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美深町報徳

美深町報徳(平成24年11月10日探訪)

美深町報徳は元々「オテレコッペ」(川尻を跳び越すいつもの処、の意)と呼ばれていた。

明治37年5月10日、伊勢団体 山北清太郎氏ほか数名がオテレコッペに移住し、開拓が始まった。

開拓記念碑には「沃農場は明治37年2月8日付で三重県員弁郡丹生村、伊藤黙子蔵に御貸になり明治37年5月10日当農場に移住後、大正2年2月6日前農場主より譲り受く」と刻文されている。

数年後には同郷から10数戸入植したが、大半は伊勢出身者であった。

この頃、学童たちは恩根内第一尋常小学校(現 厚生小学校・明治37年5月15日開校/平成11年3月31日閉校)に通学していたが道路条件が悪く、特に幼学年児童は就学が出来なかった。

こうしたことから山北清太郎・東庄左エ門・飯田勝次郎・佐久間亀之助ら部落民の協力により恩根内11線西7号38番地 東庄左エ門の土地4反歩の寄付を受け学校が設置された。教室20坪、便所その他11坪を部落民総出で建築・伐木して大正4年11月に完成した。

開校当時の児童数は38名で、大正5年5月1日 「恩根内第一尋常小学校所属恩根内11線オテレコッペ特別教授場」として開校した。

大正期に入ると澱粉工場をはじめ水稲栽培、木炭製造が行なわれ、昭和時代には乳牛の飼育も行なわれるようになった。

昭和11年にそれまでのオテレコッペより「報徳」に改まった。

昭和13年3月31日 公徳尋常小学校と改名され、昭和16年4月1日 公徳国民学校となり昭和22年4月1日 美深町立公徳小学校となった。

昭和28年には公徳中学校が併置された。

昭和35年に屋内体育館(へき地集会所)が新築され、昭和37年11月23日校下一円に電灯がついた。

この頃より転出する世帯が増え、昭和42年3月31日 併置していた中学校が廃校となった。同年9月20日 鉄筋コンクリート2階建ての校舎に改築された。

しかし、過疎化は進行し昭和50年3月20日 公徳小学校 廃校記念式典が行なわれ、同年3月31日を以て廃校になった。

報徳はそれぞれ右・左・中・下の4つの班に分けられていた。

右は9号より奥二股の右の沢一帯、左は二股から大正橋を渡り左の沢崖下より奥峠まで、中は崖下から下9号から6号まで、下は6号から3号 大手の境目までが報徳集落の範囲であった。

大正15年より昭和17年まで50戸前後で推移していたのがピークであった。それでも、昭和37年頃までは49戸の方が住まわれていた。

昭和38年より転出者が増え、平成15年で6戸。webサイト「地図インフォ」によれば平成23(2011)年の世帯数は「5世帯」と表示された。

ここで一つの疑問が生まれた。

集落名は「報徳」であるが学校名は何故「公徳」なのか?

同様に、町内の「小車」集落も学校名は「御車」となっているが何故か?

美深町郷土研究会 会長の佐久間昌美氏に伺ってみたが「それについては申し訳ないが、判らない。私たちの『宿題』だ」と仰っていた。

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国道40号線を北上し、美深町大手集落より左折し、西に進むと報徳集落に入る。
ここは公徳小・中学校跡の手前である。

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学校跡地。
閉校後、校舎は公民館として活用されていたが、平成11年11月に解体された。
画像には「山火事注意」の旗が掲揚されているが、これは元々、公徳小学校の国旗掲揚搭である。

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傍には馬頭観音さまの石碑と神社の手水舎?が置かれていた。
尚、神社は学校のあった位置よりももう少し奥にあった。
神社は平成14年11月20日 美深神社神官による昇天の儀を行い、御本体100年、建物86年の歴史を閉じた。

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学校跡地に建てられた学校跡を示す案内板。
教育委員会の手によって、新しく建てられた。

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学校跡地に隣接する個人住宅。

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その敷地内に「奉安殿」が置かれていた。
美深町内で奉安殿が残っているのは、ここだけである。

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学校跡地より奥の風景。
この奥にも人々の営みがあったが、痕跡は失われていた。

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今回、美深町郷土研究会会長である佐久間昌美氏よりご恵送いただいた「報徳のあゆみ」(複写)
平成15年8月14日 報徳が開拓されて100年になるのを記念して発刊された郷土史である。
表紙に写っているのは公徳小学校 旧校舎である。
佐久間氏に深く感謝する次第である。
プロフィール

成瀬健太

Author:成瀬健太
北海道旭川市出身。札幌市在住。
元陸上自衛官。
北海道の地方史や文芸を中心としたサークル『北海道郷土史研究会』主宰。

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