■ 5節終了時点でまさかの首位J2は5節が終了したが清川監督が就任した熊本が4勝1分けで勝ち点「13」。同じく4勝1分けで勝ち点「13」のC大阪を得失点差で上回って首位に立っている。対戦相手は1節が松本山雅(H)、2節が徳島(A)、3節が東京V(H)、4節が北九州(A)、5節が長崎(A)ということで「昇格あるいはプレーオフ候補」との対戦が続く中で4勝1分けという成績は見事というしかない。序盤戦のJ2の最大のサプライズを提供している。
これまでの戦いを数字で見ていくと1試合平均のシュート数は「8.2本」。これでリーグ17番目となる。相手チームの1試合平均のシュート数は「10.8本」でリーグ20番目。その差は「-2.6本」となるがリーグ18番目。(攻め込んでいるというよりは)相手に攻め込まれることが多いが6試合でわずか1失点のみ。4勝すべてが完封勝利なので鹿島から獲得した新守護神のGK佐藤昭を中心とした守備陣の頑張りが目立っている。
2015年の守備の要だったGKシュミット・ダニエル(松本山雅)とDFクォン・ハンジン(済州ユナイテッド)の穴を埋めるのは相当に難しいと思われたが、ここまでは2人の穴を感じさせない試合が続いている。2節の徳島戦(A)は後半38分に決勝ゴールが生まれたが、1節と3節と5節はいずれも前半の早いうちに先制ゴールを奪っており、「良い時間帯にゴールが生まれていること」も結果が出ている理由の1つと言える。
表1. 5節終了時点でのシュート数・CKの本数
| | シュート数 | CK本数 |
クラブ名 | クラブ名 | (差) | 自 | 相手 | (差) | 自 | 相手 |
1 | 清水エスパルス | 5.2 | 10.6 | 5.4 | 1.6 | 5.2 | 3.6 |
2 | V・ファーレン長崎 | 3.6 | 11.8 | 8.2 | 4.0 | 6.8 | 2.8 |
3 | 町田ゼルビア | 2.8 | 10.6 | 7.8 | -1.2 | 5.4 | 6.6 |
3 | ジェフ千葉 | 2.8 | 12.2 | 9.4 | -0.8 | 4.0 | 4.8 |
5 | レノファ山口 | 2.4 | 11.0 | 8.6 | -0.4 | 5.0 | 5.4 |
6 | 東京ヴェルディ | 1.6 | 8.4 | 6.8 | 2.8 | 6.0 | 3.2 |
6 | セレッソ大阪 | 1.6 | 12.0 | 10.4 | -0.8 | 4.0 | 4.8 |
8 | 横浜FC | 1.2 | 11.8 | 10.6 | 2.6 | 6.0 | 3.4 |
9 | ファジアーノ岡山 | 1.0 | 9.8 | 8.8 | 0.0 | 4.2 | 4.2 |
10 | コンサドーレ札幌 | 0.6 | 9.2 | 8.6 | -1.2 | 4.4 | 5.6 |
11 | 水戸ホーリーホック | 0.2 | 8.4 | 8.2 | 0.8 | 4.8 | 4.0 |
12 | 松本山雅 | -0.2 | 9.6 | 9.8 | 1.2 | 5.6 | 4.4 |
13 | ザスパクサツ群馬 | -0.4 | 8.6 | 9.0 | -1.2 | 4.6 | 5.8 |
13 | FC岐阜 | -0.4 | 8.4 | 8.8 | -2.4 | 4.0 | 6.4 |
15 | ギラヴァンツ北九州 | -1.8 | 7.6 | 9.4 | 2.2 | 5.6 | 3.4 |
16 | モンテディオ山形 | -2.4 | 7.2 | 9.6 | 0.8 | 6.0 | 5.2 |
16 | 京都サンガ | -2.4 | 9.2 | 11.6 | -1.6 | 5.0 | 6.6 |
18 | ロアッソ熊本 | -2.6 | 8.2 | 10.8 | -2.6 | 3.2 | 5.8 |
19 | ツエーゲン金沢 | -2.8 | 6.2 | 9.0 | 1.2 | 4.6 | 3.4 |
20 | 徳島ヴォルティス | -3.0 | 7.4 | 10.4 | -2.2 | 3.2 | 5.4 |
21 | 愛媛FC | -3.2 | 6.2 | 9.4 | -2.0 | 3.8 | 5.8 |
22 | カマタマーレ讃岐 | -3.8 | 9.6 | 13.4 | -0.8 | 4.6 | 5.4 |
■ 昨シーズンとの違いはどこにあるのか?主力の顔ぶれは先の2人とFW齊藤和(磐田)が抜けた以外はほとんど変わらない。5節の長崎戦(A)のスタメン11人の中で新加入選手はキーパーのGK佐藤昭とCBのDF植田龍のみ。J2の中堅以下のクラブの場合、前のシーズンの成績にかかわらず、選手の入れ替えが激しいチームが多くてシーズンの序盤は選手の融合で苦労することが多いが、今シーズンの熊本に関しては(人数的な)入れ替えはそこまで激しくなかった。
6試合で1失点のみ。ベテランの域に入ったGK佐藤昭の活躍も目立つが、岡山から加入した188センチのCBのDF植田龍の活躍も見逃せない。196センチのGKシュミット・ダニエルと187センチのDFクォン・ハンジンという絶対的な高さを持つ選手が抜けて「ゴール前の高さの不安」を抱えていたチームで制空権を握り続けている。フィード面でも大きく貢献しており、ここまでの「J2のベストCB」と言えるだろう。
昨オフに小野監督から清川監督に代わったがずっと熊本のコーチを務めてきた指導者なのでチームや選手のことは十二分に理解している。基本的な戦い方はあまり変わっていないように思えるが、闇雲に前からプレスをかけることはなくなった。「前線からの激しいプレス」は小野監督のときは熊本の一番の武器になっていたが、今シーズンは相手にボールを持たれた時はしっかりとブロックを作って守るシーンが多い。
小野監督のときは守備のときに大量にエネルギーを消費するので「ボールを奪った後のプレーの精度」に課題を抱えていたが、体力的な余裕が生まれたこともあって簡単にボールを失うことはなくなかった。「FW平繁とFW清武功の2トップ」が基本になっているが、「攻撃陣に高さのある選手がいないこと」&「中盤から前はテクニックのある選手がほとんどであること」も絡んでしっかりとパスをつなぐシーンが増えた。
■ 5試合で4ゴール1アシストと大活躍の清武功暉攻撃陣では背番号「10」を背負うFW清武功の活躍が目立ちに目立っている。ここまでの5試合で4ゴール1アシスト。唯一、直接的にゴールに絡んでいない5節の長崎戦(A)のFW平繁のPKによるゴールもスルーパスでPK獲得に貢献しているので、これまでに熊本が挙げた6ゴール全てに絡んでいる。2月度・3月度の月間MVPが間もなく発表されると思うが、FW清武功がJ2の月間MVPに選出されるのは間違いないところ。
1学年上となる兄のMF清武弘(ハノーファー)と比較されるが「力強さ」と「アグレッシブさ」は弟の方が上。ロングスローも大きな武器となる。「テクニック」や「創造性」や「キックの精度」では兄が上回っているが、子供の頃からずっと同じチームでプレーしてきたと思うので兄と同じスタイルになると出場機会を得るのが難しくなる。プレーヤーとしての系統は似ているが兄と弟で微妙にプレースタイルは異なる。
これだけ目立っているのでマークがさらに厳しくなるのは確実である。激しいマークに打ち勝つことができるか?がポイントになってくるが、周りの選手が頑張って彼の負担を減らすことができるか?も大事になってくる。期待したいのはFW平繁。鳴り物入りで熊本に加入したものの2015年は23試合で1ゴール。期待を大きく裏切ったが、徐々にチームに馴染んできており、今シーズンは開幕からスタメン起用が続いている。
「点を取る」という部分ではスペシャルなものを持っているが、昨シーズンは(前線の選手にもハードワークが求められる)熊本のサッカーに合わせようとし過ぎたことで本来の仕事場であるゴール前で力を発揮できない試合が続いたが、群馬時代と比べるとハードワークができるようになったこと、ならびに攻撃的なポジションの選手にかかる守備の負担がやや軽減していることを考えると得点力が復活する可能性は高い。
注目したいのは昨オフにJ3の福島ユナイテッドから加入したFW齋藤恵。2節の徳島戦(A)は後半38分にCKから決勝ゴールを記録して、4節の北九州戦(A)は後半44分にFW清武功の同点ゴールをアシストしたが、爆発的なスピードを持つFW齋藤恵は早くも切り札的な存在になっている。スピードに関してはJ2の中でもトップクラス。23歳になったばかりのFW齋藤恵は底知れないポテンシャルを秘めている。
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