■ 第23節J1の第23節。7勝10敗5分けで勝ち点「26」の清水エスパルス(13位)と、11勝6敗5分けで勝ち点「38」の鹿島アントラーズ(4位)がIAIスタジアム日本平で対戦した。清水は夏の移籍市場でFW大前とFWラドンチッチを獲得したが、C大阪に1対4(A)、浦和に0対2(H)で敗れて2連敗中。一方の鹿島は22節の試合で首位の横浜FMに2対1で逆転で勝利して4位に浮上。首位に立った広島との差が「6」と射程圏内となった。
ホームの清水は「4-1-2-3」。GK櫛引。DF石毛、平岡、ヨン・ア・ピン、吉田豊。MF村松、本田拓、杉山。FW大前、ラドンチッチ、河井。調子を落としているDFイ・キジェはベンチ外で、DF吉田豊が左SBに回って、DF石毛が右SBでスタメンとなった。デュッセルドルフからレンタル移籍のFW大前は3試合目のスタメンで、FWラドンチッチは5試合目のスタメンとなる。FWラドンチッチはすでに3ゴールを挙げている。
対するアウェーの鹿島は「4-2-3-1」。GK曽ヶ端。DF西、青木剛、山村、前野。MF柴崎、梅鉢、遠藤、土居、中村充。FW大迫。17試合で7ゴールを挙げているFWダヴィは欠場中で、FW大迫の1トップとなった。FW大迫は22節の横浜FM戦で同点ゴールと逆転ゴールをマークして勝利の立役者となった。ここまでの21試合で11ゴールを挙げているが、これは自己最多のゴール数となる。3年目のMF土居がトップ下に入る。
■ 4対3で清水が競り勝つ試合は開始12秒でアウェーの鹿島が先制する。右サイドでボールを受けたMF遠藤が相手のプレッシャーを外して左足のアウトサイドでニアにクロスを入れると、飛び込んできたFW大迫がうまく合わせて先制ゴールを奪う。さらに前半6分にも左サイドのCKを得ると、MF遠藤の蹴ったボールをロンドン五輪代表のDF山村が合わせて2点目を奪う。DF山村は今シーズン2ゴール目となった。
これで鹿島が試合を優位に進めるかと思われたが、前半20分にMF柴崎が負傷交代するアクシデントが発生。DF岩政が投入されて、センターバックのDF山村がボランチのポジションに移るが、前半31分にセットプレーの流れからFWラドンチッチに決められて清水が1点を返す。FW河井からゴール前に精度の高いボールが入って来たが、途中出場のDF岩政が相手を捕まえ切れずにFWラドンチッチに自由を与えてしまった。
1点を返した清水は、前半35分に左SBのDF吉田豊を下げて、FW高木俊を投入。3トップの左に入っていたFW河井を左サイドバックに下げるという攻撃的な交代を行うと、前半終了間際にロングボールからFWラドンチッチが落としたボールに反応したFW高木俊が頭で押し込んで2対2の同点に追い付く。FW高木俊は13節の仙台戦(H)以来となる今シーズン2ゴール目となった。前半は2対2で終了する。
勢いに乗る清水は、後半4分にもFWラドンチッチのポストプレーから裏を取ったFW高木俊が右足で落ち着いて決めて3対2と逆転に成功する。苦しくなった鹿島だったが後半21分にペナルティエリア内でMF山村がPKを獲得すると、これをFW大迫が決めて3対3の同点に追い付く。東アジアカップの日本代表のFW大迫はこの試合も2ゴールの活躍で、今シーズン13ゴール目となった。
追いつかれた清水は、後半42分にFW大前に代えてスピードのあるFW村田を投入。すると、その最初のプレーでFW村田が右サイドを駆け上がってゴール前にクロスを送ると、FW高木俊が右足で合わせて4対3と勝ち越しに成功する。結局、前半35分に投入された途中出場のFW高木俊がハットトリックを挙げる活躍を見せたホームの清水が4対3で競り勝って勝ち点「3」を獲得した。
■ プロ初のハットトリック開始6分で2対0となったときは、鹿島が圧勝するかと思われたが、1ゴール2アシストのFWラドンチッチと、3ゴールのFW高木俊の2人に引っ張られた清水が勝利した。22節を終えた段階で、清水は勝ち点「26」を稼いでおり、16位の湘南との差は「9」ある。まだ余裕はあるが、勝ち点「26」というのは、十分なものではない。負けが続くようだと「降格圏」を意識せざる得ない状況となるので、大きな勝ち点「3」だったと言える。
この日は、ゴトビ監督の選手交代の巧みさが光った。FWラドンチッチのゴールで1点差に迫ったが、全体の流れは悪くなかったので、早い段階で選手交代をしなければならないシチュエーションではなかった。しかし、ミスが多かった左SBのDF吉田豊に代えてFW高木俊を投入するという攻撃的な交代を行った。リズムが良くなっていた中で選手交代を行うことは、マイナスに働く可能性もあったが、結果は大成功だった。
FW高木俊はプロ初のハットトリック達成となったが、正直なところ、今シーズンのプレーぶりは、最悪に近かった。アグレッシブさが持ち味の選手であるが、考え過ぎているのか、ボールを持ったときの積極性が見られなくて、「気持ちが全く入っていない。」と感じられる試合もあった。完全に干されても、文句の言えないパフォーマンスが続いていたが、辛抱強く見守ってくれたゴトビ監督の期待に応えることができた。
どのゴールも良かったが、特に1点目のゴールが良かった。FWラドンチッチが落としたボールに反応して、右SBのDF西の裏を突いて頭で押し込んだが、プロ入り後、得意の右足で決める綺麗なゴールは多かったが、1つのパスで裏を取って決める形はそれほど多くなかった。ボールを持ったときだけでなく、ボールを持っていないときも持ち前のスピードが生きるようになると、もっと楽に点が獲れるようになるだろう。
1ゴール2アシストのFWラドンチッチの活躍も光った。コンディションが万全ではないようで、早い段階で途中交代となったが、存在感は抜群だった。DF青木剛やDF岩政とマッチアップすることが多かったが、ハイボールはほとんど競り勝っていて、3試合ぶりの出場となったDF岩政を翻弄するシーンが多かった。高さがあるのはもちろんのこと、足元の技術が高くて、動きの質も高いので、ターゲット役としては優秀な選手である。
■ FW大迫が2ゴールも・・・一方の鹿島はいきなり2ゴールを奪って2対0とリードしたが、試合をコントロールすることはできなかった。MF小笠原が出場停止だったので、3年目のMF梅鉢がボランチで起用されて、同期のMF柴崎とダブルボランチを組んだが、前半20分でMF柴崎が負傷交代となって、その後、MF山村がボランチでプレーして、後半開始からMF梅鉢に代わってベテランのMF中田浩が投入されたが、最後まで落ち着かなかった。
ここ最近、セレーゾ監督は若手を思い切って抜擢しており、この日も、MF土居とMF中村充とMF梅鉢が起用されて、MF野沢やMFジュニーニョやMF本山やMF中田浩がベンチスタートとなったが、経験豊富な選手たちを凌ぐ働きはできなかった。チームの中心を担ってきた選手たちは30歳を超えて来たので、若手の成長は不可欠と言えるが、まだまだ、安心して起用できる状態ではない。物足りなさは残った。
そんな中でも、FW大迫は2ゴールと結果を残した。ポスト役になったときは、いつになくミスが多かったので、反省しなければならないところもあるが、相手のCBに恐さを与えることのできる選手になって来ている。FWダヴィが離脱しているので、1トップでプレーするようになったが、やはり、2トップよりも1トップの方が生きる選手である。これで22試合で13ゴールとなったが、立派な成績である。
右サイドハーフで起用されたMF遠藤も2アシストと結果を残した。神戸からMF野沢が戻ってきたこともあって、今シーズンはスタメンから外れる試合も増えている。特に、序盤戦は途中出場が多かったが、キープ力とキックの精度の高さは魅力である。1点目のFW大迫のゴールを生み出した力強いキープと縦への持ち運びと左足のアウトサイドで出したラストパスは、彼のいいところが凝縮されたスーパープレーだった。
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