■ 第30節J1の第30節。16勝8敗5分けで勝ち点「53」のサンフレッチェ広島(3位)と、11勝7敗11分けで勝ち点「44」のベガルタ仙台(8位)がエディオンスタジアム広島で対戦した。J1の優勝争いは、首位の横浜FMが勝ち点「56」、2位の浦和が勝ち点「54」、3位の広島が勝ち点「53」、4位のC大阪と5位の鹿島が勝ち点「50」となっている。土曜日に行われるのは広島と仙台の試合だけなので、広島としては、勝ってライバルチームにプレッシャーをかけたい。
ホームの広島は「3-4-2-1」。GK西川。DF塩谷、千葉、水本。MF青山敏、森崎和、ミキッチ、ファン・ソッコ、石原、高萩。FW佐藤寿。唯一、レギュラーが固定されていない左WBは韓国代表のMFファン・ソッコがスタメンで起用された。エースのFW佐藤寿は29試合で17ゴールを挙げてJ1の得点ランキングの2位タイに付けている。1位のFW大久保(川崎F)は22ゴールなので5ゴール差で追っている。
対するアウェーの仙台は「4-2-2-2」。GK林。DF菅井、渡辺、角田、石川直。MF富田、松下、太田吉、梁勇基。FWウイルソン、赤嶺。センターバックのDF鎌田が出場停止のため、DF角田がCBに回って、MF松下がボランチでスタメンとなった。29節の名古屋戦(H)で劇的な決勝ゴールを挙げたFWウイルソンはチームトップの11ゴールを挙げている。FW赤嶺は2試合連続スタメンとなったが、ここまで23試合で2ゴールと不振が続いている。
■ 1対0で広島が勝利試合の前半はホームの広島が圧倒する。2連覇のためには絶対に勝ち点「3」が必要な広島はポゼッションで上回ってMFミキッチらのクロスから何度も決定機を作る。一方の仙台は29節の名古屋戦(H)で2ゴールを挙げて勝利に大きく貢献したFWウイルソンのところにボールが入らなくて、前半はほとんどシュートシーンを作れない。結局、前半はホームの広島が主導権を握り続けたが、フィニッシュの精度を欠いて0対0で終了する。
後半になると、仙台も攻撃の形を作るようになって互角の展開となる。3位の広島との差は「9」なので、大逆転でのACL出場権獲得の望みが無いわけではない仙台は勝つしかない試合ということもあって、FW柳沢、MF武藤と攻撃的な選手を次々に投入。MF梁勇基をボランチの位置に下げて、積極的に勝ち点「3」を狙いに行くが、後半39分に仙台の超・攻撃的な布陣が裏目に出てホームの広島が先制ゴールを奪う。
まずは仙台がボールを奪ってカウンターを仕掛けるが、中央のFW柳沢からサイドに展開しようとしたパスが弱くて右ストッパーのDF塩谷にカットされて広島が逆カウンターのチャンスを迎えると、最後は、MF青山敏の絶妙のパスを受けたMF石原が豪快に決めて待望の先制ゴールを奪う。MF石原は首位攻防戦だった7月31日の大宮戦(H)でハットトリックを決めて以来なので久々のゴールで、今シーズン8ゴール目となった。
結局、試合は1対0でホームの広島が勝利して、勝ち点は「56」。1試合消化が多いので暫定ではあるが、横浜FMと勝ち点「3」が並んで、得失点差も同じで、総得点が上回っているので、首位に再浮上した。次節はアウェーで柏と対戦する。一方の仙台はここ5試合は3勝2分けと勝ち点を積み上げていたが、カウンターから失点して6試合ぶりの敗戦となった。J1は残り4試合となったが、この敗戦で「3位以内」というのは絶望的になったと言える。
■ クリーンな試合広島にとっては大きな勝ち点「3」となった。引き分けに終わっていると、日曜日に試合を行う横浜FMがちょっと心理的に楽になったが、とりあえず、横浜FMを上回ることができた。決定機に近い形が何度もありながら、シュートやクロスの精度を欠いてしまったので、0対0で終わりそうな雰囲気もあったが、MF青山敏→MF石原のラインから決勝ゴールが生まれた。MF石原は18節以来のゴールで約3ヶ月ぶりのゴールだったが、大きなゴールとなった。
0対0のままで終盤に突入したが、焦れなかったことが勝ち点「3」につながった。広島は優勝、仙台はACL圏内と目標は違うが、どちらも勝ち点「3」が必要な試合だったので、仙台はMF太田吉とMF松下を下げて、FW柳沢とMF武藤を投入して、FWウイルソン、FW柳沢、MF赤嶺、MF武藤という4枚を同時起用する思い切った策を講じたが、化粧ゴールのシーンでは攻撃的な選手起用が裏目に出たが、広島の方は無理なことはしなかった。
この試合は2012年のJ1の1位と2位の対決だったが、非常にクリーンな試合だった。もちろん、要所では激しいシーンもあったが、イエローカードは広島はゼロで、仙台も1枚だけ。この試合が終了した段階での今シーズンのJ1の「反則ポイント」のランキングでも、広島が1位で、仙台が2位となっているので、J1の中ではイエローやレッドが少なくて、異議のイエローカードもほとんど無いフェアなチーム同士の対戦と言えるが、試合自体もフェアなものだった。
試合中のエディオンスタジアム広島の雰囲気も良かった。正直なところ、中村太主審のレフェリングはいいとは言えなかった。自分のミスに気が付いてFKのシーンで仙台のMF富田に出したイエローカードを取り消した判断は良かったが、基準が定まらなくて、あやふやなところもあった。試合が荒れる要素になりうる危ういレフェリングだったが、最後まで、ピッチ上やスタジアムの雰囲気が大きく乱れることは無かった。
当然、ミスジャッジというのは試合が荒れる要素の1つで、前半のMF富田のイエローカードが取り消しになったシーンのような分かりにくいジャッジがあると、不利を被ったチームの選手やサポーターには「変な被害者意識」が生まれて、何でもないジャッジにもブーイングが起こるような事態に発展することもある。正当なジャッジであっても、ブーイングが飛び交うようなことになると、主審の精神状態もおかしくなって、さらにミスジャッジが生まれやすくなる。
したがって、危ない兆候はあったが、広島あるいは仙台のサポーターは、「おかしい。」と思うようなジャッジにはブーイングもあったが、自チームが不利になるようなジャッジであっても、正当なジャッジに対して過剰反応する人はいなかった。そのため、試合が壊れることはなかった。こういうメリハリがあるのが当たり前だと思うが、意外とそうでないスタジアムも多くてうんざりするときもあるが、ビッグアーチに来た両チームのサポーターは上質だったと言える。
■ 失点につながったミス一方の仙台は後半は盛り返したが、決定機と言えるようなシーンはほとんど無かった。運にも味方されて0対0で終盤まで進んでいたので、勝ち点「1」を得るチャンスはあったが、どうしても勝ち点「3」が必要な試合なので、リスクがあることは承知の上で、手倉森監督はフォワードの選手を4枚並べるような「超・攻撃的布陣」を採用したが、成功はしなかった。ただ、普通の選手交代をしただけでは点が入りそうな感じはなかったので、仕方がない。
悔やまれるのは失点シーンである。ボールを奪って、うまくボールを前に運んで、中央でFW柳沢がボールを受けて、左サイドに展開しようとしたが、左に出したパスがやや弱かったので、DF塩谷にインターセプトされてしまった。その後、ボランチのMF青山敏にパスが渡って、最後は、MF青山敏のスルーパスからMF石原がネットを揺らしたが、ボールを奪われた後の対応に大きな問題があった。
簡単に言うと、ボールを失った後、FW柳沢とFW赤嶺の動きが止まってしまった。少なくともどちらか1人は全速力で戻らなればならないシーンであり、どちらか1人でもきちんと戻っていればボランチのMF富田がサイドに出ていく必要が無かったので、MF青山敏がフリーになることもなかった。結局、守備の枚数が足りなくなったので、1つずつマークがズレてしまって、MF青山敏もフリーになって、MF石原もフリーになった。
FW柳沢という選手は、本来は、攻撃から守備への切り替えの意識が非常に高い選手である。しかも、自分のパスミスでカウンターを食らいそうになったので、ここで動きを止めてしまったことは責められても仕方がない。FW柳沢が守備をサボるようなシーンというのはあまり観たことが無いので意外だったが、投入されてから18分ほどしか経過していないので、体力的な問題は無かったはずなので、ベテランらしくない判断ミスであり、大きな代償を払う結果となった。
そして、MF赤嶺にも非がある。FW柳沢が投入されて、MF武藤が投入されて、あまり慣れていないサイドハーフでプレーすることになったので、気の毒なところはあるが、広島の選手が勢いよく前に出ていこうとしている状況であるにも関わらず、ジョギング程度でしか戻って来なかった。今シーズンは期待を裏切るシーズンになっているが、手倉森監督は復調させようと我慢して使ってくれているので、期待に応えたいところであるが、なかなかうまくいかない。
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