■ 興味深いワンプレーJ2は4月14日(日)に第8節が行われた。もっとも注目を集めたのは、3勝1敗3分けで勝ち点「12」のジェフ千葉と、3勝4分けで勝ち点「13」のファジアーノ岡山が対戦した試合で、2位の岡山と3位の千葉の直接対決となった。結局、両チームともゴールは生まれずスコアレスドローに終わったが、両チームともシュート数が多くて、アグレッシブな好ゲームとなった。
前半はアウェーの岡山ペースで、後半途中から千葉ペースになったが、1つ興味深いシーンがあった。前半8分あたりで千葉のDF米倉が接触プレーで倒れて、即、プレーに復帰するのが難しくなった。そこで、ボールを保持していた千葉のMF田中佑がわざとボールを外に蹴り出して、岡山のスローインから再開されたが、相手にボールを返すことなく、プレーが再開されて、岡山はシュートまで持っていった。
言うまでもなく、千葉の方がわざとボールを外に蹴り出しているので、本来であれば、岡山の選手が千葉の選手にボールを返して、千葉のポゼッションから試合が再開されるところであるが、岡山がそのままプレーを続けたので、千葉のサポーター席からはブーイングが起こって、千葉の選手も「おかしいだろう。」と抗議をしたが、そのままプレーは続けられた。
最後のシュートが外れたので、大きなトラブルにつながることなく、試合が進んでいったが、トラブルの火種になりかねないプレーであり、違和感を感じた千葉のサポーターは多かったと想像できる。2位と3位の直接対決で、ヒートアップしやすいシチュエーションなので、大きな騒動につながらなかったのは、幸いと言えるが、考えさせられるシーンだった。
■ フェアプレー精神岡山は2010年の開幕前に「自チームの選手がボールを外に蹴り出すことをしないことはもちろん、相手チームがボールを蹴り出したあとの自チームのスローインのときも、ボールを相手チームに返さずにプレーすることをせずに、プレーを続ける。」という宣言をしている。今回も、これを実行しただけであるが、そのことを知らない人はたくさんいると思うので、スタジアムはこういう雰囲気になってしまう。
個人的には、岡山の考え方は、非常に面白いと思う。わざとタッチラインの外にボールを蹴り出すプレーというのは、怪我をした選手やプレーが続行できなくなった選手を気遣うために始まったものであるが、悪用されるケースが多くなっていて、中盤でボールを失った選手が相手にカウンターをさせないように大袈裟に倒れて、攻撃側のカウンターの機会を阻止するシーンが頻繁に見られる。
もともとはフェアプレー精神から始まったことであるが、現状は、相手のフェアプレー精神を逆手にとって、悪用されるケースが多い。「中盤でボールを奪ってカウンター」というのは、サッカーの最もエキサイティングなシーンの1つであるが、「倒れた選手がいたらボールを蹴り出す。」という暗黙のルールがあるせいで、攻撃を止めざる得ないシーンをよく見る。
■ リスキーな方法Jリーグは、今シーズン、「アクチュアル・プレイング・タイムを増やすこと。」を大きな目標に掲げている。すぐに治療をしなければならない大事故がピッチ上で起こったのであれば、選手やレフェリーやスタッフは分かると思うので、「倒れている選手がいてもボールを蹴り出すことはしない。」という岡山のやり方がスタンダードになればいいと思うが、宣言してから3年以上が経過した今も浸透はしていない。
今回は、DF米倉がプレー続行できるかどうか、微妙なくらいの重症度で、彼が試合をストップさせることを目的に倒れていたわけではないことは明らかで、かつ、千葉の選手がボールを保持していて、ボールを外に蹴り出したので、臨機応変に千葉側にボールを返した方が良かったと思うが、このあたりは徹底している。
先のとおり、岡山の考え方には賛同するが、「ボールが戻ってくる」と相手チームが思っているところに攻め込んで、ゴールが決まってしまうと、大きな問題になる。問題が発生して、肯定的な意見と否定的な意見の両方が出てくることで、「クラブの考え方の理解が進んで、話が前に進むきっかけになればいい。」というところまで考えているのかもしれないが、かなりリスキーなやり方である。
J2に昇格して2年目のシーズンでアウトサイダーだった2010年のファジアーノと、今のJ1昇格を目指すファジアーノとは立場が全く違う。今回のワンシーンを観て、岡山というクラブにネガティブな感情を抱いた千葉のサポーターもいると思うので、今後、クラブとして、どういう手を打つのか、注目したいところである。
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