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音威子府村物満内

音威子府村物満内(平成24年7月8日探訪)

 音威子府村物満内は明治末期より開拓が始まった。村内でも早くから開拓された集落であったが、交通の便が悪いため離農するものが多く、昭和10年代には満洲(現 中国東北部)や樺太(現 サハリン)へ移住するものが多かった。

 この地区の子供たちは10数キロ離れた物満内小学校(後の筬島小学校)に通学していた。その頃の思い出が村史に記載されていたので、以下引用する。

 「夏は7キロの刈り分け道を歩いて通学した。しかし、雪が降ると学校の近くの寄宿舎に入った。1,2年生の炊事は近くに住んでいた古田のおばさんが面倒を見てくれたが、3年生以上は自分で煮たきをした。日曜日になっても道が雪に埋もれているので帰ることはできなかったが、友達がたくさんいたのでさびしいことはなかった。」

 戦後、再び入植者が増加したため昭和30年10月1日 物満内小学校上物満内分校として開校した。

 昭和34年5月1日 上物満内小学校として独立。
 昭和36年7月23日 物満内1172番地に校舎を移転する。これは上物満内地区の離農による戸数減少の結果、国道沿いに校舎を移転した。

 昭和38年4月1日 物満内小学校と校名を変更し、再出発。

 戦後、村内の河上木材のヤマゴ(造材人夫)として従事した新木正氏(90歳)はこう記す。

「戦後、私も河上木材のヤマゴとして大木を切りました。いのちがけの仕事でした…(中略)上物満内小は造材山で働いていた頃、吹雪の日の昼にストーブにあたらして戴いた事。今は荒地で熊が居るので一人で山に行くなと村より公報で注意しています…(略)」

「私が上物満内で仕事したのは昭和30年過ぎです。上物満内熊撃ちの古田さん、瀧ヶ平さんなど熊を獲っていました。昭和38年頃より鉄道の除雪に出て山はやめました。山は寒く、今思い出しても苦しかったです…(略)」

 しかし離農による過疎化が進み、昭和50年3月17日 廃校式を挙げて閉校した。へき地等級 5級の学校である。


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まずは移転後(昭和36年)から閉校までの学校跡地。
ここは国道沿いの高台に位置している。

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ブロックの残骸が散らかっていた。
校舎の一部なのか、それとも教員住宅の一部なのか?

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隅には錆び付いた遊具があった。

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校舎の基礎が残されていたが、草木に覆われており全体を掴むことができなかった。

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廃校跡地の記念碑。
元々は木に彫っていた。

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ここから先は、移転前の学校跡(上物満内小学校)である。
手前の家屋から、10キロ先にあった。


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途中にある林道(物満内林道)の案内板。
案内板よりもさらに奥地である。

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途中の風景。まだまだ進む。

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段々、心細くなってくる。

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学校跡地手前の風景。
この奥に校舎があった。

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しかし、すさまじい薮と、クマの恐怖で断念してしまった。

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学校の奥より集落跡地を眺めてみる。
左側はすっかりシラカバ林になっているが、かつては畑が広がっていただろう。

ここにも「上物満内小学校跡」の記念碑が建立されているようであるが、この時は発見できなかった。
話によると、学校跡地の反対側に建てられていたそうである。
上物満内は自然に帰ってしまい、人々の暮らした痕跡は見つけられなかった。

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まとめ【音威子府村物満内】

音威子府村物満内 音威子府村物満内は明治末期より開拓が始まった。村内でも早くから開拓された集落であ

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No title

錆び付いた遊具に木彫りの記念碑、ここも素敵な場所ですね。

熊が居るので一人で山に行くなとのことですが、たくさん居た(居る?)のですね。
私は熊鈴しか頼るものが無いし、大抵一人なので熊の恐怖はすごくよくわかります…

No title

これからもう少し先で林道の左側に昔滝が有りました。最近崩れてしまった様で・・・

RE:No title

F090/Shigeさま

ここでクマと鉢合わせということはなかったのですが、真新しいクマの糞を見つけました。
この時は私を含め、3名の合同探索でしたがそれでも怖かったです。

hiroさま
何と、この奥に滝があったのですか。
まだまだ奥に続いていましたが、クマの恐怖で学校跡周辺をパパッと見て終わりました。

No title

ここは例の突撃隊が突き進んだ場所ですね(笑)。

改めて行程を拝見するといつプーさんが出現してもおかしくないようですね。

上物満内は実に魅力的な廃校跡地ですが、流石に単独では自殺行為ですね(汗)。是非、ボクも行ってみたいのですが突撃隊の方々にとって、熊撃ちの古田さんのような人は心強い同行者になると思われますが、チキンのラオウさんは突撃隊の方々の足を引っ張ること間違いなしと思われます(涙)。

RE:No title

ラオウさま

仰るとおりです。ここは突撃隊2名が突き進んだ場所です(笑)
校舎跡地までは未達成です。もしかしたら基礎の一部が残されているのかもしれませんが、雪解け時期に再訪できたら良いかな、と思っています。
この探訪のとき、真新しいプーさんの糞を2箇所発見しました。この時は流石にドキッとしましたよ。

上物満内、ちゃんと調べておけばよかった・・・

平成に入ってからだと思いますが、上川管内の退職校長さん方が編集した
「上川管内の閉校(廃校)一覧」?なるものを釧路の豊〇堂という本屋さんで見つけ、
2000円という自分としては超安値でで購入したことがあります。
薄い冊子なのですが、昭和63年までの、在校生の人数や歴代校長名が
こと細かく記載されていました。(内地引越しの際なくしてしまいました)
今となっては調べようもないのですが、その中に「上物満内小学校」の名前あったかどうか、
急に知りたくなってしましました。
今回、「上物満内」の存在を貴ブログで知ってしまったため、
貴重な資料をなくしたこともあいまって、夜も寝られません・・・
そういえば、美深側から物満内にアタック(しかも車で!)しようとして失敗したことを
思い出しました。無知というものは恥ずかしいもので・・・「ばか」は許されるのでしょうか?
・・・1/50000の地図に載っていれば車も通れると思っていたはじめっち

4~5年前、筬島の駅に寄った(車の着雪を払うため)とき、
駅前を除雪していた人に捕まって、面白い話をきかされたっす。
筬島に橋がかかる昭和30年代後半以前の氷橋?の話とか
冬場物満内の山奥から木を切り出して、鉄道のある駅まで運んだとか
すんごく面白い話をしてくれたんだども、外は豪雪、早く帰りたいと気が気じゃなかったす。
結局2時間以上駅で話し聞いたけど、今思えば、しっかりと聞いておけばよかったっす。
そのときの話が、上物満内のことも含まれていたとしたら、尚更っす。
筬島のフジ〇ラさんだったかなぁ、もいっかい聞きたいだよ。
・・・記憶もあやふやだよゆたか

あたいは橋だ歴史だ木材輸送だなんてぜんぜん関心ないけど、
砂澤ビッキのえびの彫刻はおいしそうだったのだ。
それよりも常盤村の旧市街地の地図、復刻してほしいものなのだ。
・・・さけみそぱんが食えなくなって非常に残念つるみん

実は、美深町立清水小学校閉校の件が、証言者の記録と一緒に残されているのを見て、
なんだかとても鳥肌が立ちました。
町で美深の歴史について読みやすくしたものが、30年前に出ていますが、
もしかしたら、その中に出ているのではないかとちょっと確かめてみたくなりました。
(自分ら勉強は大嫌いなんですが・・・)
・・・古老の方に話を聞かれるなんてすばらしい取材能力ですみならいかのん


Re: 上物満内、ちゃんと調べておけばよかった・・・

はじめっち&ゆたか&つるみん&みならいかのんさま

コメント有難うございました。
「上川管内の閉校(廃校)一覧」という本ですが、もしかしたら私も読んだことがあるかもしれません。
上物満内も記されていたかどうかまでは生憎、覚えていません。申し訳ありません。
あまり自分を責めないでください。私も色々とやらかしたりしています。

筬島もかなり前に行ったことがあります。その時は、鉄道の旅も兼ねていました。
その際、駅の近くに住まわれている方に直接伺い、往時の集落について伺いましたが今思えば、もっとしっかり記録しておけばよかったと思っています。
常盤村の地図ですが、数年前まで営業していた「原菓子舗」に昭和30年代の常盤村全図、咲来の地図が掲げられていました。ただ、店も閉店したのでどうなったかは分かりません。

美深町は、美深町郷土研究会が学校をはじめ町内の歴史について色々と調べています。
私も名寄や旭川に住んでいた時は、時々出向いて伺ったものです。
プロフィール

成瀬健太

Author:成瀬健太
北海道旭川市出身。札幌市在住。
元陸上自衛官。
北海道の地方史や文芸を中心としたサークル『北海道郷土史研究会』主宰。

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