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2011年1月11日 (火)

トゥーソン乱射事件: アメリカ人に対する警告

2011年1月10日

wsws.org

土曜日のアリゾナ州トゥーソンにおける乱射事件は明らかに右翼テロ行為だ。銃撃犯は総計20人を銃撃し、ガブリエル・ギフォーズ民主党下院議員に重傷を負わせ、ジョン・M・ロール連邦判事と他の5人を殺害した。

マスコミに対する最初の声明で、ピマ郡保安官クラレンス・W・ デュプニックは、乱射事件を政治的な文脈の中に置いて、正しく理解していた。彼は右翼政治を鼓舞する"政治的毒舌"を非難し、アリゾナを、アメリカにおける偏狭さの中心地になぞらえた。

彼は、移民排斥ヒステリーの促進や、連邦政府が承認し、全国的メディアによって正当化されたメキシコ国境での武装自警団員の活動を示唆していたのだ。昨年、アリゾナ州は、法的身分が証明できない、あらゆる"疑わしい"人物を、捜査、阻止、拘留する権利を警官に与えるという、あからさまに違憲の法律を可決した。

ほぼ即座に、マスコミの解説者達は、トゥーソン乱射事件を反動的な政治環境に結びつけた保安官からは逃げ腰になり、銃撃犯の政治右翼とのつながりをあいまいにし始めた。

マスコミは、この暴行を、気が狂った単独の人物による不可解な暴挙として描き出そうと務めている。典型的なものが、デイリー・ビーストのワシントン支局長で、CNN司会者のハワード・クルツのコラムで、彼は土曜日に、こう書いている"これは有名になって一年たったサラ・ペイリンの選挙地図とは無関係だ。人の命を尊重しようとしない独りの変人がしたことだ。"

リベラルなMSNBCトーク番組の司会者レイチェル・メドウも似たような言い方をしている。オンライン・マガジンSlateのジャック・シェーファーが引用したツイートでは、彼女は“事実抜きで、アリゾナ銃撃犯の動機や背後関係を憶測しても得られるものはない。”と書いている。

だが事実は明白だ。22歳の銃撃犯ジャレド・リー・ロフナーに関する最初の情報は、彼が極右政治の影響下にあったことを示している。YouTubeウェブ・サイト上の彼の発言は、"第二の"アメリカ憲法、"背信的な"法律、黄金の裏付けがない通貨への言及に満ちている。これは暗号化された、極右言語の模写だ。

昨年3月、彼女がオバマ大統領の医療法案に賛成票を投じた翌日、彼女のトゥーソン事務所の厚板ガラス窓が割られたのを含め、ギフォーズ下院議員が右翼による政治的攻撃の標的だったことは良く知られている。2010年の中間選挙運動期間中、民主党が議席を持っている、攻撃しやすい20の選挙区を示し、その各選挙区に照準線の標的印をつけたアメリカ地図をサラ・ペイリンはウエブに掲載した。その一つがトゥーソンのギフォーズの選挙区だった。

ティー・パーティーが支援したギフォーズの競争相手、元海兵隊軍曹は、"ガブリエル・ギフォーズを議席から追い落とすのを助けて欲しい"という標語のもとで選挙運動イベントを行い、支持者に"完全自動のM16で撃とう"と呼びかけた。

ロール判事も、反移民狂信者による何百という殺害脅迫の標的だった。2009年、米国警察庁は、彼を一カ月間、24時間警護した。

昨年11月、彼女がティー・パーティーが支援した共和党候補者をかろうじて打ち破り、連邦議会三期目の議席を獲得した後も、ギフォーズ議員に対する脅迫は続いていた。射撃事件後、ユダヤ人であるギフォーズには、誰か敵がいたのかとマスコミに尋ねられて、家族はティー・パーティーをあげた。

政治的右翼の言葉は、情緒的な暴力への呼びかけに満ちていることに議論の余地はない。デュプニック保安官は、暴力礼賛の雰囲気を助成する上で、特にラジオやテレビのトーク番組司会者の役割を指摘した。テレビ・ラジオ放送は、ラッシュ・リンボーのような右翼のトーク番組パーソナリティや、グレン・ベックのような精神病質的パーソナリティによって支配されているのが事実だ。

そうした放送の呼びかけが、情緒不安定で頭が混乱している人間に対し、行動しようという衝動を与えてしまうのは、決して驚くべきことではない。

1995年のオクラホマ・シティ連邦政府ビル爆破事件以来、2001年の炭疽菌攻撃や、2009年の中絶反対狂信者によるカンサスの医師ジョージ・ティラー殺害事件を含め、右翼による暴挙のエピソードが多数ある。この三件のいずれにおいても、犯人と右翼団体とのつながりとされるものは、政府とマスコミにより、秘密のままにされている。

共和党はその支持基盤を強化するため、40年以上、人種差別主義者やファシスト勢力に訴えかけ、彼等と同盟してきた。大企業に支配されたマスコミは、熱心に右翼的な政治的雰囲気の推進に努めてきた。

現在ギフォーズでの乱射事件には一切かかわりがないと言い張っている同じ政治家やマスコミ代弁者連中の何人かは、一週間前、WikiLeaks創始者ジュリアン・アサンジ暗殺を呼びかけていたのだ。極右分子を煽動してきたフォックス・ニューズのメディア王、ルパート・マードックの類は、今や傲慢にもトゥーソンでの殺戮に対して何ら責任がないとしている。

トゥーソン乱射事件は、10年の絶えざる戦争と、絶え間ないアメリカ軍宣伝の中で起きている。あらゆる政治家、特にリベラルな民主党議員の、軍に対する、吐き気を覚えるような義務的服従は、人命の重さの切り下げと同調しており、おきまりの敵対勢力の殺害と、拷問の正当化への言及に要約できる。

国家機構内の分子に支持された、右翼による暴挙が、歴史的に、アメリカ合州国における大きな社会的危機の時点で、政治的な方向性を変えるために利用されてきたことを忘れてはならない。1960年代、三件の政治暗殺―ジョン・F・ケネディ、マーチン・ルーサー・キング、そしてロバート・ケネディ―は、アメリカ政治の軸を右側に移行させる上で、大きな役割を果たしている。

いつものとおり、トゥーソンでの出来事に対する右翼の反応は鉄面皮で、リベラルは臆病で曖昧だ。民主党は、ブルジョワ政治の本性を暴露するという話題になると、決まってこわばってしまうという印象がある。悪質な性格の最も明快な表現は、共和党と、大企業から資金提供を受けている、マスコミの民衆煽動家連中のネットワークだが、民主党自身も極めて重要な貢献をしてきたのだ。

全体的な社会・政治環境は、海外における戦争と、帝国主義に欠かすことのできない軍の暴力への果てしない欣求と、社会を食い物にした絶え間ない企業利益追求の結果である、国内における社会崩壊の産物だ。これこそ、政治的性格が明白な出来事を目の前にしてさえ、民主党が公にも率直にも決して語ることができない理由だ。

乱射事件直後、オバマや他の有力民主党議員らがおこなった "団結しよう" という穏やかな呼びかけや "左右の過激主義"の否定の類は、欺まん的で、偽善的で、国民を政治的にクロロホルム麻酔にかけるためのものだ。

銃撃犯と右翼勢力とのつながりを入念に調査し、国民に公開するべきだ。引き金を引いたのはロフナーかも知れないが、大企業の幹部達や既成政治勢力に、主な道義的・政治的責任がある。彼等は、明らかにされ、責任を問われるべきだ。

Barry Grey

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/jan2011/pers-j10.shtml

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Infowars.comのPaul Joseph Watson記事翻訳で、虚報垂れ流しの手伝いをしたお詫びに?wsws.orgの記事を翻訳した。

昨夜、内田樹氏の新刊『ひとりでは生きられないのも芸のうち』(単行本は2008年1月刊)を読んでいたら、IV グローバル化時代のひずみ に、「銃規制と憲法修正」という文があった。文庫では154-156ページ。ヴァージニア工科大学乱射事件をきっかけに書かれたものだろう。Alex Jonesが主張する憲法上の権利擁護説とは大いに異なる。Alex Jonesの説と違って、こちらはすっと頭に入る。内田樹氏、ウエブに惜しげもなく、文を公開しておられる。有り難いことだが、小生にとっては、紙の本を購入したからこそ、出会えた文章。iPadを持てない貧しい小生、寝床でウエブは読めない。

前記事の末尾。

1990年1月、本島等長崎市長が銃撃された。2007年4月、伊藤一長長崎市長が射殺された。

銃砲など使わずとも、刃物による政治家暗殺も行われている。

1960年10月、社会党の浅沼書記長、2002年10月、民主党衆議院議員の石井紘基氏。

それで、

政治家暗殺犯と右翼勢力とのつながりを入念に調査し、国民に公開するべきだ。たとえば、柳刃包丁で刺したのは、伊藤白水かも知れないが、大企業の幹部達や既成政治勢力に、主な道義的・政治的責任がある、ように思えてくる。

2011/1/12追記:

本澤二郎の「日本の風景」(659)<石井紘基事件の犯人追及を>、是非お読みいただきたい。2011年01月12日の記事だ。

デモクラシー・ナウ・ジャパンで、事件を扱ったDemocracy Now放送番組邦題が読める。日本語字幕はないが、英語の内容書き起こし全文が読める。

2011/1/11(火)

*ジャレド・ロフナーの元級友:「彼は明らかにおかしかった…大半の人と違って落ち着きがなかった」
*ジャレド・ロフナー、精神障害、そして予算削減で低下したアリゾナの精神医療サービスについて
*ギルフォード銃撃事件直後、アリゾナ州議会は銃規制を引き続き緩めるのか?
*リチャード・カルモナ医師:ツーソンの悲劇の後には超党派的解決が必要

2011/1/10(月)

*グリハルバ議員が銃撃事件を語る「アリゾナ州の政治は憎しみと怒りに覆われている」
*アリゾナ州保安官「精神的に不安定な人はこの国で使われているレトリックの影響を受けやすい」
*ジェフ・ビガーズが語る:「憎しみで埋め尽くされた演説」と「武器を簡単に入手できる状況」が今回の事件を生んだ
*チップ・バーレットが語る「ガブリエル・ギフォーズ議員は扇動政治の被害者だ」

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コメント

容疑者のガブリエル・ギフォーズ民主党下院議員への変質的な関心は、2007年に始まっており、オバマ就任以来の医療保険論争、サラ・ペイリン、ティー・パーティー等との関連性は薄いと考えられております。

又、友人がインタビューで、容疑者が政治的なテレビ、ラジオ番組は視聴してなかったとコメントしております。

英語のソースを訳される事には罪はないと思いますが、原文は偏見と一方的なイディオロジーにまみれた全く根拠のない妄想記事です。

トラックバックありがとうございました。私のコメントに対する真摯な対応にも感謝いたします。

お詫びの記事の掲載と言う事ですが、今回の記事の原文は、全く事実の裏づけがない憶測に基づく内容になっております。

現時点で、今回の事件が「右翼テロ行為」であるという証拠は全く有りません。ピマ郡保安官クラレンス・W・Dupnik(デュークニックと発音してました)自体、個人的なオピニオンとした上で、発言しております。

この保安官のドンでもない発言に、リベラルなスコミも流石にあきれ返って距離を置いている状況です。

又、保安官でありながら、初動捜査でこのような決め付けをしている事自体が問題でも有ります。彼は過去にもアリゾナ州で可決された移民法に反対し、この法律の施行をしないというトンでもない宣言をしており、明らかにリベラル色の強い、非常に政治的な意見、行動に走る人物のようです。

「気が狂った単独の人物による不可解な暴挙」と言う結論になりそうです。

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