■ おおむね順当な選考怪我の癒えたGK西川(大分)の復帰がならなかったこと、Jリーグで9得点を挙げたMF枝村(清水)が選考外だったこと、アジア大会で可能性を示した右SDFの辻尾(中央大学)が選考漏れしたこと、FW森島(C大阪)の抜擢が予想外であったが、おおむね、順当な選考だといえる。
楽しみなのは、内田(鹿島)。もっとも人材の乏しい右SDFで、戦線離脱中の中村(福岡)の代わりとしてどの程度のパフォーマンスができるのか注目したい。
■ 反町監督のチームつくり2006年度は、勝負よりも発掘に勤しんだ感のある反町ジャパン。なかなか定まらないメンバーに批判の声もあったが、チーム発足の初年度は、いろいろな選手を試してみることが大事であり、アジア大会で結果はでなかったが方向性は特に間違ってはいなかった。
もともと、このチームは枝葉がしっかりしていて、ベストメンバーはこれだという構想がある程度出来上がっていたからこそ、反町監督も大胆なテストを行うことができたように思う。一柳(東京V)、青山(広島)、増田(鹿島)らの選出は、その成果といえるだろう。今でこそ、このチームに呼ばれても当たり前の雰囲気をかもし出すものの、初戦の中国戦からずっとベストのメンバーを召集して戦っていたら、おそらく、この3人は今回、選出されなかったのではないだろうか?
■ 前線の核は平山相太このチームの成績が平山の活躍にかかっているのは、ユース時代から続く伝統である。彼には、高さという明確な武器があるため、ロングボールが多くなるが、これは致し方ない。「中盤至上主義=テクニック至上主義」の人の中には、「ロングボール=単調な攻撃=悪」という公式があるようだが、これは硬直した考えであり、平山が前線で高い確率で競り勝てるのであれば、ロングボール、もっというと、放り込み主体となってもいっこうにかまわない。攻撃のときに大事なのは、いかにしてきれいに崩すかではなくて、いかにして多くのチャンスを生み出すかであるから。
もちろん、そのためには、平山が前線でシャープに動いてチャンスを演出し続けなければならない。好調を伝えられる平山が、五輪代表でどんなプレーを見せるのだろうか、楽しみに待ちたい。
■ 中盤の構成は?多彩な人材がそろう中盤は、多様な組み合わせが考えられる。昨年は、増田(鹿島)・梶山(FC東京)・青山(広島)・本田圭(名古屋)がレギュラー格だったが、この4人に、アジア大会で活躍した谷口(川崎)と、韓国戦での活躍が印象に残る水野(千葉)と、天性の才能をもつドリブラーである家長(G大阪)と、ジュビロでの活躍が目覚しい上田(磐田)もレギュラー候補といえるだろう。
個人的には、<4-5-1>の平山1トップであれば、増田・梶山・水野・本田圭・青山の組み合わせが現時点でベストであるように思えるが、谷口・家長・上田も捨てがたい。中盤については、好みの問題であり、反町監督の考え方次第だろう。
■ 水本と青山が中心のDF陣CBのスタメンが水本と青山直の二人に落ち着くことは容易に想像できる。ともに身体能力に優れており、アジアレベルであれば、なんら問題はないだろう。伊野波のユーティリティ性や福元のDF能力も魅力的ではあるが、水本と青山の二人が現時点では飛びぬけている状況である。
サイドバックについては、右サイドが前述の内田が有力で、左サイドは伊野波のほかに、家長(G大阪)、本田(名古屋)、上田(磐田)の3人がチームで経験済みで、ともに守備面での不安は隠せないが、それを補って余りあるほどの攻撃的センスを兼ね備えている。しっかりとしたビルドアップを行うためにも、この3人の誰かを左サイドバックに置くことは有効である。
■ 不安な西川の穴現状では、西川の実力が飛びぬけているため、西川不在の影響は隠し切れない。アジア大会では、松井(磐田)も奮闘したが、DF人との連携ミスもあって、全幅の信頼を置くことはできなかった。
西川の怪我の具合は良好だと聞くが、今回は選考されていない。GKというポジションは特殊であり、西川とほかのGKとの間の実力差は思っているほど大きくはないのかもしれないが、周りの選手やサポーターに与える安心感は、西川とほかのGKでは比べようもない。実力差以上に不安なポジションである。
■ 代表入りが期待される選手は?主要メンバーは固まった感のある反町ジャパンだが、必ず、今、メンバーに選ばれていない選手のなかから、本大会ではレギュラーを勝ち取る選手が出てくるだろう。注目選手をピックアップする。
○乾貴士(横浜FM)滋賀県の予選と年末年始の高校サッカー選手権を見て、なぜ、彼が昨年、五輪代表に飛び級で選考されたかが、よく分かった。彼は、高質なテクニックとイマジネーションをもったすばらしい選手であるが、野洲高校ではお山の大将であり、野洲の流動的でセクシーなサッカーのなかでは、むしろ足かせであるように思えた。”バルデラマ”という表現は大袈裟ではない。
せっかくの才能が、このような状況でうぬぼれてしまうのは忍びないということで、新たな刺激を与える意味での異例の五輪代表への抜擢だったと思う。そして、事実、五輪代表では、すばらしいパフォーマンスを見せて才能の片鱗を見せた。彼は、周りの選手のレベルが高くなればなるほど、輝くことができる選手である。切り札としての起用は面白い。
○柏木陽介 (広島)ユース代表の中心選手である柏木が、五輪代表に選出されてもなんら不思議ではないが、中盤の層の厚さが原因なのか、今回も召集されなかった。とはいっても、いずれ、柏木も、五輪代表に加わって活躍するときがくるだろう。
北京五輪代表チームは、かつてないほど、サイドアタッカーが充実していて、ボランチも充実しているが、トップ下の位置は、やや層が薄い。鹿島のMF増田の活躍が印象に残ったが、ドリブルとパスで変化をつけられるアタッカーが不足気味である。そんな中では、梅崎(グルノーブル)と並んで、うってつけの存在である。
○李忠成(柏)代表メンバーの発表と同じ日いう狙ったようなタイミングでの日本国籍取得となった李忠成。昨シーズン、柏の試合は、5試合ほどしか見ていないので、それほど多くの情報を持っているわけではないが、非常に素質のある優秀なフォワードであることは間違いない、180cm強ということで高さも備えるが、持ち味は動きの多さと高い身体能力から生み出されるダイナミックなプレーだろう。
帰化が認められたということで、当然のように代表候補に入ってくるだろう。そして、代表に入ってもおかしくない潜在能力を持った選手であることに疑いの余地はない。イメージでは、平山相太と2トップを組めば、補完性のある魅力的な2トップになると思われる。おそらく、無責任なメディアは、李について韓国代表ではなく日本代表を選んだという特異性も加わって、「北京五輪代表の救世主」的な取り上げ方をするだろう。しかしながら、過剰な期待は禁物であり、またそれは、彼には気の毒である。
- 関連記事
-