『76 Days』:武漢でのコロナウイルスとの戦いの前線
デイビッド・ウォルシュ
2020年12月7日
wsws.org
世界的流行が始まった中国の都市武漢での11週間の封鎖(1月23日-4月8日)についてのドキュメンタリー『76 Days』は、今年のトロント映画祭における最良の映画の一つだった。この映画には、実に本物の忘れ難いドラマがある。ドキュメンタリーは今「virtual cinema」プラットホームで、アメリカで見られる。
映画はハオ・ウー、ジーン・チエンと匿名の人物(身元を明かさないために匿名を望んでいる武漢現地の記者)によるものだ。
中国系アメリカ人映画監督のウー(Beijing or Bust, The Road to Fame, People’s Republic of Desire)が、二人の協力者に武漢で撮影されたビデオ映像を編集した。
『76 Days』
ドキュメンタリーは、いかなる全体的評価も分析もしていない。ほとんどがクローズアップだ。ほとんど全員ウイルス感染者か医療従事者だ。極端な臨場感は制約だが、アメリカ政府による執拗な新たな「黄禍論」プロパガンダ宣伝の時に、『76 Days』は、親密で、完全に合法的な方法で、聴衆に中国人の人間性や苦しみを紹介する。
更に全般的に、主にコロナウイルスで亡くなる人々が、無価値で、重荷で、完全な人間以下のもののように主張したり、暗示したりする、至る所のメディアや政治支配体制の冷淡さや無関心に対する打撃だ。
ドキュメンタリーで、女性が半狂乱ながら、空しく(健康上の理由から)、死に瀕した父親にもう一度会いたいと懇願する場面がある。「父さん!私は父さんを決して忘れません」と彼女が叫ぶ。最も心が痛む、実情を現す別の場面の一つで、病人の自暴自棄な群衆が病院入り口で入ろうとする。「どうか協力してください!」と職員たちが訴える。職員たちは、彼ら全員が、最終的に入れますと約束する。
『76 Days』(2020)
ある看護師が、故人のIDカードと携帯電話を集める。携帯電話は、故人や家族の画像が多いが、小さな光を放つ幽霊のようだ。ウイルスに感染した女性が出産する。「女の子ですよ。」だが赤ん坊は、母親が感染しているため、すぐ連れ去られる。その後で、母親と夫の両方が、心配して、赤ん坊を待っている。看護師が、二人に、赤ちゃんは「良く寝て、良く食べましたよ」と陽気に言って、幸せな再会になる。
一人の「言うことを聞かないおじいさん」が立ち上がり、家に帰るため外に出る方法を探して廊下を歩き回り続ける。誰かが言う。「彼は漁師でした。彼は落ち着きがありません。」病気で、おびえて、彼は泣く。「私はもう、お墓に片足を突っこんでいる。」だが彼は幸運な一人であることが分かり、生き残る。彼が最終的に退院する際、職員たちが彼にさようならを言うため、エレベーター近くに集まる。「私は決して皆さんを忘れません」と彼は職員たちに言う。
『76 Days』病院に入ろうとする必死の人々
最終場面の一つで、誠実な看護師が死んだ親の持ち物を家族に返す。「ごめんなさいね」と彼女が言う。「私達は出来る限りのことをしました。」泣いている女性が帰るため向きを変えながら簡単な返事を言う。「わかっています」
監督としての発言で、ハオ・ウーは、地方自治体が、ウソをついて、発生を隠すため、内部告発者を抑圧していたことが益々明確になる中での、流行初期の彼の反応を説明している。武漢での状況は悲惨だった。人々は死につつあり、医療は崩壊し、医療関係者には適切な保護器具がなく、彼らも病気にかかり、死に瀕していることが明白になった。
後に、ニューヨークで、彼は「準備不足の政府、ウソをついているか科学的に無知な政治家、怯える住民、保護具がない疲れ切った医者や看護師のアメリカで、武漢物語を再体験しているように感じた。アメリカには一流医療インフラと遥かに優れた政治制度があると思われているので、この二度目は、私にとって、より大きな衝撃だった。」
率直に言って、中国当局者の役割を称賛せずに、アメリカが武漢経験を「再体験した」ことを示唆するのは非常識だ。武漢での措置に伴う封鎖は、ウイルスを封じ込め、抑制した。今中国は、4,600人の死者で、死者数ランク・リストで、77位に落ちている。人口が四分の一のアメリカでは、政府の殺人政策のおかげで、290,000人の死者が出ている。
とにかく『76 Days』は貴重で感動的な作品だ。
記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2020/12/08/days-d08.html
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