■ セレーゾ監督の発言J1の第11節の浦和と鹿島の試合の後、鹿島のセレーゾ監督が「Jリーグのレフェリーのレベルは20年前と変わっていない。」という発言をした。この発言には、「批判の矛先が自分の采配ミスに向かないようにする。」という意図も込められていると思うが、さすがに、鹿島のサポーターはサッカーをよく分かっているので、「誤審はあったが、監督の采配も良くなかった。」という冷静な意見が多かった。
ただ、セレーゾ監督の気持ちも分かる。彼が20年前のことをどの程度知っているのか、また、2006年から2012年までのことをどのくらい知っているのか、疑問に感じるが、以前、セレーゾ監督が鹿島を指揮していた2000年から2005年というのはレフェリーのレベルはそれほど高くなかった。むしろ、20年の中で、もっともクオリティーの低い時代だったと言える。
レフェリーの世代交代の時期と重なって難しい時期だったが、J1の中でも信頼のおけるレフェリーは少なくて、選手と信頼関係を築くことができずに、荒れる試合を演出するレフェリーが多かった。セレーゾ監督には、当時のことが強く残っていると思うので、今回、エキサイトしてこういう発言をしたのだと思う。心情は理解できるが、率直に言うと、セレーゾ監督の認識は間違っていると思う。
Jリーグの試合を頻繁に観ている人で、「近年、日本人レフェリーのレベルが上がっている。」ということに気が付かない人はほとんどいないと思う。2010年の南アフリカW杯で西村レフェリーが世界的な評価を受けたことが一例として挙げられるが、全体のレベルも上がって来て、試合を壊すレフェリーというのが少なくなった。もちろん、ゼロではないが、特にJ1のレフェリーの質の向上は目を見張るものがある。
■ コミュニケーション能力大きく変わったのは、コミュニケーション能力の高いレフェリーが多くなったことである。上層部が「コミュニケーション能力」というものを重要視していて、選手と会話のできる人材を育てることに力を入れてきたが、その成果が表れてきていると感じる。試合中に積極的に選手と会話をして意思疎通を図ろうとするレフェリーが多くなってきた。
そして、選手側の意識も高くなっている。荒れる試合が目立った2000年代の前半から中盤の時期というのは、レフェリーのことを信頼しておらず、彼らを尊重しようという姿勢が見られない選手が少なくなかった。しかしながら、クラブが選手たちをしっかりと教育するようになって、試合中にレフェリーとバトルを繰り広げるなどといった無駄なことに力を注ぐ選手はほとんどいなくなった。
もちろん、レフェリングの技術が上がっていることも大いに関係していると思われる。日本人はきっちりした性格の人が多いので、レフェリーという職業に向いている人が多いのでは?と思うが、技術が上がると、試合中のミスが少なくなって、選手からも信頼されるようになるし、余裕を持って試合を裁くことができるようになる。いいこと尽くめである。
■ 優秀な人材が集まる土壌よって、明らかに日本人レフェリーのレベルは上がってるが、「上がって来ている。」と感じていない人もいる。セレーゾ監督は日本を離れていた時期が長いので、仕方がないと思うが、(審判員の宿命とはいっても、)何もないときはニュースにならなくて、何か問題が起こった時だけニュースになる状態が続いているので、「常に問題が起こっている。」と錯覚する人が出てきても不思議はない。
個人的に思うのは、もっとレフェリーの人の考え方や活動内容を広める努力をしてもいいのではないか?と思う。2013年の開幕戦の仙台と甲府の試合は上川徹審判委員長がゲストとして招かれていたが、レフェリーが試合中や試合前や試合後にどんなことを考えているのかというのは知る機会が少ないので、こういうのは意味のあることだと思う。
改めて言うまでもないが、この先、さらにレフェリーの質を向上させていくためには、優秀な人材が集まる土壌を作り上げていくことが大事になってくる。そして、これは、審判団の努力だけでは不可能である。誤審が起きたときだけ大騒ぎして主審や副審がバッシングを浴びるような状態が続くようだと、「レフェリー目指そう。」という人が減ってくることも十分に考えられる。
サッカーに関わり始めて間もない人にとっては、いいレフェリーとは、応援しているチームに有利な判定を下すレフェリーであり、良くないレフェリーとは、応援しているチームに不利な判定を下すレフェリーとなるが、応援しているチームに有利だった・不利だったということに捉われることなく、フラットな視線でレフェリーを評価できるサポーターが増えて来ないと、これ以上のレベルアップは望めない。
誤審があったとき、「おかしいだろう。」と批判することは、誰にでも出来ることで、既存のメディアにも出来ることであるが、いいジャッジが下された時、スムーズに試合が進行した時など、審判員のファインプレーがあったときに、そのことをきちんと評価できる人というのは、なかなかいない。今回の騒動を通して、個人的には、もっと「レフェリーを評価する目」を養って、そういう1人になりたいと感じた。
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