■ キリンカップが開幕今年のキリンカップは、日本、ペルー、チェコの3か国の総当たりで行われる。初戦は、新潟のビッグスワンで日本代表とペルー代表が対戦。日本はアジアカップ決勝のオーストラリア戦以来の国際試合となる。4日にペルー代表とチェコ代表が対戦し、7日にチェコ代表と日本代表が対戦する予定になっている。
日本代表は<3-4-3>。GK川島。DF栗原、今野、伊野波。MF遠藤、長谷部、西、安田。FW関口、前田、岡崎。鹿島のMF西はA代表デビュー戦。仙台のFW関口は初先発。MF本田圭、DF長友、DF内田、DF吉田らはベンチスタート。初招集の19歳のMF宇佐美もベンチスタート。ペルー代表はシャルケでDF内田とチームメイトのFWファルファンが10番を着けてスタメン。FWファルファンの1トップ気味の布陣。
■ スコアレスドロー雨でスリッピーなピッチコンディションで行われた試合は、ペルー優勢でスタートする。アジアカップからシステムとメンバーを大きく変えてきた日本は、攻守ともにしっくり来ず、なかなかチャンスを作れない。序盤は、右サイドのFW関口がボールを持って仕掛けるシーンこそあったが、FW前田が中央で起点になれずにボールを奪われるシーンが目立ってしまう。
前半20分あたりを過ぎると、少し試合が落ち着いてきて、右サイドのMF西が攻撃に絡むシーンも増えてくるが、ペルーの守備は堅くて決定機までは作れない。ペルーにもシュートチャンスはなかったが、日本もほとんどシュートまで持ち込めず。かなり静かな展開で前半45分を終えた。
後半開始から日本はMF西に代えてMF本田圭を投入。いつもの<4-2-3-1>に戻すと、少しリズムが良くなってパスが回るようになる。日本は、その後も、DF長友、FW李忠成、FW興梠らを投入。先制ゴールを狙って攻撃力のある選手を多く入れてくるが、終盤は足が止まってセットプレーを中心に次々とチャンスを作られる。
危ないシーンが続出するが、日本は、GK川島が踏ん張ってゴールは許さず。ラストプレーでは、MF本田圭が倒されて、ゴールやや左寄りの絶好の位置でフリーキックを得るが、MF遠藤のシュートは惜しくも枠外。結局、0対0のスコアレスドローに終わった。
■ <3-4-3>は不発①久々の国際試合で、DF長友、MF本田圭、DF吉田らが帰国したばかりということもあって、ベンチスタート。メンバーも、システムも大きく変えてきた日本だったが、攻守ともに思ったようなサッカーができずに、不完全燃焼のドローに終わった。後半からMF本田圭を投入し、いつもの布陣に戻したが、ペルーも集中して守っていたため、最後まで、ほとんどチャンスらしいチャンスを作れなかった。
チャリティーマッチに続いて、<3-4-3>を試したが、このシステムも、あまり機能しなかった。主力の何人かが不在で、システムに問題があったのか、新メンバーに問題があったのかは、判断が難しいところであり、また、相手も違うので、簡単には比較はできないが、チャリティーマッチのときは、もっと<3-4-3>らしい形になっていて、両サイドも高い位置を保ったが、この日は、FW関口とFW岡崎のポジションが低めで、<3-4-3>というよりは<3-6-1>に近いイメージで、トップのFW前田も孤立してしまった。
■ <3-4-3>は不発②後半開始からMF本田圭を入れたことで、FW前田へのサポートができるようになって、少し流れがよくなったが、後半10分あたりを過ぎると、ペルーに対応されてしまって、またしても膠着状態になった。代表では、頻繁にゴールに絡んでいるFW岡崎も、オフシーズンのためなのか、コンディションが悪そうで、ミスも目立った。
ストッパーのDF栗原、DF伊野波も、攻撃参加はほとんどなくて、あまり面白みはなかった。ザッケロー二監督の3バックは「攻撃的な3バック」のはずであるが、ストッパーが攻撃に絡んでくるシーンもなく、3バックのメリットは出せなかった。ただ一人、<3-4-3>でイキイキしていたのは、DF今野で、3バックの中央だけにとどまらず、前にも、横にも、いろいろなところに出張していって、相手をつぶすとともにして、攻撃の起点にもなった。
アジアカップの決勝戦のように、DF今野にボランチでの起用を拒否されてしまったら、「話はそれまで」となってしまうが、もし、ボランチでのプレーもOKとなると、3バックでスタートしたとしても、相手の出方によっては、DF今野をボランチに上げて<4-2-3-1>等に変更することも可能になって、オプションは広がっていく。
■ 初先発のFW関口訓充初先発となった仙台のFW関口は、右のウイングで初先発。序盤こそ、サイドから突破するシーンを作ったが、徐々に試合から消えていってしまった。後半からは左サイドハーフに入ったが、そこでもなかなかチャンスに絡めずに、大きなアピールはできなかった。
3月末のチャリティーマッチでは、FW本田圭がこのポジションでプレーし、右サイドに張って起点を作り、2つのゴールに絡んだが、FW関口の役割はちょっとあいまいで、最初はサイドに張ってプレーしていたが、時間が経つにつれて、中央に入っていくようになって、試合から消えてしまった。
<3-4-3>になると、中盤がボランチとサイドの選手になってしまうので、前線の3人がゴールに絡むことが必要になってくるが、もともと、FW関口は得点力のある選手ではないので、このポジションは、ミスマッチのような気はしてしまう。Jリーグでは好調でキレのあるプレーを見せていたが、良さは出せずに終わった。
■ デビュー戦のMF西大伍また、昨シーズンはアルビレックス新潟でプレーしたMF西は、慣れているビッグスワンでプレー。鹿島では、まだ、レギュラーポジションを確保しているとはいえない状況なので、このタイミングで先発起用ということで、ザッケローニ監督の評価の高さがうかがえるが、序盤はあまり攻撃に絡めずにポジショニングで苦労した。
守備では、前半途中に、完全にサイドの裏を取られてピンチを迎えるシーンもあって、危うさもあったが、時間が経つにつれて、センスを感じさせるパスを出す機会も増えていった。システム変更に伴って、前半45分のみの出場となったが、デビュー戦で、難しい状況でのプレーだったということを考えると、ギリギリで及第点といえるプレーであった。
<4-2-3-1>のシステムで、サイドバックとなると、シャルケのDF内田がいるので、試合に出場するのは厳しいが、右ウイングバックとなると、ゴール前にも絡んでいけるMF西にもチャンスは出てくる。<4-2-3-1>でどういうプレーをするのかも見てみたかったが、DF内田のコンディションが良くない模様で、またチャンスはあるだろう。
■ 久々のスタメンのMF安田逆サイドでは、オランダのフィテッセでプレーするDF安田が、左ウイングバックで先発。前半は前線でタメが作れずに、なかなかサイドをオーバーラップするタイミングがつかめずにいいところを見せられなかったが、4バックになってからは、いいタイミングで攻撃に参加できるようになった。
残念ながら、アタッキングエリアでドリブルで仕掛けるという得意のシーンは見せられなかったが、守備でもまずまず頑張っており、悪くはなかった。怪我で交代したのが心配であるが、両サイドをこなすので使いどころの多い選手で、今後の活躍が期待されるところである。
■ DF森脇がデビューアジアカップでもメンバー入りし、先日のチャリティーマッチにも出場しているので、意外な気もするが、DF森脇もこの試合が代表デビュー戦となった。チャリティーマッチでは、目の前でFW三浦知にゴールを許してしまったが、この日は、積極的で好プレーを見せた。
結局、この試合は、右アウトサイドでいうと、MF西、DF伊野波、DF森脇の3人がプレーしたが、DF森脇のプレーがもっともよかった。もちろん、このポジションはDF内田もいて、熾烈なポジション争いが繰り広げられているが、ベンチ入り争いも面白くなってきた。
■ GK川島がファインセーブ連発守備陣は、最後は、足が止まってしまって立て続けにピンチを迎えたが、守護神のGK川島のビッグセーブに助けられた。ペルーは、雨の濡れたピッチということもあって、ロングレンジからのシュートに積極的で、際どいシュートも多かったが、GK川島は落ち着いてプレーし、キャッチングのミスもなかった。
GK川島はベルギーリーグからステップアップを目指しており、オランダのVVVなどが移籍候補に上がっているが、GKの移籍というのは難しく、プレミアリーグ等に移籍したとしても、セカンドキーパーでベンチに座っているだけでは、意味はなくなってしまう。こういう時代なので、代表のプレーだけを見て、選手を獲得するクラブはないだろうが、獲得に興味を持っているクラブにはいいアピールができたのではないか。
■ 次はチェコ戦次は、7日にチェコ代表と対戦する。チェコ代表というと、2004年にアウェーで対戦し、FW久保竜彦のゴールで1対0で勝利した試合が印象的で、欧州でも強豪国の1つとして知られている。どれくらいの状態で来日しているかは分からないが、次の試合は、日本も勝たないといけない試合であり、ベストメンバーがスタメンに名を連ねるはずである。ワールドカップ予選まで、あまり時間がないので、大事な一戦となる。
注目は、システムであるが、おそらく、<4-2-3-1>でスタートするだろう。<3-4-3>も機能すれば面白いシステムである。特に、<4-2-3-1>では十分には生かし切れなかったMF香川というタレントを生かすには、適切なシステムといえるかもしれないが、アタッカー陣にもう少し力強さがないと、相手に対応されてしまうので、苦しくなる。
もちろん、不慣れなシステムであり、簡単には機能させられないということは仕方ないことで、ある程度は織り込み済みだろう。今後、しばらくは封印されるのではないかと思われるが、チェコ戦では、元の<4-2-3-1>に戻して、内容と結果を両立させた試合をして見せておきたいところである。
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