余りに長い間、発展途上諸国を圧迫したために、自身発展途上諸国と化した欧米
2019年9月3日
Andre Vltchek
New Eastern Outlook
多くの人々は既に気が付いている。アメリカはもう本当に世界の指導者や「先進国」とさえ思えない。もちろん、私は「先進国」や「発展途上諸国」のような表現を嫌いなので、私は皮肉で書いている。だが読者は私が意味していることお分かりだ。
橋、地下鉄、都心部、全てがばらばらに壊れ、ぼろぼろに崩れている。20年以上前、私がニューヨーク市に住んでいた頃、日本から帰国するのは衝撃的だった。アメリカは、貧しい恵まれない国で、困惑し意気消沈した人々の窮乏、ホームレスの人々、要するに、ならず者など、問題山積のように感じられた。今、中国で若干の時間を過ごした後、アメリカに着陸する時、私は同じことを感じる。
それはもっとずっと酷くなっている。かつて欧米がソ連を、それで非難したものが、アメリカとイギリス自身で、今実際、はっきり感じられるのだ。近頃監視は、あらゆる所にある。ニューヨーク、ロンドン、シドニー、田舎でさえ。人がする全ての行動、あらゆる購入、全てのコンピュータ・クリックが、何らかの方法で、どこかで登録されている。この監視は、たいてい、さらにじゃなく、非合法だ。
言説は政治的配慮に支配されている。舞台裏にいる誰かが、何が許容でき、何が許容できないか、何が望ましく、何がそうでないかを判断しているのだ。一つ「ミス」をすれば、人はおしまいになる。大学の教職から、あるいはマスコミから。
このような状態ではユーモアは繁栄できず、風刺は死ぬ。それは宗教的原理主義と変わらない。もし「他人の気分を害すれば」その人は破壊される。このような状況で、本当の小説は本質的に人の気分を害し、常に枠を越えるものなのだから、作家は画期的な小説を書くことができない。結果的に、もはや、ほとんど誰も小説を読まない。
骨抜きの「制御されたユーモア」しか認められない。どんなパンチも直感的に実行してはならないのだ。全て前もって計算されなければならない。どんな「法外な」政治小説も欧米(だから形式としての小説がほぼ死んでいる)の「見えない検閲」を通過できない。ロシア語や中国語が読める人々は、小説は、ロシアと中国での方がずっと挑発的で前衛的なの良く知っている。
欧米では詩歌も死んだ。退屈な新鮮味がない消化しにくい学科に貶められた哲学もそうだ。
ハリウッドとマスメディアが(主に中国人、ロシア人、アラブ人、ラテンアメリカ人や他の人々に対する)あらゆる種類の大いに侮辱的なステレオタイプ的な人種差別主義のがらくたを容赦なく生産し続ける中、欧米政権とその構造をちょう笑したいとを望む素晴らしい脚本家や映画製作者は既に沈黙させられている。人は(またもや、どこかで、どういうわけか)承認される方法で、非欧米人に恥をかかせることができるだけで、湾岸や東南アジアやアフリカで、ロンドンとワシントンのために自国を破壊している親欧米派エリートを批判するなどとんでもないのだ。それは「上から目線」で「人種差別的」なのだ。帝国とその使用人にとって素晴らしい仕組みではないだろうか?
我々全員、何がジュリアン・アサンジとエドワード・スノーデンに起きたか知っている。欧米では人々が逮捕され、検閲され、失踪している。何百万人もが仕事を失っている。メディアで、出版社で、映画スタジオで。今起きていることと比べれば、冷戦時代は比較的「寛大な」ように思える。
ソーシャル・メディアは「厄介な」個人や「容認できない」メディアや余りにも「正統でない」思想を常に抑圧している。
旅行は新兵訓練所になった。旅行は彼らがあなたを粉砕する場所だ。欧米の空港を通れば、俗悪で侮辱的な「治安スタン」に遭遇するはずだ。今や人は単に命令されたら、パンツを下ろしたり、くつを脱いだり、液体を含んでいる全てのビンを棄てたりするよう期待されるだけではない。人は微笑し、ばかのように明るくにっこり笑うことを期待される。人は、どれぐらい熱心で、どれぐらい協力的か示すことになっている。大声で答え、自分を苦しめる相手目をまっすぐ見つめるように。もし屈辱を受けても、礼儀正しくしていなければならない。もし飛行機に乗りたいなら、人を破壊し、惨めにし、従順にするためだけに行われる、この愚かな役に立たない屈辱を楽しんでいることを示さなければならない。人に本当は一体何に所属しているか教えるために。さもなくば。さもなくば! もし「協力」を拒否すれば、何が起きるか我々全員知っている。
***
今、「連中」は、人々にこの全てが自身のためであるとを知らせるため、二重語法を使う。それは発声されないが、人はそれを感じさせられるはずだ。「あなたはこれらの酷い発展途上諸国の怪物、狂人、性的倒錯者から守られている。」プーチン、中国共産党員、虐殺者マドゥロ、アサドから、あるいは、もちろんイランのシーア派狂信者から。
政権はあなたのために戦い、政権はあなたの世話をし、政権はあなたを守っている。
もちろん、もしあなたがイギリスあるいはアメリカにお住まいなら、あなた借金漬けで、将来の見込みなしの可能性が高い。あなたの子供は空腹かも知れず、アメリカでは、おそらく、あなたは医療費を支払う余裕がない。あなたは自身の都市で住宅を買う余裕がない可能性が非常に高い。多分あなたは二つか三つの仕事を持つことを強いられる。
だが少なくとも、あなたは「賢明な指導者たち」が、ホワイトハウス、議会、国防総省や治安機関が外国の悪意のある攻撃から、進んでいる、平等主義の社会を築くことで忙しい悪のそれらの中国人とロシア人から四六時中、あなたを無数の陰謀から守っていることを知っている。
あなたは運が良い!
***
何かがつじつまが合っていないことを除いては。
何年も何十年もの間、あなたはあなたがどれぐらい自由か言われてきた。あなたが彼らから守られている連中が、どれほど虐げられ、どれほど不自由か。
あなたはあなたがどれぐらい金持ちか「他の連中」がどれほど惨めか言われてきた。
それらの恵まれない気が狂った大群を止めるため、いくつかの本格的な施策が適用されなければならなかった。一部の中央アメリカや東南アジアの国の右翼暗殺団を、米軍のキャンプで訓練しなければならなかった。徹底的に専制主義の不正な王政連中を支援し、満足させなければならなかった。軍ファシスト・クーデターを手配しなければならなかった。何百万人もがレイプされ、何万人もの死体。まったく美しくないが、あなたはそれが必要なのを知っている。あなた自身のため、北アメリカやヨーロッパ市民のために。あなた自身のために。我々が「解放」すると指定した国の利益のためにさえ。
欧米では,ごく少数の反体制派分子が何十年間も抗議してきた。誰も彼らにさほどの注意を払わなかった。彼らの大半が「雇用されなくなり」、窮乏と彼らの基本的請求書を支払う能力のなさから、沈黙させられた。
だが突然
突然、何が起きたのだろう? 何かが本当に起きたがゆえに
***
帝国は、もっぱら世界の非欧米地域だけ略奪するのがもう嫌になったのだ。
しっかりてなずけられ、洗脳され、怖がらせられた欧米大衆は、世界の略奪された、そして惨めな地域におけるのと同じ悪意で扱われ始めた。正確には、まだだ。まだ多少の本質的な違いがあるが、傾向は確実にそうなっている。
実際、欧米大衆は自身を保護するために余り多くをすることができない。政権は全員のあらゆることを知っている。政権は全国民をスパイしている。彼や彼女が歩くところ、彼や彼女が食べるもの、車で、飛行機で行く場所、見て、消費するもの、読むもの。もはや秘密は存在しない。
あなたは無神論者だろうか? 「告白する」必要はない。あなたはリモコンのボタンを押すことで、コンピュータをクリックする度に、あるいはアマゾンで買い物をすることで、毎分自白しているのだ。
ビック・ブラザーは監視しているだろうか? 違う。今はずっと詳細な監視がある。「ビッグ・ブラザー」は監視し、記録し、分析している。
チリのピノチェト将軍は彼の許可なしには、木の葉さえ動くことができないと自慢したものだった。年がいったファシストの人間のくずは誇張して、自慢していた。他方、欧米支配者は何も言わないが、彼らは明らかに自分たちが何をしているか知っている。連中の許可なしには、何も、誰も動けない。
中国やロシアやキューバから到着して私の頭に最初に閃くのは、実際、ヨーロッパ人と北アメリカ人は一体何としつけが良く、従順で、怖がっているのかということだ。彼らは潜在意識的に自分たちが支配されていて、それに対して何もできないのを知っている。
列車が遅れたり、キャンセルされたりすると、彼らはおどおどして半ば聴こえるようなのろいをささやく。彼らの医療給付は減少する。彼らは受け入れるか、静かに自殺する。彼らの公共インフラは崩壊する。彼らは「古き良き日々」を思い出しながら、何も言わない。
メキシコシティー、ヨハネスブルグや北京で、なぜ私は希望を感じ、人々と一緒に笑うのだろう? ウラジオストクやカムチャッカのペトロパブロフスクのように地理的に寒い都市に、なぜそれほど暖かさがあるのだろう? ロンドン、パリ、ロサンゼルスの人々はなぜそれほど心配していて、意気消沈しているように見えるのだろう?
一部の歴史的に貧しい国が発展しつつある。そこの人々はあらゆるささやかな改善に感謝を示している。楽天主義より美しいものはない。
欧米は長年、何十年もの間、いわゆる「発展途上諸国」と戦った。発展途上諸国を圧迫し、発展途上諸国をひどく苦しめ、発展途上諸国を略奪し、発展途上諸国の人々を冒涜した。欧米は、発展途上諸国が自身の政府を選択するのを阻止した。今欧米は調子に乗りすぎている。欧米は、自国民を含め、世界全体を支配し、圧迫しようと試みている。
世界中の様々な国々が、ワシントン、ロンドン、パリとベルリンからの圧力に抵抗して自立しつつあり、欧米の人々は、自国政府に、もっぱら「低開発国」(そう、もう一つの汚らわしい表現)に限らていた悪意で、益々扱われるようになっている。
明らかに、欧米は「自身から学んだのだ」。
ロシア、中国、ベトナム、メキシコ、イランや他の国々が前進している中、かつて金持ちだった多くの植民地主義や新植民地主義帝国が今「発展途上諸国」に似始めている。
近頃、ニューヨークやロンドンで作家であることは非常に悲しい。貧しいことが恐ろしいのと全く同じように。あるいは違っていることで。全世界、役割は逆転しつつある。
Andre Vltchekは哲学者、小説家、映画製作者で調査ジャーナリスト。彼は Vltchek’s World in Word and Imagesの創作者で、China and Ecological Civilizationを含め、多くの本を書いている作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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想定以上。初心者の害行。
今日の記事の中で、下記が気になっている。
橋下徹氏によるスラップ訴訟の一審判決は9月12日!大阪地裁の判断にぜひご注目を!!
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海坊主さんの英訳のご指摘、私も英文を読んでみたのですが、私ごときの英語レベルでは解不能でした。もっともっと英文を読んで、慣れていかねばだめですね。
再度英文で精読して、本当に悲しくなりました。山本太郎さんのれいわに期待していますが、権力者は、何としてもこれを潰したいと強く強く思っていることでしょうね。NHKは、党首討論に、れいわを入れないそうです。まだまだ小さくて芽生えたばかりの政党、消すのは、赤子の手をひねるより簡単と思っていることでしょう。
韓国映画「ザ・ネゴシエーション」をぜひご覧になってください。アクション映画で、一人の若い犯罪者が主人公と思っていると、、真に凶暴で残酷で暴力的な犯罪者とは誰なのか?を暴いていきます。軍・資本家・政府が起こす犯罪ほど恐ろしいものはない・・・それが主題です。エンターテイメントと政治性の融合が見事です。韓国の映画人の勇気に驚きます。
投稿: 野薔薇 | 2019年9月14日 (土) 10時56分
メタボ・カモ様、翻訳ではなく原文に対する異議であることは申し上げるまでもありません。
私よりも世界を正確に捉えているであろうヴルチェク氏の事ですから、思わず筆が走ったのだろうと思っております。
いつもながら精力的に翻訳されているメタボ・カモ様には感謝しかありません。いつもありがとうございます。
投稿: 海坊主 | 2019年9月 8日 (日) 21時36分
いつもありがとうございます。猛暑の中、大変なご努力をしておられると思います。心から感謝申し上げます。
これは心も凍る記事です。日本の近い将来の姿だと思います。10月からの消費税値上げで、日本はたちまち発展途上国に転落すると、京大の藤井聡さん。それでも、私の周りには、いつまでもいつまでも、アメリカの民主主義を信じている人の群れがあります。橋下ファンも、大阪に多い。彼は自分より立場の弱い人に対しスラップ訴訟を何件もやっています。岩上さんの勝訴を心から願っています。
緊縮政策とネオリベラリズムに反対していかないといけないそうです(立命館大学の松尾匡さん)。
日本への警告に満ちた記事ですね。プリントアウトして、じっくり英語で読んでみたいです。ありがとうございました。
投稿: 野薔薇 | 2019年9月 8日 (日) 20時45分
海坊主様
貴重なコメントを有り難うございます。ご指摘の通りですが、翻訳としては、極力原文の通りに忠実に日本語にするべきと思っておりまして、そのままにしております。その意味で、このようなご意見を頂いたことにお礼申し上げますす。
投稿: メタボ・カモ | 2019年9月 8日 (日) 14時26分
『帝国は自国民を二度貪食する』
今回も良い記事でした。概ねブルチェク氏の論旨に同意です。ただ「帝国は、もっぱら世界の非欧米地域だけ略奪するのがもう嫌になったのだ。」という認識は少し違うと感じました。「一周回って自国民からもう一度収奪することにした」、が正しい認識なのでしょう。
帝国的国家体制は国内の反対勢力からの収奪を経た後に成立するものと私は認識しています。帝国化が進行する過程で「奪いやすい所から奪い、沈黙しやすい所を黙らせる」ことが必須案件と思います。つまり、自国内・自勢力内の穏健勢力や反対勢力から富と力(権利・表現の自由)を奪って彼らを辺縁化・潜在的敵対勢力化・無力化し、その富・力・暴力を支配者層に集権化せしめるこのプロセスが完了した果てに現出するのが帝国的国家体制、と認識すべきではないかと思うのです。
辺縁化・潜在的敵対勢力化・無力化せしめる行為に道理がないからこそ、支配者層は自国内・自勢力内の穏健勢力や反対勢力に常時怯えています。一周回って再び収奪の手が私たちに向けられるようになったのは、手づかずの非帝国地域が地球上から消滅したからでしょうね。帝国は自身が生き残るために、わずかな富で生き抜こうとする同胞からもう一度奪う必要が出て来たのです。監視や検閲は彼ら支配者層の自衛行動なのです。私たちはそんな屠殺者達に忖度する必要はありません。彼らに道理はないのです。悲しいかな、それでも忖度し続ける人々は帝国内の奴隷です。彼らは帝国国民である事実からなにがしかの恩恵を受けているつもりなのでしょうが、本当は自分たちも植民地現地住民と同格の被収奪者である、という事実に気づけていないのです。
投稿: 海坊主 | 2019年9月 8日 (日) 12時19分