■ J2の開幕戦J2の開幕戦。バルバリッチ監督が就任して4年目となる愛媛FCは、ホームでJFLから昇格してきた町田ゼルビアと対戦した。JFLで3位になって悲願のJ2昇格を果たした町田は、元アルゼンチン代表のオズワルド・アルディレス監督を迎えて、J2での戦いをスタートさせた。
ホームの愛媛FCは「4-2-2-2」。GK秋元。DFアライール、園田、浦田、内田。MFトミッチ、村上、大山、前野。FW有田、小笠原。大卒2年目でキャプテンに就任したMF前野が左サイドハーフにコンバートされて、DF内田が左サイドバックに入る。今オフ、積極的な補強を行ったが、GK秋元、DFアライール、DF園田、DF浦田、MFトミッチ、FW有田と6名の新加入選手がスタメンで起用された。
対する町田は「4-1-2-3」。GK相澤。DF藤田、田代、薗田、津田。MF太田、庄司、柳崎。FW勝又、平本、北井。東京Vから加入のFW平本、川崎Fから加入のDF薗田らがスタメン出場。専修大学出身の大型ルーキーのMF庄司は開幕スタメンを果たした。JFLで32試合に出場して13ゴールを挙げたFWドラガン・ディミッチはベンチスタートとなった。
■ 愛媛FCが逃げ切る試合の前半は愛媛FCペースとなる。前半6分に左サイドでDF浦田がフリーキックを得ると、DF内田が左足で蹴ったボールをDFアライールがヘディングで合わせて、愛媛FCが先制に成功する。2年ぶりにチームに戻ってきたDFアライールは、復帰戦でいきなりゴールを奪った。その後も、愛媛FCのペースで試合は進む。MFトミッチとMF村上のダブルボランチが、中盤で確実に相手の攻撃をストップさせてカウンターにつなげていく。
一方の町田は、愛媛FCのプレッシャーの前になかなかボールを運べず、フォワードに全くボールが入らなかったが、前半35分にカウンターから左サイドでボールを受けたFW勝又がスピードに乗ったドリブル突破から左足でシュートを放つが、GK秋元にキャッチさせてしまう。さらに、前半終了間際にも、ゴール前でボールを受けたFW平本が得意の横方向にスライドするドリブルで相手DFを外して左足でシュートを放つが、サイドネットに当たって同点ならず。前半は1対0と愛媛FCがリードして折り返す。
後半になると、愛媛FCのFW有田がボールに絡むようになって、シュートチャンスをつかむが、決められず。愛媛FCは試合の主導権を握りながら、追加点を挙げることができなかったが、後半17分にフリーで右サイドを駆け上がったDFアライールがゴール前に鋭いクロスを入れると、DF薗田がクリアに失敗してオウンゴール。愛媛FCが追加点を挙げる。
2対0となった後は、愛媛FCの運動量が落ちてきて、町田がボールを支配する展開になる。後半38分には、途中出場のFWドラガン・ディミッチのセットプレーからDF薗田が会心のヘディングシュートを放つが、GK秋元がスーパーセーブを見せてゴールならず。結局、2対0で愛媛FCが勝利し、白星スタートとなった。一方の町田は、J2でのデビュー戦だったが、愛媛FCの堅い守備を崩せなかった。
■ DFアライールが2ゴールに絡むバルバリッチ監督となって4年目となる愛媛FCは、集大成のシーズンとなる。2010年はリーグ2位の失点の少なさで、11位まで順位を上げたが、2011年は攻守ともかみ合わず15位に終わった。しかも、ライバルの徳島が4位と飛躍したので、愛媛FCにとってはツラいシーズンとなったが、今オフは、派手さは無いものの実力者を何人も獲得し、戦力をアップさせている。
中でも、MFトミッチとDFアライールの二人がキーマンとなるが、開幕戦から実力を証明した。広島から加入のMFトミッチは、ダブルボランチの一角で起用されたが、ルーキーのMF村上と協力して、中盤の守備を引き締めた。高いボール奪取力を備えるだけでなく、奪ったボールを的確にフィードできるので、カウンター攻撃の起点になることもできる。栃木SCは、「MFパウリーニョのボール奪取からカウンター」という形を必殺パターンにしているが、同じように、「MFトミッチのボール奪取からカウンター」というのが、今シーズンは、威力を発揮するだろう。
また、2年ぶりのチーム復帰となったDFアライールは、DF関根が負傷中のため、右サイドバックで起用されたが、開始早々に先制ゴールをマークし、2点目となるオウンゴールを誘発するクロスも上げて、チームの全ゴールに絡む活躍を見せた。京都サンガでは力を発揮できなかったが、2010年の堅守を支えた選手なので期待も高くなっているが、開幕戦は期待以上のパフォーマンスを見せたといえる。センターバックで起用されたDF薗田とDF浦田もハイパフォーマンスを見せたので、DF関根が戻ってきたときにどうするのか?という嬉しい悩みも出てきた。
■ 若手攻撃陣は不発一方、若手中心の攻撃陣は、結果を残すことはできなかった。中盤の底で相手ボールを奪うことができていたので、カウンターからチャンスになりかけたが、判断ミスもあって、決定機までつなげることができた回数はわずかだった。1点目はセットプレーからのゴールで、2点目はDFアライールのクロスから生まれたが、攻撃的なポジションの選手は、ゴールに絡むことはできなかった。
MF齋藤学が抜けた中、新エースとして期待されるFW有田は、 2トップの一角でスタメン出場すると、献身的に動いてチームに貢献したが、ゴール付近で効果的な働きはできなかった。アタッカータイプは豊富になったが、ゴールに近いところで仕事ができる選手は少ないので、20歳のFW有田がブレークしてくれると、攻撃力も高まるが、開幕戦では、持ち味を出し切れなかった。
また、FW有田と2トップを組んだFW小笠原も、シュートチャンスを作れなかった。中盤とフォワードの隙間でボールを受けて、攻撃の起点になろうとしたが、十分ではなかった。同様に、途中出場のMF加藤も、判断の遅さが目立って、チャンスをフイにするシーンがあって、アピールすることはできなかった。DFアライール、DF浦田、MFトミッチが加わって、守備が安定するのは確実といえるので、攻撃陣のレベルアップに期待がかかるが、この試合では、若手が期待に応えることができなかった。
■ ゼルビアは黒星スタート・・・J2で初めての試合となった町田は、愛媛FCの堅守を崩し切れず、無得点での敗戦となった。いきなり、セットプレーで先制を許したことで、意気消沈したのか、序盤はつなぎのところでミスが多くて、波に乗れなかった。期待のルーキーのMF庄司も、前線に出すパスが引っかかることが多く、攻撃にリズムを与えることはできなかった。愛媛FCも、立命館大出身のルーキーのMF村上がボランチで起用されたが、この日は、MF村上が攻守ともにMF庄司を上回った。
ただ、時間が経つに連れて、ゴール前のシーンを作るようになった。中心となったのは、FW平本とFW勝又の二人で、この二人の突破力はJ2でも上位レベルで、一人でチャンスを作るシーンもあった。連携は不十分だったので、FW平本とFW勝又がコンビネーションを見せるシーンもなく、単発な攻撃がほとんどだったが、個の力は十二分に見せつけたといえる。
問題は、どういう形で、個人技を発揮できる環境を作るかである。MF庄司がプロの舞台に慣れてくると、違った雰囲気になるかもしれないが、現状では、中盤の構成力が物足りないので、自分たちから攻撃をクリエートするのは難しい。アルディレス監督は、つなぐサッカーを目指しているというが、つなごうとして、愛媛FCのブロックの餌食になっていたので、つなぐサッカーを継続するのは、リスキーである。
FW平本にしても、FW勝又にしても、カウンターのときに威力を発揮する選手なので、引いて守ってカウンターに徹するというのが、もっとも手っ取り早いように思うが、アルディレス監督のスタイルではないので、そういうサッカーを選択する可能性は低い。選手の特性と、監督の目指すサッカーがうまくマッチングしていないように感じたが、このあたりをどうすり合わせていくのか。日本でも実績のあるアルディレス監督の手腕に期待したいところである。
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集大成のシーズンとなる愛媛FCとバルバリッチ監督 → J3+(メルマ)
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