■ 福井県出身のサッカー選手は珍しい・・・。東アジアカップに出場しているなでしこジャパンは国際経験の少ない選手が中心となっているが、フォワードの一角でスタメン出場しているのが福井県坂井市丸岡町出身のFW有町紗央里である。昨シーズンまでは岡山湯郷Belleでプレーしていたが、昨オフにベガルタ仙台レディースに移籍した。2013年に国際Aマッチ初出場を果たしているが、東アジアカップの初戦の北朝鮮戦が日本代表としては2試合目の出場だった。
「サッカー不毛の地」と言われた経験のある都道府県は少なくないが、福井県はその中でも屈指の「サッカー不毛の地」と言える。『福井出身のJリーガー』の名前を1人でも挙げることが出来る人はかなりのサッカー通である。(※ Jリーグである程度以上の出場機会を得ることが出来たのは元大宮のFW/DF奥野、元大宮のMF橋本早、元山形のDF鷲田、元富山のFW長谷川くらい。トータルで10人に満たないレベルである。)
なので、東アジアカップ2015におけるFW有町の代表選出ならびにスタメン出場というのは福井のサッカー界にとってはかなりの出来事と言える。「(Jリーグが誕生する前の時代も含めて)福井県出身の男子の日本代表選手はいたのか?」というのは気になるところで、「そもそもとして代表選手を数多く輩出している都道府県はどこなのか?」も気になるところである。今回は「男子の日本代表選手の出身地」に着目してみた。
■ きちんとした資料が残っていない国際Aマッチの記録最初に断わっておく必要があるが、国際Aマッチの出場記録というのはきちんとした資料が残っていない。もちろん、最近の男女の代表戦の結果ならびにメンバーは簡単に確認できるが、戦前の試合になるとメンバーすら、よく分かっていない試合もある。(※ 男子サッカーの初めての国際Aマッチは1917年5月9日の中国戦だった。中には「本当に国際Aマッチの条件を満たした試合なのか?」がはっきりしないケースもある。)
したがって、きちんと調べようとしても正確なデータに仕上げるのは不可能である。なので、どこまで信頼できる数字なのか?ははっきりしないところもあるが、ここではWikipediaにある「サッカー日本代表出場選手」の数字を全面的に信頼して話を進めたいと思う。なお、ここから扱っていく数字は今年6月に行われたロシアW杯のアジア予選のシンガポール戦(H)までの数字で、東アジアカップ2015の数字は含まれない。
まずは国際Aマッチの出場試合数のランキングである。ある程度以上の年齢の人には自明の話であるが、Jリーグが始まる前というのは欧州や南米のクラブチームと強化試合を行うことが多かった。そういうときは当然のことながら国際Aマッチにはカウントされないので、昔の選手は圧倒的に不利である。表1を見ると一目瞭然。上位に名を連ねるのはほとんどが最近の選手である。この中で100試合をオーバーしているのは4人。
表1. 国際Aマッチの出場試合数のランキング (1位から30位まで)
| 名前 | 出場数 | 得点数 | 出身県 | 期間 | ポジション |
1 | 遠藤保仁 | 152 | 15 | 鹿児島 | 2002.11.20-2015.01.23 | MF |
2 | 井原正巳 | 122 | 5 | 滋賀 | 1988.01.27-1999.07.05 | DF |
3 | 川口能活 | 116 | 0 | 静岡 | 1997.02.13-2008.11.19 | GK |
4 | 中澤佑二 | 110 | 17 | 埼玉 | 1999.09.08-2010.09.04 | DF |
5 | 中村俊輔 | 98 | 24 | 神奈川 | 2000.02.13-2010.06.19 | MF |
6 | 岡崎慎司 | 93 | 44 | 兵庫 | 2008.10.09-2015.06.16 | FW, MF |
7 | 長谷部誠 | 90 | 2 | 静岡 | 2006.02.10-2015.06.16 | MF |
8 | 三浦知良 | 89 | 55 | 静岡 | 1990.09.26-2000.06.06 | FW |
9 | 今野泰幸 | 87 | 2 | 宮城 | 2005.08.03-2015.03.31 | MF, DF |
10 | 三都主アレサンドロ | 82 | 7 | ブラジル | 2002.03.21-2006.11.15 | MF, DF |
10 | 稲本潤一 | 82 | 5 | 大阪 | 2000.02.05-2010.06.24 | MF |
12 | 長友佑都 | 81 | 3 | 愛媛 | 2008.05.24-2015.06.11 | DF |
13 | 駒野友一 | 78 | 1 | 和歌山 | 2005.08.03-2013.08.14 | DF |
13 | 都並敏史 | 78 | 2 | 東京 | 1980.12.22-1995.02.21 | DF |
15 | 中田英寿 | 77 | 11 | 山梨 | 1997.05.21-2006.06.22 | MF |
15 | 楢崎正剛 | 77 | 0 | 奈良 | 1998.02.15-2010.09.07 | GK |
17 | 釜本邦茂 | 76 | 75 | 京都 | 1964.03.03-1977.06.15 | FW |
18 | 原博実 | 75 | 37 | 栃木 | 1978.11.19-1988.10.26 | FW |
19 | 内田篤人 | 74 | 2 | 静岡 | 2008.01.26-2015.03.31 | DF |
20 | 本田圭佑 | 73 | 29 | 大阪 | 2008.06.22-2015.06.16 | FW, MF |
21 | 玉田圭司 | 72 | 16 | 千葉 | 2004.03.31-2010.06.29 | FW, MF |
21 | 柱谷哲二 | 72 | 6 | 京都 | 1988.01.27-1995.10.28 | DF |
23 | 香川真司 | 71 | 20 | 兵庫 | 2008.05.24-2015.06.16 | FW, MF |
23 | 川島永嗣 | 71 | 0 | 埼玉 | 2008.02.17-2015.06.16 | GK |
23 | 宮本恒靖 | 71 | 3 | 大阪 | 2000.06.18-2006.06.18 | DF |
26 | 永井良和 | 69 | 9 | 埼玉 | 1971.08.13-1980.03.30 | FW |
27 | 中村憲剛 | 68 | 6 | 東京 | 2006.10.04-2013.06.22 | MF |
27 | 名波浩 | 67 | 9 | 静岡 | 1995.08.06-2001.04.25 | MF |
29 | 前田秀樹 | 65 | 11 | 京都 | 1975.08.04-1984.04.26 | MF |
29 | 藤島信雄 | 65 | 7 | 秋田 | 1971.09.29-1979.08.23 | MF |
■ 「試合数」と「人数」と「ゴール数」で他を圧倒している静岡県男子の国際Aマッチに出場した経験があるのは全部で528人。ただ、その中の何人かは出身の都道府県がはっきりしない。(戦前の選手になると名前の呼び方すら正確には分からない選手もいるほど。)なので、残念ながらそういう選手は除外しているが、男子の日本代表選手の出身都道府県を調べてまとめたのが表2である。通算試合数の多かった都道府県から順番に並べているが、1位はやはり静岡県で1,445試合だった。
2位の広島県が666試合なので倍以上。ちなみに静岡県は「試合数」だけでなく「国際Aマッチ出場経験のある人数」と「ゴール数」も都道府県別で第1位。「さすがはサッカー王国」と言えるだけの数字を残している。静岡県出身者の中でもっとも試合数が多いのはFC岐阜でプレーするGK川口で116試合。2位はMF長谷部で90試合、3位はFW三浦知で89試合、4位はDF内田篤で74試合、5位はMF名波で67試合だった。
他に国際Aマッチ出場が50試合を超えているのはDF相馬、DF堀池、FW高原、FW杉山、MF小野伸、FW中山。ということで50試合オーバーは全部で11人。静岡県出身の選手でゴール数が最も多かったのはFW三浦知で55ゴール。FW中山とFW高原も20ゴールを超えており、FW杉山、FW碓井、FW西澤の3人も二桁ゴールをクリアしている。不動のレギュラーとして長きに渡って代表チームを支えたレジェンドがたくさんいる。
表2. 男子の日本代表選手の出身の都道府県別のランキング (1位から20位まで)
順位 | 都道府県名 | 人数 | 試合数 | 得点数 |
1 | 静岡 | 68 | 1,445 | 192 |
2 | 広島 | 45 | 666 | 110 |
3 | 埼玉 | 28 | 635 | 55 |
4 | 東京 | 42 | 526 | 32 |
5 | 大阪 | 29 | 521 | 62 |
6 | 兵庫 | 30 | 488 | 103 |
7 | 京都 | 18 | 382 | 108 |
8 | 神奈川 | 25 | 358 | 55 |
9 | 千葉 | 16 | 266 | 21 |
10 | 長崎 | 12 | 240 | 42 |
11 | 栃木 | 11 | 234 | 51 |
12 | (ブラジル) | 7 | 228 | 28 |
13 | 滋賀 | 6 | 214 | 9 |
14 | 鹿児島 | 4 | 188 | 22 |
15 | 福岡 | 10 | 175 | 27 |
16 | 秋田 | 5 | 174 | 17 |
17 | 茨城 | 8 | 167 | 18 |
17 | 群馬 | 7 | 167 | 8 |
19 | 宮城 | 2 | 148 | 8 |
20 | 愛媛 | 3 | 147 | 11 |
■ 1位の静岡県、2位の広島県に続くのは・・・。「静岡に続くのはどの都道府県なのか?」というと、先のとおり、広島県だった。「試合数」だけでなく「人数」と「ゴール数」も静岡県に次ぐ第2位。最近ではあまり用いられなくなったが、20年ほどまでは「静岡・埼玉・広島の3つがサッカー御三家」と言われていた。御三家の面目躍如と言える。1990年代から2000年代に活躍したのがC大阪のMF森島。最近ではDF槙野、DF森重、FW永井謙などが日本代表に召集されている。
試合数の3位は埼玉県。何だかんだで「御三家」は多くの日本代表選手を輩出している。4位は東京都で、5位は大阪府で、6位は兵庫県で、7位は京都府で、8位は神奈川県で、9位は千葉県で、10位は長崎県。この中では10位の長崎がやや意外に感じるが、DF吉田麻、FW高木琢、MF森保、DF勝矢、GK前川などがかなりのキャップ数を稼いでいる。「アジアの大砲」のFW高木琢がいることもあって得点数は9位だった。
この中では数名の選手だけで大量に数字を稼いでいるところがいくつかある。20位にランクされた愛媛県はその1つで、DF長友が81試合で、MF福西が64試合。(あとの1人はFW川又で2試合。)19位の宮城県はDF加藤久とMF今野の2人だけで148試合のキャップ数がある。14位の鹿児島県はG大阪のMF遠藤が1人で152試合を稼いでいるが、2位はMF前園で19試合、3位はFW大迫で15試合、4位がFW平瀬で2試合だった。
ゴール数で健闘しているのは栃木県。51ゴールは第8位。那須塩原市出身のFW原博美が37ゴールを挙げている。東京都は32ゴールで第10位。東京都出身の選手でもっとも多くのゴールを決めているのは川崎FのMF中村憲。マインツに移籍したFW武藤嘉が東京都出身者の最多ゴーラーになるのは確実か。ゴール数では広島県と京都府と兵庫県の3つが僅差で2位争いをしているが、FW岡崎慎とMF香川のいる兵庫県が現状は有利。
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