■ 第13節J2の第13節。6試合を終えて5勝1敗で首位に立つジェフ千葉がアウェーでロアッソ熊本と対戦。熊本も3勝1敗2分けで5位と、まずまず順調なスタートになっている。熊本は6試合で4得点2失点、千葉は11得点3失点。リーグ最少失点タイの熊本と、リーグ最多得点の千葉の対戦となった。
ホームの熊本は<4-4-2>。GK南。DF市村、廣井、矢野、原田。MFエジミウソン、根占、片山、ファビオ。FW長沢、仲間。ここまでの6試合では、FW長沢が2ゴール、FW仲間、MF根占が1ゴール。FW仲間は柏レイソルのユース出身でプロ1年目。19歳になったばかりである。リーグ再開後は、ずっと先発で起用されている。
対するアウェーの千葉は<4-2-3-1>。GK岡本。DF山口慶、竹内、ミリガン、坂本。MF佐藤勇、伊藤、太田圭、米倉、深井。FWオーロイ。千葉はFWオーロイ、MF深井、MF米倉が3ゴール。DF竹内、MF伊藤が1ゴールを決めている。
■ 1対1のドロー試合は開始3分にアウェーの千葉が先制する。DFミリガンのロングスローから、ファーサイドにいたDF竹内がボレーで決めて幸先よく先制する。DF竹内は2試合連続ゴール。熊本はMFエジミウソンのマークが甘く、警戒していたはずのロングスローでやられてしまった。
しかし、その後はホームの熊本ペースになる。FW長沢、FW仲間、DF市村がうまく絡んでチャンスを作っていくと、前半24分にDF市村が右サイドからクロス。これを千葉のDFミリガンがクリアしようとするが、うまくクリアできずにFW長沢の足元にこぼれると、FW長沢が右足で決めて1対1の同点に追いつく。FW長沢は今シーズン3ゴール目。前半は1対1で折り返す。
後半開始から千葉はMF太田圭に代えてMFファン・ゲッセルを投入。MFファン・ゲッセルをボランチに入れて、MF伊藤を右サイドに入れてくる。これで少し流れがよくなった千葉であるが、なかなかシュートまで持ち込めない。熊本は、後半立ち上がりは攻め込んでいたが、後半15分過ぎくらいから足が止まってきて膠着状態になる。
流れを引き戻したい熊本は、MF大迫希、MF武富を投入し、彼らの動きからチャンスを作り始めて、最後の10分ほどは、攻撃が活性化してくる。しかし、千葉のGK岡本がゴールを許さず。結局、1対1のドロー。千葉は5勝1敗1分け、熊本は3勝1敗3分けとなった。
■ 熊本は逆転までは行けずホームの水前寺に首位の千葉を迎えた熊本のモチベーションは高かった。立ち上がり早々にロングスローからDF竹内にゴールを許したが、その後は、ずっと熊本のペースで進み、シュート数も熊本が「7本」だったのに対して、千葉は「5本」だけ。内容的には、熊本の方が、はるかによかったので、勝ちたい試合だったが、首位のチームを相手にこれだけできたということは自信にもなるだろう。
惜しかったのは、後半15分あたりで熊本も動きが鈍ってきたことで、その時間帯に動きが落ちずに攻め込めたら逆転できた可能性もあった。後半29分にMF大迫希、後半39分にMF武富が入って流れがよくなったので、もう一歩、早く手を打てなかったかという気もするが、熊本も前半からかなり飛ばしていたので、仕方がないのかもしれない。
■ 風格が出てきたFW長沢駿同点ゴールは清水エスパルスからレンタル中のFW長沢でこれで3ゴール目。FW長沢が191㎝で、千葉のFWオーロイが204㎝ということで、長身フォワード対決も見どころだったが、この試合はFW長沢の完勝だった。同点ゴールも見事だったが、前線でもしっかりと起点になっていて、熊本のチャンスのほとんどに絡んだ。
ユースの頃から期待されてきた選手であるが、清水では4年間で7試合に出場しただけ。今シーズン、心機一転で熊本にやってきて、どのくらいできるか?と思っていたが、ここまでは期待以上のパフォーマンスを見せており、試合を重ねるごとによくなってきている。高さだけではなく、しなやかさもあるので、味方もパスを出しやすそうで、新加入ながらチームのエースストライカーに落ち着いている。
J2では、過去、FW長谷川、FW都倉、FWハーフナー・マイク、FW高崎といった長身のストライカーがゴールを量産してJ1に羽ばたいていったが、FW長沢も彼らと同じようにステップアップできる可能性は十分にある。元日本代表の高木監督がいるというのも心強く、プレーに風格も出てきた。
■ FW仲間は見せ場を作るも・・・そのFW長沢と2トップを組んでいるのが、高卒ルーキーのFW仲間で、これで6試合連続スタメン出場。柏のユース育ちであるが、柏のトップチームには昇格せずに、ロアッソ熊本でプロ契約を結んだが、すでにプロ初ゴールも決めていて、「プラチナ世代」と言われる今年の高卒ルーキーの中でも、かなり目立つ活躍を見せている。この日も動きは良かった。
「スピード」や「技術」があるのはもちろんであるが、相手にとって嫌なスペースに入り込んでいくこともできるので、相手のDFをかく乱することもできるし、味方と味方をつないでチームを循環させることもできている。FW長沢とMFファビオの間でプレーすることが多いが、FW長沢との関係は非常に良かった。
悔やまれるのは、ボールタッチが乱れるシーンが多かった点で、この日は感覚に少しズレがあったのか、いいところでボールが足につかないことが多くて、惜しいところで、決定的なシーンまでもっていけなかった。ただ、ルーキーらしからぬ、堂々とプレーしており、今後の飛躍が期待される選手の一人である。
■ MFファビオは期待に応えられず一方で、MFファビオは期待に応えられなかった。中盤の高い位置で、FW長沢やFW仲間をサポートしなければならなかったが、ゴール前で勝負するのか、下がり目で味方を生かすプレーをするのかもはっきりせず、あまりボールに触れずに持ち味を出せなかった。
FW長沢は191㎝であるが、MFファビオも190㎝と長身。相手にすると、どうしてもFW長沢に警戒せざる得ないので、MFファビオのマークは甘くなってしまいがちであり、そのギャップを突いて、ゴール前で脅威になってほしいところであるが、うまくプレーが整理されていなかった。運動量も少なくて、早い時間にMFファビオを下げるという選択肢もあったように思う。
■ 精彩を欠いたジェフ千葉暑さも影響したのか、千葉のイレブンは序盤から動きが重く、セカンドボールも拾えなかった。そのため、熊本に攻め込まれる時間が長く、終始、劣勢だった。サイドハーフでプレーしたMF深井、MF太田圭、MF伊藤にほとんど見せ場が無く、FWオーロイの運動量も少なかった。後半になると、MF佐藤勇が攻撃に参加し始めて、MF佐藤勇のシュートは可能性を感じさせたが、それ以外の選手はいいところを出せなかった。
第8節のFC東京戦で2ゴール1アシストと華々しい活躍を見せたFWオーロイも、疲れのためか、パフォーマンスは落ちてきており、相手チームもFWオーロイを自由にはさせていない。熊本も、センターバックのDF矢野とDF廣井がしっかりと連携を取ってFWオーロイにほとんど仕事をさせなかった。
FC東京を見ると、「分かっていても止められない高さ」があるかと思っていたが、さすがにJ2のクラブもしっかりと対応してきており、FWオーロイに頼るだけではゴールが奪えなくなっている。
■ DFミリガンのロングスロー千葉の唯一のゴールは、DFミリガンのロングスローから決まったが、第8節のFC東京戦でもDFミリガンのロングスローから先制ゴールが生まれており、今シーズン2回目となった。熊本は、ロングスローのとき、FWオーロイのマークにつくために191㎝のFW長沢が下がって対応していたが、FWオーロイにマークが集中した裏を突かれてしまった。
Jリーグでロングスローを武器にする選手というと、柏のDF増嶋が有名で、京都サンガ時代は、西京極のピッチからスタンドまでの距離の長さを生かしていたが、DFミリガンのロングスローはそれ以上で、射程距離も、スピードも申し分ない。もちろん、FWオーロイが中にいるのは大きいが、これだけ威力があると、他のチームも真似したくなる。単なるスローインが、ビッグチャンスとなるというのは、相手にすると厄介極まりない。
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