■ 大一番前日の土曜日の試合でセレッソ大阪がザスパ草津に4対0の勝利を飾ったため、勝ち点差「1」に迫られたベガルタ仙台。しかしながら、残り2試合のうちのどちらか1試合で勝利をおさめれば、3位以内が確定する。
一方の対戦相手の鳥栖は得失点差を考えると状況は非常に厳しいが、それでも入れ替え戦進出の可能性を残している。目下の敵の仙台を相手に出来るだけ多くのゴールを奪って勝利をもぎ取りたい。
ホームの鳥栖はいつもの<4-4-2>でGK浅井。DF日高、飯尾、内間、高地。MF島嵜、船谷、高橋、野崎。FW藤田、レオナルド。FW廣瀬が出場停止。
アウェーの仙台は<4-5-1>。GK林。DF菅井、千葉、木谷、田村。MF斉藤、富田、永井、梁勇基、関口。FW平瀬。
■ 藤田のハットトリック試合はもう後の無い鳥栖が素晴らしい出足で仙台を圧倒する。前半10分にMF船谷のパスからFW藤田が決めて先制すると、さらに前半16分にもセットプレーからDF内間がヘディングで決めて2点をリードする。DF内間はプロ初ゴール。
前半26分に仙台は途中出場のFW中島のゴールで1点差に迫るが、前半終了間際に鳥栖のFW藤田が左MF野崎とのコンビネーションからこの試合2点目を挙げる。
後半は仙台も攻め込むが、大黒柱のMF梁がやや精彩を欠き、後半42分にFW藤田にプロ初となるハットトリックを決められて万事休す。1対4というショッキングな敗戦となり、2位以内の可能性が消滅。最終戦に3位以内確保を目指す。
■ 諦めない意思鳥栖は3位の仙台との勝ち点差が「3」に縮まったが、得失点差は「14」の差がある。数字的には、昇格の可能性が残っているとはいえ、現実的には、かなり難しい。ただ、それでも、選手全員が闘志を失うことなく、攻め続けた姿勢は称賛に値する。
この試合は攻撃の中心であるFW廣瀬を出場停止で欠く苦しい状況だったが、FW廣瀬不在の影響を感じさせなかった。DF飯尾を中心とする守備陣も90分間集中して守りきった。文句のつけようのない試合だった。
■ ストライカー藤田祥史試合を決めたのはエースストライカーのFW藤田。FW藤田はこの試合の3ゴールを加えてシーズン18ゴール。得点ランキングでも3位タイに浮上した。開幕から怪我で出遅れたことを考えると、ペース的には24ゴールを挙げた昨シーズンとそれほど変わりはない。
MF野崎のスルーパスを受けて決めた2点目のゴールシーンや3点目のゴールを見ると分かるように、左45度付近でマークの緩い状態でボールを受けたとき、高い確率でネットを揺らすことが出来る。通常であれば、FWデロ・ピエロやFW我那覇和樹のような右利きの選手が得意とするゾーンであるが、FW藤田は左利きにも関わらず、完全に自分のパターンを持っていて、ゴールキーパーにセーブされない位置にうまくボールを通して、ネットを揺らすことが出来る。
■ 精度を増すポストワークただ、今シーズンのFW藤田の進歩は、得点力よりもポストプレーの充実に見ることが出来る。もともと、それほど足元のテクニックがあるタイプの選手では無く、プレースタイルで分類すると、前線において自らの体格を駆使して相手とバトルするターゲットタイプであるが、今シーズンは昨シーズンと比べて、ポストプレーが洗練されており、鳥栖のサイド攻撃を活性化させる上で大きな役割を担っている。
特に、ダイレクトで正確に味方にはたいてチャンスにつなげるシーンが目立ってきており、味方との信頼関係は強固なものを感じる。昨シーズン終了時点のFW藤田の実力であれば、J1のクラブに移籍したとしても活躍できるかどうか疑問の残る点もあったが、現時点の実力で考えると、J1のほとんどのクラブでレギュラーポジションを獲得できるだろう。
■ 船谷の成長鳥栖では、ボランチに定着したMF船谷の成長も見過ごすことは出来ない。磐田からレンタル移籍中のMF船谷の左足のキックとアイディアは、鳥栖の攻撃にバリエーションを付ける上でも非常に有益である。
MF船谷というと、磐田時代からセンスの良さは評価されながらも、淡泊なプレーが多く、周囲の人々をがっかりさせるプレーが多かったが、鳥栖にやってきて数ヵ月で、別人のようにタフな選手となった。もう、磐田時代のマイナスイメージは払しょくされた。
■ 裏目に出た采配一方の仙台は、プレッシャーもあったのか、完全に後手に回ってしまった。序盤の鳥栖の出来が素晴らしかったこともあって、あっさりと2点リードを許した。
誤算だったのは、前半の7分という段階でMF永井がアクシデントのためピッチを去らざるをえなかったことである。MF永井を先発で起用し、MF斉藤、MF富田とともにトリプルボランチ気味で試合を落ち着かせたかった手倉森だが、そのMF永井の代わりに投入したのはFW中島。ベンチ入り出来るフィールドプレーヤーが4人だけというJ2の事情もあって、思うように選手交代が出来なかった仙台は、その後、大きくバランスを崩した。
可能性としてはDF渡辺広大を起用してDF千葉をボランチに上げるという策が考えられたが、手倉森監督の「強気」とも表現できるFW中島の起用が結果としては裏目に出た。
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