今回は大人に憧れるゾロメと現実に現れたオトナとの対話によって
ゾロメのオトナへの幻想が変わっていく話。
(物語の設定的にもいくつか示唆的な点があった)
まずゾロメとオトナ女性は何らかの関係があるのだろう。
ゾロメがオトナ女性と始めて会ったのに懐かしい発言。
オトナ女性が先にゾロメの名前を言い当てた点。
オトナ女性はオトナは生殖行為をしない(過去の話)と言っていたので、
ゾロメの遺伝子の提供者と推測できる。
演出的にも
大人女性の下半身から顔へと上方向にカメラを映し、
ゾロメにオーバラップさせるカットがある。
これはオトナの女性とゾロメに関係性を示唆させる。
また
横からお互いの顔、特に目を焦点に映す事で、
目の色が一緒という共通点が鮮明に見えてくる。
(ガラスの映り込みも良い味出している)
他にも
イスに座った幼少のゾロメ→オトナ女性の絵を連続して繋げている点。
二人の言葉のやり取りを聞いているだけでも、
なんとなく二人の関係性が見えてくるが、
画面演出的にもきちんと関係性があることを見せているように思える。
さらに言えば、アバンのゾロメのモノローグ。
"不思議に同じ夢を何度も見る なぜかその夢で僕は暗闇の中にいて
遠く眩しい光を見て泣いている 悲しいのか嬉しいのかわからないけど
とめどなく涙が溢れてくるんだ その光はどんどん大きくなって
最後に僕は光に包みこまれ そして大きな叫び声を上げる"
おそらく生まれてくる瞬間をイメージした詩的なモノローグであろう。
生まれのモノローグを最初に持ってきた点でも、
ゾロメとオトナ女性は関係があるのだろう。
しかしそんな二人の関係性を積み重ねておきながら、
物語ではオトナ女性がゾロメとの関係を完全に断ち切る。
(画面的にも一瞬暗転させて、スパッと断ち切っている)
コドモ(13部隊)細菌持ちでオトナとは決定的に違う存在であるのだ。
この断ち切り方が余りにも切れ味が良かった。
ゾロメが抱いていたオトナへのある種の幻想を
自分に関係していたであろうオトナが断ち切った。
大げさに言えば、今回は乳離れの話であったのかもしれない。
今回絵的に特徴があった点として
キャラを真正面から描くレイアウトと
真横からのレイアウト(引いても、アップでも)、
主にこの真正面と真横と真俯瞰のカットの連続で物語を積み重ねてきた。
このある種、規則的で無機質な縦と横の画面の連続は
規則的に四角のブロックで構成される都市の建物群の空間性・無機質感、
あるいはオトナの無機質感と符合するような印象を与える。
以上のように静逸的な真正面と真横の連続で主に繋ぎながら、
あるカットでは回り込んだレイアウト、コミカルな演技(ミクとか)、
最後のドアップのゼロツーの成長した牙、などのスパイスを混ぜてくる。
こうしたスパイスの中でも最も特徴的なのが、
小気味よくカットを割っている中で
真正面からゾロメがミクについて語るカット。
約22秒。今回の中では長く感じられ、一番重要なシーンでもあるのだろう。
このゾロメの語りが始まる前に、オトナ女性が
ゾロメの名前を言い当てている点でもこの辺りは重要。
オトナと都市の無機質性を縦横の主に画面構成で描き、
ゾロメの淡い期待との決別を描いた10話。
コンテは小倉陳利。ガイナ・トリガーアニメでお馴染みのベテランの仕事を堪能させて頂いた。
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