「響け!ユーフォニアム」の面白さは、
本編中の物語のハラハラ感と寸止めのバランス感覚にあると思う。
「響け!ユーフォニアム」のハラハラ感
ハラハラ感とは何か。
今回10話でいえばオーディションの結果に
一部の部員が疑念を持ってしまい、
吉川優子が高坂麗奈に当たってしまうような
ギスギスした展開や人間関係が壊れてしまうような展開が挙げられるだろう。
一触即発。香織が「やめて」と言わなければ、
その後に麗奈が久美子に言ったような愚痴を
麗奈が優子に直接言って、事態はより悪化していたのかもしれない。
こうした緊張感溢れる展開、部活動が部員の人間関係が、
もしかすると壊れてしまうという展開とニュアンスを含みながら
物語が進行していくことが、ハラハラ感に他ならない。
本作は必ずしも安全に物語が進まない作りになっている。
何かハプニングが起こることでハラハラ感が生まれるのだ。
あすかの存在もまた面白い。
誰とも上手くやっているようにも見えつつ、決してグループに属さない。
高坂麗奈と対を為すもう一人の「特別」な存在。
その彼女が周りのいざこざに対し「正直、心の底からどうでもいいよ。」
という場面は、違う意味でハラハラさせられる。
優等生でははあるが、優等生の枠に収まらない何かがあすかにはある。
響け!ユーフォニアムは、物語のハラハラ感に呼応するかのように
ハラハラ感を呼ぶキャラクターが存在する。
今回10話でいえば吉川優子であり、7話でいえば葵の退部劇、
8話でいえば久美子に迫る高坂麗奈であろう。
逆にいえばそんなハラハラさせられるキャラクター達の真ん中に
あすかとは違う意味で、全てのキャラクターと上手くやっている
久美子が存在するからこそ、久美子は主人子なのだと思う。
「響け!ユーフォニアム」の寸止め感
寸止め感というのは、
先ほど挙げた、物語もしくはキャラクターの関係性が壊れそうになる展開を見せながら、
最終的には無事というか綺麗な所にランディングする姿勢の事である。
物語や人間関係が壊れそうで壊れない点を寸止め感と私は言いたい。
今回最後に滝先生が再オーディションを提案する。
(原作だと、滝先生の提案ではないとのこと)
この提案は練習に集中できない部活動の空気を一新するものであり、
納得できるものだったと思う。
そして再オーディションに対して香織が力強く挙手をするのも
物語の展開としてとても良かったと思う。
(とはいっても、選ばれるのは高坂麗奈のような気もするが。)
こうした、物語展開やキャラクターがハラハラ感で進むと、
最終的にはソフトランディングする、寸止め感で締めくくる。
このハラハラ感と寸止め感の振り方が、バランス感覚が
本作の物語の魅力なのだろう。
ハラハラ感に振りすぎると露悪的になるし、
寸止め感に振りすぎると、緊迫感が生まれない。
この両方を本作は上手く手綱を取って使いこなしている。
まとめ
部活動に所属した経験がある人なら
レギュラーになれなかった時の悔しさ、部活動の空気が悪くなった時の困難さ
人間関係の面倒さなどを感じたことがある人はいると思う。
そんなこんなも含めて中高生時代の部活動は、思い出として強く心に刻まれる。
特に感受性豊かな中高生の時代は、
些細なことや、ユーフォニアムでいえばオーディションのようなイベントごとに対して、
強く反応し、その結果が人生の全てだと思い込んでしまう時期でもある。
「響け!ユーフォアニム」の物語の面白さは、
こうした感受性豊かな等身大のキャラクター達と部活動を
時にはハラハラした展開で描き、でも最終的には無事着陸させる。
このバランス感覚溢れる展開にあるのだろう。
そして部活動というのが、共感を持って受け止められやすい
題材の一つであるという事を「響け!ユーフォニアム」は教えてくれる。
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