■ J1開幕戦J1の開幕戦。初のJ1昇格を果たしたサガン鳥栖は、ホームでセレッソ大阪と対戦した。鳥栖は尹晶煥監督になって2年目のシーズンで、C大阪はブラジル人のセルジオ・ソアレス氏が新監督に就任した。初タイトルを目指すシーズンとなる。両チームは、C大阪がJ1に昇格した2009年シーズンの最終節で対戦したが、終了間際に鳥栖が2ゴールを奪って逆転勝利。C大阪のJ2優勝を阻んだという歴史がある。
ホームの鳥栖は「4-2-3-1」。GK赤星。DF丹羽、キム・クナン、呂成海、磯崎。MF藤田、高橋、水沼、池田、金民友。FW豊田。ディフェンスリーダーのDF木谷と、ボランチのMF岡本は怪我のため欠場。横浜FMから移籍のDFキム・クナンと、2009年以来のチーム復帰となるMF高橋がスタメンで起用された。エースのFW豊田は、昨シーズンのJ2で23ゴールを挙げて得点王に輝いた。
対するアウェーのC大阪は「4-2-3-1」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、茂庭、藤本、丸橋。MF山口螢、扇原、清武、キム・ボギョン、ブランキーニョ。FWケンぺス。ロンドン五輪代表の合宿で負傷して、五輪予選を欠場していたMF清武は、怪我が治ってスタメン出場。MF柿谷、DF山下の復帰組はベンチスタートとなった。
■ スコアレスドロー試合の序盤はホームの鳥栖ペースとなる。立ち上がりから前線のFW豊田にロングボールを送るシンプルな攻撃が有効で、こぼれ球を拾ってセカンドチャンスにつなげていく。C大阪は、FW豊田に対して、DF藤本とDF茂庭が対峙したが、なかなか競り勝つことができず、苦しい展開になる。しかしながら、鳥栖の決定機にGKキム・ジンヒョンがファインセーブを見せて、先制ゴールを許さない。
前半45分は、ホームの鳥栖が優勢で終えたが、後半になると、C大阪もボールが回り始める。後半9分に、MFブランキーニョに代えてFW播戸を投入し、2トップに変更すると、右サイドのMFキム・ボギョンがボールに絡むようになって、MFキム・ボギョンのところからチャンスが生まれていく。やや運動量が落ちてきた鳥栖も、途中出場のMF岡田やMF野田がゴール前に顔を出して、C大阪のゴールを脅かす。
0対0で迎えた終了間際に、C大阪はMF清武のパスからMFキム・ボギョンが抜け出して、GKと1対1のシーンを迎えるが、鳥栖のGK赤星がスーパーセーブを見せてゴールを許さず。結局、両チームのGKの奮闘が目立った試合はスコアレスで終了。鳥栖はドロー発進となった。一方、C大阪は、開幕戦でずっと勝てておらず、J1では1999年以来勝利が無い。
■ FW豊田の高さからチャンスを作るJ1でのデビュー戦となった鳥栖は、試合の入り方が良くて、序盤はC大阪を圧倒した。ロングボールをシンプルに前線に送って、FW豊田が競ったところを拾って、次のチャンスにつなげることに成功した。前半20分までに、MF池田とMF藤田が決定機を掴んだので、先制ゴールを奪っていてもおかしくなかったが、GKキム・ジンヒョンに防がれてしまって、初ゴールはお預けになった。ただ、FW豊田を中心とした攻撃が、J1でも十分に通じることを証明した。
FW豊田というと、得点力が魅力の選手であるが、身体能力の凄さに際立つ選手である。185センチと高さもあるが、それ以上にスピードやジャンプ力が武器で、高さに関しては、J1でもトップレベルにある。この試合は、最終ラインからFW豊田に当てるボールが多かったが、サイドからクロスが上がってくるようになれば、FW豊田のシュートチャンスが増えてくるので、右サイドのMF水沼、左サイドのMF金民友の働きが重要になる。
一方、守備では、守備の要のDF木谷が抜けた影響が心配されたが、DFキム・クナンも落ち着いて対応したので、大きな問題にはならなかった。横浜FMでは、パワープレー要因としてフォワードで起用されることがほとんどだったが、高さも、強さも、スピードもある選手なので、センターバックとしても魅力がある。プレシーズンマッチのG大阪戦で負傷したDF木谷は、右膝前十字靱帯損傷と診断されており、長期離脱が濃厚になったので、DFキム・クナンにかかる期待は大きくなる。
■ J1のデビュー戦はドロー鳥栖は、序盤は、立て続けにチャンスを作ったので、勝ち点「3」を獲得できるチャンスもあったが、終盤は、ピンチを迎えるシーンも増えたので、勝ち点「0」に終わる可能性もあった。C大阪にも同じことが言えるが、『勝ち点「3」を獲れたのに・・・。』という悔しい気持ちもあるだろうが、ひとまず、開幕戦で、勝ち点を獲れたことはポジティブに考えてもいいのではないだろうか。
言うまでもないが、J1初年度のチームは、開幕からダッシュをかける必要がある。2009年に初昇格した山形は、開幕戦で磐田に6対2で勝利して勢いに乗ったが、シーズンが進むにつれて、研究もされてきて、勝ち点が伸びなくなるので、如何にして、序盤で貯金を作ることができるかである。
昨シーズンは、福岡がスタートダッシュに失敗して、序盤から最下位に沈んだが、内容が良くても、勝ち点に結びつかないと、チームのムードは良くならないので、とにかく、早い時期に勝ち点「3」を獲得して、落ち着きたいところである。幸いにして、序盤はホームゲームが多くて、7節までの7試合のうち、5試合がホームゲームと、有利な日程になっている。最初の7試合が、残留できるかどうかを左右するのではないだろうか。
■ ソアレス監督の選手交代一方、セルジオ・ソアレス監督が就任したC大阪は、ベースはクルピ監督の頃と同じで、中心選手も変わっていない。サイドバックが無暗に上がらなくなった点と、サイドチェンジが多くなった点に変化を感じたが、監督が代わっても、やり方自体はほとんど変わっておらず、一貫性のあるチーム作りができているように感じる。
1試合目なので、セルジオ・ソアレス監督については、はっきりとは分からないが、後半9分という早い時間帯にMFブランキーニョを下げて、FW播戸を投入した采配は、クルピ監督の頃には見られなかったものである。クルピ監督は我慢強いタイプなので、チームがうまく回っていなくときでも、交代カードを駆使して試合を動かすことはほとんどなかったが、MFブランキーニョを早々に諦めて、FW播戸を投入してきた。
FW播戸が試合に入り切れず、ほとんど存在感を発揮できなかったので、FW播戸を投入したことが成功だったとは言えないが、積極的に動いて、試合の流れを変えようとした采配は面白かった。今シーズンは、FW杉本、FW播戸、MF村田、MF柿谷と、タイプの異なる選手が控えているので、流れを読んでカードを切ることが非常に重要となるので、どういうタイミングで、どういうカードを切るのか、注目したいところである。
■ 新外国人の評価は?C大阪は、MF清武、MFキム・ボギョン、MF山口螢、MF扇原のロンドン五輪世代に注目が集まるが、チーム浮上のカギを握るのは、MFブランキーニョとFWケンペスのコンビで、この二人がどこまでできるかで、攻撃力は大きく変わってくると思うが、1トップで起用されたFWケンペスはまずまずだった。
182センチのFWケンペスは、前半はほとんどボールに触ることができず、持ち味を発揮できなかったが、後半になると、ポストプレーもこなして、シュートチャンスに絡むようになった。左足のシュートが武器となる選手であるが、体もがっちりしているので、タフな仕事もこなせそうな選手である。FWアドリアーノやFWホドリゴ・ピンパォンと比較すると、中央で起点となるプレーもできるタイプのように思うので、3シャドーとどう絡んでいくか。二桁ゴールは期待したいところである。
一方のMFブランキーニョは、持ち味を発揮できず、後半早々に退いた。テクニックや運動量は高いレベルにあるが、日本のサッカーに馴染んでいない印象で、持ちすぎてボールを失ったり、判断が遅くて囲まれるシーンが目立った。突破力やボール扱い、シュート力に関しては、MF清武やMFキム・ボギョンに匹敵するものがあるので、日本サッカーに慣れてくれば、チームの軸として活躍できると思うが、慣れるまでに、少し時間が必要である。
ベンチには、FW杉本、FW播戸、MF柿谷、MF村田がいるので、今後、MFブランキーニョをどのように使っていくのか。軸になりうる選手なので、冷遇することはできないが、MFブランキーニョの起用にこだわり過ぎて、勝ち点を獲りこぼすことは避けたい。早く日本のサッカーに慣れて、ゴールに絡むプレーができるようになると助かるが、長い時間がかかるようだと、セルジオ・ソアレス監督も、さじ加減は難しくなる。
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