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【読エ】セレッソ大阪夢補強の憂鬱 | | |　

○夢の中でうなされて

スタジアムを包む溜息をもう何度聞いただろうか。終着地のみえないパス回しは各駅停車で、相手に引っ掛かり逆起点となる。理想追求型の監督ポポヴィッチ率いるセレッソ大阪は深刻で、贅沢な悩みを抱えていた。FWがボックス内で前を向けるシーンはほとんど無く、前線で孤立する英雄は苛立ちを隠せなかった。

「史上最攻」をスローガンに掲げ、夢補強を敢行した今シーズン。W杯イヤーであることも相まって、メディアの注目を集めている。しかし、高まる期待とは裏腹に開幕から厳しい戦いが続いた。

開幕からの課題はディエゴ・フォルランと柿谷曜一朗の共存だった。2トップや1トップで2人の位置を入れ替えるなど試行錯誤を繰り返したが、答えの見つからない日々が続いた。フォルランに守備力や運動量が無く、その分柿谷が守備に追われプレーする位置が低くなる。当然ゴールからも遠ざかり、天才の煌めきはなりを潜めた。

フォルランが動き出してもボールが出ない。足元に当てても相手の寄せが速く、奪われる場面が散見された。守備力が無くとも攻撃でスペシャルな物を見せてくれれば良いのだが、山東魯能のバグネル・ラヴのように独力で突破するタイプの選手ではない。正直なところ10人で試合をしているような感じだった。コンディションの問題も考慮して「不要論」がまことしやかに囁かれていた。

リーグ戦とACLを並行して戦う過密日程の中で試合を重ねることにより、少しずつ周囲との連携は高まっていった。大阪ダービーの1点目はその象徴だ。中盤で受けてはたき、動いて受けて逆サイドへ展開し最後はボックスの中で仕事をする。ボックス内での精度は申し分無いので、そこに至るまでの流れに関わる頻度を増やして欲しいと強く思った。

○見つけた答えはシステム変更

ACLの決勝トーナメント進出が懸ったアウェー山東魯能戦からセレッソはシステムを3-4-2-1に変更した。4-2-3-1でのパスサッカーを信条とする指揮官にとっては苦渋の決断だったと思う。しっかり守って縦に速くというスタイルで結果を求めることになった。夢から目覚めた理想主義者は、サッカーの内容は異なるがあれほど皮肉っていたシステムを採用する。
　
戦術柿谷というと昨季のセレッソをイメージする人も多いだろう。しかし、戦術フォルランは彼頼みのシステムではない。彼の守備力や運動量の無さの影響を最小限に留めるためのものではないだろうか。前線にフォルランを残しても5－4のブロックでガッチリ守ることができる。その上で奪ったら前線へ素早くパスを出す。阪神ダービーとなった神戸戦ではフォルランが上手く抜け出し、得意な形によく持ちこんでいた。

ガンバ、神戸相手にそれぞれ2得点を記録したのは世界レベルで「持っている」からではなく、W杯得点王による実力の証明に他ならない。ロングパスやミドルシュートではなく、ゴールでスタジアムが湧く瞬間を他の誰よりもフォルランが待ち望んでいたはずだ。

5バックに拒絶反応を示す人も少なくはないが、このサッカーが熟成される過程を注視していきたい。ゴイコ・カチャル、山下、染谷の3人のセンターバックを同時起用することが守備の安定につながることは言うまでもない。

このシステムはシャドーが相手のサイドバックの上がりをケアする必要があるため、柿谷のプレーエリアが低くなる問題は相変わらずだ。神戸戦でも高橋峻希に付いていくため、柿谷がDFラインに吸収され6バックのようになる時間帯もあった。守から攻への切り替えで、飛び出していく動きが期待される。

攻撃的で面白いサッカーをして勝つのが理想だが、現実はそう甘くはない。タイトルを目指すためには、たとえ「つまらないサッカー」と言われようともブレない芯の強さが必要だ。そう分かってはいても、サクラッシュを期待せずにはいられない。

(ライター紹介)

【ハンドル名】：ヴィヴィっと
【年　代】：20〜29歳
【性　別】：男性
【地　域】：近畿

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長崎生まれの長崎育ち。愛する故郷のチーム、V・ファーレン長崎の番記者になる日を夢みている。関西に出てきて早5年。サッカー観戦に恵まれた地で観戦経験を積み重ねるべく、主に長居で奮闘中。

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