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2012年12月14日 (金)

“国際競争力”推進に利用されたニュージーランドのホビット・プレミア試写会

wsws.org

John Braddock

2012年12月13日

11月28日、ニュージーランドのウエリントンで、J.R.R. トールキンのファンタジー小説三本の映画化の第一作ホビット: 思いがけない冒険の世界プレミエが始まった。ジョン・キー首相は、これにまつわるマスコミのばか騒ぎの好機をとらえて、“国際競争力”と、映画産業の賃金と労働条件に対するより激しい攻撃の正当化を、それとなく、より広範に求める支配層エリートの要求を強調した。

ラジオNZのインタビューで、映画監督ピーター・ジャクソンは、ホビットがニュージーランド以外の国で製作されかねない“きわめて差し迫った危機”があったと語った。ジャクソンは、どこで巨額予算の映画を製作するか決める際には“感傷の余地など”ないと語った。“ニュージーランドが映画製作事業を続けたいのであれば”と彼は強調した。“他の国々やアメリカの各州が提示している条件に注意を払うべきです。”と。

二年前、ワーナー・ブラザーズ幹部のウエリントン訪問を歓迎した後、キーはホビット向けの戻し減税と助成金を大幅に増やし、総計約1億900万米ドルにすると宣言した。プロジェクトの5億ドルという制作費に対する大きな貢献だ。同様の取引で、ジャクソンのロード・オブ・ザ・リング三部作に、前の労働党政権は1億5000万ドル提供した。

 

ワーナー・ブラザーズや他の裕福な映画プロデューサーに与えられた何百万ドルは、庶民に与えられている仕打ちとはきわめて対照的だ。国民党政権は、世界中のご同類と足並みを揃えて、労働者階級に世界的経済危機のつけを払わせようとして、“金が無い”という理由で、医療、教育や公共サービスの削減、消費税増税や雇用と賃金の削減等を含め、緊縮政策を押しつけている。

政府は2010年、“緊急事態体制の下、基本的に映画産業の全労働者を“契約社員”とする法律も制定した。これにより、俳優達、技術者、メーキャップ・アーティストや“映画製作作業に従事する”あらゆる人々の、病気休暇、有給休暇、労災保険や不当解雇に対する保護を含め、従業員は享受できる限定的な法的保護をはぎ取られた。

今や映画労働者には、団体契約交渉をしたり、賃金や条件を巡って示威行為したりする法的権利が無いのだ。キーは当時ニュージーランド・ヘラルドに、法律改革が無ければ“こうした映画はニュージーランドで製作されないでしょう”。個人資産5億NZドルで、全国ビジネス・レビューの“長者番付”20位のジャクソンは、条件を守ろうとした俳優達を悪魔の様に描き出し、政府はワーナー・ブラザーズの要求に応じるべきだと主張して、反動的で国粋主義なキャンペーンの先頭に立った。NZ俳優労働組合によると、俳優達はニュージーランドでも最も低収入労働者で、平均賃金は年収わずか28,500ドル(NZ22,670米ドル)に過ぎない。

ホビット・プレミア試写会開催の演説で、キーは雇用法改革を一応“支持してくれた”ことで国民に感謝した。実際、この動きの支持を駆り立てたのは、恵まれた企業寄り評論家連中と、法律が導入されるのに反対しなかった労働組合だ。この法律が強引に通過させられる迄に、米映画俳優組合、カナダ俳優労働組合やイギリス俳優労働組合が呼びかけた国際的ボイコットは既に崩壊していた。組合は“非就業”通知を撤回し、労働協約の要求を取り下げた。俳優労働組合とニュージーランド労働組合評議会は、撮影中はいかなる示威行動も許さないという無条件の保証を出した。

ジャクソンは、ラジオNZに、ワーナー・ブラザーズはロケハン部隊をイングランドとスコットランド中に送り、ニュージーランドでの経費が増えた場合には“すぐそちらに行って、映画を撮影することができると確信できるよう”提案されたロケ現場写真に合わせて、ホビットの脚本を各場面に分割してあったと語っている。

ジャクソンによると、映画スタジオは、為替レートから政府が提供する奨励金に到るまで、ありとあらゆる経費項目を計算に入れている。“アイルランドかユーゴスラビアで、より安く作れるということになれば、そこで撮影するでしょう”と彼は力説した。言い換えれば、国境を超えた、経費削減という過酷な“底辺への競争”、納税義務、就職する権利、賃金と条件等があるのだ。

ジャクソン自身、製作費を引き下げ、利益を増加するという国際的な動きの中心的存在だ。十年経過したロード・オブ・ザ・リング三部作は、全世界で、約36億NZドルの収益をあげた。現地の映画産業を支配している低賃金と劣悪な条件のおかげで、他の同等などの国でより、ニュージーランドでずっと安く製作されていた。ニュージーランド映画委員会は、当時アメリカから“逃亡してきた”100億ドル映画産業の大半を惹きつけていたカナダでより、ニュージーランドで映画を製作するほうが、30パーセント安い理由として、“規制緩和された”労働力を指摘した。製作は経費がハリウッドで支配的な金額を下回る他の場所にで行われたのだ。

ニュージーランドの支配層は、ロード・オブ・ザ・リングの世界的成功を、ホビットが繰り再現できるか否かに大きくかかっていると懸念している。政府観光予算の大半が、ニュージーランドを“中つ国”として売り込み、外国から何千人もの観光客を映画ロケ地に引き寄せることを目指して向けられている。エアNZ等の企業はこのテーマで大規模なブランド作戦を展開している。ニュージーランドの観光産業は、外国為替収入の点で、酪農製品輸出に次ぎ、国内総生産のほぼ10パーセントを占める。

とはいえ、ジャクソンの作品を巡る熱狂もさめ始めている兆しがある。ウエリントンでの盛大なプレミエ式典は約20,000人のファンを集めたが、太鼓持ちのマスコミが予想した100,000人を大幅に下回った。時代は変わったのだ。社会的惨事の深化とエジプトから、アメリカ、ヨーロッパや他の地域に到る地域での階級闘争の勃発の中、牧歌的で、美化して描かれた過去を支持して、現代生活の現実からの全面的な引きこもりを奨励するような三作のファンタジー映画は、一般大衆に受けなくなる可能性もある。

著者は下記記事も推奨している。

トールキンと現代生活からの逃走  (英語)

[2002年3月21日]

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2012/dec2012/hobb-d13.shtml
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こういう記事を読むと、あの映画気軽に見に行く気になれない。原書は昔読んだが。

先に翻訳したTPPAとは何か?TPP Watch
でも、政府はワーナー・ブラザーズの圧力で労働法を変えた事が書かれている。

労働法のみならず、こうした著作物に対する宗主国の強欲さ、ご承知の通り。
TPPの目玉には、宗主国にとって好都合な著作権法の押し込みも含まれている。

赤松健(漫画家、Jコミ代表取締役)
吉見俊哉(社会学者、東京大学大学院情報学環教授)
野口祐子(弁護士、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン常務理事)
八田真行(駿河台大学経済学部講師、MIAU幹事会員)
福井健策(弁護士、日本大学芸術学部客員教授、thinkC世話人) ほかによる

TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラムが、12/12開催された。

今になって、以前購入していた福井健策氏の著書を拝読中。TPPを扱った新刊も。

フォーラムは既に終了しているが、ニコビデオ?で放映されており、ログインすると今からでも見られるもののようだ。

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コメント

昔、TVにて見ましたが、ハリウッド映画への出演は、通り人Aみたいなチョイ役でも俳優協会(組合?)に加盟の上でないと出演出来ず、最低給金が保証されているらしいので、これも海外へのアウトソーシングの一環なのでしょうね。

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