■ セットプレーから2失点キリンチャレンジカップでブルガリア代表と対戦したザックジャパンは0対2で敗れた。「セットプレーから2失点」を喫したが、問題点の1つである「セットプレーのときの高さ不足」が原因で失点をしたわけではないので、「課題のセットプレーから2失点」と表現するのは、適当とは言えないが、セットプレーになると、動揺が見られるのは気になるところである。
これで3月のヨルダン戦に続いて2連敗となったが、ブルガリア戦は典型的な負けパターンと言える。ザックジャパンに限った話ではないが、序盤に先制ゴールを許すと、相手の守備意識が高まるので、そこを崩してチャンスを作っていくのは容易ではない。力の差があったとしても難しい試合になるが、同格以上のブルガリアが相手であれば、なおさらである。
ビハインドになったときに、どのように攻撃を仕掛けて、どういう形でゴールを奪うのかは、ザックジャパンの課題とされているが、この日は、後半開始から「4-2-3-1」に戻しただけで、「攻撃的な選手の数を増やして、遮二無二ゴールを目指す」という感じもなかった。世界中のほとんどのチームがそうであるように、ザックジャパンも先制されると非常に厳しくなる。
■ 3バックの人選「3-4-3」を採用したことについては、『意外と余裕があるなぁ。』という感想を持った。ブルガリアを相手に久々となる「3-4-3」を用いたならば、ノーマルな「4-2-3-1」よりもうまくいかない可能性が高い。『連敗だけはしたくない。』という心理状態にあったならば、「4-2-3-1」を採用したと思うので、6月4日の試合だけでなく、さらに先のことを考えていることが分かる。
選手起用に関しては、『なんでFW工藤を使わないのか?』という批判の声が一部から挙がっていることに対しては、ちょっとザッケローニ監督に同情する。「その程度の人がいる。」ということは、ザッケローニ監督も重々承知だと思うが、「そういう人たちは、ザッケローニ監督あるいは日本代表を批判する権利はない。」と言わざる得ない。
この日も選手起用は、比較的、オーソドックスだったが、3バックの中央にDF栗原を起用したことは、見逃せないポイントである。今回、CBタイプは、DF吉田とDF今野とDF伊野波とDF栗原の4人がメンバーに選ばれているが、この4人の中で、「3バックの中央」のイメージからもっとも遠いところにいるDF栗原を中央で起用することは、予想できなかった。
このシステムは『ザックの宝刀』と表現されるが、これまでは、最終ラインの3人にどういうプレーを期待しているのか、あるいは、どういうタイプを3バックのCBで起用するのか、あまり見えていなかったので、「3-4-3」の話が膨らまなかったが、今回、DF栗原を真ん中で起用したことで、ザッケローニ監督がどういうことを期待しているのか、ちょっと見えてきたように思う。
■ 「3-4-3」のメリットもちろん、次のオーストラリア戦であったり、コンフェデのような真剣勝負の場で、自信を持って使えるレベルには達していないが、いざという時に、「4-2-3-1」以外のオプションがあるというのは、何かと便利である。「3-4-3」というと攻撃的なシステムというイメージもあるが、両WBのポジションを下げると5バックになるので、1点を守りたいときに用いることもできる。
パッと思い浮かぶ「3-4-3」の大きなメリットというと、CBタイプの選手を3人起用できるので「セットプレーの時の高さ不足」が少し改善される可能性があることと、両サイドハーフの守備の負担が少し減ることと、サイドの2人のベースポジションが高くなるのでカウンターを仕掛けやすくなることの3点が挙げられる。
特に、FW香川のポジションが高くなってカウンターを仕掛けやすくなることは、日本代表にとって大きなプラスと言える。「4-(2-3)-1」のときは、MF香川は左サイドハーフに入ることがほとんどであるが、実際には「4-(2-2-1)-1」になっていて、カウンターのチャンスにMF香川が参加できないことが多かったが、「3-4-3」になると幾分かは改善されるだろう。
また、同格以上のチームが相手で、相手も「4-2-3-1」や「4-2-2-2」を採用している場合、ミラーゲームのような感じになって、試合が膠着するようなことが考えられるが、そういう展開になったとき、試合途中に「3-4-3」に切り替えることができると試合に変化が生まれる。きれいにマッチアップすると不利になる強豪国が対戦相手のとき、次善の策があると有利である。
もちろん、メンバー変更とシステム変更を同時に行うことも1つの策であるが、選手交代をせずとも、システムを変更することができれば、戦略の幅が広がってくる。この日は、DF吉田を下げてMF清武を投入して「4-2-3-1」に変更しているが、DF今野がボランチに上がって、MF遠藤を2列目を入れるならば、メンバー交代なしでもシステムを変更することができた。
日本代表監督は、基本的には「4年スパン」なので、2年目・3年目と時間が進むにつれて、閉塞感が生まれてくるのが常である。明らかに結果と内容が良くなかった試合をネガティブに振り返っても、マイナスにしかならない。ザックジャパンも良くない流れに入っているが、このタイミングでの「3-4-3」の導入が、今の閉塞感を打ち破るきっかけになることを期待したい。
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