■ 主力の怪我人が発生したボランチ陣ロシアW杯のアジア最終予選の初戦となるUAE戦は1対2の逆転負け。まさかの黒星発進となった。いくつかの厳しいジャッジが日本代表を難しい状況に追いやったのは確か。FW浅野拓のシュートがゴールと認められなかった件を含めたいくつかの審判団のジャッジに関してはいろいろと言いたくなるところもあるが、ボランチにMF大島僚(川崎F)を起用したことがポイントになったのは間違いないところである。
8月25日(木)にUAE戦(H)とタイ戦(A)の日本代表メンバーが発表されたがリストを見たときは「ボランチのスタメンはおそらくはMF柏木(浦和)。MF山口蛍(C大阪)が起用される可能性もある。」と思った。キャプテンのMF長谷部(フランクフルト)はほぼ間違いなくスタメンで起用されて、そのパートナーについては「MF柏木がスタメンになる確率が7割程度で、MF山口蛍になる確率が3割程度」だと考えていた。
MF長谷部とMF柏木とMF山口蛍以外の選手がWボランチで起用されることに関してはほぼ想定していなかったのでスタメン表を見たときにMF大島僚(川崎F)の名前が記載されていることに気が付いたときはかなり驚いたがMF柏木については怪我でベンチ外。MF山口蛍もコンディションが万全ではないという状況であれば十分にあり得る選択肢である。MF柏木とMF山口蛍が揃って使いにくい状態になったのは不運だった。
■ MF大島僚なのか?MF遠藤航なのか?その他の選手でボランチでプレーできるのは追加招集されたMF遠藤航(浦和)である。手倉森JAPANのときは不動のボランチとして活躍しており、フル代表でも何度かボランチで試されている。当然、「MF長谷部とMF遠藤航のWボランチ」という選択肢もハリルホジッチ監督の頭の中にはあったと思うが最終的にはリスクを覚悟した上で「MF大島僚をスタメンで起用する。」という決断を下すことになった。
その理由としてはいくつか考えられるが直近のリオ五輪の本大会でMF大島僚が素晴らしいプレーを見せたことは大きな理由だったと考えられる。一方のMF遠藤航はリオ五輪の本大会では思うようなプレーはできなかったので「直近の大会の印象度」ではMF大島僚の方がはるかに上。また、UAE戦は「日本がボールを支配する展開になること」が予想されていたこともパサーのMF大島僚の起用を決断した理由と言える。
さらに言うとMF遠藤航は怪我で代表を辞退することになったDF槙野とDF長友の代わりに追加で選出された選手である。同時にDF丸山(FC東京)も招集されているがメンバー構成的には「ボランチの控えというよりは右SBの控え」という立ち位置だったのでMF遠藤航をスタートからボランチで起用したときにSBの選手に怪我人が発生すると困った事態に陥る可能性が無いとは言えず。ややリスクがあった。
■ 起用したハリルホジッチ監督に責任があるのは確か。そのあたりの事情から思い切ってMF大島僚をスタメンで起用したと思うが結果的には裏目に出てしまった。プレッシャーのかかるフル代表のデビュー戦がいきなりアジア最終予選の初戦というのはどんな選手でも難しい。ハリルホジッチ監督が試合後の会見でコメントした通りで「MF大島僚が悪いのではなくて起用した自分(=ハリルホジッチ監督)が悪かった。」というのは正しい見方と言えるだろう。
ボランチについては「経験豊富な選手を入れておくべきだったのでは?」という意見もあるが、ザックJAPANのときはMF遠藤とMF長谷部が大半の試合でスタメン起用されており、2013年7月の東アジアカップでMF山口蛍が台頭してくるまでは「3番手のボランチ」が見つからない状態だった。ブラジルW杯のときはMF青山敏(広島)も選出されたが「適度な経験を持ったボランチ」は残念ながらほぼいない。
後半の終盤になってMF大島僚を下げてMF原口を投入すると前への推進力が出てきた。MF原口の投入に関しては効果的だった。なので「そもそもとしてMF原口をボランチのスタメンで起用すれば良かったのではないか?」という意見も出ているがこれは完全な結果論と言える。次のタイ戦(A)は最初からMF原口をボランチの位置で起用する可能性もあるがUAE戦(H)の試合前の段階では選択肢には入ってこない。
■ アジア最終予選は始まったばかり。以上を簡単にまとめてみると次のようになる。
・MF柏木は怪我でベンチ外。MF山口蛍も万全の状態ではない。
・スタメンの可能性があったのはMF大島僚とMF遠藤航の2人。
・直近のリオ五輪の本大会のパフォーマンスはMF大島僚の方がはるかに上。
・MF原口をボランチで起用するのはリスクが高い。ボランチ経験も不足している。
・試合前は日本がボールを支配して攻め込む展開になることが予想されていた。
この5点を考慮するとMF大島僚をスタメンで起用したハリルホジッチ監督の選手起用は妥当だったと思う。(※ どちらかというと消去法でのスタメンだった。)ただし、フル代表のデビュー戦というプレッシャーもあって積極的なプレーはできなかった。どんな選手でも緊張してガチガチになるフル代表のデビュー戦がアジア最終予選の初戦と重なってしまったのはMF大島僚にとってはかなり不運だったと言える。
前半のMF大島僚は効果的な縦パスを入れる場面もあったが同点ゴールの場面では自身のパスミスがカウンターのきっかけになってしまった。他にはボールを奪い取りたいシチュエーションで外されるシーンがいくつかあったので「さすがにハーフタイムでテコ入れを図るだろう。」と考えていたのでそのままハームタイムでは選手交代を行わず前半の11人が後半も登場してきたことに関してはちょっと驚いた。
UAEはカウンターが鋭くて、かつ、パス回しも洗練されている。人数をかけて奪いどころが見つかったときにかわされる大ピンチにつながってしまう。最終的には後半にPKを献上した場面もボールを奪いきれなかったことが致命傷になったが、『MF大島僚をスタメンで起用したことは納得できるが、ハーフタイムでテコ入れを図らなかったことは大きな疑問』と言える。ハリルホジッチ監督の大きなミスだったと思う。
いずれにしろ、MF大島僚にとっては厳しいフル代表デビュー戦となったが、普段通りの力を発揮できるとハリルJAPANにとって大きな戦力になるのは間違いないところであり、今シーズンの川崎Fでの活躍具合や手倉森JAPANでの活躍具合を考えると「フル代表に名を連ねていること」については何ら疑問はない。まだアジア最終予選は始まったばかりなので自らの力で汚名を返上してほしいところである。
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