■ 天皇杯の4回戦天皇杯の4回戦。リーグ戦は6位に終わってACLの出場権を獲得できなかった柏レイソルと、JFLの横河武蔵野FCが柏サッカー場で対戦した。JFLの武蔵野は、今シーズンのリーグ戦は11勝13敗8分けという成績で10位だった。2回戦ではJ1のFC東京に1対0で勝利し、3回戦ではJFLのAC長野パルセイロにPK戦で勝利している。
ホームの柏は「4-2-2-2」。GK菅野。DF藤田優、増嶋、近藤、橋本。MF茨田、大谷、工藤、山中。FW田中順、澤。攻撃の中心のMFレアンドロ・ドミンゲスは出場停止で、MFジョルジ・ワグネルは怪我のため欠場となった。それもあって、U-19日本代表のMF山中がスタメンで起用された。
対する武蔵野は「5-4-1」。GK飯塚。DF林、小山、金守、平岩、遠藤。MF岩田、矢部、加藤、小林。FW冨岡。背番号「10」のDF金守が5バックの中央に入る守備を重視した布陣となった。ボランチのMF岩田は川崎Fの下部組織出身で、2回戦のFC東京戦で決勝フリーキックを決めている。
■ 柏が準々決勝に・・・試合は立ち上がりからホームの柏のペースとなる。右サイドハーフのMF工藤が起点となってチャンスを作っていくと、前半24分に先制ゴールが生まれる。ゴール前でMF工藤が粘ってFW田中順が得意の左足を振り抜くと、これが決まって柏が先制。1対0とリードして前半を折り返す。
後半になると、柏がギアチェンジして、次々と決定機を作っていくが、武蔵野の守備陣も踏ん張って追加点を許さない。試合は1対0のままで進んで、終盤になると武蔵野はFW関野やDF上田らを投入。攻撃的な布陣に変更すると、チャンスシーンが増えて、DF上田やFW関野らが決定機を迎えるが、GK菅野の好セーブもあってゴールを奪うことができない。
後半ロスタイムにも、FW関野が裏に抜け出して決定機を迎えるが、シュートは枠外で同点ならず。結局、試合は1対0で柏が勝利して、準々決勝進出が決定した。一方の武蔵野は、終盤に何度もチャンスを作ったが、ゴールを割ることはできず。ベスト16で敗退となった。
■ FW田中順が決勝ゴールMFレアンドロ・ドミンゲスとMFジョルジ・ワグネルという両輪を欠いた柏は、2点目を獲ることができず、最後は、冷や汗をかく展開となったが、相手のシュートミスにも助けられて、何とか1対0で逃げ切って、ベスト8に駒を進めた。
軸の2人がいなかったので、スタメン11人は全員が日本人だったが、FW田中順とMF工藤の2人が攻撃をリードした。先制ゴールはMF工藤がセカンドボールに素早く反応したプレーから生まれたが、2人が絡んで武蔵野の守備をこじ開けた。0対0で試合が進んでいて、嫌な雰囲気になりかけていたので、大きな先制ゴールだった。
ユース育ちのMF工藤は、2010年は27試合で10ゴール(J2)で、2011年は25試合で7ゴール(J1)で、今シーズンは33試合で13ゴール(J1)を挙げているが、年々、レベルアップしている。突出した武器というものは見当たらないが、どんな選手とも合わせることができて、得点パターンも豊富なので、相手にすると捕まえにくくて、厄介な選手である。
一方、スタメンに抜擢されたU-19日本代表のMF山中は、持ち味を出し切れなかった。前半にFKから強烈なシュートを放ったが、見せ場というのは、このシーンくらいで、後半に途中交代となった。U-19では、左SBで起用されており、この日は、左サイドハーフだったが、積極性が足りなかったように思う。
■ 4回戦で敗退・・・対する武蔵野は、2回戦で前回王者のFC東京に勝利して大きな注目を集めたが、4回戦で敗退となった。完全な5バックを採用し、守備の意識も高くて、前半20分あたりまでは、しっかりと守ることができたが、セカンドボールへの反応が少し遅れたところを突かれてしまった。
できるだけ長い間、0対0の状況を続けたかったと思うので、プランが狂ってしまったが、ラストの15分ほどの間に、4度ほど決定機を作って、「もしかしたら・・・」と思わせた。ベスト8入りはならなかったが、大きなインパクトを残して大会を去ることになったと言える。
格上のチームと対戦するとき、「当たって砕けろ」で普段通りのやり方で戦う方がいいのか、「勝てる確率が高い」と思われるやり方を採用する方がいいのか、判断の難しいところであるが、武蔵野は、後者の考え方で、この試合では、5バックを採用して、守備的に戦った。
守備的なやり方を採用して難しいのは、相手に先制されたケースで、それまでのやり方を継続するのか、攻撃的な布陣に変更するのか、迷うところである。結局、中途半端になって追加点のゴールを許すことが多いが、武蔵野は、先制された後も、比較的、うまく戦って、0対1の状況を保った。前半24分に先制されたので、思い通りの展開にはならなかったが、選手たちは、冷静に戦ったと思う。
■ 評価したいベスト16入り武蔵野の選手では、1トップで起用されたFW冨岡、アンカーのMF岩田、左サイドのMF加藤などが、能力の高さを示した。特に、FW冨岡は、対人プレーに定評のあるDF近藤とマッチアップすることが多かったが、起点となるプレーでチームに貢献した。運動量も多くて、武蔵野の中では、もっとも目立った選手と言える。
最近は、JFLでも、Jリーグ経験者が非常に多いが、武蔵野の場合、Jリーグで実績を残した選手というのは、見当たらない。守備的なポジションの選手であるが、愛媛FCで背番号「10」を背負っていたDF金守智哉の弟のDF金守貴紀が、同じように背番号「10」を背負って、5バックの中央でプレーしているのは、なかなか面白いが、Jリーグの経験者がほとんどいないにも関わらず、ベスト16まで勝ち上がってきたことは、評価できる。
試合中にも紹介されていたが、FW李忠成(サウサンプトン)、FW白崎(清水)、FW阿部(東京V)、DF宮崎(磐田)などが、武蔵野の下部組織出身で、Jリーガーをたくさん輩出している。Jリーグクラブの下部組織になると注目されることはあるが、それ以外になると、なかなか取り上げられることもなく、クローズアップされることは無いに等しいが、今回のトップチームの躍進は励みになるだろう。
天皇杯については、Jリーグのクラブにとっては、かなりの重荷になっていて、本気度は低いと言わざる得ないが、今大会で言うと、福島ユナイテッドであったり、横河武蔵野FCであったり、一般的には、無名のクラブがベスト16まで勝ち上がって、大会を盛り上げてきた。「Jのクラブが情けない。」という声もあるが、福島や武蔵野の頑張りは、素直に評価されるべきだと思う。
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