■ 第24節J1の第24節。4勝14敗5分けで勝ち点「17」の湘南ベルマーレ(16位)と、8勝6敗9分けで勝ち点「33」のベガルタ仙台(11位)がShonan BMWスタジアム平塚で対戦した。J1の残留争いは、14位の鳥栖が勝ち点「26」、15位の甲府が勝ち点「24」、16位の湘南が勝ち点「17」、17位の磐田が勝ち点「15」、18位の大分が勝ち点「10」となっており、夏の補強に成功した鳥栖と甲府の2チームが残留争いから抜け出しそうな気配もある。
ホームの湘南は「3-4-2-1」。GK安藤。DF遠藤航、大野、島村。MFハン・グギョン、永木、宇佐美、高山、大竹、菊池。FWウェリントン。23節の柏戦で5失点と守備が崩壊したこともあって、メンバーを大幅に入れ替えてきて、GK安藤、MF宇佐美、MF菊池、FWウェリントンらがスタメンで起用された。MF高山とMF永木の2人がチームトップとなる3ゴールを挙げている。新戦力のFWステボはベンチスタートとなった。
対するアウェーの仙台は「4-2-2-2」。GK林。DF石川大、鎌田、角田、石川直。MF富田、梁勇基、太田吉、松下。FW武藤、ウイルソン。夏に広島からレンタル移籍のDF石川大は右SBで3試合連続スタメンとなった。ベテランのFW柳沢はベンチスタートで、大卒3年目のFW武藤が2トップの一角でスタメンとなった。スタメンは4回目で、これまで17試合に出場しているが、シーズン初ゴールは生まれていない。
■ 3対2で湘南が逃げ切る!!!試合は前半32分にホームの湘南が先制する。左サイドでCKを獲得すると、MF大竹が左足で蹴ったボールを183センチのDF島村が合わせて貴重な先制ゴールを奪う。しかし、前半37分に仙台はペナルティエリア内のMF太田吉のキープからMF梁勇基が右サイドでボールを受けて精度の高いクロスを入れると、これをFWウイルソンがヘディングで決めて1対1の同点に追い付く。前半は1対1で終了する。
追いつかれた湘南は、後半13分に右サイドのCKを得ると、仙台のキーパーのGK林が強風のため目測を誤ってファンブルしたボールに素早く反応したDF島村が押し込んで2対1とリードを奪う。DF島村はここまでゴールは無かったが、1試合で2ゴールとなった。さらに後半19分には、右ストッパーのDF遠藤航の精度の高いロングキックから相手2人と競り合いながらFWウェリントンが頭で押し込んで3対1とリードを広げる。
しかし、後半39分に仙台は途中出場のDF蜂須賀の粘りからPKを得ると、これをFWウイルソンが決めて1点差に迫る。FWウイルソンは今シーズン8ゴール目となった。その後は、アウェーの仙台が一方的に攻め込んで、何度もゴール前のシーンを作るが、ホームの湘南が何とか守り切って3対2で終了。16位と降格圏の湘南にとっては、希望の光がさしてくる貴重な勝ち点「3」となった。
■ 期待に応えられない武藤雄樹今シーズンの仙台は怪我人の多さで苦しんでいる。守備の要であるDF上本は長期離脱中で、右SBのDF菅井とユーティリティーなDF田村も欠場が続いている。さらには、FW赤嶺も18試合で2ゴールと結果を出せておらず、台所事情は苦しい。この日も、最後の最後に猛反撃を見せたが、及ばなかった。これで4試合勝利なしとなったが、ACL圏内とも降格圏内とも差があるので、目標を見つけにくい状況になりつつある。
前半32分にCKからDF島村に先制ゴールを許したが、前半37分にFWウイルソンのゴールで同点に追いついた。後半開始からFWウイルソンを頂点とする3トップに変更して、「4-1-2-3」を用いてきたが、サイドを攻めきれなかった。右ウイングのFW太田吉、左ウイングのFW武藤が1対1で仕掛ける場面をなかなか作れなくて、中央で待っているFWウイルソンにいいボールを供給できなかった。
難しいシーズンになっているので、今後は、若手の台頭が期待されるが、大卒3年目のFW武藤には結果が求められる。スピードとキレと積極性があって、攻撃の中心の1人になってもおかしくないだけのポテンシャルを秘めているが、今シーズンは結果を出せておらず、18試合でノーゴールと期待を裏切っている。チャンスは貰っているので、ゴールという結果を出して、手倉森監督の評価を高めたいところである。
一方の守備陣は、東アジアカップの日本代表のGK林が精彩を欠いた。非常に風が強かったので、キーパーにとっては難しいコンディションだったが、2失点目は風のことを十分に考慮できておらず、完全なキャッチミスであり、3失点目もDFラインとのコミュニケーションが不足していて、十分な対応ができなかった。他にも、飛び出しが遅れるシーンがあって、この日は、珍しくミスが目立った。
■ キーマンは誰か?湘南にとっては、大きな勝ち点「3」となった。残留を果たすためには、15位の甲府がターゲットとなるが、甲府は勝ち点「25」で、湘南が勝ち点「20」なので、「5」差となった。残りは10試合となったが、2試合で逆転できる勝ち点差であれば、モチベーションを保つことができる。試合前の段階では「7」だったので、「リミット」と言える差だったが、「5」差になったので、15位の甲府が射程圏内に入った。
この日は、CBのDF島村が2ゴールを挙げる活躍を見せたが、いずれも、MF大竹のキックから生まれた。MF大竹は今夏、FC東京からレンタル移籍で移籍してきたが、ここまでの4試合は抜群の働きを見せており、2列目の中で、ファーストチョイスになりつつある。左足のキックの精度の高さに定評のある選手で、ドリブルで打開することもできるが、周りの選手を上手く使っていて、決定機を演出するプレーが目立っている。
FWウェリントンの3点目のゴールも価値がある。甲府のFWパトリック、清水のFWラドンチッチのような絶対的な存在感はなくて、スペシャルな選手とは言えないが、足元が柔軟で、タメを作ることもできる。大柄な割には、ソフトな印象もあるが、おそらく、2列目でもプレーできると思うので、同じく新戦力のFWステボが1トップに入って、シャドーにFWウェリントンとMF大竹が並ぶというのが、理想形と言えるのではないか。
■ 残留を目指すベルマーレJ1は下位の3チームが降格となるが、17位の磐田と18位の大分の2チームがここから巻き返すのは、難しいだろう。磐田は地力はあるが、9試合勝ちなしで、湘南戦(21節)も、甲府戦(24節)も引き分けだった。これまでに何度もあった浮上のチャンスをことごとく逃していて、15位の甲府との差は「9」と広がっている。もし、磐田がここから大逆転でJ1に残留できるようだと「奇跡の残留」と表現されることになるだろう。
対して、湘南には残留の可能性はある。残り10試合で甲府を逆転しなければならないが、キーを握るのは、ダブルボランチである。MF永木とMFハン・グギョンの2人が湘南の軸であり、J1昇格に大きく貢献した。コンビネーションも良好で、棲み分けも出来ているので、「J1でも十分に通用するダブルボランチ」だと思ったが、ともにJ1では苦戦を強いられており、他の選手を助けている余裕のない状態でプレーを続けている。
2人とも、実力的には、J1の中でも「上位クラスのボランチ」だと思うので、もうワンランク上のプレーができてもおかしくない。特に、中盤の底でMF永木がもっと余裕を持ってボールを裁くことができるようになったら、前の選手も楽になるし、後ろの選手も楽になる。攻撃においても、守備においても、大きなプラスになると考えられるので、チームの中心であるMF永木のパフォーマンスは要注目と言える。
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