ツエーゲン金沢→ 柳下監督を招聘した金沢はシーズンの序盤はなかなか結果を出せなかった。降格圏に位置することも多かったが我慢して使い続けた若手が試合を重ねるごとに力を付けていった。期限付き移籍の選手が多いのはクラブとしての問題点と言えるが19節から4連勝を飾るなどこの時期に勝ち点を積み上げることが出来たことが「J2残留」につながった。まずまず収穫の多いシーズンになったと言える。
柳下監督の続投は決まっているが問題点ははっきりしている。表1のとおり、セットプレーが致命的なほどの弱点だった。J2でワースト3位となる失点数の多さも課題だったが得点の少なさは驚くレベルである。DF辻尾やMF山藤が抜けた影響もあって今シーズンは優秀なプレイスキッカーがおらず、なかなかセットプレーから点が取れなかった。プレイスキッカーというのは今オフの補強ポイントの1つに挙げられる。
もちろん、セットプレーは1番の改善ポイントに挙げられるが「高さのある選手が少なくないこと」を考えると「ここまでセットプレーで点が取れないこと」と「ここまでセットプレーでの失点が多いこと」はかなり不思議に感じる。今シーズンの金沢の平均身長は178.29センチでJ2で9番目なので平均以上である。優秀なプレイスキッカーを獲得できれば森下仁之監督時代のように大きな武器になる可能性は高い。
表1. セットプレーでの得点数/失点数
順位 | クラブ名 | ± | 得点 | 順位 | 失点 | 順位 |
1 | 松本山雅 | 16 | 25 | 2 | 9 | 1 |
2 | V・ファーレン長崎 | 13 | 25 | 2 | 12 | 4 |
2 | 京都サンガ | 13 | 27 | 1 | 14 | 8 |
4 | アビスパ福岡 | 11 | 21 | 5 | 10 | 2 |
5 | 湘南ベルマーレ | 8 | 22 | 4 | 14 | 8 |
6 | ジェフ千葉 | 7 | 20 | 6 | 13 | 5 |
7 | 名古屋グランパス | 5 | 19 | 7 | 14 | 8 |
8 | 東京ヴェルディ | 3 | 19 | 7 | 16 | 13 |
9 | 水戸ホーリーホック | 1 | 14 | 12 | 13 | 5 |
9 | 横浜FC | 1 | 16 | 11 | 15 | 12 |
9 | ファジアーノ岡山 | 1 | 18 | 9 | 17 | 15 |
12 | 町田ゼルビア | -1 | 18 | 9 | 19 | 16 |
13 | 大分トリニータ | -2 | 9 | 21 | 11 | 3 |
13 | 徳島ヴォルティス | -2 | 11 | 16 | 13 | 5 |
15 | モンテディオ山形 | -3 | 11 | 16 | 14 | 8 |
16 | FC岐阜 | -6 | 10 | 20 | 16 | 13 |
17 | ロアッソ熊本 | -9 | 11 | 16 | 20 | 17 |
17 | ザスパクサツ群馬 | -9 | 12 | 15 | 21 | 18 |
17 | レノファ山口 | -9 | 14 | 12 | 23 | 21 |
20 | 愛媛FC | -10 | 11 | 16 | 21 | 18 |
21 | カマタマーレ讃岐 | -11 | 14 | 12 | 25 | 22 |
22 | ツエーゲン金沢 | -17 | 5 | 22 | 22 | 20 |
名古屋グランパス→ 苦しみながらも昇格プレーオフを制して「1年でのJ1復帰」を果たすことが出来た。199センチのFWシモビッチ、夏に加入したMFガブリエル・シャビエルの頑張りが目立ったが、「クロスからの得点」がJ2で最多となる21得点。J2平均が9.18得点で、リーグ2位の東京Vが15得点で、リーグ3位タイの愛媛FCと徳島が13得点だったことを考えると今シーズンの名古屋がいかにクロスから多くの得点が奪ったのかが分かる。
リーグでダントツとなる得点を記録した攻撃陣がとにかく目立ったが守備陣は苦しんだ。1試合平均の被決定機の数は4.86回。これは21位でブービーだった熊本と全く同じで、名古屋ならびに熊本よりも下になるのは断トツで最下位だった群馬のみである。GK楢崎やGK武田洋といったキーパー陣が踏ん張ったので何とか昇格の切符を手に入れることが出来たが「守備のもろさ」は基本的には改善されなかった。
当然、J1に上がるとJ2時代ほど名古屋がボールを保持して攻め込むことは難しくなるので出来る限り被決定機の数は減らしたい。そして、押し込まれる展開になったとしても何とかしてくれるハイレベルなCBを是が非でも獲得したい。攻撃陣に関してはJ1に上がってもある程度以上の力を発揮すると思うが問題は守備陣である。昇格1年目から結果を出せるのか?はどのクラスのCBを獲得できるか?にかかっている。
表2. 1試合平均の被決定機の数
順位 | クラブ名 | 年間平均 | 1節~21節 | 順位 | 22節~42節 | 順位 |
1 | 湘南ベルマーレ | 2.86 | 2.45 | 1 | 3.29 | 2 |
2 | アビスパ福岡 | 3.07 | 2.95 | 3 | 3.19 | 1 |
3 | 徳島ヴォルティス | 3.09 | 2.86 | 2 | 3.33 | 4 |
4 | V・ファーレン長崎 | 3.21 | 3.00 | 4 | 3.43 | 5 |
5 | 横浜FC | 3.40 | 3.00 | 4 | 3.81 | 9 |
6 | 大分トリニータ | 3.44 | 3.59 | 10 | 3.29 | 2 |
7 | 松本山雅 | 3.51 | 3.32 | 6 | 3.71 | 7 |
8 | カマタマーレ讃岐 | 3.53 | 3.59 | 10 | 3.48 | 6 |
9 | 東京ヴェルディ | 3.56 | 3.41 | 8 | 3.71 | 7 |
10 | 京都サンガ | 3.58 | 3.36 | 7 | 3.81 | 9 |
11 | ファジアーノ岡山 | 3.70 | 3.59 | 10 | 3.81 | 9 |
12 | FC岐阜 | 3.74 | 3.48 | 9 | 4.00 | 14 |
12 | 水戸ホーリーホック | 3.74 | 3.68 | 16 | 3.81 | 9 |
14 | ジェフ千葉 | 3.79 | 3.64 | 13 | 3.95 | 13 |
15 | 町田ゼルビア | 3.88 | 3.64 | 13 | 4.14 | 15 |
16 | レノファ山口 | 4.35 | 3.64 | 13 | 5.10 | 21 |
17 | 愛媛FC | 4.65 | 4.23 | 17 | 5.10 | 21 |
18 | ツエーゲン金沢 | 4.69 | 4.67 | 19 | 4.71 | 16 |
19 | モンテディオ山形 | 4.70 | 4.59 | 18 | 4.81 | 17 |
20 | ロアッソ熊本 | 4.86 | 4.82 | 21 | 4.90 | 18 |
20 | 名古屋グランパス | 4.86 | 4.73 | 20 | 5.00 | 19 |
22 | ザスパクサツ群馬 | 5.00 | 4.95 | 22 | 5.05 | 20 |
FC岐阜→ 大木監督を招聘したFC岐阜は順位こそ18位だったがボールを大事にするサッカーで旋風を巻き起こした。大きな爪痕を残したシーズンだったが当然のことながらパス数はJ2で最多となる。また、パスのイメージが非常に強いチームなので意外に感じる人は少なくないと思うがドリブル数もJ2で2番目に多かった。徳島に次ぐドリブル数を記録しているので単にパスを繋ぐだけのチームではなかったことが分かる。
攻撃が魅力のチームだったが意外にも「1試合平均の決定機の数」は3.07回でJ2で20番目。FC岐阜よりも下になるのは2.84回の群馬と2.63回の讃岐のみ。山口や熊本や金沢よりも決定機の数は少なかったことになる。かなり驚きの数字と言えるが「圧倒的にボールを保持して攻め込みながら決定機までは作れない。」という試合は多かったので改めて振り返ってみると「そういう数字になるのも致し方なし。」と言える。
ある程度のところまでボールを運ぶことは出来ているので「最終局面で違いを出せる選手」がとにかく必要である。MF永島やMF小野悠やMFシシーニョなどが起用されたインサイドハーフでプレーできる優秀なアタッカーを獲得できると攻撃の破壊力は格段に増すだろう。決定力のあるストライカーも必要になってくるが「決定率」はJ2で最高となる43.4%。決定機は高確率でゴールに結びつけることが出来ている。
表3. 1試合平均の決定機の数
順位 | クラブ名 | 年間平均 | 1節~21節 | 順位 | 22節~42節 | 順位 |
1 | 名古屋グランパス | 5.44 | 4.55 | 5 | 6.38 | 1 |
2 | ジェフ千葉 | 5.21 | 4.64 | 3 | 5.81 | 2 |
3 | アビスパ福岡 | 4.86 | 5.18 | 1 | 4.52 | 6 |
4 | 東京ヴェルディ | 4.84 | 4.68 | 2 | 5.00 | 4 |
5 | モンテディオ山形 | 4.81 | 4.09 | 7 | 5.57 | 3 |
6 | 松本山雅 | 4.58 | 4.64 | 3 | 4.52 | 6 |
7 | 徳島ヴォルティス | 4.56 | 4.55 | 5 | 4.57 | 5 |
8 | 大分トリニータ | 3.98 | 3.73 | 10 | 4.24 | 9 |
9 | 湘南ベルマーレ | 3.88 | 3.82 | 8 | 3.95 | 11 |
10 | 横浜FC | 3.81 | 3.32 | 14 | 4.33 | 8 |
10 | 町田ゼルビア | 3.81 | 3.77 | 9 | 3.86 | 13 |
12 | V・ファーレン長崎 | 3.72 | 3.36 | 13 | 4.10 | 10 |
13 | 愛媛FC | 3.65 | 3.64 | 11 | 3.67 | 14 |
14 | 京都サンガ | 3.51 | 3.14 | 16 | 3.90 | 12 |
15 | 水戸ホーリーホック | 3.33 | 3.45 | 12 | 3.19 | 18 |
16 | レノファ山口 | 3.21 | 3.14 | 16 | 3.29 | 16 |
17 | ロアッソ熊本 | 3.16 | 3.27 | 15 | 3.05 | 20 |
18 | ファジアーノ岡山 | 3.14 | 3.09 | 18 | 3.19 | 18 |
19 | ツエーゲン金沢 | 3.12 | 2.67 | 22 | 3.57 | 15 |
20 | FC岐阜 | 3.07 | 2.90 | 19 | 3.24 | 17 |
21 | ザスパクサツ群馬 | 2.84 | 2.68 | 21 | 3.00 | 21 |
22 | カマタマーレ讃岐 | 2.63 | 2.77 | 20 | 2.48 | 22 |
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