■ 第5節震災の影響で延期になっていたJ2の第5節は、9月14日(水)、21日(水)、28日(水)の3日間に分けて開催される。1日目となる14日(水)は鳥栖市のベストアメニティスタジアムでサガン鳥栖とファジアーノ岡山が対戦。ベストアメニティスタジアムでは9月21日(水)にU-22日本代表が、U-22マレーシア代表と対戦する予定になっている。
鳥栖は11勝6敗7分けで勝ち点「40」。前の試合はアウェーでジェフ千葉と対戦したが、終了間際にDF呂成海が同点ゴールを決めて、2点差を追いついてドロー。貴重な勝ち点「1」を獲得した。一方の岡山は8勝10敗6分けで勝ち点「30」。ここ3試合は「2勝1分け」と結果が出ている。
ホームの鳥栖は「4-2-3-1」。GK赤星。DF丹羽、木谷、呂成海、磯崎。MF藤田、岡本、金民友、早坂、キム・ビョンスク。FW豊田。千葉戦で出場停止だったDF磯崎がスタメン復帰。MF金民友が中盤に戻って、FW池田がベンチスタートとなった。
対する岡山は「3-6-1」。GK真子。DF一柳、ストヤノフ、植田。MF竹田、金民均、澤口、小林優、石原、妹尾。FW岸田。チームトップの8ゴールを挙げているFWチアゴはコンディション不良のためベンチ外となった。
■ 鳥栖が圧勝試合は開始3分にホームの鳥栖が先制する。左サイドのCKを獲得すると、MF藤田が蹴ったボールを走り込んできたFW豊田が高い打点から豪快なヘディングシュートを決めて先制する。
その後、岡山もDFストヤノフの直接フリーキックや、MF妹尾のミドルシュートなどゴールを脅かすシーンを作るが、前半34分に鳥栖が追加点を挙げる。右サイドからMF藤田がロングスローを入れると、FW豊田がゴール前で競って裏のスペースに流したボールをフリーになっていたMF金民友が左足で決めて追加点。2対0とリードを広げて前半を折り返す。
後半も鳥栖ペースで進む。後半12分には、ゴール前に飛び出したMF金民友がMF早坂のラストパスを受けて綺麗なループシュートを決めて3対0。さらに後半20分にも、MF藤田をロングスローをきっかけにチャンスを作ると、右サイドに流れたMF藤田のクロスを中央でMF金民友が頭で合わせて4点目。これでMF金民友はハットトリック達成となった。
勢いの止まらない鳥栖は、後半31分にMF藤田のロングスローインからチャンスを作る。イージーボールでキャッチしようとしたGK真子がまさかのファンブルで、こぼれたところをFW豊田がつめて5点目を挙げる。FW豊田は2ゴール1アシストの活躍で、リーグ戦は12ゴール目。得点ランキングでもトップのMF深井に並んだ。
最後を締めくくったのは途中出場のFW新居。後半37分にMF藤田のロビングのパスをヘディングで合わせて6点目を挙げる。FW新居は3試合目の出場で今シーズン初ゴール。ベストアメニティスタジアムでは、2006年11月以来のゴールとなった。結局、試合は6対0で鳥栖が圧勝。勝ち点を「43」に伸ばして、暫定ながら2位に浮上した。一方の岡山は、勝てば11位に上がることができたが、後半は集中力が切れて大敗。15位のままとなった。
■ 暫定で2位に浮上第5節に予定されている10試合のうち、このカードだけ、一足先に行われることになったが、鳥栖が圧勝し、J1昇格圏内となる2位に浮上した。消化が1試合多いとはいえ、首位のFC東京との差も「2」で、J2は1位のFC東京から6位のジェフ千葉までが勝ち点「4」差という稀に見る大混戦になってきた。
この試合は、昇格を目指すライバルクラブにプレッシャーをかける意味でも、何としても勝利が必要な試合だったが、鳥栖というクラブは、こういう大事な試合であっさりとホームで勝ち点を取りこぼしてきたという歴史があるので、不安視された所もあったが、結果は、圧巻のゴールラッシュとなった。ここ3試合では15ゴールを奪っているが、得失点差も「+21」となって、FC東京の「+23」に次ぐリーグ2位の成績となった。
鳥栖は、これまでも、何度かは昇格争いに加わっているが、爆発的な攻撃力を備えるチームではなかったので、得失点差が「±0」くらいで、「昇格争い」に参加していたシーズンもあって、得失点差で不利になることが多かったが「+21」というのは非常に大きな数字である。
■ MF金民友がハットトリック勝利の立役者となったのは、U-22韓国代表にも召集されているMF金民友で、ハットトリックの活躍を見せた。
前節はDF磯崎が出場停止だったこともあって、左SBでプレーしたが、やはり高い位置でプレーした方が持ち味を発揮する。3ゴールのうち、もっとも見事だったのは、自身2点目のゴールでうまくスペースに走り込んでいって、きれいに合わせてゴール。3対0とリードを広げて、試合を決めてしまった。
これで、今シーズンは21試合で4ゴール。コンディション不良のためシーズン序盤は試合に出場することができず、出遅れていたとはいえ、ポテンシャルを考えるとちょっと少ない数字である。ドリブルするときに下を向いていることが多いので、ボールを持ったときに視野が狭くなるという欠点があるが、「スピード」もあって「突破力」も備えている。
ここに来て、鳥栖はメンバーが固まってきたが、前の4人のうち、FW豊田、MF早坂、MFキム・ビョンスクと高さのある選手が揃っていて、MF金民友のチャンスメークが生きるシーンは、今後、増えていくだろう。ロンドン五輪を目指すU-22韓国代表での活動も入ってくるので、終盤はタフなスケジュールになると思われるが、昇格に向けて大事な選手であり、攻撃のキーマンである。
■ MF藤田直之 5ゴールを演出鳥栖は、8月になって急激に調子を上げてきたが、大きく変わったのは、震災による中断期間中に「左足第5中足骨骨折」をして戦列を離れていたMF藤田が復帰し、ボランチに戻ってきたことである。これが何よりも大きい。
彼がスタメン復帰したのは、7月31日のザスパ草津戦だったが、その後の8試合は5勝1敗2分けという好成績で、8試合でチームは21ゴールを挙げている。広島からレンタル移籍中のMF岡本とダブルボランチを組んでいるが、二人ともボールが持てて、パスが出せるので、中盤が落ち着くようになった。
また、今シーズンは、ゲームコントロールだけでなく、「セットプレー」を中心に多くのゴールに絡んでいる。この試合では、1点目、4点目、6点目のゴールをアシストし、3アシストをマークしたが、2点目と5点目のゴールも彼のロングスローがきっかけになっていて、6ゴールのうち、5ゴールをMF藤田が演出した。
MF岡本と組むダブルボランチは、視野も広くて、ボールを動かすのがうまいので、MF藤田が戻ってきて、鳥栖はチャンスの数が増えている。ここ最近のゴールラッシュも、決して偶然ではなく、チームが成熟している証で、これから、急激に降下することは考えにくい。
■ FW新居が復帰ゴールゴールラッシュのトリを飾ったのは、FW新居。彼らしい動きで相手のマークを外すと、MF藤田のアシストからヘディングで流し込んだ。2010年シーズンは、湘南ベルマーレでプレーしたが、リーグ戦でゴールはなかったので、2009年のジェフ千葉時代以来のゴールとなった。
FW新居は、ずっと怪我をしていてベンチにも入れなかったが、ここに来て3試合連続出場となった。ホームでは復帰後は初登場となったが、2列目は、MF金民友、MF早坂、MFキム・ビョンスクで固まってきて、FW池田の調子も悪くないので、スタメンの機会があるかどうかは微妙であるが、途中から出て来ても、短い時間でも仕事のできるタイプの選手なので、相手からすると嫌な存在である。
さらに、鳥栖というチームにとっては「レジェンド級の選手」なので、彼が登場するだけでスタジアムは盛り上がるし、ゴールするとなおさらである。J1に昇格するためには「起爆剤」が必要であるが、鳥栖ではFW新居がその起爆剤になれる可能性を持つ。
■ ファジアーノ岡山は完敗一方の岡山は、まさかの大敗となった。FWチアゴを外してFW岸田を1トップで起用してきた采配については「賛否両論」あるだろうが、FW岸田、MF妹尾、MF石原のトリオの動きは決して悪くはなかった。3失点目で心が折れてしまったが、ゴールチャンスは何度かあった。3失点目までは、決して悪いサッカーではなく、この試合に限っては、鳥栖の出来が良すぎたといえる。
今シーズンのJ2は、上位も混戦になっているが、中位も混戦になっている。岡山も勝ち点「30」で15位に留まっているが、8位の東京Vの勝ち点が「34」なので、岡山とはほとんど差が無いので、「一桁順位」の可能性も十分に残っている。
ショッキングなスコアとなったので、気持ちを切り替えるのは難しいが、ここまでの「8勝11敗6分け」という成績は悪い成績ではない。昇格争いをするチームを食って存在感を見せてほしいところである。
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