■ 最終節J2の最終節。7勝23敗11分けで勝ち点「32」の町田ゼルビアと、19勝7敗15分けで勝ち点「72」の湘南ベルマーレが町田市立陸上競技場で対戦した。22位の町田は勝ち点「3」を奪わないと、J2の最下位が確定する。一方の湘南は勝ち点「73」で2位の京都を追っている。勝って自動昇格のチャンスをつかみたいところである。
ホームの町田は「4-4-2」。GK修行。DF三鬼、田代、イ・ガンジン、藤田。MF太田、加藤、鈴木崇、ドラガン・ディミッチ。FW平本、北井。2トップは、FW平本が35試合で6ゴール、FW北井が37試合で5ゴールを挙げている。FW勝又、MF幸野、MF下田らがベンチスタートとなった。FW勝又は25試合で3ゴールを挙げている。
対するアウェーの湘南は「3-4-2-1」。GK阿部。DF鎌田、大野、島村。MFハン・グギョン、永木、古林、高山、大槻、岩上。FWキリノ。背番号「10」のMF菊池は出場停止のため、大卒ルーキーのMF大槻が下がり目の位置で起用された。最終ラインの中心のDF遠藤はU-19日本代表に招集されているため、この日も欠場となった。
■ 3対0で湘南が勝利試合は前半2分にアウェーの湘南が先制する。左サイドからMF岩上が右サイドに大きく展開して、右WBのMF古林が精度の高いグラウンダーのクロスを入れると、飛び込んできたFWキリノが合わせて先制ゴールを奪う。FWキリノは2試合連続ゴールで、今シーズン7ゴール目となった。
その後は、ホームの町田がボールを支配してチャンスを作るが、ゴール前の迫力を欠いてゴールを奪えない。すると、前半44分に劣勢だった湘南がCKを得ると、ショートコーナーから、最後は、MF大槻が頭で落として、FWキリノがつないだボールをMF高山が左足で強烈なシュートを決めて追加点を奪う。MF高山は今シーズン6ゴール目となった。前半は2対0と湘南がリードして折り返す。
2点を追う町田は、後半開始からMF加藤に代えてMF幸野を投入。攻撃的な姿勢を打ち出すが、後半22分に湘南はMF永木のスルーパスからMF古林が右サイドの裏を取って中央にグラウンダーのクロスを入れると、MF大槻が合わせて3点目を挙げる。大卒ルーキーのMF大槻は今シーズン5ゴール目となった。MF古林は2アシスト目となった。
結局、試合は3対0でアウェーの湘南が快勝。2位の京都はスコアレスドローに終わったので、勝ち点で京都を上回って、劇的な形で自動昇格となる2位のイスに滑り込んでJ1昇格を決めた。一方の町田は、勝つしかない試合だったが、開始早々に先制ゴールを許したことでプランが大きく狂って、勝利をつかむことはできず。J2の最下位が決定した。
■ ベルマーレは昇格を決める!!!両チームとも、自分たちが勝つだけでは、目標を勝ち取ることはできず、ライバルの取りこぼしも必要となる状況だったので、他会場の経過が気になる中で試合は進んだが、湘南が3対0で勝利。しかも、2位の京都が引き分けに終わったので、湘南は2位でJ1昇格を決めた。2011年は14位に低迷して、開幕前の評価は低かったが、周囲の予想を覆す結果となった。
湘南も終盤戦は苦しんだ。34節から3連敗を喫して、さらに、その後の3試合もドローということで、34節から39節までは6試合未勝利で、2位から転落した。3位以下のチームに差を付けて、「自動昇格は濃厚」と言われた時期もあったので、曺貴裁監督は苦しんだと思うが、最後は3連勝で京都を逆転して、劇的な形でJ1昇格を実現させた。最後の3試合は、富山・鳥取・町田と下位チームとの対戦が続くという幸運もあったが、プレッシャーのかかる中で、きっちりと勝ち点「3」を積み上げた。
曺貴裁監督はトップチームの監督を務めるのは初めてだったので、行く先が心配されたが、開幕戦で京都に2対1で勝利したことが大きかった。終了間際に背番号「10」を任されたMF菊池がゴールを決めるというドラマチックな展開となったが、天皇杯で準優勝して、J2の大本命と言われた京都を開幕戦で下したことで、湘南は勢いに乗って、開幕ダッシュに成功した。
開幕戦で目指すスタイルに間違いがないことを確認できたのも大きかった。湘南は走力のある若手選手を何人も抱えているが、彼らの若さと運動量とアグレッシブさを前面に押し出したサッカーは、ある時間帯では京都を圧倒して、手応えと自信を手にすることが出来た。最終節で京都を逆転して昇格を決めたというのも、因縁を感じるが、前回、J1に昇格した2009年や2010年とは全く違うメンバーで昇格を勝ち取った。
■ パスサッカーへのこだわり一方の町田は0対3の敗戦で、最下位が決定した。試合が終わった段階では、長崎のJFL優勝は決まっておらず、長崎がJFLで2位になった場合は入替戦が行われるため、かすかな望みは残っていたが、長崎の優勝は目前に迫っており、最下位になったことが、JFL降格を意味することは、誰しもが理解しており、試合後のセレモニーは、重苦しい雰囲気の中で行われた。
町田は、今シーズン、J2に昇格してきたが、思うように勝ち点を積み上げることはできなかった。J2に上がって1年目というのは、どのクラブも苦労しているので、十分に予想できたことであるが、攻撃と守備が噛み合わずに、勝てない時期が続いた。終盤になると、勝負強さを発揮するようになって、勝利をつかむ試合も増えてきたが、21位のFC岐阜に「3」だけ届かなかった。
結局、11日(日)の夜の試合でAC長野パルセイロが敗れて長崎の優勝が決定して、入会審査もクリアしたので、町田のJFL降格が決まった。降格となった原因を挙げると、「パスサッカーにこだわり過ぎたこと。」が、真っ先に挙げられる。アルディレス監督が就任して、ショートパスで崩すサッカーを志向した町田は、チームのパスの総数では、京都や千葉とも大差はなくて、常に、J2の上位だったが、なかなかゴールに結びつかなかった。
相手の守備を崩せないだけでなく、自陣で無理にパスをつなごうとして墓穴を掘ったケースもあって、非効率的だったと言わざる得ない。ただ、チャレンジした姿勢は評価したいと思う。Jリーグに上がって1年目のチームが、ここまで、スタイルを貫くというのは、立派であり、また、こういうサッカーをすると、選手たちの技術レベルが上がっていくので、無駄なことではない。
個人的には、パスサッカー向きの選手を獲得できるほどの資金力が無いチームが、ユニークな指導者を招聘して、どこまでできるのか、どこまで変わることができるのか、楽しみに見ていたが、なかなか結果には結びつかなかった。こういうサッカーは、結果が出なくなると、ドツボにハマって、さらに状況が悪化していくことが多いが、町田も結果が出なくなって、選手たちが自信を失って、さらに、結果が出にくくなるという負のスパイラルに投入することが、シーズンを通して、何度も見られた。
■ ゼルビアに期待されることということで、残念な結果に終わったが、まだまだ、町田の挑戦は始まったばかりである。J2からJFLに降格する初めてのクラブであり、今後、どういうことになるのか、予想するのは難しいが、町田がJFLに降格したことをプラスに変えて、クラブとして発展していくのであれば、今回の降格は悲劇とは言えないだろう。
JFLに落ちることで、放送権料や観客動員数のダウンは確実で、露出度の低下も気になるところであるが、町田がどういう道を歩んでいくのかは、Jリーグも大いに注目しているはずである。かつては、「J1からJ2に降格すると、この世の終わりである。」という風な捉え方をされたこともあったが、今では、そういうことを考える人はほとんどおらず、J2が土台となって、J1を支えているところもある。
JFLは、強豪のSAGAWA SHIGA FCの活動が休止になるなど、分岐点を迎えており、今後、JFLをどうするのか、方向性を決めていく必要がある。そうなったとき、町田が降格をバネにして浮上することができたのか、はたまた、沈んでしまったのか、どういう道を歩んだのかで、話も変わっていくだろう。当然、1年でJ2に復帰することが目標となるが、Jリーグの経験を活かして、JFLを活性化させて、新たなモデルケースを作ってほしいところである。
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