■ ゼロックス3月10日(土)のJ1の開幕戦を1週間後に控えて、国立競技場でゼロックス・スーパーカップが開催された。今年は、リーグ戦王者の柏レイソルと、天皇杯王者のFC東京の対戦で、共に、スーパーカップは初出場となる。
リーグ戦王者の柏は「4-2-2-2」。GK菅野。DF酒井宏、増嶋、近藤、橋本。MF大谷、茨田、レアンドロ・ドミンゲス、ジョルジ・ワグネル。FW田中順、北嶋。新加入のFWリカルド・ロボ、DF那須はベンチスタート。DF近藤とFW田中順は、2月24日(金)のアイスランド戦でフル代表デビューを果たした。
対する天皇杯王者のFC東京は「4-2-3-1」。GK塩田。DF椋原、森重、徳永、太田。MF高橋、梶山、石川、長谷川アーリアジャスール、谷澤。FWルーカス。U-23日本代表のGK権田はベンチスタート。新加入のFW渡邉千と怪我からの完全復活を目指すFW平山もベンチスタート。東京Vから移籍のMF河野もベンチスタートとなった。
■ レイソルが逃げ切る試合の序盤はFC東京のペースとなる。右サイドのMF石川が攻撃の起点となって、柏を押し込んでいく。しかし、先制したのは柏で、前半26分にMFジョルジ・ワグネルが左足で強烈なミドルシュートを突き刺して、柏が先制に成功する。さらに、前半43分にもペナルティエリア内でFW北嶋が倒されてPKを獲得。MFレアンドロ・ドミンゲスが決めて2対0とリードを広げる。
2点ビハインドとなったFC東京は、後半13分にMF石川に代えてFW渡邉千を投入。すると、FW渡邉千のところで起点ができて、厚い攻撃を見せるようになる。追撃のゴールが決まったのは後半20分で、右サイドを崩してから、柏の選手がクリアしきれなかったところを、MF長谷川がヘディングで押し込んで1点差に迫る。
さらに、その直後に、途中出場のMF羽生が連続してビッグチャンスを迎えるが、MF羽生は決められず。柏も、FWリカルド・ロボを投入。FWリカルド・ロボを中心にしたカウンターで追加点のチャンスを迎えるが、ダメ押しゴールはならず。シーズン開幕の到来を告げるにふさわしい熱戦となった試合は、2対1で柏が勝利し、賞金3000万円を獲得した。一方のFC東京は、いい形で試合を進めながら、先制ゴールを許したのが痛かった。
■ レイソルが2冠目柏は、先週のちばぎんカップと同様に、立ち上がりは動きが重くて、FC東京に試合をコントロールされたが、前半26分のMFジョルジ・ワグネルの先制ゴールが非常に大きかった。フリーでボールを受けることができたが、距離のある位置だったので、FC東京のディフェンダーも大丈夫だと思ったはずだが、左足の強烈なシュートがネットを揺らした。ここまでは、FC東京のペースで試合は進んでいたが、この一発で、試合の流れが大きく変わった。
これで、柏はちばぎんカップに次いで、「2冠」となった。今シーズンは、リーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯、ACL、クラブW杯、ちばぎんカップ、ゼロックスと7つのタイトルを獲得するチャンスがあって、ネルシーニョ監督は「すべてのタイトルを狙う。」と宣言しているが、幸先よく、2つのタイトルを獲得することができた。昨シーズンのいいときと比べると、試合内容は不十分だが、勝ち癖が付いてきており、負けにくいチームになっている。
昨シーズンのリーグMVPのMFレアンドロ・ドミンゲスも、力を発揮した。ちばぎんカップでは精彩を欠いて、この試合も、前半はレフェリーの判定にナーバスになってリズムをつかめなかったが、後半は躍動し、何度もビッグチャンスをつかんだ。新加入のFWリカルド・ロボとの相性も良さそうで、今シーズンも、MVP級の活躍をするのは確実と言える。
■ ポポヴィッチ監督の就任一方のFC東京は、2009年に大分、2011年に町田ゼルビアを率いたポポヴィッチ監督が就任し、新しいチームに生まれ変わった。ベンチスタートとなったのが、GK権田、DF加賀、MF河野、MF羽生、MF田邉、FW渡邉千、FW平山の7人という豪華さで、層の厚さはリーグ№1といえるだろう。代表クラスの選手がベンチに控えているというのは、リーグ戦とACLを並行していく上で、強みとなるだろう。
移籍組のDF太田、MF長谷川アーリアジャスールがスタメン起用されるなど、スタメンも入れ替わっているが、最終ラインからパスをつないでいく方針に変わりはない。ただ、各人がボールを持つ時間が短くなって、スピード感が出てきた。また、前半は、右サイドのMF石川の裏を狙ってミドルパスを出すシーンも多くて、ゆっくりとしたテンポでボールをつなぐことが多かった昨シーズンと比べると、幾分かの変化を感じる。J1では、ショートパスだけで崩すのは難しいので、いい試みだと思われる。
一方、不安なのは、日本代表のDF今野が抜けた守備面である。磐田から加入したDF加賀ではなくて、DF徳永がセンターバックで起用されて、DF森重とDF徳永でセンターバックを組んだが、DF森重にミスが目立って、終始、不安定だった。DF森重は、昨シーズンは、J2で安定したパフォーマンスを披露したが、J2では、攻め込まれる回数が少なかったので、ポカミスも目立たなかったが、元来、集中力を切らしやすいタイプである。代表に定着できるだけのポテンシャルを秘めた選手であるが、今シーズンのFC東京の不安要素でもある。
■ アーリアが軸になるのか?FC東京のスタメンを見たとき、驚いたのは、FW渡邉千やFW平山ではなくて、MF長谷川アーリアジャスールをスタメンで起用してきたことである。層の厚いチームなので、移籍組のMF長谷川アーリアジャスールがチャンスを得るのは難しいと思っていたので、スタメン抜擢は意外だったが、追撃のゴールも決めて、申し分ない働きを見せた。
FC東京は、FWルーカスの1トップ気味の布陣で、MF長谷川アーリアジャスールがトップ下で動き回るイメージだったが、FWルーカスのところでミスが多くて、FWルーカスとMF長谷川アーリアジャスールの縦コンビがチャンスを作ることはできなかったが、後半にFW渡邉千が投入されて、右サイドにポジションを取るようになってからは、MF長谷川アーリアジャスールのテクニックが生きるようになった。
後半途中に、右サイドにポジションを回してから、DF椋原とのコンビでチャンスに絡んだが、右サイドは、MF石川もいるので、右サイドで固定されることは難しい。また、得点力のある選手ではないので、「1トップの下」でプレーするとなると物足りないところもある。よって、どこのポジションで起用すればいいのか、ポポヴィッチ監督も悩みどころだと思うが、日本人には真似できないセンスを持った選手なので、自由にプレーさせると、思わぬ力を見せることがある。
中盤は層の厚いポジションなので、レギュラー獲得は簡単ではないが、ボランチもこなす柔軟性を持っており、ポポヴィッチ監督にも信頼されている。早速、ゴールという結果を残して、大飛躍のシーズンとなる可能性がある。今シーズンのFC東京は、MF長谷川アーリアジャスールが軸になるのだろうか。
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