり同社がこの費用を負担せねばならなかったなら、製品の費用はその使用が経済的にはならなかったはずだ。費用の方が、利点を上回るはずなのだ。
政治家や規制機関は賄賂に弱く、仕事仲間に便宜を図るので、真実を見出すのは極めて困難だ。ブラジルでは、議員たちが実際農薬使用の規制を撤廃し、スーパーマーケットでの自然食品販売を禁止しようとしている。https://gmwatch.org/en/news/latest-news/18409-brazilian-lawmakers-seek-to-deregulate-pesticide-use-ban-sale-of-organic-food-in-supermarkets
グリフォセートの場合、モンサント/バイエルの形勢が不利になりつつあるのかも知れない。カリフォルニア州上位裁判所は、州当局に、除草剤グリフォセートを、発がん性物質として、プロポジション65に追加するよう命じた。https://gmwatch.org/en/news/latest-news/18411-monsanto-loses-another-court-case-over-glyphosate-weedkiller
先週サンフランシスコ陪審が、ラウンドアップによって引き起こされたガンによる損害で、元校庭整備員への2億8900万ドル支払いを命じた。モンサントが上訴し、訴訟が校庭整備員が亡くなるまで延々続くだろうことに疑問の余地はない。だが、これは前例で、陪審員がお雇い科学を疑い始めたことを示している。約1,000件の同様訴訟が係争中だ。https://www.cnn.com/2018/08/10/health/monsanto-johnson-trial-verdict/index.html
もしラウンドアップが発がん性物質なのであれば、それは一社の一製品に過ぎないということに留意すべきだ。これで外部経済がどれほど大規模なものかわかるだろう。実際、グリフォセートの有害な影響は、この記事が扱っているものを遥かに超えている。https://www.thcfarmer.com/community/threads/expert-gmos-to-blame-for-problems-in-plants-animals.39442/
GMO餌は家畜にも大きな被害を与えている。http://educate-yourself.org/cn/Mike-McNeil-Whats-Killing-the-Cows-Day8-24July2018-55mins.mp3
大気や水や土地資源に対する化学農業の悪影響を検討しよう。フロリダ州は農地からの化学肥料流出による藻類ブルームに悩まされており、製糖業はオキーチョビー湖の破壊に大いに貢献した。https://www.miamiherald.com/news/politics-government/state-politics/article216329745.html
肥料流出は、海洋生物を殺し、人間に有害な青緑色の藻類ブルームを引き起こす。現在、フロリダ州のセント ルーシー川の水は10倍も毒性があり、手を触れられない。https://weather.com/science/environment/news/2018-08-10-florida-algae-bloom-st-lucie-microcystin
赤潮は自然発生し得るが、肥料流出がその成長や持続を促進しているのだ。更に、公害が温度上昇を引き起こすことも赤潮を増やし、湿地の不動産開発用干拓も、自然の浄化無しで、水が素早く移動することになる。https://www.theguardian.com/us-news/2018/aug/13/florida-gulf-coast-red-tide-toxic-algae-bloom-killing-florida-wildlife?utm_source=esp&utm_medium=Email&utm_campaign=GU+Today+USA+-+Collections+2017&utm_term=283418&subid=1480231&CMP=GT_US_collection
http://www.wafb.com/story/38850029/graphic-red-tide-off-fl-gulf-coast-kills-marine-life
水質が悪化し、藻類ブルームが増殖する中、フロリダ州の対応は水質監視計画縮小だった。https://www.miamiherald.com/news/local/environment/article215993665.html
企業農業によるこうした大規模な外部経済を考えると、国内総生産で砂糖や農産品に帰せられている価値は、明らかに過剰だ。化学肥料流出による藻類ブルームで引き起こされる海洋生物の大量死や観光業の損失や人の病気の費用を上乗せしていないため、消費者が支払っている価格は余りに少なく、企業農業が享受している利益は余りに多い。
私はこの記事で外部経済問題の表面を引っかいた程度に過ぎない。ミシガン州では、州の水道水が安全ではないことがわかった。何十年も軍事基地や何千もの消費財の製造に使われている化学薬品が飲料水に入っている。https://www.cnn.com/2018/08/16/health/tap-water-crisis-toxic-michigan-pfoa-pfas/index.html
一例として、どれか事業を取り上げ、その事業の外部経済を考えてみよう。例えばアメリカ人の雇用をアジアに海外移転したアメリカ大企業を考えてみよう。大企業の利益は増大するが連邦や州や地方の税基盤は減少する。社会保障やメディケイドのための給与の税基盤は減少し、こうしたアメリカの社会的、政治的安定性の重要な基盤を危機に押しやっている。教師や他の政府職員の年金用の税基盤は減少している。もし雇用を海外移転した大企業が、こうした費用を負担しなければならなければ、彼らは利益が出るまい。言い換えれば、膨大な費用を全員に負担させることで、ごく少数の人々が儲けているのだ。
ペットショップという単純な例を考えてみよう。美しい45から60センチのニシキヘビやボア・コンストリクターやアナコンダを売り買いするペットショップ経営者も客も、こうした蛇が一体どれほど巨大になるか全く考えないし、輸入を許可する規制当局もそうだ。他のペットや子供を貪り食いそうで、大柄で頑健な成人の生活を息苦しくさせる生き物に直面すると、蛇はエバーグレイズ国立公園の湿地に捨てられ、そこで自然の動物相を破壊し、今や余りに増えすぎて管理できなくなっている。外部費用は、全てのそうした蛇がペットショップによって売られる価格総計を何倍も容易に超える。
生態経済学者は、資本主義は、天然資源に対する人間による圧力がごく僅かな“空の経済”では機能すると強調している。ところが、資本主義は天然資源が枯渇寸前の“一杯の経済”では機能しないのだ。GDPで測られる経済成長に関連する外部費用は、産出価値より高額な可能性があるのだ。
これこそ、我々が今直面しているものだという説得力ある主張が可能だろう。種の消滅、食べ物や飲料や水や母乳や空気や大地への毒の出現や、地下水を破壊し地震を引き起こす水圧破砕によって、エネルギーを確保しようとする必死の取り組みなどは、地球が追い詰められている兆しなのだ。突き詰めて考えれば、何世紀にもわたって、資本主義が生み出してきた全ての利益は、おそらく資本家連中が生産の全部原価を負担してこなかったおかげなのだ。彼らは環境や第三者に費用のつけを回し、残った金を利益として懐に入れているのだ。
更新: 昨年イギリスの医学専門誌ランセットが、公害の年間費用はグローバル経済の約6%で、一方、年間グローバル経済成長率は、約2パーセントで、福祉は2パーセント増ではなく、この差異の年間約4%減少したと推計しているとハーマン・デイリーが書いている。言い換えれば、既に経済成長は、不経済な状況になっている可能性がある。下記を参照。https://www.usnews.com/news/world/articles/2017-10-19/study-world-pollution-deadlier-than-wars-disasters-hunger
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/17/is-capitalism-killing-us/
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角川新書『使ってはいけない集団自衛権』を読み始めた。途中でとめたくなくなる。大本営広報部洗脳電気箱が招くわけがない鋭い論者、著者の菊池博英氏のご本を読むようになったのはIWJインタビューのおかげ。IWJアーカイブに菊池博英の講演やインタビューは数多い。たとえば下記。
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GDPマイナス成長で日本はますます「貧乏」に! もはやアベノミクスはKO寸前! 富岡幸雄氏、菊池英博氏、植草一秀氏の三専門家に直撃取材! 2016.3.8
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