■ 「初めて」となる慌ただしいオフJ2に昇格して2015年シーズンが7年目となるファジアーノ岡山は2010年から5年間チームを指揮した影山監督が、昨シーズン限りで退任して、長澤徹監督が就任した。J2昇格初年度となる2009年はJ2の18クラブの中で最下位だったチームを引き受けて「J1昇格」を狙えるところまでチームを引き上げたのが影山監督である。J2生活のほとんどは影山体制だったので、岡山は2015年から新しい時代に入ると言える。
岡山にとって「プレーオフ出場」は現実的な目標になっており、「J1昇格」というのも夢ではなくなっているが、今オフは選手の入れ替えが激しかった。J2に昇格してからこれまでの5回のオフは比較的静かで、主力選手を他所のクラブに引き抜かれることはほぼ無かったが、今オフは守備の要のDF後藤圭とアタッカーのMF石原崇という主力2人が「J1昇格」を果たした松本山雅に引き抜かれた。
さらにシーズン開幕後に大宮から期限付きで加入して「18試合負けなし」というクラブ記録を打ち立てる原動力となったゲームメーカーのMF上田康が退団して、1トップでプレーすることが多かったFW清水慎も大宮に復帰したので、FW荒田も含めると主力級の選手が5人も抜けている。特に攻守の軸だったDF後藤圭とMF上田康を失ったのは大きなマイナスで、J2に昇格してから、一番、慌ただしいオフになっている。
■ 評価するのは難しい・・・。その一方で、元日本代表のDF岩政(テロ・サーサナ)を獲得して、ボランチのMF渡邊一(愛媛FC)、ボランチのMF伊藤大(大分)、五輪代表のアタッカーのMF矢島慎(浦和)の獲得に成功。さらには元日本代表のDF加地(チーヴァス)の加入が決まった。DF岩政はもちろんのこと、ボランチの軸のMF上田康が抜けているので、守備力の高いMF渡邊一とキックの精度が高いMF伊藤大という両ボランチの獲得は効果的である。
1月10日(土)の当サイトのエントリーで今オフの岡山の戦力補強について「個人別」に評価を下しているが、このときは「DF岩政の加入」を12段階評価で上から2番目となる『S-』と高く評価しており、「MF渡邊一の獲得」と「MF矢島慎の獲得」は『B+』で、「MF伊藤大の獲得」も『B-』と評価している。この3人の獲得は「効果的」と言えるが、難しいのは「DF加地の獲得」に対する評価である。
→ 2015/01/10
【J2】 今オフの戦力補強の個人別の評価 (FC岐阜・京都・C大阪・岡山編)この段階では「岡山入りが濃厚」と報じられていただけで、正式に加入が決まったわけでなかったので、評価の対象外となったが、『A+』なのか、『A-』なのか、『B+』なのか、『B-』なのか、『C+』なのか、『C-』なのか。このあたりになって来ると思うが、結論を出すのはなかなか難しい。今オフに決まったJリーグの移籍話の中では「もっとも評価に困る移籍」と言えるのは間違いないところである。
■ 評価が難しい何個かの理由まず、話題性はある。DF岩政とDF加地という2人の代表経験者(しかも、鹿島やG大阪といった名門クラブで長年主力として活躍してきた選手)をJ2の岡山が獲得したというのは大きなニュースで、実際にインパクトは大きかった。先のとおり、DF岩政に関しては年齢を考えてもまだ数年は活躍できるはずで、大きな戦力になる可能性は高いが、DF加地の場合、本当にプラスと言えるのか?というとちょっと疑問である。
1つは年齢的な問題で、DF加地は今年の1月13日に35歳になった。FC東京でプレーしていた20代の頃は日本人の中ではトップレベルの運動量でサイドを頻繁に駆け上がっていたが、近年は持ち前の運動量は落ちており、怪我で欠場する試合も多くなっていた。ましてや、SBというポジションは重労働で、35歳を超えるベテランでサイドプレーヤーとして活躍している選手はJリーグでは少ない。
そもそもとして、岡山の補強ポイントは右サイドだったのか?という疑問もある。(GK真子が現役を引退したのでセカンドキーパーは必要となるが、)守護神のGK中林がいるので、岡山にとってはキーパーのポジションが「もっとも補強を必要としないポジション」と言えるが、MF田中奏がいて、MF澤口もいる右アウトサイドというのは「キーパーの次あたりに補強を必要としないポジション」と言える。
もちろん、層が厚いことに越したことはないが、現状の岡山には他にいくつかの明確な補強ポイントがある。フォワードに関しては、今後、外国人選手を含めた何かしらの補強があると思うが、フォワードは質も、量も足りていない状態で、2列目についても(浦和のMF矢島慎の加入は決まっているが、)MF石原崇が抜けているので、「これで十分」とは言えないメンバー構成である。
ボランチはMF上田康が抜けたものの、MF渡邊一とMF伊藤大が加入しており、MF千明とMF島田譲とMF渡邊一とMF伊藤大の4人で十分に回せると思うが、2014年は怪我人続出で苦しんだCBはDF岩政が加入して、DF篠原が熊本から戻ってきたが、DF後藤圭が抜けている。あと1人くらいは計算できる選手が欲しいところで、CBのポジションも3バックを継続するのであれば「やや手薄」というポジションである。
■ インパクトの大きいダブル獲得さらに言うと、DF加地は右アウトサイド専門の選手となるが、MF田中奏も、MF澤口も、「ほぼ右アウトサイドオンリー」の選手である。DF加地はG大阪のときはCBでプレーした経験があって、岡田ジャパンのときは左SBで起用されたこともあったが、それは本当のレアケースである。「右SBあるいは右WBでしか使えない選手」が3人いるというのは、チーム編成上はあまり好ましいことではない。
そして、昨シーズンのDF加地の推定年俸(=G大阪時代)は4,500万とされている。おそらく、新シーズンの年俸は2,000万から3,000万くらいの間になるのでは?と思われるが、当然、チームの中では1番上か、DF岩政に次ぐ2番目の高給取りになるだろう。『限られたお金をそこに費やすのであれば、フォワードなど、明らかに不足しているポジションにお金を回した方がいいのでは?』という意見はもっともである。
ただ、その一方で、J2の岡山に「これほどまでの経験値を持った日本人選手を獲得できるチャンス」がやって来る機会というのは滅多にない。「ポジションバランスなどは無視して、なりふり構わずに獲得に動く。」というのも決して間違いとは言えない。DF岩政1人でもある程度の話題になったと思うが、先のとおり、「ビッグネームを立て続けに獲得できた。」というのは大きなアピールポイントになった。
長澤新監督が3バックを継続するのか、4バックに変更するのか、今の段階でははっきりとは分からないが、「MF田中奏の攻撃力」というのは不可欠なものになりつつある。今シーズンも3バックを継続するのであれば、MF田中奏が右WBの1番手になるだろう。DF加地の獲得がそのまま大きな戦力アップになるか?というと微妙と言えるが、こういう選手というのは「ピッチ上以外」でもチームに貢献できる。
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