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2018年8月13日 (月)

中東戦略同盟(MESA):同盟か、アメリカにとっての宝の山か?

2018年8月10日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook

 アメリカが意図的にイランとの戦いを持ち出している時期に、中東戦略同盟(MESA)が、‘アラブ版NATO’として公表されるのは単なる偶然ではない。もちろん、MESAのような同盟は、まとまった力とされるものにより対抗すべき敵がいない限り、必要とされるはずがない。それこそが、同盟創設という行為の背後にある論理だ。ソ連が‘自由世界の敵’として描かれた時代のNATOから始まって、MESA設立に至る軍事同盟は、こうした同盟が、安全保障というエセ感覚をもたらすがゆえのみではなく、これら同盟が、軍産複合体にとって、大いに儲かる事業活動であるがゆえに繁栄してきたのだ。ドナルド・トランプ大統領は、先月開催された最近のNATOサミットで、この点を十分明快にし、彼らが、要求通り、そのGDPの4パーセントを同盟のために使うつもりであれば、NATO加盟諸国がアメリカ製兵器を購入するのをアメリカは喜んで支援したいと述べた。だから、軍事同盟は単なる戦略ではない。それは、国防の政治経済を大いに強化する商売でもある。

 MESA創設も、このパターンに則っている。まずは、厳しい駆け引きで、しっかり交渉したイラン核合意から、アメリカが撤退し、“信頼”できない敵で、実際ライバル諸国を破壊しようとしている並外れたものとして、イランを役替えさせる。そこで、アメリカは、イランにより、増大する安全保障上の脅威に対抗すべく、イランのライバル諸国で構成される同盟という考え方を繰り出すわけだ。以上終わりだ。(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーン、クウェート、カタール、エジプトとヨルダン) 自前の国防産業皆無で、中には、適切な常備軍すらない国々で構成されるこの同盟が、イランから自国をどのように防衛するのだろう?というのが、基本的な疑問だ。アメリカ製兵器を購入することで、そうするのはまず確実だ。MESAは、だから、アメリカ軍産複合体にとっての宝の山となり、アメリカ大統領トランプの“バイ・アメリカ”計画にとっての本物の後押しになる。

 MESA創設は、中東に新たな軍事化の波を送ることになり、新たな軍拡競争を引き起こすことは確実だが、アメリカは、それによって一層恩恵を受ける立場にある。

 たとえばシリアの次に、依然、地域における主な未解決の紛争は、イランがフーシ派を支援していると、サウジアラビアが考えているイエメンだ。サウジ率いるアラブのイエメン攻撃は既に最悪の人道的危機を引き起こしているが、MESAが早急に対応する必要があるのはイエメンで、“イランの陰謀”を打ち破ることが必須だ。そこで兵器が差し迫って必要になるわけだ。

 既にホワイト・ハウスは、アメリカが、サウジアラビア軍‘近代化’の任務を負っていることを確認している。近代化には独自の政治がある。例えば、アメリカは、連中に無用な兵器で、サウジから既に何千億ドルも搾り取っているが、サウジアラビアには、そうした兵器使用に必要な専門能力も無く、訓練が必要だ。そこで近代化計画なのだ。

 1100億ドルを超える武器商談に調印して、トランプ大統領は、アメリカ軍産複合体にとっての兵器市場としてのサウジアラビアの可能性を拡大させた。たとえ、それが十分でないにせよ、十年にわたり、アメリカに3800億ドルももたらす可能性がある史上最大の武器輸出は称賛に値する。

 それでも、武器商談だけが、サウジアラビアと他の湾岸諸国の資金でアメリカが膨大な恩恵を受ける唯一の分野というわけではない。湾岸諸国、特にサウジアラビアは、何十億ドルもの価値の投資も、アメリカにするつもりだ。

 報道によれば、サウド家はアメリカに2500億ドルの商業投資をして、トランプ政権に、何千もの大いに必要としている新規雇用を与え、旅客機を購入し、アメリカのインフラ・プロジェクトに投資する予定だ。

 他のMESA加盟希望諸国も同じことだ。湾岸諸国と最近まとまったの商談の中には、アラブ首長国連邦に対する、パトリオット・ミサイル防衛システム、20億ドルの輸出や、サウジアラビアに対する、終末段階高高度地域防衛システムTHAADと支援機器150億ドルの輸出がある。3月、アメリカ国防省は、ボーイング社が、クウェート政府向けの28 F/A-18スーパーホーネットで、12億ドル契約に成功したと発表した。昨年秋、バーレーンは、ロッキード・マーチンから、改良型F-16ファイティング・ファルコン16機を推計23億ドルで購入することに調印した。

 また、純粋な商業活動という点で、UAEはアメリカ製品と投資の最大の相手国でもある。2016年、アメリカは、UAEで、190億ドルの輸出黒字を得ており、アメリカにとって、世界で三番目に大きな貿易黒字だ。しかもUAEは、ボーイング航空機の世界的に最大の購入者でもあることは疑いようがない。この他にも、このちっぽけなアラブ国家はアメリカに何十億ドルも投資してきた。一例をあげれば、AMDと、アブダビのアドヴァンスト・テクノロジー・インヴェストメント・カンパニー(ATIC)との間のジョイント・ベンチャー、グローバルファウンドリーズは、アメリカに、約170億ドル投資し、約7000件雇用して活動している。

 この関与の深さを考えれば、アメリカが中東から抜け出すというアメリカ大統領選挙運動時の言説は、軍事協力やMESAのような軍事同盟の創設によって、絆を一層強化するものへと転換したように見え、アメリカは出口戦略ではなく、定着戦略を推進していることを裏付けている。

 この文脈で、兵器輸出を正当化し、軍産複合体経済を破綻させずにおくため、イランを挑発し、一層敵対的な関係にしようとし続けるだろうが、MESAは、この狙いを更に追求するばかりで、イランに反撃することなど到底できまい。

 サルマン・ラフィ・シェイフは、国際関係とパキスタンの内政、外交問題評論家、本記事は、オンライン誌“New Eastern Outlook”独占。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/10/mesa-an-alliance-or-a-gold-mine-for-america-to-dig/

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 「中東同盟」、そのままこの属国に置き換えられそう。憲法を破壊して、侵略戦争に参戦するのも間近。そのためには「緊急事態条項」が必須。当然、大本営広報部は全く触れない。

 ドキュメンタリー『“駅の子”の闘い ~語り始めた戦争孤児~』を見た。壮絶。「今も孤独な子供たちがいるのです。思いやってください。」という趣旨のことを、一人の方が、子供たちへの講演でおっしゃっていた。「戦争は絶対にいけません。」と何人もがいわれた。アフガニスタン、イエメン、シリア。彼らの国々、日本と違い、自分から戦争を仕掛けて、敗戦したわけではなく、いわれなく、一方的に侵略されている。

日刊IWJガイド「本日午後7時録画配信~来日中の国際コンサルタント・トーマス・カトウ氏に岩上さんが緊急インタビュー!緊急事態条項は日米両国できちんと報じられていないことは大問題!/<今日の再配信・核兵器と戦争を考えるシリーズ特集>午後4時『「1943年5月の段階で、原爆は白人国家のドイツではなく、日本に投下すると決まっていた」 ~オリバー・ストーン監督、ピーター・カズニック教授記者会見』、そして午後5時『緊急集会「被爆者は核兵器禁止条約を求める」』を再配信!/他」2018.8.13日号~No.2160号~

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