■ 「デュエル」というフレーズを多様4月初めにハリルホジッチ監督は電撃解任された。志半ばで日本を去ることになったが、当然のことながら、これまでの3年強の間に日本サッカー界にもたらしたのは少なくない。低調な内容の試合が多くて批判を浴びるケースが多かったのは紛れもない事実であるが「デュエル」という言葉を浸透させて1対1になったときに戦える選手の重要性を世間一般にまで知らしめた功績は大きい。この点が最大の功績と言える。
ザックJAPANの頃はバルサ・スタイルが世界中を席巻していた。パスをつないでチャンスを作ろうとするチームが世界中で脚光を浴びており、日本代表もMF遠藤を中心にボールを大事にするサッカーを志向した。このサッカーがハマってベルギーに親善試合で勝利するなど一定の成果を残したがW杯の舞台で結果を出せるほどのクオリティには達しなかった。ザックJAPANはどちらかというと戦えないチームだった。
その反省もあってアギーレ監督を招聘した。その後に就任したハリルホジッチ体制になってからはさらに「戦える選手」が重要視されるようになったがハリルホジッチ監督の影響でJリーグも激しいプレーをする選手が脚光を浴びるようになった。良くも悪くも日本では代表監督の影響力が絶大なのでメディアやサポーターは「デュエル」という言葉を多用。「戦える選手イコール優秀な選手」と認識する人が激増した。
■ 「ハリル憎し」と「協会憎し」サッカーの世界では基本的なことになるが2014年当時の日本サッカー界には決定的に不足していた要素だった。ザックJAPANの目指したスタイルを引き継いでボールを大事にするサッカーを続けるという選択肢もあったとは思うがあの時点で「継続路線」を選択するのは全く適当ではなかった。世界の新しい主流になりそうなスタイルを取り入れようとしたサッカー協会の判断自体は極めて適切だった。
ただ、残念ながらハリルホジッチ監督がやりたいサッカーをピッチ上で披露出来た試合は少なかった。指導力の問題なのか?選手の質の問題なのか?育成の部分の問題なのか?は何とも言えないところではあるが方向性自体は間違っていなかった。そして、これだけ「目の前の相手と戦うことの大事さ」が世間一般にまで知れ渡ったのは文句なしでハリルホジッチ監督の功績である。過小評価することはできない。
今回の解任騒動は複雑である。公になっていないこと、公にはできないことが多いので、憶測で話を進めざる得ないところもあるが、それでも冷静に考えないといけない。「ハリル憎し」で協会を過剰に擁護するのは当然のことながら適当なことではないが、その反対で「協会憎し」でハリルホジッチ監督のことを過剰に擁護するのも適切ではない。やはり、どちらか片方にだけ問題があったとは考えにくい状況である。
■ ハリルJAPANの結果はいまいち?協会憎しが理由なのか?否か?は分からないが、ハリルホジッチ監督を過剰に擁護する人の代表的な意見は「ハリルホジッチ体制での勝率は高いので解任は間違っている。」、「ハリルJAPANの成績が悪かったというのは明確な誤りである。」という主張である。「ハリルJAPANの成績は芳しくなかった。」と認識している人が多いのでは?と思うが、実際のところはどうなのか?この点を簡単に調べてまとめてみた。
下の表1はジーコJAPAN、オシムJAPAN、岡田JAPAN、原JAPAN、ザックJAPAN、アギーレJAPAN、ハリルJAPANの成績を示している。親善試合も含めた成績になるがハリルJAPANは38試合で21勝8敗9分け。勝率は55.3%で、勝ち点に換算すると1.89となる。勝率に着目すると56.4%のザックJAPANにはわずかに及ばないが52.0%の岡田JAPANや51.4%のジーコJAPANを上回っている。悪くない成績である。
さらに下の表2は公式戦の成績になる。「W杯の本大会」、「W杯のアジア予選」、「コンフェデ」、「アジアカップ」、「アジアカップ予選」、「東アジア選手権」、「E-1 サッカー選手権」の7つが日本代表が大きく関係する公式戦になるがハリルJAPANは24試合で15勝4敗5分け。平均勝ち点は2.08で、勝率は62.5%となる。1試合の平均得点が2.13というのはこの中では1番上。決して恥ずかしくない成績である。
公式戦の平均勝ち点はジーコJAPANは2.03、岡田JAPANは1.97、オシムJAPANは1.91、ザックJAPANは1.69となる。「苦戦することが多かった。」、「なかなか勝てなかった。」という印象もあるが、この表だけを見ると「(超短命に終わったアギーレJAPANを除外すると)最近の代表監督の中では一番上」という風に感じられる。「ハリルホジッチ監督は他の監督と比べて結果を残している。」という主張も一理ある。
表1. 監督別の国際Aマッチの成績 (親善試合も含む。)
| 試合数 | 平均勝ち点 | 勝率 | 勝 | 敗 | 分 | 得点 | 得点 | 失点 | 失点 |
原 | 2 | 3.00 | 100.0% | 2 | 0 | 0 | 3 | 1.50 | 1 | 0.50 |
アギーレ | 10 | 2.00 | 60.0% | 6 | 2 | 2 | 19 | 1.90 | 10 | 1.00 |
オシム | 19 | 2.00 | 57.9% | 11 | 3 | 5 | 34 | 1.79 | 14 | 0.74 |
ハリル | 38 | 1.89 | 55.3% | 21 | 8 | 9 | 84 | 2.21 | 34 | 0.89 |
ザック | 55 | 1.89 | 56.4% | 31 | 13 | 11 | 102 | 1.85 | 62 | 1.13 |
岡田 | 50 | 1.82 | 52.0% | 26 | 11 | 13 | 85 | 1.70 | 43 | 0.86 |
ジーコ | 72 | 1.76 | 51.4% | 37 | 19 | 16 | 114 | 1.58 | 70 | 0.97 |
表2. 監督別の国際Aマッチの成績 (公式戦のみ)
| 試合数 | 平均勝ち点 | 勝率 | 勝 | 敗 | 分 | 得点 | 得点 | 失点 | 失点 |
原 | 0 | - | - | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 0 | - |
アギーレ | 4 | 2.50 | 75.0% | 3 | 0 | 1 | 8 | 2.00 | 1 | 0.25 |
ハリル | 24 | 2.08 | 62.5% | 15 | 4 | 5 | 51 | 2.13 | 16 | 0.67 |
ジーコ | 34 | 2.03 | 61.8% | 21 | 7 | 6 | 60 | 1.76 | 28 | 0.82 |
岡田 | 30 | 1.97 | 56.7% | 17 | 5 | 8 | 51 | 1.70 | 22 | 0.73 |
オシム | 11 | 1.91 | 54.5% | 6 | 2 | 3 | 20 | 1.82 | 9 | 0.82 |
ザック | 29 | 1.69 | 48.3% | 14 | 8 | 7 | 58 | 2.00 | 35 | 1.21 |
2018/04/29 【日本代表】 「ハリルJAPANの勝率が一番高かった。」というのは悪質なミスリードである。 (前編)
2018/04/30 【日本代表】 「ハリルJAPANの勝率が一番高かった。」というのは悪質なミスリードである。 (後編)
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