■ 決勝の相手は宿敵の韓国代表ついに迎えたU-23アジア選手権の決勝戦。対戦相手は宿命のライバルの韓国代表。韓国は準決勝で開催国のカタールに3対1で勝利して8大会連続となる五輪出場を決めたが22番のFWクォン・チャンフンの勝ち越しゴールが決まったのは後半44分だった。後半34分にカタールのエースのFWアラディンが同点ゴールを決めた後はカタールが圧倒的に優勢だったのでイラク戦の日本以上に苦しい中で切符を勝ち取った。
日本は「4-2-2-2」。GK櫛引(鹿島)。DF室屋(明治大)、DF岩波(神戸)、DF植田直(鹿島)、DF山中(柏)。MF大島僚(川崎F)、MF遠藤航(浦和)、MF矢島慎(岡山)、MF中島翔(FC東京)。FWオナイウ阿道(千葉)、FW久保裕(ヤングボーイズ)。怪我のFW鈴木武蔵(新潟)は出場不可。MF南野(ザルツブルク)は所属クラブに戻ったため攻撃陣はやや手薄である。DF岩波、MF大島僚、MF矢島慎、FWオナイウ阿道がスタメン復帰。
対する韓国は「4-1-4-1」。GKキム・ドンジン。DFイ・スルチャン、DFヨン・ジェミン、DF宋株熏、DFシム・サンミン。MFパク・ヨンウ、MFムン・チャンジン、MFイ・チャンミン、MFクォン・チャンフン、MFリュ・スンウ。FWチン・ソンウク。2015年はJ2の水戸でプレーした長身のDF宋株熏はCBでスタメン出場。札幌の守護神で195センチの大型キーパーのGKク・ソンユンはベンチスタートとなった。
■ 劇的すぎる展開でアジア王者に・・・。試合の入り方自体は決して悪くなかった日本だったが時間が経つにつれて中盤でのミスが増えて韓国に主導権を握られる展開になる。前半20分に右サイドから逆サイドに大きく展開されると左SBのDFシム・サンミンのクロスをCFのFWチン・ソンウクが落としたボールをMFクォン・チャンフンが決めて韓国が先制に成功する。MFクォン・チャンフンは今大会5ゴール目となった。前半は1対0と韓国がリードして折り返す。
迎えた後半開始から日本はFWオナイウ阿道を下げてMF原川を投入。「4-1-2-3」に変更して修正を図るが開始早々の後半2分に素早いパスワークに翻弄されると最後は1トップのFWチン・ソンウクに反転から決められて痛すぎる2失点目を喫する。FWチン・ソンウクは1ゴール1アシストの活躍だった。その後は余裕の出てきた韓国が試合を支配する。何度か「試合を決める3点目のゴール」を奪うチャンスが訪れる。
しかしGK櫛引を中心に瀬戸際のところで踏ん張って0対2のスコアを維持すると後半15分にMF大島僚を下げてFW浅野拓を投入。切り札にすべてをかけると後半22分にMF矢島慎のスルーパスから裏に抜け出したFW浅野拓が決めて1点差に迫る。FW浅野拓は今大会初ゴールとなった。さらに直後の後半23分には左SBのDF山中のクロスからMF矢島慎がヘディングシュートを決めてあっという間に2対2の同点に追いつく。
韓国は後半32分に190センチのFWキム・ヒョンを投入。勝負に出るが流れを変えることはできず。後半36分にMF遠藤航のシュートブロックからカウンター。MF中島翔のパスを受けたFW浅野拓が相手をブロックしながらキーパーと1対1のチャンスを得ると左足で確実に決めて3対2と逆転に成功する。結局、0対2から3ゴールを奪った手倉森JAPANが劇的な大逆転勝利。見事にアジアチャンピオンに輝いた。
■ 力のある好チームだった韓国代表正直なところ韓国は強かった。韓国は銅メダルに輝いたロンドン世代が「黄金世代」と言われており実力者が多かったが、リオ世代はやや小粒。「突出した選手はいない。」という印象だったが組織力は大会ナンバーワンだった。最終局面でテンポよくボールを回してチャンスを作る場面がグループリーグのころから目立っていたので「そこをしっかりと対応できるか?」がカギだったが翻弄される場面が多かった。
感覚的には「手倉森JAPANと韓国の五輪代表が10試合戦ったら3勝5敗2分け」くらいの成績になると思う。当然、大きな差があるわけではないが諸々の要素を加味すると直接対決では韓国の方がやや優利である。韓国も前半のシュートは3本だけだったので多くのチャンスを作れていたわけではないが幸運な形から先制ゴールをマーク。後半2分に追加点のゴールを奪うことができたので完全な勝ちパターンだった。
「0対2のスコアになった後、どちらが先に奪うことができるか?」がカギだったが、見てのとおりで韓国が3点目を奪う可能性の方が高かった。かなり厳しい流れになったので「0対4くらいのスコアで敗れていても不思議はない。」という展開になっていた。とどめを刺せなかったことが響いた韓国にとってはとてつもなく悔いの残る試合になった。韓国は五輪のアジア予選での無敗記録がついに「34」でストップした。
■ ヒーローの1人はMF矢島慎也日本は大敗する可能性も小さくなかった展開だったが奇跡的な逆転勝利でアジア王者に輝いた。「強力なCBコンビを軸に粘り強い戦いができること」が手倉森JAPANの大きな特徴であり最大のストロングポイントと言えるが0対2になった後も決して諦めることはなかった。日本時間では夜遅くのキックオフだったので0対2になった時点で寝てしまった人は多かったと思うがそういう人達を大いに後悔させる展開になった。
立役者になったのは1ゴール1アシストのMF矢島慎、途中出場で2ゴールのFW浅野拓の2人で間違いない。後半22分の1点目のゴールは高い位置でボールを奪ったあと、ショートカウンターからゴールをもぎ取った。少ない人数で攻めざる得ない中、最高のパスがFW浅野拓に通った。当然のことながら確実に決めたFW浅野拓も見事だったが「MF矢島慎の1本のスルーパス」が試合の流れを大きく変えた。
1点差に追い上げた直後の後半23分にMF矢島慎のヘディングで同点に追いつくことができたが「すぐに追いつけたこと」も大きかった。あっさりとボールを奪い返して左SBのDF山中がドリブルで仕掛けてから最高のクロスを送ったが韓国の選手が平常心を取り戻す前に連続ゴールを奪うことができた。「2対0のスコアがもっとも危険」と言われることが多いがこうなると追いついた側の日本が圧倒的に有利である。
後半36分のFW浅野拓のゴールも見事だった。MF遠藤航のシュートブロックから攻撃がスタートしているが休むことなくMF遠藤航がスプリントをして勢いよく攻撃に絡んだことがきっかけになった。MF遠藤航にボールが戻ってくることはなかったが「隠れたファインプレーだった。」と言える。突出した走力で2014年のJ2を席巻して昇格1年目の2015年はJ1でも存在感を発揮した湘南で揉まれただけのことはある。
■ 最高の切り札を持っていた手倉森JAPANMF矢島慎の活躍も称えられるべきで、この日もハイボールに対して抜群の強さを見せたDF植田直、途中出場で流れを少しだけ日本側に引き込む助けになったMF原川、好セーブで3失点目を阻止した守護神のGK櫛引、主に守備面で奮闘した右SBのDF室屋、後半の終了間際の時間稼ぎがとにかく巧みだった途中出場のMF豊川あたりの活躍も目立ったが、この試合に関してはFW浅野拓である。FW浅野拓に尽きる。
0対2のスコアで敗色濃厚だった。とどめを刺される可能性の方が高い状況だった。「何とかしてほしい。」、「何かできるのはFW浅野拓しかいない。」という状況でピッチに送り出されたが、ほとんどの人が期待していた以上のパフォーマンスを見せた。「韓国は後半の半ば以降は足が止まる傾向にあるので途中出場のFW浅野拓は効きそうだ。」というのは試合前から分かっていたがそれでも予想以上だった。
決して動き自体は悪くなかったと思うが準決勝を終えた時点でノーゴール。イラク戦では後半48分のMF原川のゴールの起点になっているので「FW浅野拓の状態が良くない。」という意見には賛同できなかったがなにぶん期待値の高い選手である。国民の大きな期待に応える働きができていないのは明らかだったが全てが「決勝戦で大爆発することの前フリだった。」と言えるほどの圧巻のパフォーマンスだった。
大一番でこれだけのプレーができたことは大きな自信になったと思うが彼に関しては「一日でも早くフル代表に定着すること」が期待される。昨年の8月に行われた東アジアカップで代表デビューを飾ったがこのときは主に右サイドで起用されたこともあって不発。持ち味を全く出せなかったがフル代表でもジョーカーになれる選手であり、当然のことながら、「フル代表でのスタメン確保」というのも決して不可能ではない。
いずれにしてもここで手倉森JAPANがアジアチャンピオンに輝いた意味は大きい。2014年のブラジルW杯から続く「日本サッカー界の悪い流れ」を完全に断ち切ることができただけでなく、フル代表の主力選手にも大きな刺激になるはずで、今大会のメンバーには選ばれていない23歳以下の選手の大きなモチベーションになるのも確実。試合を重ねるごとに着実に成長して前進するチームは見ていて非常に面白かった。
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