■ 2試合目の相手はカンボジアロシアW杯の二次予選の2試合目。6月14日(火)に行われたシンガポールとの初戦はホームでまさかのスコアレスドローに終わったハリルホジッチ監督率いる日本代表が埼玉スタジアム2002でカンボジアと対戦した。カンボジアのFIFAランキングは180位。日本とカンボジアが対戦するのは1972年7月12日以来。このときはヤンマーのFW釜本が4ゴールを挙げて4対1で日本が勝利している。実に43年ぶりの対戦となる。
日本は「4-2-3-1」。GK西川。DF酒井宏、吉田、森重、長友。MF長谷部、山口蛍、本田圭、香川、武藤嘉。FW岡崎慎。CBのレギュラーだったDF槙野が怪我で離脱したため、FC東京のDF森重がスタメンで起用された。MF宇佐美はベンチスタートで、ドイツのマインツに移籍して早速ゴールを挙げる活躍を見せたMF武藤嘉がスタメンに抜擢された。DF長友は1月のアジアカップのUAE戦以来なので久々の代表戦となった。
ベンチスタートになったのはG大阪のGK東口、仙台のGK六反、ハンブルガーSVのDF酒井高、G大阪のDF丹羽大、G大阪のDF米倉、FC東京のDF丸山、鹿島のMF柴崎岳、湘南のMF遠藤航、G大阪のMF宇佐美、名古屋のMF永井謙、ヘルタ・ベルリンのMF原口、浦和のFW興梠の12名。東アジアカップで初選出されて右SBならびにボランチのポジションで好プレーを見せたMF遠藤航が唯一の五輪世代となる。
■ 3対0で日本が勝利して二次予選の初勝利試合は大方の予想通りに日本が攻め込む展開となる。しかし、シンガポール戦(H)と同様で縦への意識が高すぎて雑な攻撃になってしまう。何度かあったゴール前のシーンもシュートチャンスには結びつけることができず。0対0の時間帯が続いてかなり嫌な雰囲気になったが、前半28分にMF山口蛍の横パスを受けたMF本田圭が左足でシュート。キーパーの正面に飛んだシュートだったが、キーパーは止めることができない。
ややラッキーな形で先制ゴールを奪った日本は、その後、トップ下のMF香川に2度決定機が訪れるが決められず。1対0で前半を折り返す。迎えた後半5分にMF山口蛍のパスからいいタイミングで上がってきたDF吉田がミドルシュート。これが決まって2対0とリードを広げる。さらに後半16分にはゴール前の混戦からMF香川が右足で決めて3点目。MF香川はこの試合における3度目のチャンスをゴールに結びつけた。
3対0になってからは本来のパス回しができるようになる。途中出場のMF宇佐美が何度か決定機を迎えるなど流れは良くなったが、4点目のゴールは奪えず。結局、3対0で日本が勝利した。シュートの本数自体はかなり多かったが、内容的にも、スコア的にも、かなり物足りない試合だったのは間違いないところである。1勝1分けとなった日本は第3戦でアフガニスタンと対戦するが、これは中立地での開催となる。
■ 自信を失ったままの日本代表6月に行われたW杯二次予選の初戦のシンガポール戦(H)は引き分けで、8月上旬に行われた東アジアカップは3試合で勝利なし。4試合勝ちなしでカンボジア戦(H)を迎えたが、特に前半はネガティブな雰囲気が漂っていた。「キーパーのミス」という形で先制ゴールを奪うことができたが、あのまま0対0で進んでいたら重苦しい雰囲気になっていたのは確実である。そういう意味でもMF本田圭の先制ゴールは大きかった。
2014年のブラジルW杯以降の日本代表のように思うような結果が出ていないチームにはありがちなことであるが、選手は100%の自信を持ってプレーすることができていないのでプレーが臆病になってしまう。そして、サポーターも「本当に日本代表は大丈夫なのか・・・。」という不安を抱えながら試合を観戦しているが、そういう面もいい方向には左右しない。0対0のスコアのときの埼玉スタジアムは妙な雰囲気だった。
「サッカーはメンタルが重要となる競技である。」とよく言われる。もちろん、自分たちの実力を過信することで生じるデメリットも少なくないが、必要以上に実力を卑下することもデメリットが大きい。うまく双方のバランスを取ることが大事になってくるが、たいていの場合、(勘違いであってもOKなので、)「自分たちは強いんだ。」というメンタリティを持って試合に入ることができた方が好結果につながりやすい。
後半16分に3点目を奪った後は落ち着きを取り戻したが、0対0のスコアのときの攻撃はクオリティが低かった。なぜか選手全員が縦に急ぎすぎていて攻撃は闇雲にサイドからクロスを上げるだけ。インテリジェンスを全く感じさせないレベルの低いサッカーだった。フィールド上の誰1人として縦に急ぎすぎている日本代表イレブンにブレーキをかけることができなかった。これは非常に残念な話である。
■ 期待されたMF武藤嘉紀は持ち味を出せず・・・。スタメンに関してはほぼ予想通りだった。「左サイドハーフはMF宇佐美が先発」と予想した人がもしかしたら多かったのかもしれないが、ブンデスリーガの3節のハノーファー96戦(H)で素晴らしいプレーを披露したMF武藤嘉を先発で起用。MF宇佐美は東アジアカップで結構な時間プレーしている。「このタイミングでMF武藤嘉を試す。」というのはいい考え方だったと思うが、MF武藤嘉は持ち味を出し切れなかった。
おそらく、右サイドハーフのMF本田圭のところでタメを作って、後方から上がってきた右SBのDF酒井宏がファーサイドにクロス。179センチというサイズの割には空中戦も強いMF武藤嘉が合わせるというイメージをハリルホジッチ監督は持っていたと思うが、MF武藤嘉の良さが発揮される場面はほぼ無かった。ハリルホジッチ監督の考え方は決して悪くなかったと思うが、思惑通りにはことは進まなかった。
推進力のあるMF武藤嘉を先発で起用したことも「慌ただしいサッカーになった一因」と言わざる得ない。MF武藤嘉も前方にある程度のスペースがないと生きにくいタイプである。完全に結果論であるが、こういう引いた相手を崩さなければならないときは狭いスペースでも生きる技術を持っているMF宇佐美の方がベターなのかもしれない。いずれにしてもこの2人のポジション争いは拮抗しているのでなかなか面白い。
■ トップ下では不発、サイドに回って存在感を発揮した香川真司後半5分にDF吉田がミドルシュートを決めた後、後半16分にMF香川が3点目のゴールを決めて試合の行方はほぼ決まったが、注目されたMF香川は前半に訪れた2つの決定機を決められなかった。このことは印象として良くない。先制した後、早い時間帯で2点目を奪うことができていたらもっと落ち着いたサッカーになったと思うが、「決めなければならない。」というイージーなシュートを連続して外してしまった。
MF香川は後半16分に3点目のゴールを決めたので及第点の評価はできるが、トップ下でプレーしていた時間帯はなかなかボールに触ることができなかった。これだけ守備を固められるとスペースがほとんどなくなるので仕方がないところもあるが、相手にドン引きされるとFW岡崎慎とMF香川の2人は完全に消えてしまう。守備を固めてくるチームを相手に日本代表が苦戦することが多い理由の1つと言わざる得ない。
ただ、後半8分あたりでMF香川とMF武藤嘉のポジションを変更してからはMF香川がボールに触る回数が激増して、左サイドがにわかに活気づいた。MF香川とDF長友で構成する左サイドはザックジャパンのときは大きな武器になっていたが、さすがにこの日も関係は良かった。ハリルジャパンではトップ下での起用が続いているが、彼を左サイドに置くことで生まれるメリットも多いのでオプションの1つになりえる。
■ 余裕のないハリルホジッチ監督前述のとおり、この日の日本代表は特に前半の出来が非常に悪かった。らしくないサッカーになってしまったが、ハリルホジッチ監督の落ち着きのなさというのもピッチ上の選手にマイナスの影響をもたらしているように感じる。もちろん、1つ1つのプレーに対して喜怒哀楽を出すことは決して悪いことではないが、これだけアクションが大きいとピッチ上の選手は監督の顔色をうかがいながらプレーせざる得なくなる。
多くの練習や合宿や試合をこなしてハリルホジッチ監督の性格や試合中のアクションが日本代表の選手たちに理解されてきたら、「これはポーズなのだろう。」とか、「怒っているように見えるけれども無視しても大丈夫だろう。」などハリルホジッチ監督に対する接し方も分かってくるが、まだ就任して半年ほどしか経過しておらず、海外組を含めたメンバーではまだ5試合のみ。未知な部分は多いはずである。
ここ4試合は結果も内容も芳しくない。ナーバスになるのは仕方がない部分もあるが、監督が感情的になっても得をすることはほとんどない。シンガポールにしても、カンボジアにしても、日本代表とは力の差があるのは明らかである。ドンと構えて「前半の45分間あるいはトータルの90分間でゴールを奪うことができればOK」という雰囲気を作り出すことができれば選手たちは落ち着いてプレーできるが・・・。
ブラジルW杯の日本代表を指揮したイタリア人のザッケローニ監督は試合中に喜怒哀楽を出すことはほとんど無かった。「選手たちを見守っている。」というシーンが多かった。一方、後任のメキシコ人のアギーレ監督は強面だったが肝は据わっていた。同じように「試合中はピッチ上の選手に任せる。」という風な感じで落ち着いて試合を観ている印象が強かったが、ハリルホジッチ監督はちょっと違っている。
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