■ 興行としてどうなのか?W杯イヤーの前年に当たる2013年は、W杯のアジア最終予選があって、さらには、6月にコンフェデ、7月末に東アジアカップに参加している。そのため、J1は中断期間が長かったので、真夏の7月と8月に日程を詰め込むことになった。結局、J1のチームは、7月に5試合、8月に6試合を戦ったが、水曜開催も4回あった。よって、今シーズンのJ1というのは、かなりタイトな日程になっている。
一方のJ2は、基本的には日本代表が活動しているときも日程が進んで、中断期間は用意されていないが、約9ヶ月間で42試合をこなさなければならない。なので、J2も、7月に5試合、8月に5試合が開催されて、水曜開催も2回ある。J1よりはマシに見えるが、J2の場合、交通網が発達していない都市をホームタウンに活動しているチームがいくつかあるので、移動が大変で、過酷さというのは、「J1よりも上」とも言える。
これだけ試合数が多くなると、観る側も大変になってくるが、気になるのは、J1も、J2も、動きの量が少なくて、退屈な試合が少なくないところである。どのチームも観客動員で苦労しており、動員力をアップさせるためには、いい試合を提供して、リピーターを増やす必要があるが、「興行としてどうなのか?」と感じる試合もある。今夏のJリーグで、退屈な試合が増えている理由としては、以下の2つの理由が考えられる。
■ 試合を退屈にする2つの理由まず、1つ目に挙げられるのは、暑さの影響である。9月に入って、ようやく落ち着いてきたが、7月中旬から8月の下旬あたりまでは、暑い日が続いて、ナイトマッチであっても、30度を超える中でキックオフされる試合があった。そうなると、できるだけ体力を温存した「省エネサッカー」で手堅く勝ち点を獲ろうと考えるチームが出てくるのは自然なことであり、動きの少ないスローテンポな試合が増えている。
もちろん、長丁場のリーグ戦を戦う上で、1つのやり方ではある。後方でゆっくりとボールを回す時間を長くして、体力を温存させようとすることは、「クレバーな戦い」とも表現できるが、エキサイティングとは言えない。当然、90分を通してハイペースを保つのは難しいので、試合をコントロールすることは絶対に必要になってくるが、コントロールの度合いが、「限度を越している。」と感じるチームもいくつかある。
2つ目に挙げられるのは、守備に多くの人数をかけるチームが増えているところである。安易に5バックを採用するチームが増えており、攻撃に人数をかけないチームもいくつかある。失点数が増えて、J1 or J2の残留争いに巻き込まれているチームに多いが、最初から最終ラインを5人にして、完全にスペースを消してベタ引きをするようだと、自チームはもちろんのこと、相手チームもいいサッカーを見せるのは難しくなる。
■ 5バックを用いるチーム当然、5バックというのも、1つの戦法だと思うが、失点数を減らすために「3バックという名の5バック」を採用するのは、最終手段にしてほしい。残り時間が少なくなってきて、1点リードを守りたいときなどに、守備的な選手を投入して、5バックに変更して守備を固めることは、特に問題は無いと思うが、そうではなくて、キックオフの段階から5バックになっているチームが1つや2つにとどまらない。
サッカーの場合、人の配置に関する自由度が極めて高い。そして、11人という人数は決まっているので、「出来るだけ少ない人数で守って、出来るだけ多くの人数で攻撃を仕掛ける。」というのが、ポイントになってくる。そのバランスをどう保つのかというのが、面白いところであるが、深く考えることなく、工夫もせず、ただ単に、最初から人数をかけて守ろうとするのは、全く面白いものではない。
ただ、そういう風潮に逆行する戦いを続けているチームもある。1つは元日本代表の柱谷哲二監督が率いる水戸ホーリーホックである。水戸は3バックを採用しているが、両WBのポジションは高くて、安易に5バックになることは無い。「3-1-2-2-2」と表現できる攻撃的な配置で、選手たちは、最初から出し惜しみすることなく、90分間、走り回ろうとする。非効率的なところもあるが、こういうチームは、好感は持てる。
もう1つは、反町監督が率いる松本山雅である。こちらは、守勢に回ったときは5バックになることもあるが、「日本一の練習をしている。」と公言するほど、ハードな練習で培った絶対的な運動量を武器としている。「暑いので、テンポを落とそう。」というのではなくて、「暑くても、それだけの練習をしているので、全く問題は無い。セーブする必要はない。」という考えの下、走り勝つサッカーで勝ち点を積み上げている。
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