■ J1の第6節J1の第6節。3勝2敗で勝ち点「9」の名古屋グランパス(6位)と、3勝1敗1分けで勝ち点「10」のサンフレッチェ広島(3位)が豊田スタジアムで対戦した。J1は5節を終えた時点で4勝1敗で勝ち点「12」の鹿島が首位を走っているが、名古屋は6位で、広島は3位なので、ともにまずまずの位置に付けている。昨シーズンの対戦は2試合とも1対1の引き分けに終わっている。
ホームの名古屋は「4-2-2-2」。GK楢崎。DF刀根、大武、闘莉王、本多。MF磯村、田口、矢田、小川。FWケネディ、玉田。右SBは5節の川崎F戦は大卒2年目のDF牟田が起用されたが、この日は、東京Vから移籍のDF刀根が起用された。名古屋は右SBを除くとスタメンが固定されているが、この試合はMFダニルソンとMF枝村がベンチスタートで、6年目のMF田口と大卒ルーキーのMF矢田がスタメンで起用された。
対するアウェーの広島は「3-4-2-1」。GK林卓。DF塩谷、千葉、水本。MF森崎和、青山敏、ミキッチ、柏、石原、高萩。FW佐藤寿。4月7日(月)から千葉で行われる日本代表候補合宿にはDF塩谷、DF水本、MF青山敏、MF高萩、MF石原の5人が選出されており、DF塩谷とMF石原は初のフル代表選出となった。五輪代表候補のMF野津田、FW浅野の2人はベンチスタートで、左WBは甲府から加入のMF柏が起用された。
■ アウェーの広島が圧勝試合は前半6分にホームの名古屋が先制する。バックパスを受けたキーパーのGK林卓に対してFWケネディがプレッシャーをかけると、FWケネディが出した足に当たったボールがそのままゴールに吸い込まれてラッキーな形で名古屋が先制する。しかし、前半19分にMF高萩の絶妙のパスを受けたFW佐藤寿が素晴らしい抜け出しから左足でゴールに流し込んで広島が1対1の同点に追い付く。
1対1で迎えた後半は広島ペースとなる。すると後半11分にMFミキッチの横パスを受けたDF塩谷がペナルティエリア内でストライカーのような動きから相手をかわして左足を振り抜くとこれが決まって2対1と逆転に成功する。DF塩谷は今シーズン4ゴール目となった。さらに後半18分には相手のハンドで得たPKをFW佐藤寿が確実に決めて3対1とリードを広げる。FW佐藤寿は今シーズン4ゴール目となった。
勢いの止まらない広島は後半20分にMF柏の折り返しからMF石原が決めて4点目を奪う。名古屋は途中出場のFW松田力の頑張りから得たPKをFWケネディが決めて後半40分に1点を返すが、後半43分に広島はカウンターから途中出場のMF野津田が決めて5点目を挙げる。MF野津田はリーグ戦は2ゴール目で、ACLを含めると3試合連続ゴールとなった。結局、5対2でアウェーの広島が圧勝して勝ち点「3」を獲得した。
■ 有望な若手が多い名古屋広島はミッドウイークに韓国に遠征してFCソウルと対戦したが、不可解なジャッジに悩まされた。広島は疲れを溜めた状態で名古屋と対戦することになったので、名古屋が試合の主導権を握る展開になるかと思われたが、予想外の大差が付いた。相手のキーパーのGK林卓のミスに付け込んで幸運な形で名古屋が先制したが、広島はモチベーションが高くて、立ち上がりからいいサッカーを見せた。
後半は名古屋の集中力が切れてしまったところもあるが、この試合の広島は高い位置でボールを奪ってチャンスを作るシーンが非常に多かった。今シーズンもどちらかというと「5-4-1」でブロックを作って、引いて守って相手の攻撃を受け止める試合が多かったが、この日はいつもとは違っていた。ソウルで何とも言えない思いをしたことがモチベーションになったのか、攻守両面で質の高いサッカーを見せた。
西野監督が就任した名古屋も今シーズンはコンビネーションから崩すサッカーにチャレンジしているが、長年の積み重ねがある分、広島が圧倒的に有利である。名古屋もいい感じでプレスをかけて追い込む場面を作ったが、広島の選手は全く慌てることなくプレスをかいくぐってチャンスを作った。広島もミスが無かったわけではないが、ビルドアップのところでは大きな差があったと言わざる得ない。
これで名古屋は3勝3敗となったが、6試合で勝ち点「9」というのは悪くない。若い選手が多くて、非常に伸びシロの大きいチーム構成になっているが、この試合も大卒ルーキーのMF矢田がスタメンで起用された。リーグ戦は初出場だったが、出来としては悪くは無かった。決定的な仕事はできなかったが、非常に技術の高い選手で、レフティ特有のセンスの良さを感じさせるプレーヤーである。
170センチで64キロなのでサイズ的には恵まれていないが、MF藤本淳が移籍して、今の名古屋にはいないタイプのアタッカーなので、面白い存在と言えるのではないか。また、同じく大卒ルーキーのFW松田力も途中出場でPKをゲットするなど、この日もアグレッシブなプレーが光った。今の名古屋は有望な若手がたくさん抱えているが、西野監督もうまい具合に若手を使っているので活気がある。
■ ノリノリのDF塩谷司一方の広島はキーパーのミスから前半6分に先制ゴールを許した。非常に嫌な展開だったが、今シーズンの広島は相手に先制されても跳ね返すことができるので、昨シーズン以上の強さを感じる。名古屋の出来は悪くはなかったと思うが、その相手からアウェーで5点を奪った。FCソウルとの試合はモヤモヤする結果となったが、この試合は2連覇中の王者・広島の強さを感じる試合だったと言える。
2ゴールを奪ったFW佐藤寿、4点目のゴールを決めたMF石原、同点ゴールをアシストしたMF高萩の活躍も光ったが、何と言っても、DF塩谷である。これでリーグ戦は6試合で4ゴールで、ACLは4試合で2ゴールなので、合計すると10試合で6ゴールとなった。右ストッパーのポジションで、かつ、PKを蹴る選手ではないことを考えると異常な得点力であり、ノリに乗っている選手と言える。
逆転ゴールの場面は完全にストライカーの動きだった。今シーズンのDF塩谷はゴール数も尋常ではないが、1節のC大阪戦(A)のボレーシュートしかり、2節の川崎F戦(H)の直接FKしかり、5節の徳島戦(H)の直接FKしかり、あっと驚くようなシュートをたくさん決めている。数字もさることながら、印象度も非常に強くて、この日の逆転ゴールも鮮やかなシュートだった。(なおかつ、勝負どころでゴールを決めている。)
2012年のシーズン終了後にDF森脇が浦和に移籍して、空席となった右ストッパーのポジションを確保した。2013年からレギュラーに定着して、中盤戦以降は攻撃的なセンスを備えていることをピッチ上で示していたが、ここまでではなかった。今の日本サッカー界でもっとも旬な選手と言えるが、注目されることをエネルギーに変えて、1試合ごとに成長を遂げているので、今のDF塩谷は手が付けられない。
1つ気になるのは、先日のFCソウル戦(A)から不用意なパスミスがいくつかあることである。日本代表に呼ばれる選手になると、多くの人が注目するようになるので、自然と要求されるレベルも高くなる。ちょっとしたミスも批判の対象になってくるので、軽率なミスはこれまで以上に注意して減らす必要があるが、非常に頭のいい選手なので、同じ失敗を2度・3度と繰り返すような選手には見えない。
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