■ ロンドン五輪のメキシコ戦ロンドン五輪の準決勝の日本とメキシコの試合を観たある外国人のジャーナリストが、以下のような内容の文章を発表していて、昨夏に、これを読んだとき、「なるほど。」、「一理ある。」、「面白い考えだ。」と感心した覚えがある。
手短にまとめると、「U-23日本代表は、攻撃陣に高さがないのに、何故、リードされた終盤にロングボールを多用したのか?」、「意図が分からない。」という話である。「それまでのように攻撃していたら、同点チャンスを作ることができたのではないか?」とも語っていた。
この試合は、前半12分にMF大津のミドルシュートで日本が先制したが、前半31分にセットプレーからメキシコに同点ゴールを許すと、後半20分には、自分たちのミスから逆転ゴールを許した。1点を追う日本は、後半25分に187センチのFW杉本を投入して、パワープレーを仕掛けたが、あまり効果は無くて、後半ロスタイムにダメ押しのゴールを許した。
ビハインドとなったチームは、終盤に高さのある選手を投入して、前線にロングボールを送って、高さ勝負に出ることが、日本では常識になっているが、このジャーナリストは「理解できない。」と語っていて、「このときの日本の戦いを残念に思う。」とも記述している。
■ 天皇杯のファイナルときは流れて2013年1月1日。天皇杯の決勝の柏レイソル戦で、前半35分にセットプレーから柏のDF渡部に先制ゴールを許したガンバ大阪は、後半になっても、エンジンがかからず、0対1で敗れて、準優勝に終わった。
この試合に関しては、実際に試合を観ていないので、その内容が正しいのか、間違っているのか、判断することはできないが、スポーツライターの金子達仁氏は、スポニチのコラムに、以下の文章を記載して、ガンバ大阪の戦い方を酷評している。
あまりにも情けない天皇杯の決勝戦、いや、ガンバの戦いぶりだった。先制されてからの極端な意気消沈ぶりは、驚きを通り越して衝撃的ですらあった。弱いのは、押し込まれるのは仕方がない。なにせ、彼らはJ2に降格するチームなのだから。だが、リードを奪われて迎えた終盤にシュートを打とうとする気概さえ見せず、自陣での無意味なパスを繰り返すのには恐れ入った。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaneko/2013/
カップ戦のファイナルという自然とアドレナリンが高まるシチュエーションで、1点ビハインドのガンバ大阪が、反撃の意欲を見せることなく敗退したのであれば、なぜ、そうなったのか。理由があるはずなので、金子氏には、そのあたりを解説してほしいところであるが、ここでは書かれていない。
それもあって、金子氏が感じたことが正しいのか、クエスチョンマークが付くが、本来、ガンバ大阪というチームは、一見、無意味なように思える横パスをつなぎながら、相手の守備の穴を作って、決定機を演出してきたチームであり、結果的に、J2降格となったが、リーグ戦では最多ゴールをマークしているチームである。
結局、天皇杯の決勝戦では、同点ゴールを生み出すことはできなかったが、リーグ戦では、ホームの鹿島戦やアウェーの柏戦などは、土壇場でゴールを決めて引き分けに持ち込んでおり、勝負強さも見せている。今回の金子氏のコラムを読むと、「結果論で批判しているのではないか?」という気もしてくる。
■ パワープレーは有効だが・・・もちろん、184センチのFW佐藤晃がいれば、そういう作戦に切り替えるのもアリだと思うが、FW佐藤晃は長期離脱中である。単純にロングボールを蹴って、前にボールを進めたとしても、空中戦で勝てる見込みがあったかというと、柏の中央の守備は堅いので、あっさりと跳ね返される可能性のほうが高かったと思われる。
もちろん、時間が無くなっている段階で、横パスをしたり、バックパスをしたりするのは、あまり効率的ではないし、ゴール前に放り込んでおけば、アクシデント的なゴールが生まれる可能性はあるが、このメンツで後方からロングボールを蹴られても、柏は全く怖くなかったと思う。
パワープレーがリードされているチームにとって、有効な手段の1つであることは否定しないが、やはり、それは、時と場合による。普段通りに丁寧にパスをつないだ方が、チャンスにつながる確率が高いこともあるだろう。
日本では、パワープレーを仕掛けて、何度かゴール前の攻防を作ったら、「やるだけのことはやった。」という風な感じで、『負けたとしても、納得できる。』という風潮もあるが、本当にそれでいいのか。外国人ジャーナリストと金子達仁氏の文章を読んで、リードされたチームの終盤戦の戦い方については、もっと深く考えてみる必要があるのではないかと感じた。
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