■ 注目度ナンバー1のG大阪J2は、甲府と湘南と大分と町田の4チームが抜けて、神戸とG大阪と札幌と長崎の4チームが加わった。チーム数は「22」で変わらないが、J1経験が豊富な神戸とG大阪が参戦してくるので、かつてないほどの豪華さで、現役の日本代表が2人もいることもあって、注目度は過去最高と言えるだろう。
J2の場合、補強に関しても、J1のクラブが落ち着かないと、本格的な交渉に入っていくことができないので、例年、J1のクラブの流れが落ち着いてから、続々とinのニュースが聞こえてくるが、今年も年が明けてから、各チームが精力的な動きを見せて、驚くような移籍もいくつかあった。
まず、注目度ナンバー1のG大阪は、MF倉田、MF家長、DF藤春らに流出の噂があったが、残留が濃厚となった。さらには、DF岩下の完全移籍での獲得も決まって、レギュラークラスで流出したのは、川崎Fに移籍するDF中澤だけ。ということで、2012年の終盤のメンバーとほとんど同じ顔ぶれで開幕を迎えることになるだろう。
今後、チームを支えていく年代のMF倉田、MF家長、DF藤春の慰留に成功したのは、非常に大きいが、J2降格の要因の1つとなった高齢化に歯止めをかけることはできず、根本的な問題は解消されていない。DF中澤以外の主力をすべて引き留めたことが、果たして良かったのか。個人的には「No」だと思う。
■ 降格組の神戸と札幌対照的なのは、同じ降格組の神戸である。主力のFW大久保、MF野沢、DF伊野波が退団して、DF高木も大分に移籍することになった。MF野沢とDF伊野波とDF高木に関しては、1年前、補強の目玉としてチームに加わってきた選手なので、わずか1年でチームを去ることになった。
ただ、彼らと1年契約を結んでいることは考えにくく、いずれのケースも、ある程度の移籍金を得ていると思われる。また、同ポジションには、MF小川、MF森岡、MF松村、DF岩波と超・有望株が控えているので、戦力的なダメージも大きくは無い。むしろ、将来のことを考えると、プラスとも考えられる。
出場機会を得るのが難しいと思われるGK山本海(清水)とFW有田(愛媛FC)を加入させたのはやや疑問に思うが、「放出しても大丈夫な選手」と「絶対に残さなければならない選手」の見極めは確かで、MFエステバンの獲得も含めて、今オフに話を限定すると、フロントの仕事ぶりは、高く評価できる。
同じく降格組の札幌は、資金難もあって、GK高原、DF岩沼、MF高木純、MF近藤など、主力級の選手の多くがチームを離れることになったが、仕方がないことである。今年もユースから6人の選手がトップチームに昇格しているが、有望な選手が多いので、若手を起用しやすい環境が整ったことを、プラスに考えたいところである。
■ 意欲的な動きを見せる鳥取それ以外のチームで効果的な補強ができたと思うのは、鳥取、愛媛FC、長崎の3チームである。2012年は20位に終わった鳥取は、オフにMF美尾、DF水本、DF加藤、MF小井手、FW福井など、主力級の選手の多くと契約を更新せず、血の入れ替えを図ったが、FW岡本(水戸)、MF永里(甲府)、MF横竹(広島)、DF武田(千葉)、GK嘉味田(神戸)を獲得するなど、意欲的な姿勢を見せている。
言うまでもなく、42試合で33得点とリーグワースト3位だった得点力不足の解消が大きなテーマとなるが、2012年も18試合で8ゴールと結果を残したFW岡本の獲得に成功したのは、何よりも大きい。質の部分では申し分ないが、量の部分ではまだ不足しているので、もう少し駒を増やしたいところであるが、充実した補強はできている。
同様に愛媛FCも意欲的である。バルバリッチ監督が退任して、石丸監督が就任したが、MF伊藤(京都)、FW重松(甲府)、MF松本翔(横浜FM)というポテンシャルの高いアタッカーをレンタルで獲得した。経験豊富なMF吉村(名古屋)とDF小原(福岡)の獲得も効果的で、バランスの取れた的確な補強ができている。
昇格組の長崎の補強もなかなかである。2012年にFC岐阜で10ゴールを挙げたFW佐藤洸を獲得し、さらには、リオ世代の有望株のMF幸野の加入も決定した。MF幸野は2012年の後半戦は町田でプレーしたが、随所にポテンシャルの高さを示した。長崎で大ブレークしてもおかしくない逸材である。DF高杉(愛媛FC)やDF山口(湘南)の獲得もなかなかで、1年目としては、かなり頑張ったと言える。
■ 攻撃力アップの岡山他には、栃木SC、岡山、徳島の3チームも、弱点を補う補強ができている。松田監督になって5年目の栃木SCは、打開力のあるアタッカーを必要としていたが、FW勝又(町田)とMF近藤(札幌)の獲得に成功した。元日本代表のMF三都主は衰えが目立つので、フル稼働は難しいと思うが、キックの精度の高さは健在なので、うまく使えば、有効なカードになるだろう。
栃木SCと同じ年にJ2に昇格してきた岡山は、リーグ2位タイの18ゴールを挙げたFW川又の代役探しが大きなテーマになっていたが、千葉のFW荒田の獲得に成功し、2列目もMF押谷(磐田)とMF鈴木崇(町田)の加入で層が厚くなった。ここまでのところ、42試合で34失点でリーグ2位だった守備陣の流出はないので、守備力はそのままで、攻撃のスケールアップに成功した。
2012年は15位と低迷した徳島は、小林監督になって2年目のシーズンとなるが、FW高崎(甲府)、MF柴崎(東京V)、DF千代反田(磐田)、GK松井(C大阪)を獲得し、センターラインの要になりうる選手の獲得に成功した。枝葉になれる選手はたくさんいるので、幹になれる選手を補強できたことで、チーム力アップは確実と言える。
■ 入れ替わりの激しい東京V元日本代表の三浦監督が就任した東京Vは、入れ替わりの激しいオフとなった。若手有望株のDF高橋、MF梶川、DF和田が移籍し、エースのFW阿部も流出する可能性があるため、主力の半数程度が退団することも考えられるが、その一方で、FW高原(清水)、MF鈴木惇(福岡)、MF石神(大分)、MF安田(北九州)、GK佐藤(北九州)を獲得するなど、穴を埋める補強はできている。
中でも、注目は元日本代表のFW高原である。2012年は18試合で1ゴールと結果を出すことができず、出場時間も627分と少なかったが、2011年は28試合で8ゴールと結果を残した。FW阿部が移籍する場合は、FW高原への期待はさらに高まるが、モチベーションは上がっていると思うので、爆発する可能性も十分に考えられる。
対照的に、ほとんど動きが無いのが、千葉である。即戦力の補強は、今のところ、ゼロに等しく、さらには、得点源のFW藤田祥が横浜FMに移籍し、FW荒田も岡山に移籍することになった。昨シーズン、攻撃の軸として活躍したMF兵働の去就も微妙で、ここまでのところ、明るい話題は、ほとんど聞こえてこない。
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