① オシム発言とマスコミいつもニヒルなオシム監督の発言。だが、その裏には、
・相手チームを尊重し、相手チームを刺激しないこと。
・選手が、マスコミからの過剰なプレッシャーを受けないこと。
という2つの点に細心の注意を払っていることを感じる。カタール代表も、UAE代表も、ベトナム代表も、同様に尊重する姿勢をつらぬくし、海外組(中村俊輔や高原)に対して、過剰な注目が集まることを極力さけている。ときに過剰に感じることもあるが、その姿勢は一貫している。
名監督のひとつの条件は、「マスコミと喧嘩ができること。」ではないかと思う。情報の発達した現代社会において、マスコミをコントロールできるかどうかは重要な要素だが、例えば、試合前にスターティングメンバーを公表したり、練習内容を公開したり、リップサービスで優勝宣言をしたりすると、マスコミ受けはよくなるが、監督として、もっとも大事なのは、マスコミから選手たちにかかる過剰なプレッシャーを排除することであり、そのためには、時に、マスコミと対立することも必要である。
Jリーグが誕生して、サッカーの情報が町に溢れるようになったが、それ以外の要素と比べて、マスコミの「レベルアップ曲線」が緩いのではないかということは、多くの人が感じているであろう。「もてはやすか」か「突き落とすか」かのどちらかの選択肢しかもたない日本のマスコミが、変わる日は来るのか?
② アジアと世界の中の日本アジアカップを前に、一部の人たちが、「アジアカップでノルマを設定すべき」という論調をはったが、その理由のいずれもが、あまり、説得力をもたないものであった。その理由は、やはり、日本代表の動向にのみ着目しており、独りよがりなものが多かったからであろうか。
例えば、アジアの中には、日本と同レベルのチーム力を持った国が、いくつか存在する。それらの国と日本が対戦したとき、勝てる保障はないし、また、W杯のような舞台で、ベルギーやロシアやクロアチアのような欧州の中堅国と対戦したとしたら、その勝敗は、時の運に左右される部分が少なくない。
ドイツW杯を巡る喧騒の中で、もっとも違和感を感じるのは、「ジーコ時代を全否定する空気」である。確かに、ジーコ氏には能力不足の感があり、フィールド上以外の部分へのケア(コンディショニング、サブ選手のケア、若年層との融合)が不足していたために、残念な結果に終わってしまったが、評価できる部分も、少なくはなかった。
右肩上がりの時代は終わって、安定期に入りつつある日本サッカー界で、もっとも必要なのは、過剰に結果にとらわれない姿勢ではないだろうか。オシムジャパンのノルマは、南アフリカ大会出場と本大会での好成績であり、オシム監督と選手たちは、その目標に向かって努力すべきであるが、「世界のベスト16」というのは、相当な困難を伴う。仮に、南アフリカ大会で思うような結果が残せなかったとき、今度は、オシム監督をスケープゴートにするのだろうか?それで、日本サッカーは、その先に進めるのだろうか?
③ 数字は正直?以下、スコアとシュート数とボール支配率。
2004 アジアカップ【中国】
GL1戦目 日本 × オマーン
(1-0 8-16 50%-50%)
GL2戦目 日本 × タイ
(4-1 15-9 56%-44%)
GL3戦目 日本 × イラン
(0-0 8-9 54%-46%)
準々決勝 日本 × ヨルダン
(1-1 15-18 49%-51%)
準決勝 日本 × バーレーン
(4-3 16-21 52%-48%)
決勝 日本 × 中国
(3-1 8-10 49%-51%)
2007 アジアカップ【ベトナムほか】
GL1戦目 日本 × カタール
(1-1 10-3 63%-37%)
GL2戦目 日本 × UAE
(3-1 13-8 64%-36%)
GL3戦目 日本 × ベトナム
(4-1 14-6 63%-37%)
④ オーストラリア戦の注目点準々決勝の相手は、オーストラリア。かなり身勝手な理由によって、オセアニア地区からアジア地区に移動してきたオーストラリアを簡単には勝たせたくないというのは、アジアのサッカーに関わる人間の大多数の思いだろう。そのオーストラリアと2連覇中の日本の対戦は、事実上の決勝戦といっても過言ではないだろう。
日本としては、ドイツW杯でショッキングな敗戦を喫しているだけに、モチベーション高く試合に臨むことができるだろうが、オーストラリアは、カーザースラウテルンで少なくない得た自信を手に入れているため、心理的には、オーストラリアがかなり優位な状態で試合に臨むことができるだろう。したがって、日本としては、試合開始からオーストラリアを慌てさせるくらいの猛攻を仕掛けて、試合の主導権を握りたい。
選手個々の実力でいうとオーストラリアの方が上かもしれない。したがって、オープンな試合になれば能力差が表れる展開になるかもしれないが、おそらく、そんな試合にはならないだろう。
オーストラリア戦を前に、GKは川口ではなく楢崎の方がベターではないかという意見が出ているが、悪くない考えだと思う。ビッグゲームでの川口の勝負強さは折り紙つきだが、ハイボールには弱点を持つ。オーストラリアのように高さのあるチームに対しては、楢崎を起用するのも、ありだと思う。
仮に、オーストラリア戦で楢崎を起用すると、正GKの川口のモチベーション低下が懸念されるため、一種のギャンブルではあるが、オシム監督と川口と楢崎の間に、しっかりとした信頼関係が築かれているならば、問題ない話だろう。もちろん、オーソドックスにオーストラリア戦も川口にゴールを任せることもありである。
⑤ アジアカップのメンバーが今後、南アフリカ大会まで代表の中心になるのか?現時点では、決勝トーナメント以後の結果が分からないので、アジアカップの最終結果によっても、若干、左右されると思うが、アジアカップの先発メンバー11人の中で(川口・加地・中澤・阿部・駒野・鈴木・中村憲剛・中村俊輔・遠藤・巻・高原)、南アフリカのピッチに立っている選手は、3人ないしは4人程度ではないかと予測する。
オシム監督は、日本代表監督に就任したとき、「今後の4年間で、誰も気付かないくらい速度で、徐々に、だが、確実に世代交代を行っていく。」という風なことを語っている。
すでに、オシムジャパンでは、中心選手となっているMF中村憲剛だが、キャップ数は、まだ「9」。鈴木啓太は、「13」。ジーコジャパンのころから代表入りしている阿部にしても、「19」。今大会は怪我で欠場しているが、今後も、守備の中心として期待される闘莉王は、「6」のみである。すでに、当たり前のように代表の試合に出場している選手たちも、実は、国際経験は不足しており、これからの3年間に、新しい選手が代表に入ってきて、その選手が、いつの間にか代表に定着している可能性は、低くない。門はいつでも開いている。
最激戦区は、MFのポジションだろう。中村俊輔、遠藤保仁、そして中村憲剛の3人は、現時点で、日本最高峰のプレーヤーだが、3年後も、彼ら3人が、トップスリーである保障はない。各プレーヤーに対して、「これまでの実績」を尊重することは大事だが、「現時点での実力」をシビアに評価していってほしい。
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>>> メラーさん
ドイツW杯直後の高原へのバッシングもひどかったですからね。プロとはいえ、彼らも人間ですから、根拠のない(根拠のうすい)記事を書きなぐられれば、自然と、マスコミを避けるようになるでしょう。
>>> なのはなさん
オーストラリアやイランと試合をすれば、勝てる確率は、五分程度でしょう。日本は、ブラジルではないので、それは、仕方のないことです。
アジアカップのノルマ論がありましたが、「厳しい目で代表を見守ること。」は大事なのですが、「現状無視で無謀な要求を突きつけること」と勘違いしている人が多いようで、残念です。
「勝つこと!!」以外認めないといわんばかりの報道ですよね。そのくせ普段Jリーグみないくせに。
日本は決してサッカー王国ではないのだから、皆で応援しよう!という雰囲気を作ってほしいです。誰がいいとか悪いとかマスコミが評論家になってどうするんでしょうか?
>「もてはやすか」か「突き落とすか」かのどちらかの選択肢しかもたない日本のマスコミが、変わる日は来るのか?
大いに同感です。
日本のマスコミは調子がいい時だけ「天才」「救世主」「エース」など言い、もてはやすくせに調子が悪いときは知らんぷりですからね。
巻も高原もそんな目先の利益しか考えないマスコミに傷つけられた時がありましたよね。
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