■ 田村社長の退任は致し方なし8勝20敗6分けで勝ち点はわずか「30」。最後の3試合で名古屋が再失速したことで何とかJ1残留を果たした新潟だったが、勝ち点「30」というのはクラブ史上ワーストの数字となる。2004年にJ1に初昇格してから1度も降格を経験しておらず、J1で14年目のシーズンを迎えることが確定したが、今オフも主力の流出に悩まされている。7位と躍進した2013年を除くとポジティブな話題の少ないシーズンが続いている。
J1の最終節の20日後となる11月23日(水)に新潟市内で2016年シーズンの「アルビレックス新潟サポーターカンファレンス」が開催された。観戦を希望した100人ほどのサポーターが集結。田村社長や神田役強化部長からのシーズン報告や質疑応答などが行われたという。つい先日、このときの議事録等が公式サイトにアップされたので読んでみたが熱心なサポーターから厳しい意見が多く投げかけられたようだ。
思うような結果を残せないシーズンが続いている今の新潟のような状態のクラブになると仕方がないところもあるが、リンク先の議事録等を読むとサポーターが田村社長や神田強化部長に対して強い不信感を抱いており、チームの置かれた状況に強い危機感を感じていることはよく伝わってくる。田村社長は成績不振等の責任を取って今シーズン限りで社長職を退くことが決まっているが「致し方なし」と言えるだろう。
<事前に受け付けた質問とクラブからの回答> <議事録> <1.ミーティング資料> <2.2015年度Jクラブ個別情報開示資料> <3.2016年活動内容紹介資料>
■ 4万人時代を引きずるアルビレックス新潟サポーターカンファレンスは時間的には2時間半ほどだったと言う。これだけの長時間になると議事録等の全てを読むだけでも一苦労であるが、読み終わった今、率直な感想を述べると「今の新潟はかなり危ない。」と言わざる得ない。今オフは名古屋と横浜FMという名門2チームのフロントの不手際が何度もメディアで報じられているが、サポーターとフロントの溝の大きさという意味でも新潟も負けてはいない。
新潟というとJ2だった2003年に平均観客動員数で3万人を超えるなど観客動員数の多さと熱狂的なサポーターの多さで知られているクラブである。「サポーターがクラブを育ててきた典型例」と言えるが、近年は観客動員数が激減している。2005年は40,114人だったが、2016年は21,181人まで減少。直近の11年間で前年の平均値を上回ったのは2013年のみ。その他の10シーズンはいずれも数字がダウンしている。
田村社長が就任したのは2009年なので「ホーム戦の観客動員数の減少に歯止めをかけることが出来なかった。」というのは最も批判されるポイントになるが、感じたことを率直に述べると「フロントもサポーターも4万人時代を引きずり過ぎている。」となる。平均4万人を超えた経験があるのはJリーグでは浦和と新潟だけ。素晴らしい動員力であり、誇るべき功績であるが、これがネガティブに作用している感は否めない。
もちろん、「もう一度、あのような雰囲気でホーム戦を開催したい。」と願う気持ちはよく分かるが、現実的には21,181人まで落ちたところから40,114人まで引き戻すのは至難の業である。当然、ちゃんとした理由があっての4万人だったと思うが、平均2万人でもJ1の中では上位クラスの数字である。「4万人時代はバブル期だった。」と考えてフロントもサポーターもひとまず忘れてしまった方がいいのではないかと思う。
■ 伝わりにくいJ1に居続けることの凄さ質疑応答の中で気になったのはサポカンにやってくるような熱心なサポーターですら、現実が良く見えていない人が少なくない点である。(逆にこの場に足を運ぼうとする人だからこそ、余計にそうなってしまうのかもしれないが・・・。)低迷の理由をフロントに問う人が多かったが、近年の成績を書き出すと2011年が14位、2012年が15位、2013年が7位、2014年が12位、2015年が15位、2016年も15位である。
ここ数年の新潟は開幕前の評価はあまり高くないが、前評価どおりに残留争いに巻き込まれるケースがほとんどである。結局のところ、今の新潟はポジティブな要素がいくつも重ならない限りは残留争いに巻き込まれる可能性が高いクラブであり、「残留争いに巻き込まれずに済んだら御の字」と言わなければいけない立ち位置である。「上位争いや中位争いに参加できないのはおかしい。」と言える立場ではない。
ただ、考えてみるとJ1の18クラブの中で「J2降格」を経験していないのは鹿島・横浜FM・新潟・鳥栖の4チームのみ。浦和やFC東京やG大阪や川崎Fや広島などはJ2降格を経験している。もちろん、「降格経験がない。」というのはクラブにとっては幸せなことであるが、逆に言うと「J1に居続けることの凄さ」がサポーターや一般的な新潟県民には伝わりにくくなる。降格経験がないことで生じる負の側面と言える。
J1からJ2に降格するときの悔しさや辛さ、J2で勝利を重ねてJ1昇格を勝ち取るまでの過程の大変さというのは実際に経験して見ないと実感できない部分である。ざっと議事録等を読む限りでは『社長や強化部長などフロントの人たちは自分たちの立ち位置をまずまず正確に把握して堅実な仕事をしているが、一部の熱心なサポーター(特に年配のサポーター)は現実を理解しておらず、夢を見がちである。』と言わざる得ない。
■ 次期社長や次期監督に求められるのは・・・。田村社長の退任は決定しているので新しい社長の下、新シーズンを戦うことになるが、新潟の置かれた状況を考えると社長が交代したくらいでは大きな変化は生まれないだろう。むしろ、ここまでのオフの動きを見ていると社長交代がマイナスに作用することも十分にあり得る。『最悪の社長だったので社長が交代したら何もかもが良くなる。」とは考えにくい。近年の状況が底の底ではないことも普通に考えられる。
昨オフと同様で今オフも監督探しで苦労しているが今の新潟の監督を引き受けるのはリスキーである。もちろん、「フロントの不手際」も交渉が難航する理由の1つなのかもしれないが『下位に沈むシーズンが続いているクラブでありながら残留を果たすだけでは全く満足されない。』という状況である。口説き落とすことが出来るのは他クラブを率いたときの評価が芳しくなくて一発大逆転を狙っている指導者くらいである。
次期社長がどういうキャラクターの人物なのか?は分からないが、今の新潟に必要なのはクラブの置かれた状況をしっかりと把握した上でサポーターやメディアにそのことをちゃんと説明できる人だと思う。当然のことながら、サポーターやメディアにクラブの立ち位置を十分に理解してもらうためには説得力が必要で、魅力的なパーソナリティを持つ人物であることは必須の条件となる。極めて難しい仕事になる。
結局、近年の新潟が苦しみながらも何とかJ1に残留できているのはフロントの(やや極端なほどの)現実路線が理由の1つだと思うが、夢見がちな一部のサポーターは「夢を見ることが出来なくなった。」と批判的である。今後もJ1に居続けるためにはクラブとして現実路線をさらに推し進めるしかないと思うがそれでは満足しない人(or 出来ない人)がたくさんいる。相当に難しいチーム状態であり、手詰まり感すら感じられる。
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