カショギはサウジアラビア政権の批判者ではなかった
2018年10月15日
Consortium News
先週、イスタンブールのサウジアラビア領事館で失踪したサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギは、欧米マスコミが言うほどサウジアラビア政権の批判者ではないと、アサード・アブハリルは書いている。
As`ad AbuKhalil
Consortium News特別寄稿
先週、サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギが、イスタンブールのサウジアラビア領事館で失踪したことは、世界的に大きく報道されているが、サウジアラビアが支配するアラブ・メディアではほとんど報じられていないのは驚くべきことではない。カショギが寄稿していたワシントン・ポストや他の欧米マスコミは話題を報じ続け、リヤドに事件での役割を説明するよう圧力を高めている。
欧米マスコミで、カショギについて読むと奇妙だ。デヘヴィッド・ハーストは、ガーディアンで、カショギは“真実と民主主義と自由”といった絶対的なものしか気にしていなかったと主張した。ヒューマン・ライツ・ウォッチ理事長は、彼のことを“遠慮のない、批判的ジャーナリズム”の代表だと表現した。
だが彼はサウジアラビアの王子たちのために働きながら、そうした絶対的なものを追求したのだろうか?
カショギは、サウジアラビア・プロパガンダ機関の忠実な一員だった。王国ではジャーナリズムは全く許されていない。その意見ゆえに、堅固な政治的服従の壁を壊そうとして、迫害され、罰せられた勇敢なサウジアラビア人女性や男性がいるのだ。カショギはその一員ではなかった。
カショギが、アル-ワタン新聞で、ボスだって時代に苦しんだ記者たちもいるのだ。カショギは書かれていることと違って、二年前、サウジアラビア皇太子ムハンマド・ビン・サルマーン(MbS)が、彼がツイートすることや、サウジアラビアのハリード・ビン・サルタン王子が所有するロンドンを本拠とする汎アラブ新聞アル-ハヤトに書くことを禁じて軽く罰されたのを除いて、決して政権に罰されたことはなかった。
歴史的に対照的なのは、勇敢な非宗教的なアラブ民族主義作家で、王国を1956年に逃れ、カイロに、次にベイルートで暮らしたナシール・アッサイードだ。彼はサウド家の歴史について(タブロイド紙風ではあったが)膨大な記事を書いた。彼はサウジアラビア王家攻撃で容赦がなかった。
そこでサウジアラビア政権は、アッサイードを処分するために、腐敗したベイルートのPLO指導者(ヨルダン諜報機関とつながっているアブ・アッザイム)を買収した。1979年に、彼が人出の多いベイルート街頭でアッサイードを拉致し、彼を現地のサウジアラビア大使館に送り込んだ。彼は拷問され、殺害されたと推定されている(彼の遺体はサウジアラビア砂漠の“空虚の地”上空で、飛行機から投下されたと言う人もいる)。それがこの政権の実績なのだ。
適切な王子を見つけ出す
カショギは、サウジアラビア・ジャーナリズムで出世するためには、プロ精神や勇気や倫理は不要なのを知っている若い野心的な記者だった。サウジアラビアでは適切な王子に近づく必要があるのだ。早い時期に、カショギは、そうした二人と親密になった。トゥルキ・アル・ファイサル王子(サウジアラビア諜報機関を指揮する)と、アル-ワタン(母国)紙を所有する彼の兄ハリード・アル・ファイサル王子で、アル-ワタンでカショギは最初の(アラビア語) 編集の仕事についたのだ。
カショギは政府主流の連中を喜ばせる熱心さと、意見を合わせる名状しがたい能力で傑出していた。アフガニスタンや他の国々での反共産主義と狂信的聖戦推進の時代には、カショギは熱狂的信者だった。彼はオサマ・ビン・ラディンと共に戦い、ムジャヒディンの大義を推進した。
ワシントン・ポストのディヴィッド・イグナティウスや他の連中は、ビン・ラディンの軍隊が、連中の戦争努力を報道するよう独立ジャーナリストを招いていたかのように、彼は“従軍”記者だったと示唆して、これを潤色したがっている。アフガニスタン・ムジャヒディンを報道し、サウジアラビア・マスコミで彼らを奨励するプロジェクト丸ごと、カショギの主要後援者王子であるサウジアラビア諜報機関長官トゥルキー王子のしわざだった。
欧米マスコミのカショギの経歴報道(アラビア語を知らない人々による)は現実からほど遠い様子を描いている。彼らはサウジアラビア政権を怒らせた勇気ある調査ジャーナリストとして彼を描いている。これほど真実からほど遠いことはない。サウジアラビアには、ジャーナリズムは存在しない。あるのは露骨でむき出しのプロパガンダだけだ。
編集者は長年の忠誠を示してきた信頼される人物だった。昨年カショギは、イスタンブールでのインタビューで、あるアラブ人記者に、サウジアラビアで、彼は編集者・検閲者兼業だったことを認めていた。サウジアラビア政権新聞編集者(王子や王の代弁人)は、政府支配を推進し、好ましからぬ記事を消すのだ。
カショギは決して窮地で、サウジアラビアに、ものを言ったわけではない。彼はアル-ワタン編集者として、当時、彼自身ではなく、他の筆者が書いた、彼が支持していた保守派の宗教支配層を穏やかに批判した記事を掲載したため、二度、面倒なことになった。宗教当局から彼を隠すため、彼は他の政府メディアの仕事に配転された。
政権にそうするよう任命されたカショギは王国を報道する欧米ジャーナリストにとってのお助け役だった。彼は記者たちと会話をするのを楽しんでいたかも知れないが、王家の正統性に疑問を抱いたことは決してなかった。ポスト紙に寄稿していたワシントンでの彼の短い一年の勤務期間もそうだ。
反動主義者
カショギは反動主義者だった。彼は地域のあらゆる君主制やサルタン統治を支持しており、彼らは“改革可能だ”と強く主張していた。彼にとっては、ウジアラビアと緊張した関係にあるイラクやシリアやリビアなどの宗教色がない国々だけが改革を拒否しており、打倒する必要があるのだ。アラブ政治をムスリム同胞団の主張に沿ってイスラム化するのを彼は支持していた。
カショギが考えていた構想はサウジアラビア政権率いる“アラブの反乱”だ。彼のアラビア語の著作で、彼はMbSの“改革”や、地域や、もっと広い範囲で冷笑されている“汚職に対する戦い”さえ支持していた。彼の最後の支援者アル=ワリード・ビン・タラール王子が、この豪華ホテルに閉じ込められたにもかかわらず、MbSが王子たちをリッツ・ホテルに逮捕し閉じ込めたのは合法的だ(ポスト紙のコラムで、彼らを穏やかに批判したが)と彼は考えていた。カショギは彼を信じておらず、彼をはねつけたMbSの顧問になりたがってさえいた。
ポストに寄稿して(アラビア語版で)いるカショギは、民主主義と改革を支持するリベラルな民主主義者として受け取られている。だが彼はサウジアラビア政権の正統性や欧米の中東政策に異議を申し立てたわけではない。主流ジャーナリストは、彼にほれ込んでいたのだ。彼らはカショギのことを、主流アメリカ・マスコミは専門的ジャーナリズムの典型と考えて、この地域についての彼らの報道を批判せず、称賛する人当たりの良いアラブ人と見なしていた。新聞にとって、本質的に、カショギはアラブ人を不正確に伝える残念な実績のアラブ語記事の象徴的筆者だった。
アラビア語では、彼がイスラム主義者として、トルコとムスリム同胞団(イフワーン)に共感していたことは明白だ。欧米で忘れ去られているか、ほとんど知られていないのは、冷戦時代、エジプトのガマールアブドゥル=ナーセル率いる進歩的で、非宗教的な陣営に対する武器として、サウジアラビアが、ムスリム同胞団を支援し、資金を供与し、育成したことだ。イフワーンは、サウジアラビア教育制度を支配し、同胞団を敬うようサウジアラビア人学生を育てていた。ところが、9月11日が、サウジアラビアの思惑を変えたのだ。支配者連中には、イスラム過激主義を支援した自分たちの役割に対する身代わりが必要で、イフワーンがぴったりの標的になったのだ。それもカショギが疑われるようにしたのだ。
彼に反対する動きのヒント
サウジアラビア報道機関の最近の記事は、政権が彼に敵対的に動く可能性を示唆していた。彼は後援者を失ったが、カショギがアラブの反対政党を立ち上げようとしていたという考え方は信用できない。本当の罪は、カショギが、イフワーン(イスラム同胞団)支持者だけ、つまりカタール政府とトルコ政府に支持されていたことだ。
ジェッダの日刊紙「オカーズ」の筆者が、彼をニューヨークのフォー・シーズンズ・ホテルでカタールの首長と会っており、“地域、および国際的諜報機関”と繋がっていると非難した。もし事実であれば、それが彼の運命を決めた可能性がある。カタールは今や、おそらくイランより悪い、サウジアラビア政権にとっての不倶戴天の敵だ。
カショギは離反者として扱われたが、人はサウジアラビア支配体制から離反することが許されないのだ。幹部が最後に離反したのは、タラル王子と、バドル王子が、エジプトで、ナセルの・アラブ民族運動に加わった1962年の昔のことだ。
他の離反希望者の背筋をゾッとさせるようなやり方でカショギを罰する必要があったのだ。
As’ad AbuKhalilは、カリフォルニア州立大学スタニスラウス校のレバノン系アメリカ人政治学教授。彼は『レバノン歴史事典』 (1998年)、『ビン・ラディン、イスラムとアメリカの新たな“対テロ戦争”』 (2002年)、や『サウジアラビアのための戦い』 (2004年)の著者。彼はThe Angry Arab News Serviceという人気ブログも運営している。
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記事原文のurl:https://consortiumnews.com/2018/10/15/khashoggi-was-no-critic-of-saudi-regime/
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10年前に読んだ英語の政治スリラー『シェル・ゲーム』を思い出している。当ブログに翻訳を掲載したシェル・ゲーム書評を読んで興味を持ち、原書を読んだのだ。470ページを越える厚い本だが、ひきこまれて読み終えた。“空虚の地”と、とりあえず訳したEmpty Quarterも出てくる。拷問監獄も。サウジアラビアとアメリカを主題にした興味深い本、いつか訳されるのではと待っていたが、その気配皆無。The Shell Game ご一読をお勧めする。
大本営広報部、壮大なトリックで、55億円だましとった地面師の呆導に異様に熱心。猫だましのような番組を見ているひまがあれば、「オールジャパン学習会」、20181015 UPLAN 「私たちの命の源が危ない~水・種子・食の安全を守ろう!~」録画の三人のご講演をこそ拝聴すべきだろう。水、種子、農産物、ありとあらゆるものを巨大資本に開放して、国民全員からだましとる詐欺が進行中なのに、地面師ニュースを聞いているひまはない。学習会で、植草一秀氏も『日本が売られる』に触れられたが、本の筆者の夫君、川田議員も、「宣伝」で申し訳ないが、購入を勧めておられた。本当に必読書だ。
今日のIWJガイドによれば、インタビューは、孫崎享氏。これは拝聴しなければ。
トランプ米大統領は10月13日、サウジによるカショギ氏殺害疑惑について、疑惑が事実であれば「サウジに『厳罰』を与える」と、当初は厳しい態度を見せました。しかし、15日、サウジのサルマン国王と電話会談をしたら、一転して、「行きずりの殺し屋による仕業ではないか」とサウジ政府の責任をぼかすような見方を示し、サウジに対する態度を180度変えました。
複雑な様相を呈してきたカショギ氏殺害疑惑について、岩上さんは今日午後2時30分より、元外務省国際情報局長・孫崎享氏にインタビューを行い、詳しくお話をうかがいます。今日の孫崎氏インタビューでは他にも、ロス米商務長官が日本の自動車産業の「生産拠点を米国に移転させる」と発言したことや、「第4次アーミテージ・ナイレポート」をどう評価すべきかなど、様々なテーマについてお話をうかがっていきます。
インタビューは冒頭のみフルオープンで配信し、その後は会員限定で配信します!ぜひ、以下のURLよりご覧ください!
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【IWJ_Youtube Live】14:30~「国内世論最優先のトランプ大統領と『改革開放』堅持の習近平国家主席!米中の覇権争いの激動の中で日本はどうなる!?岩上安身による元外務省国際情報局長・孫崎享氏インタビュー」
YouTube視聴URL(冒頭以降は会員限定): https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867
ツイキャス視聴URL(冒頭のみ): https://twitcasting.tv/iwakamiyasumi
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