■ サテライトリーグ復活か???2009年で廃止となったサテライトリーグについて、いくつかのクラブから復活の要望が出ている。まだ、検討段階なので、どういう結論になるかは分からないが、若手の実戦経験の少なさを指摘する声が上がってきているという。これに関しては、復活の是非を含めて、様々な意見が出てきているが、正直、サテライトリーグが、どういうものだったかは、コアなサポーターでもない限り、なかなか分からないと思われるので、簡単にまとめてみた。
まず、サテライトリーグがスタートしたのは、1992年で、若手選手に実戦の機会を与えることが目的とされている。結局、2009年限りで廃止となったが、ラストイヤーの2009年は、J1の18クラブと、J2の9クラブが参加し、計27チームを5つのグループに分けて、各グループ内でホーム&アウェー方式のリーグ戦を行う予定になっていた。(※ 当時、J2の水戸、栃木SC、横浜FC、富山、FC岐阜、愛媛FC、福岡、鳥栖、熊本は不参加)。
グループ分けに関しては、地域性を考慮し、
・Aグループ (札幌、仙台、大宮、柏、東京V)
・Bグループ (山形、草津、浦和、新潟)
・Cグループ (鹿島、千葉、FC東京、川崎F、湘南)
・Dグループ (横浜FM、甲府、清水、磐田)
・Eグループ (名古屋、京都、G大阪、神戸、徳島)
・Fグループ (C大阪、岡山、広島、大分)
の6グループに分かれている。開催期間は、3月8日から10月31日までとなっているが、諸事情により、予定通りに開催できない試合もあったので、12月16日に行われた試合もある。試合方式などは、J1やJ2の試合と同じであるが、交代選手5人までで、通常よりも多くなっている。開催日は、ゴールデンウイークなど特別な場合を除くと、日曜日か月曜日の昼間で、平日の昼間に行われることも多い。
入場料に関しては、「無料」のところが多いが、2009年のケースでは、札幌、浦和、新潟、鹿島、横浜FM、磐田、名古屋の7チームが、有料で試合を行っている。(※ 無料の試合もある。)入場料は1000円程度に設定しているところが多くて、試合会場は、NACK5スタジアム、ヤマハスタジアムなど、ホームグラウンドを使用することもあるが、ほとんどの場合は、練習グラウンドを使用している。
■ サテライト復活の是非(1)以上のようにサテライトリーグは開催されていて、今回、サテライトリーグの復活が議論になっているが、正直、首をひねらざる得ない。確かに、サテライトリーグは公式戦なので、若手選手にとっては、経験を積むステージであり、首脳陣にアピールするチャンスであるが、そもそもの試合数が少なくて、若手選手の実戦経験の少なさを解消できるような場ではなかった。例えば、Bグループ、Dグループ、Fグループは4チームで構成されているが、総当たりのH&A方式なので、トータルでも、1年間で6試合だけである。(※ これでも、日程を消化するのに四苦八苦していたので、これ以上、試合数を増やすことはできない。)
また、各クラブが保有している選手数は30名程度で、そこから、リーグ戦に出場した選手や怪我人を除いたメンバーでチームを作る必要があるため、メンバーを集めるだけでも大変である。かつてのように、各チームが40名程度の選手を抱えているのであれば、チームを作ることも難しくないし、チーム内で、サテライトの試合に出るための競争も生まれてくるが、昨今のルールでは、競争も生まれてこない。
それでも、真剣勝負が行われていれば、貴重なステージだったといえなくもないが、サテライトリーグで、真剣勝負が行われていたとは言い難い。もちろん、チームの看板を背負って他クラブと戦うことになるので、恥ずかしいプレーはできないし、単なる練習試合よりは緊張感も生まれてくるだろうが、観客も少なくて、テレビ中継もなくて、メディアに取り上げられることもなく、勝利したからといって、何かを得られるわけでもないので、モチベーションは上げづらい。
■ サテライト復活の是非(2)また、近年は、Jリーグの創生期のように、一括開催ではなくて、土曜日に試合があったり、日曜日に試合があったり、各クラブでまちまちなので、スケジュールを組むのも大変である。基本的には、トップチームが試合を行った次の日に、サテライトの試合も組まれていたが、例外もあって、いろいろな意味で融通が利かない。
さらに、近場のクラブと同じグループに入っているといっても、札幌と東京V、名古屋と徳島、C大阪と大分といったカードになると、遠征費もバカにならないし、移動の時間もかかってしまう。若手の育成の場としてだけでなく、コンディション調整の意味も兼ねているが、サテライトの試合を行うためだけに、遠くまで遠征するのは非効率的で、時間の無駄遣いともいえる。
もちろん、高校あるいはユースからトップチームに加わった選手が、実践の経験を積むことができないという問題は、何とかしなければならないものであるが、サテライトリーグを復活させることが、解決策になるとは言い難い。むしろ、末期のような方式で、サテライトリーグを再復活させたら、プラスよりもマイナスの方が大きく、何の意味もないどころか、選手育成を考えると、足枷にしかならないだろう。
■ サテライト復活の是非(3)では、どうするのがいいか?と問われると、答えるのに窮する。若手を育成するために、ヨーロッパのクラブのように、各チームがセカンドチームをもって、3部リーグなり4部リーグなりに参加させるというアイディアも考えられるが、個人的には、最善の策とは思えない。
当然、クラブや国によって事情は様々だと思うが、セカンドチームはあくまでもセカンドチームなので、トップチームと同じモチベーションで戦うのは難しいし、3部リーグや4部リーグになるとレベルも落ちてしまう。試合数をこなすことも大事だが、いかにして、真剣勝負の場を作るかが重要で、「セカンドチームを持つこと」がベストな道とは、現状では考えにくい。
例として、今回も、五輪代表に大学に進学した選手が何人か加わっているが、大学に進むと、試合数こそ多くはないが、「絶対に負けたらダメ。」という状況下での試合をいくつも経験できるので、そこを乗り越えて、プレーヤーとして飛躍することができる。18歳でプロの道に進んで、トップチームの試合に出場している選手は別として、それ以外の選手と大学生の選手を比べたとき、大学生が上回ることが多いのは、修羅場をくぐった経験の差も少なからず影響しているだろう。
サテライトリーグが廃止になったあと、関西では「ステップアップリーグ」、中四国では「中四国サテライトリーグ」、九州では「チャレンジャーズリーグ(※ 2009年にスタート)」を開催し、若手の経験の場を作っているが、高校サッカー選手権や、Jユースカップや、インカレのような「大きなもの」がかかった大会にはなりえないので、死力を尽くした勝負をするのは難しい。
関連エントリー 2008/07/23
秋-春制にはNO!!!(その1) 2008/07/25
秋-春制にはNO!!!(その2) 2009/04/17
移籍金の撤廃について 2009/06/28
サッカーサイトの「現状」について考える。 2009/09/16
「ベストメンバー規定」と「ナビスコ改革」について 2010/02/09
観客目線のスタジアムへ・・・ 2010/07/29
Jリーグのプレミア化について 2010/10/28
もしも、Jリーグにドラフトがあったならば・・・
- 関連記事
-