■ 準々決勝準々決勝の4試合目。グループCで2位の韓国と、グループDで首位のイランの対戦。韓国はグループリーグは2勝1分け。3戦目でインド相手に大量得点差で勝利していれば首位通過が出来たが、決定的なチャンスを逃し続けて得失点差でオーストラリアに及ばなかった。一方のイランはグループリーグで唯一の3連勝。今シーズンから清水エスパルスの監督に就任するゴドビ監督が指揮を執っているチームである。
韓国は<4-2-3-1>。MFク・ジャチョルはここまで4ゴールを挙げており得点ランキングトップタイと好調。マンチェスター・ユナイテッドのMFパク・チソンとともに攻撃の中心となっている。1トップで19歳のFWチ・ドンウォンが前線で起点となる仕事を任されている。
■ 韓国が辛勝試合の序盤は韓国ペース。激しいプレスでイランに自由を与えずに試合の主導権を握る。しかし、韓国もかなり慎重な試合運びで攻撃はロングボール中心。1トップのFWチ・ドンウォンに高いボールを競らせて、ルーズボールを拾えたときは次の攻撃に入れるが、イランのセンターバックも空中戦は強く、思い通りの展開にはならない。前半は0対0で終了する。
後半になると、韓国のペースが落ちて、イランがペースアップしてくる。イランは後半から右サイドバックを交代させるが、これが当たって右からチャンスが作れるようになる。韓国はMFパク・チソンがバイタルエリアでボールを持つとチャンスになりかけるが、リズムが一定で変化のある攻めは出来ず。結局、後半もゴールは生まれずに0対0で延長戦に突入する。
その延長戦の前半の終了間際に、韓国が途中出場のMFユン・ビッカラムが左足でミドルシュートを決めてようやく先制に成功する。延長戦の後半15分はイランも攻め込むが、精度を欠いてビッグチャンスはほとんど作れず。1対0で韓国が勝利し、準決勝で日本と対戦することになった。
■ 韓国がベスト4韓国は、5大会連続でアジアカップの準々決勝で対戦している因縁のイランを相手に前半は完全に主導権を握ったが、後半になるといつものようにスタミナが切れ始めてピンチを招いた。立ち上がりから強烈なプレスをかけていたが、このプレスを90分間、続けるのは不可能であり、韓国はこのスタミナが切れる前に先制ゴールを奪わないといけなかったが、ゴールを割ることは出来ずに難しい試合となった。
これで韓国はベスト4に進出し、決勝進出をかけて日本と対戦することになったが、中3日の日本に対して、中3日でかつ延長戦を戦っている韓国がコンディションの上では不利な状況での対戦となった。
■ 深刻な得点力不足①前線に運動量とスピードのある選手をそろえて、グループリーグは非常にアグレッシブなサッカーを見せていた韓国であるが、この日は一発勝負の決勝トーナメントということもあってリスクレスの戦いを見せた。グループリーグのオーストラリア戦はもっと中盤からパスをつないで相手の守備を崩すことが出来ていたが、この日は単調な攻めが多くなって、組織的なイランの守備陣を崩し切れなかった。
もともと、韓国という国はスピードのある選手が多く、彼らが積極的に仕掛けてくるので相手にとっては厄介ではあるが、リズムが一定で変化に乏しいサッカーなので娯楽性には乏しく、相手に慣れられると手詰まり感が出てくる。ベンチは若い選手が多いが、変化を出せる選手は少ないので、勢いのある時間帯にゴールが出来ないと苦しくなる。このイラン戦は典型的な悪いパターンであったが、MFユン・ビッカラムの一撃に救われたといえる。
■ 深刻な得点力不足②それにしても韓国の得点力不足は深刻であり、この日も惜しいシーンは何度か作ってはいたが、ゴールにつながりそうな雰囲気はあまりなくて、ゴールは非常に遠かった。
モナコのFWパク・チュヨンが欠場していることも影響しているのかもしれないが、MFパク・チソンを含めて「ゴール」という決定的な仕事が出来そうな選手が見当たらない。1トップのFWチ・ドンウォンはサイズもあって、スピードもあって、運動量もあるいい選手ではあるが、怖さはあまり感じない選手で、サイドに流れてしまうケースも多く、肝心なときにゴール前にいないことが多い。
韓国というと、かつては、FWチョ・ヨンス、FWファン・ソンフォン、FWキム・ドフン、FWイ・ドングら体格に恵まれたセンターフォワードタイプの優秀な選手が続々と出てきたが、ここ数年は、センターフォワードタイプで逸材と呼べる選手は出てきておらず、際立つタレントはアタッカータイプばかりである。日本も同じような傾向はあるが、センターフォワードは育成も難しく、タレントが生まれるのを辛抱強く待つ必要があるが、歴代の韓国のセンターフォワードと比べると、見劣りしてしまう。
■ 深刻な得点力不足③センターフォワードに人材を欠いていることだけでなく、ゴール前に飛び込んでいく選手の枚数も不足気味である。左サイドからのクロスは右サイドのMFイ・チョンヨンがヘディングで狙うシーンが何度かあったが、一番、危険なスポットに入っていける「ピュアストライカー」がフィールド上にいないので、本当の意味での「危険なシーン」は作れていない。
レベルが一段上の存在であるMFパク・チソンを中心にチャンスは作っており、サイドバックのDFチャ・ドゥリ、DFイ・ヨンピョも頻繁に攻撃に参加してくるが、「ゴール」のイメージはわきにくく、非効率的である。「攻撃力はあるが得点力を欠いている。」という表現が適切で、イランのディフェンダーもそれほど脅威には感じなかったはずである。ボールを保持して攻めているように見えて、それほど相手に脅威を与えられていないことが、今の韓国代表の大きな課題であるといえる。
■ イランは精度を欠く3連勝でグループリーグを突破したイランであったが、この試合はパスやシュートの精度を欠いてゴールを奪うことは出来なかった。チャンスがなかったわけではないが、力みもあったのか、際どいシュートも少なかった。
今回のイラン代表は、かつてのFWダエイのような絶対的なタレントはいないが、チームプレーの出来る選手が揃っており、これまでのイランとはイメージが違うが、なかなかの好チームに仕上がっていたが、最後の「個」の部分では厳しいものがあった。守備陣はこれまでのイランと比べると見違えるように整備されており、新たな一面を見せたが、もっと上に行くには攻撃の物足りなさは残った。
イランが敗れたことで、ベスト4に残ったのは、日本、韓国、オーストラリア、ウズベキスタンの4チームとなって、中東のチームは全滅してしまった。カタールでの大会であったが、中東勢は思ったほどの成績を残すことが出来ずに終わってしまった。
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